茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく

作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第四話「それは膨大な種類があると言われる」


 昼休み。

 僕と外さんとケンタウロスは、教卓付近の床に座って弁当をかっ込んでいた。栃木に行ってきた時のもみあげ……じゃない、おみやげの餃子味ポテトチップスも開いてある。

 外さんはだいたい一番に食べ終わる。ケンタウロスのように律儀に一口三十回噛んで食えとはいわないが、せめて十回くらいは噛んで食えよ。

 餃子味ポテチに手を伸ばしつつ、今日も一番に弁当を食べ終わった外さんが切り出した。

「あのさ、一休さんの数え方ってさ、一休、二休、三休で合ってるよな?」

 ……。

「あのなぁ。まず一休さんは一人しかいない」「分身の術使った時の数え方だよ」「まさかの一休さん忍者説浮上!?」

「興味深いな、一休さん忍者説。とんちを利かせてどんな悪条件でも華麗に任務をこなしそうだ」ケンタウロスは口に運ぼうとした玉子焼きをストップさせて真顔のまま外さんの言葉に反応を示した。

「いやいや無いだろ無いだろ。だいたい普通に一人、二人って数えるだろ」僕はエアハリセンで外さんを叩く。

 ポテチを飲み込む外さん。「でもそっちのほうが面白くね? 数えてるのを聞いてる人も『あ、この人一休さんを数えてるのね』って気づけてわかりやすいし」

「どう考えたっておかしいだろ。お前はブ○ーチの主人公も一護、二護、三護って数えるのか?」

「当然だ」「いや今決めたんだろ?」「当然だ」

「なん……だと……?」はいケンタウロスによるブリ○チ定番ネタ入りましたー。

「何々、なんの話してんの?」同じクラスのワンダーが床にあぐらをかいた僕たちの輪に入ってきた。ワンダーというのは勿論あだ名。本名は湾田勉という。熱血サッカーバカ。というかバカ。

「そうだ!」外さんが目を輝かせる。「俺これからお前を数える時ワン田、ツー田、スリー田って言うわ」

「英語……だと……?」はいケンタウロスによるブリ○チ以下略ー。

「おお、なんかかっこいいな」ワンダー、お前それでいいのか。

「どうした湾田?」ワンダーの背後から声をかけてきたのはミスドだ。当然、あだ名。本名、安藤夏夜。あんどうなつや。あんどーなつ屋。ミ○タードーナツ。ミスド。と、変遷の歴史のあるあだ名である。

「そうだァッ!」外さんがミスドを指差し言い放つ。「俺これからお前を数える時アン藤、ドゥ藤、トロワ藤って言うわ」

「フランス語……だと……?」はいケンタウロスによる以下略ー。

「何言ってんだ外山」ミスドはふざける外さんをあまり好いていない。ミスドというあだ名も少し嫌っている。根が真面目なのだ。生徒会に入っていて、それに適した性格といえるだろう。

「そんなふうに俺を数えたら殴るぞ。ん? でもそもそも俺は複数いないから数える機会無いか。あ、でも例え話で『俺が二人いたら』とかそういうことににゃったりゃ……噛んだじゃねぇか!」なんかキレたー!

「ミスドー」「安藤だ」「忠弘が持ってきた餃子味ポテチでも食って落ち着けよ」外さんがポテチの袋を差し出す。

 おいおい。

「佐藤が持ってきてくれたのか。ありがとう」ミスドが袋のデザインを眺め、袋に手を突っ込む。

 くるぞくるぞ。

 ミスドの表情が戸惑いから怒りに変わるその瞬間を見て外さんはにやけた。

「テメー外山ァ! 空っぽじゃねェかァ!!!」「フヒヒwwwサーセンwww」

 袋を外さんの頭に無理矢理被せようとするミスド。爆笑する外さん。僕はそれを見ていたケンタウロスがこう呟くのを耳にした。

「俺もまだ食ってなかったんだが……」