茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく
作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第五話「それのシンボルはシンデレラ城である」その2
「それで、僕待つの苦手じゃないですか」「ああ、待ってる途中イライラして前の人の靴をわざと踏んだりするんだってね」「いやそんな事言ってませんけど!?」
「ええー、外山くんが言ってたよぉー? 忠弘くんはー、靴を踏む行為に快感を感じているんだーって」「外さん後でぶん殴る」
「で、実際は?」「……踏んでます」「やってんじゃねーか!」
咳払い。「それで、待つのたりぃとこぼした僕に姉ちゃんが暇つぶしの賭けしりとりを提案したんです」
「ああ、何も言わなくてもわかるよ。気の毒に」「わぁー、かわいそう……」「蹂躙螺旋(トーチャープレー)……」何も言ってないのになにこの反応!?
「言葉を考える時間は一分のみ。周到にタイマーを持ってきていた姉ちゃんは圧倒的なボキャブラリーで僕を苦しめた……」
回想。
「じゃあしりとりの『り』からね。スタート!」姉ちゃんの宣言でしりとり――否、僕いじめは始まった。
「えーっと、りんご」とりあえずこれがベターだろう。
「ゴロリ」「リス」「スリ」「リ……リップクリーム」「ムクドリ」「……リ……リサイタル」「瑠璃」「……り……り……料理油」「ラピスラズリ」「くっ……リ……リ……リンス!」「相撲取り」「くそっ! り……り……り……利子!」「尻」「…………り…………」
「どうした時間がないぞぉ?」姉ちゃんがタイマーをふらふら揺らす。残り十秒、九、八……そうだ!
「リネン!!」
……ノーフューチャー……。
「お前の負けよ。チュロス没収~」姉ちゃんは嬉々として僕の手からチュロスを奪い取った。
そんな事が数回続き、僕は持ってきた小遣いの半分を姉ちゃんに捧げたのだった。
「『り』攻めか。それも制限時間ありって鬼畜だね」「ゆーっくり考えるエルしぃにはむりかなー」「手荒な搾取(ワイルドディプライ)……」
「いやホント待ち時間は悪夢でしたよ。まぁその分アトラクションに乗れた時のカタルシスは強かったっすけど」
「……でもあなたのボキャブラリーが貧しいのも待ち時間が悪夢になった理由の一つ……」
誰かと思ったら、さっきまで真面目に練習していた銀だった。「そう? ……かもしれないけど」
「……『り』で来たら『り』で返せばいいの……。……『料理』『利回り』『料金係』『両関取』『両総理』『両隣』『倫理』……」早口で言い切ったよ! この子無口なくせになにこのボキャブラリーの豊富さ!?
それきり口を閉じた銀は後頭部で結った髪を揺らし、無表情のまま練習に戻った。
さて。「それで、僕ジェットコースターとか苦手じゃないですか」「ああ、乗ったら酔ってゲロが口と鼻と目からピュルって出るんだってね」「いやそんな事言ってませんけど!?」
「ええー、高杉くんが言ってたよぉー? 忠弘くんはー、主に目からゲロを出すんだーって」「ケンタウロス後でぶん殴る」
「で、実際は?」「今度こそそんな事ありませんよ!?」「何だ、つまんね」
エタブリが訊く。「ビッ○サンダーマウンテン?」僕は答える。「そう、ビッグ○ンダーマウンテン」
「どうだった?」「いやぁ、目覚めましたね。ジェットコースターってこんなに楽しいんだなーって」
「ええーっ、すごいなぁー。エルしぃねー、トゥー○タウンのガジェッ○のゴー○ースターに乗ったんだけどねー、怖くて目瞑っちゃったよー」
「あはは、可愛いなあエルしぃは」「ひゃっ、やめてください先輩ー」エルしぃをハグするムスカ先輩。
うんうん、可愛いな。「うんうん、可愛いな」
「は?」「ふぇ?」「変態注意報(トゥエルヴマンスディヴィエント)……」しまった、声に出してしまった!
「ちょっと待った、褒め言葉ですよ? 何で変態を見る目で見られなきゃいけないんですか!?」「お前、顔的にアウト」「ゴミのようだ」「ひでぇ!」
なんか微妙な空気になった! 誰か! 誰か助けてくれ!
「ちわーっす。遅れてさーせん」おお! サボり魔のアサヒ! この空気を変えてヒーローは遅れてやってくる説を裏付けてくれ!
「わ……何この空気……私後で来ますね」
アサヒスゥパァドラァイ!!!!!!!!!!!!!

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