茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく

作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第二十話「それは人間が他人に対して抱く情緒的で親密な関係を希求する感情である」1/2


 その女子の三人組は中庭で昼休みを過ごす。

 日なたに並んで座った彼女らを少し傾いた昼の太陽がぽかぽかと照らし、秋の少し冷たくそれでいて心地よい風が吹きぬける中、その三人組は手元にまだ重い弁当箱を持ちつつぼーっと目を細め微笑みながら安らぎの時間を感じていた。

「あったかいなぁ……」三人組の一人、ベンチの真ん中に座った虚無悠臥――通称ユウユウがすっかり気の抜けた声を発する。

「ぽかぽかだ……こんな日は……露出プレイしたくなるねぇ……」と癒しの空間に亀裂を入れるかのような下ネタを吐いたのは西尾かれん――通称ニシオカだ。

「そうだねー……」同意したように見えてニシオカが言った意味を分かっていないであろうこの天然女子は、西城結城――通称、姫。三人の中で身長百三十九センチと一番背が低いが、胸はCカップと一番胸が大きい美少女である。

 この三人はいつも一緒にこの中庭で昼食をとるのだった。

 ビオトープの木々とそれが作り出す陰の中をちょんちょんと飛び跳ねる小鳥を見つめながら、三人はほおっと息を吐く。彼女らにとって、一番癒される時間である。

「私ねー……」姫が自分のツインテールの片方を撫でながら話を切り出す。

 小鳥が鳴き声を発し、空へ飛び立つ。それを目で追いながら姫は言った。

「忠弘くんの事が好きなんだー……」

 空を見上げると、鳥の一団が三角形の陣を成して飛び回っていた。眩しさと、のどかなその光景に目を細め、ユウユウとニシオカはふっと微笑んだ。

 そしてその二人は叫んだ。

「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?」」

 二人は勢いよく立ち上がる。「いやいやいやいや!」「アイツのどこがいいんだよ!」

「うーん、そぉだなぁー……」姫は口の端に指を当てて思案する。「性格かなー?」

 ユウユウとニシオカは口を半開きにして唖然たる面持ちを数秒間保った後、姫に背を向けて小声で話し出した。

「おいおいおいおいどういう事だニシオカ。俺のプリンセスがあんな顔面凶器を好きになっちゃったとか嫉妬で死にそうなんだが。カカカタ☆カタオモイなんだが」「安心しろユウユウ。きっと何かの間違いだ。忠弘みたいなウンコを好きになる女がいるはずがない。誰かと勘違いしたんだろう」

 くるりと二人は姫に向き直り、引きつった笑顔を浮かべながら姫に問いただす。

「えーっと、ウンコ……じゃない、忠弘って、あの忠弘?」とニシオカ。

 姫は弁当を膝に置き手を合わせて笑顔になる。「うん。うちのクラスの佐藤忠弘くん」

「誰かと間違えてるんじゃないか? そうだ、ケンタウロス……高杉健太郎と間違えてるとか。あいつ体格いいし顔も……なんというか渋いし」とユウユウ。

 姫は手を振って否定を示す。「ううん、あの不良さんじゃないよ。忠弘くんだよ」

 ユウユウとニシオカは再び硬直し、そして再度姫に背を向け小声で相談を始める。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! どうやらガチで忠弘を好きになっちゃってるぞ。何で俺じゃなく忠弘なんだ? 一体どういうことだニシオカ。いーまーのー僕ーにはー理解できなぁい♪」「落ち着けユウユウ。好きになったといっても、ラブじゃなくライクかもしれん。どの程度忠弘に心を侵食されているか確認し、俺たちは姫を忠弘の魔の手から救うんだ。それと『今の僕には理解できない』の部分音程がアンインストールされてたぞ」

 くるっと姫に向き直った二人は口をひくつかせながら質問タイムに入る。