ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery1【パーティをはじめる前でも落ち着いて】-46
美冬はそう言って千尋に微笑みかけた。
「・・・せっかく美人なのに勿体ない哀れな人ですねぇ。・・・ずっとそうやって、誰かの所為にして生きてきたんですか」
千尋は、急に冷静に呟いた。
美冬はふふっと微笑んだ。
「・・・何の冗談かしら。哀れ?私が?」
「貴方以外誰か見えますか。・・・・迷宮さん、貴方のどういう所が好きだったんでしょうね。今の貴方だったのなら、あたしは迷宮さんの見る目悪いんじゃないかって思いますよ。貴方には、貴方の良い所があったんじゃないんですか。復讐なんて、アホらしーと思いませんか。・・・本当、アホらしー。貴方が止めてあげる事はできなかったんですか。気付けなかったんですか。それとも、知ってて何もできなかった・・・。いえ、しなかったんですか」
千尋がそう呟くと、美冬は銃の引き金に指を置き、千尋に向けたまま言った。
「うるさい!・・・決まりね」
次に、滝沢は真山に銃を向けて言った。
「では、私は貴方から」
銃口を向けられた真山は「えっ!?」とあからさまに言う。
「さようなら」
美冬はそう言って微笑むと、ゆっくりと引き金を引いた。
同時に、滝沢も引き金を引き、その部屋には銃声が響き渡った。
「あーれっ、おかしいなあ。次は胸、撃つよ」
美冬はそう言って再び千尋に銃口を向けた。
弾が当たったのは、千尋の腹部だ。
腹部からは、血がどくどくと出てきている。
千尋はそれを抑えながら彼女を睨む。
また、滝沢も同じ事をし、真山は足をケガした。
千尋はこのままじゃマズいと思い、テーブルにあった写真を手に取って美冬に突き付けた。
「浩太さんが、こんな事を望むとお思いですか」
「はあ?何言ってるの。その痛み、もう一度味わいたい?」
美冬は苛立った表情を浮かべる。
「この写真の貴方と浩太さん、幸せそうですねぇ。・・・もう一度言います。あんたはアホらしー」
「どういう意味よ」
「復讐って、犯人の自己満足に過ぎないんすよ。ドラマとかでよく言いません?なんで台詞はパクりですけど」
千尋がそう言うと、
美冬は「もう一回撃たれたいみたいね」と言って再び引き金に手を置いた。
撃たれると思った千尋は目をつぶる。
が、弾は飛んでこなかった。
美冬は崩れ落ち、涙を流す。
滝沢も銃をおき、「宝生さん・・・?」と言った。
「彼、浩太はね・・・・。自殺なんかする前・・・・・」
迷宮浩太・河山と出会う前――。
(もしこの作品で成功したら、俺と――)
浩太がそう言うと、美冬は(ん?)と言って浩太の方を見た。
浩太は美冬の目を見て、
(俺と、結婚してくれないか?)
その言葉をきいた美冬は、ふっと微笑んで一息を置くと、浩太の目を見つめて言った。
(・・・・もちろん)

小説大会受賞作品
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