ラバソウ 警視庁刑事部捜査一課第二強行犯捜査第四係
作者/ゆぅ

Mystery2 【血祭りバカ騒ぎ】-3
松蚊帳村――。
翌日、結局無理矢理連れて来られた陣内を含めた三人は松蚊帳村の屋敷に向かっていた。
「随分と山奥の古びた村やなあ。何や、松蚊帳村て」
陣内が呟いた。
「その、例の金井家の屋敷はまだなんすか」
千尋はそう言って陣内を見た。
代わりに真山が答えた。
「すぐそこだ」
言いながら、真山は百メートル程先に見える大きな屋敷を指さした。
古びていて少々茶色く年期が入ってるようだが大きさはそれなりにあり、そこらの幼稚園よりは大きい事は確かだろう。
屋敷の目の前についた三人は門の前で立ち止まり、『金井』と達筆な字で書かれている表札を見つめた。
本当に古そうで何だか気味の悪い感じさえ感じとれる。
と言う事は一旦忘れ、三人は唾を呑んだ。
そしてビビりの真山はできなかったチャイムを押す役どころを、千尋が請け負った。
ピーンポーン、と音が鳴る。
かと思いきや、チャイムを押しても聞こえてくるのはビー、と言う音だった。だが返事はない。
いつの間に廃屋になったんだ。
「どなたですか!」
怒鳴るような声がきこえた。
ビクッとなった三人の視線の先にいたのはもろにおばさん、と言った感じの中年女性だった。
「金井家に何か御用ですか」
女はそう言って三人を睨むような視線で見る。
千尋が答えた。
「・・・と、東京から通報を受けて来ました。警視庁のものですが・・・・」
千尋はそう言ってカバンを開け、手帳を見せた。
同時に、真山と陣内も手帳を出して提示してみせた。
女は怒ったように言う。
「・・・私は通報した覚えなんかありませんわよ」
「いや、でも確かにこちらから・・・・・」
真山が小さく反論する。
「ミエコおばさん!その方たちを呼んだのは私なの。おじい様がその、殺されたでしょ?だから・・・」
と、その時キレイな声がきこえた。
そう言って走ってきたのは顔の整ったまさに美女と言う美女だ。
真山が目を煌めかせる。
目からきらきらと星が出てきている。
「・・・サトコ。まあ、随分と大ごとにしてくれるわねぇ。そうよね、貴方だって金が欲しいんですものねぇ。言っときますけど私は貴方が金井家の娘だなんて認めてませんからね」
ミエコおばさんと言う女はサトコと言われた女を見て嫌味ったらしく言った。
サトコは少々俯きながら話をきいている。
どうでもいいが他人のゴタゴタを見せられても困るものだ。
「私は別にお金なんて・・・・!それに、ミエコおばさんが認めてなくったって、私はこの家の娘です」
サトコはそう言うとそっぽを向いたが三人の存在を思い出し、三人の方を見て言った。
「ご、ごめんなさい。・・・さあ、どうぞ中へ」
サトコはそう言うと微笑みを向け、中へ歩いて行った。
ミエコはフンと鼻を鳴らしてサトコとは違う方向へと歩いて行った。
「みんな、こちら、東京からわざわざ来て下さった刑事さんたちよ」
居間らしき所で、大勢(?)を前にサトコが三人を紹介するように言った。
サトコと三人以外は全員座っている状態だ。
「サトコ、お前本当に呼んだのか。まったく、無駄な事しやがって。どれだけ金が欲しいんだか。村の警察がいるだろ。わざわざ東京の警察なんざ呼びやがって」
居間の端っこに座っていた男がそう言ってサトコを見た。
「ナオト兄さん、私は別にそんなんで呼んだんじゃないわ。遺産を見つけてもらって、みんなに平等に配られるように呼んだだけです。それに、村の警察より東京の警察の方がいろいろと技術があるでしょ」
サトコが言った。サトコだ、ミエコだ、ナオトだと色々名前が出てきて混乱してくる。

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