ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-45



千尋がそこまで言うと、美冬が微笑んで言った。



「だからって、どうして私が毒ガスをまいたって言いたいの?」


「すいませーん、誰も毒ガスなんて言ってないっすよ」


千尋はそう言って美冬に微笑みを向けた。


美冬は口の形を「あ」と開けた。



「・・・何より、毒ガスと一緒に匂ったその匂い袋の匂いが証拠です。ポケットを確認してみてください」


千尋がそう言い、美冬はポケットを確認する。



突然、焦ったような仕草をした。



「ないでしょう?そりゃそうだ・・・・。真山、あたしたちがいたところのドアの前に匂い袋が落ちてるはずだから、取って来て下さい」


千尋は何のためらいもなく上司に指示を出す。


アホなのだからいいだろう、と言う考えだ。


真山は先程の陣内同様、少し苛立ち、戸惑う。



「早く」


千尋がそう言い、真山は仕方なく足を進めた。






 戻ってきた真山は棒立ちしている千尋に匂い袋を渡した。



「この匂いが、毒ガスと一緒に流れてきちゃったの、あたし確認しちゃいました」


千尋はそう言うと、匂い袋を顔の位置まで持ちあげて美冬に見せた。


美冬は少しの沈黙のあと、滝沢と目を合わせると静かに頷き、ポケットに手を入れた。



「ですから匂い袋はあたしが持ってますよ」


千尋はそう言いながら指で匂い袋を回す。


が、次の瞬間、千尋、真山、陣内は固まった。


「私、こんな所で捕まる訳にはいかないの。まだ西野も山口も殺せてないのよ」



美冬はそう言うとポケットから出した拳銃の銃口を千尋に向けた。


真山は思わず千尋の後ろに隠れる。


「おいっ」


千尋はそう言い、美冬を気にしながら後ろの真山を見る。



次いでに陣内も真山の後ろにいた。



「おい真山!陣内っ!お前ら上司だろ!」


千尋はそう言って二人を見た。


「僕の頭脳をけなしたのは君だ。責任を取ってもらおうじゃないか」


真山は声を震わせながら言った。


顔は微笑んでいるがビビりが声に現れてしまっている。


「そうや、ワシらをバカにしたんはお前や有明。お前が撃たれろ」


陣内も真山と同じような声で言う。


千尋は呆れながら二人に言う。



「こういう時こそデクノボーを直すとこでしょうがっ!」


千尋はそう言って真山の背中を押し、後ろにいく。



「ふざけるな!僕には妻も子供もいるんだぞ!」


真山がそう言うと、二人は「えぇぇぇ!?」と訊き返す。


あまりの反応に、真山は真顔になって言う。


「・・・う、嘘に決まってるだろ!」


「こんな時にくっだらにゃーい嘘つかんで下さい!」

と千尋。


三人がバカな事をしている間に、美冬の笑い声がきこえた。



「お笑いねぇっ。さっきまで格好良く事件解決みたいな顔して言ってたくせに。拳銃一つで意気地なしになっちゃうのね貴方たちは」


美冬に続き、滝沢も拳銃を出して言った。



「どうやら、ここで死んでもらう他ないようですね」


「いやいやいや!何言ってんねん!わしゃまだ出世してないんねん!せめて出世するまで待って!そしたら連絡するから!」


陣内はそう言って二人をなだめる。


結局アホな事しか言わないのがコイツの特徴のようだ。




「卑っ怯ですなあー・・・。こっちは無防備だってのに、んな物騒なもん出しちゃってー。・・・そんな事受け入れるバカいる訳ないじゃないですか、ふざけてんですか?ふざんけてんのか!」



千尋がそう言い陣内に怒鳴る。



「ちょちょ、ちょっと待って下さい!こんな所で銃声が響いたら、みんな駆けつけてきますよ」



真山はそう言って二人をなだめる。


が、美冬が微笑みながら言った。



「面白い事しか言わないのね、貴方達は。ここは防音よ。響く訳がないの。・・・安心して、心臓一発で撃ち抜くから痛くないわよ。私命中率いいのよ。・・・さて、誰からいく?そこの大阪の方?それとも背が高いお兄さん?それとも・・・・」


美冬はそう言いながら一人一人に銃を向けていく。


そして最後に千尋に向けて言った。



「そこの、生意気なお嬢さんかな?」