茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく

作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第十九話「それは覚悟と勢いが肝心な、人前で演じる笑いをとるわざである」2/2


「虚無悠臥、物真似します」ユウユウはここぞとばかりにイケメンボイスで宣言する。

 バンザイし、手をクロスさせ、足もクロスさせ、体全体を捻った。そのまま動かない。

 ユウユウはキラリと歯を見せて笑い、その物真似が何なのかを言い放った。

「DNA」

 ……。

「えー、聞く価値もありませんがー、審査員の野郎共感想を」

 ケンタウロス。「はい。とても似ていると思いますね。DNAの二重螺旋構造を体全体でよく表しています。まさにDNA人間、ですね」はぁ……トイレ行きてぇ……。

 外さん。「オゥイエス! ドーミテモ、DNAダッタネ! ハイレヴェルナモノマネニデアエタコトニ、センキューヴェリーマァッチ!!」……なんかキャラ変わった……。

 ワンダー。「発想が凄いよね。ヨガのポーズにありそうだよ」ワンダーはアホの子だから多分本気でそう思ってる。

「えー……では審査員の皆様、どちらの芸がよかったかお手元の札に書いてくださーい」僕は頬杖ついてペンを回しながらこのふざけたイベントを進行させる。

「書けた」「カケタヨ! イエスウィーキャン!」「うーん、ちょっと待って……書けた」

 ニシオカとユウユウが息を飲むのが分かる。二人の周囲の空気は張り詰め、どちらも勝利を求めている。

「では、オープン」僕のその合図でノートに書かれた名前が明かされる。

 ケンタウロスのノートには“ユウユウ”。

 外さんのノートには“ニシオカ”。

 そしてワンダーのノートには……。

「へへ、どっちも凄かったと思うよ」

 “ユウユウとニシオカ”。

 ……。

「いやー、どっちを選べと言われてもイマイチ判断できなくて」「ふざけるなァ!」「尻にバナナ突き刺すぞ! 略して尻バ!」

 笑うワンダーに目突きを食らわしそうな二人をケンタウロスがなだめる。「まぁいいではないか、今回は引き分けということで」

「はーいじゃあドローって事で終了ー」僕はさっさとこのどうでもいいイベントを終わらせる。「参加者の二人に大きな拍手をー」

 その後、ニシオカとユウユウは少し睨みあってから、ぎこちなく握手した。

「お、お前のDNA、綺麗だったぜ……」とニシオカ。

「……あぁ。あんたの忠弘の真似も、実物を見ているかのようだったよ……」とユウユウ。

「次は負けないぞ!」「こっちこそ!」

 授業開始の合図が鳴る。二人の友情が深まったこの休み時間。二人の俺っ娘は互いに背を向け、自分の席へ帰る。

 そして僕は、

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――トイレに行き損ねた。