茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく
作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第九話「それは湾田勉の武勇伝である」
いつもの如く僕は外さんとケンタウロスと一緒に昼飯をかっこんでいた。
「そういえばさ」外さんが切り出す。「ワンダーの奴、ヤギに洗脳されかかったらしいぜ」
「ヤギとは、あの変態四天王の一人の事か?」ケンタウロスが反応を示す。
「そうそれ」
ヤギとは、八木空太という男のあだ名(というか、苗字の読みのイントネーションを変えただけなんだけど)だ。ティッシュを食うという変態男。確かC組の生徒だったはずだ。
「ヤギのティッシュを食う様を見て、ワンダーもティッシュを食ったらしいぜ」「ハハハ、バカだ」
「しかも飲み込むまで自分が如何にエキセントリックな行為をしているか気づかなかったらしい」「ハハハ、アホだ」
「そうそう、ワンダーといえばさ」今度は僕。「あいつ、イナズマ○レブンのファンじゃん?」
「ああ、あの超次元サッカーアニメな」
「それの影響で必殺シュートを編み出したっていうから今日のサッカーの授業で見せてもらったわけよ」「中二か」
「ワンダーが逆立ちで回転しながら『ブラスト・スパイラル!! かっこ説明しようこの必殺シュートはカポエラからインスピレーションを得て作り上げた受けた者は病院行き必至の究極シュートであるかっこ閉じる』って叫んでボール蹴ろうとしたんだけど」「なげぇよ」
「見事に手首がグキっといって、相手じゃなくて自分が病院行っちゃったらしい」「ああそれであいつ今日早退したのか」
「ワンダーといえば、この前自販機で寝そべってるのを見つけたのだが」とケンタウロス。
「どうやら自販機の下に落とした百円玉を取ろうとしたら腕が抜けなくなってしまったらしい」
「ハハハ、あいつのやりそうな事だ」いや、外さんお前もこの前そうなってなかったか?
「それで俺が引っ張ってやってやっと抜けたんだが」「うん」
「ワンダーが取ったのはよく見ると百円玉じゃなくてゲーセンのコインだった」「何故そこにあるし」
「しかも小さい字で『金じゃないよw残念w』て書いてあった」「教訓。『自販機の下には悪意が満ち溢れている』」
「ああ、それ俺が置いたコインだわ」「オーケー明日ワンダーにチクっとくからブラスト・スパイラル食らう覚悟しとけよ?」
「湾田がどうしたんだ?」ミスドが空になった弁当箱を持ってやってきた。
「ワンダーにまつわる面白い話大会やってたんだよ」「そういう主旨だったっけ!?」
「ミスド」「安藤だ」「お前はそんな面白い話知らないだろ? どうせ」
「む。そんなことはない」ミスドが若干ムキになる。
「そうだな……面白い話かわからんが、湾田の趣味についての話をしよう」
ミスドに視線が集中し、彼は咳払いをして話し始めた。
「俺がこの前、借りたゲームを返しに湾田の家に行った時だ」「へぇ、マジメなお前もゲームするんだな」
「ゲームくらいするさ。で、玄関先で返して帰ろうかと思っていたら『暇だから久しぶりに一緒にゲームやろうぜ』と言われて、たまにはいいかと思って家に上がらせてもらったんだよ」「ミスドとワンダーって家近いんだったな」
「で、ゲームを起動してる間に俺が訊いたんだ。『その棚、中学生時代にはなかったけど何だ?』」「中学生からの付き合いだったのか」
「小学生からだよ。で、湾田が『見てみれば?』って言うから見せてもらったんだよ」「ふーん」
「そしたら猫の生首がずらっと並べられててさ……」
「…………」
「…………」
「…………」
「その猫の血走った目はカッと見開かれていて突然鳴き声が」「うわああああああああ!!!!!」「ぎゃあああああああああああ!!!!!」
「何で怖い話してんだよ!!! 面白い話っつったろ!!!」「え、いや……」
「ちょっと俺ワンダーにメールするわ」「ならば俺は他の男子に言いふらしに行こう」
外さんとケンタウロスがその場から離れ、僕とミスドが残された。
僕はミスドの呟きを耳にした。
「後半作り話だったんだが……誤解されるのは湾田だから別にいいや」
この生徒会役員……黒い!

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