ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係

作者/ゆぅ



Mystery2 【血祭りバカ騒ぎ】-2



「警察署ですよ。ほら、奥に使わなくなった倉庫あるじゃないですか。そこに布団とか敷いて。しかも夜勤のために風呂とかもあるでしょう?冷蔵庫もあるししかもクーラーまで。快適ですね。強いて言えば食べ物がない事が欠点ですかね」



千尋がそう言うと、真山はハァと溜息をつく。



「君はなぜ金がないんだ。給料はちゃんと貰ってるだろう」


真山がそう言うと、千尋は「あぁ」と呟いてから答えた。



「毎月のガス代とか、水道代とか――」


「アパート住んでないんだろ」と真山。


「給料入ったその日に―――」



その時、看護師が来た。


「有明さん、何かカウンターに有明さんを訪ねてきた人が来てるんですけど・・・。その、何か危なそうな人で・・・・」


看護師がそう言い、千尋は「危なそうな人・・・?具体的には?」と尋ねる。



「えぇっと・・・・。何か一昔前のチンピラ、って感じですかねぇ・・・。あ、あと関西弁喋ってました」


言われた千尋は真山と顔を見合わせた。











 「陣内さん、何やってんすか」




退院の準備を終え、荷物を持った千尋がカウンターにいた陣内に言った。


千尋の隣には真山もいる。


陣内は「有明ー」と呟いて千尋に歩みよってきた。



「陣内さん、まさか心配して見舞いに来てくれたんですか・・・・?」


千尋がそう言うと、陣内は踵を返して言った。


「そんな訳あらへんやろがー。お前に仕事持ってきたんや」



「それつい二ヵ月前に腹を撃たれた人に言いますか」


と千尋。


「言うだろ」


と真山。


陣内は手に持っていたファイルを千尋に渡した。


千尋は受け取り拒否のような行動をしたが真山が受け取り、千尋に投げつけたので千尋は真山を見て舌打ちをしながら仕方なく床に落ちたファイルを拾って中を見始めた。



「実はな、松蚊帳村言う所の金持ちが殺されたらしいんやわ。そんでその家族が残された莫大な遺産巡って対決し出した言うんや」



陣内は千尋の脇で真山と千尋に説明する。

千尋がファイルから目を離して陣内を見て言った。



「遺産相続問題ってやつですか。つーかその家族その金持ちの命より金の事考えてんすか。何であたしが?」



「いやな、通報があったんや。そんで放っておく訳にもいかんしなあ。しかも死んだじいさんが変な死に方言うから。それも踏まえてくだらん遺産相続争いを仲裁しに来い言うねん。無茶な話や。真山さんと行ってきてもらおうか思て」



「僕もですか?」


真山は急に焦り出した。


「えぇ、そうですよ。だから今日わざわざ来てもらったんですよ」


「何で陣内さんは行かないんですか、ズルいじゃないですか」


千尋はそう言って陣内をジーッと見た。


陣内は目をギョロりとして千尋の頭を叩いた。



「アホか。何で上司であるワシが行かなあかんねん」


「上司だからこそ行くんでしょーが」


「何でや」


陣内がそう言うと、千尋は陣内を睨みながら唾を吐く勢いでプッと言った。


陣内は「お前!」と怒鳴ろうとする。


「・・・・つーか、遺産っていくらなんです?そんで今その金どこにあるってんですか」


千尋は態勢を直して言った。


真山が答えた。



「その遺産が見つからないらしいんだ。だから今は誰も手にしていない」



「へぇー、じゃあ何ですか。一族揃って屋敷をあさってるっつー訳っすか。酷い話ですねぇ。遺書とかないんですか」



「それが見つからないそうなんだ。だから君が言ったように一族揃って遺産も遺書も探しているらしい」


「はあー・・・・。どーしようもないカス共っすねぇ。一ヵ月処理せずにしていたえんぴつ削り機の中に入った削りカスよりカス共っすねぇ。親父の命が消えた事を哀しむより金っすか」



千尋がそう呟き、真山が思い出したように言った。




「そういえば実はその一族の家、昔からの財宝があるって言うんだよハハハッ」



それをきくと、千尋は「じゃあ、行きましょうか。そろそろ」と言って病院を出て行った。


金に目がない女と言うのは嫌なものだ。



そう思いながら真山は陣内の腕を掴んで千尋のあとを追った。


陣内は戸惑った様子で「え?わしゃ行きませんよ?」と呟く。