茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく
作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第六話「それは集団で行われる災害を想定した訓練のことである」その2
教室内は更にヒートアップしていた。
「おい!!!!!!!! ワンダー!!!!!!!! 大丈夫か!!!!!!!!!!!!」見ると、ワンダーこと湾田勉が意識を失っていた(という演技をしていた)。
「ダメだ!!!!! 息をしてない!!!!」「よしきた!!!! 人工呼吸だ!!!!」
外さんがワンダーのそばに駆け寄って屈む。よし。ここからはグロ注意だ。いやキモ注意か。
「キャーーーー!!!」外さんとワンダーの唇が触れ合った途端女子の黄色い叫びが響き渡った。アッー♂
「おええええええええ!!!!!」ワンダーが悲痛に叫びながら起き上がって外さんから逃げた。意識が戻ってなによりです。
「おい!!!!! 今度はケンタウロスが『スイカを食べたい』と言って倒れたぞ!!!」「何ィ!!!!!!!!」もうやめろ。スイカなら今度食わしてやるから。
外さんが駆け寄る。「ケン!!!!! 大丈夫か!!!!!」お前が大丈夫か。
ケンタウロスは反応を示さない。
「ケン……嘘だろ……?」外さんは迫真の演技でふらつきながらケンタウロスの下に辿り着く。
そしてケンタウロスを抱えて叫ぶ。「おい……冗談だろ起きろよ!!! 起きてくれよぉッ!!!!!!!!!!!!!!」その情熱をもっと他に向けるべきだと僕は思う。
「外……さん……」ケンタウロスがやっと反応した。「俺……ゲホッゲホッ!」
「喋るな! 俺と一緒に避難だ!」
「俺はスイカ不足でもうダメだ……」確かにね。手遅れですね。主に頭が。
「だから俺の家族に伝えてくれ……」「ダメだ! 俺は絶対にお前を助ける! だから遺言なんて……言わないでくれッ……」
教室内は静まって外さんとケンタウロスの声だけが存在していた。
「泣くな、外さん……」え、泣いてんの!?「最期の時くらい……いつもの笑顔でいてくれ……」
「ケン……」「俺の遺言だ……『忠弘はロリコンです』……」暴露!? 何で俺の趣味が暴露されてんの? こら女子、こっちを見るな! そんな目つきでこっちを見るな!
ケンタウロスの体が力を失う。「ケン……ケンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!」遺言と称して静まった教室内で俺の趣味を暴露した奴は死んでしまって大いに結構。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!! 天井が落ちてきたあああああああああああ!!!!!!」僕はテンションが落ちてきたよ。
「天井は俺が支える!!!!!!!!! お前たちは早く逃げろ!!!! 早く!! 早く!! 俺に構わず逃げろ!!!!!!!!!!!」最初からお前に構う気なんてねーよ。
「馬鹿野郎ッ!!!! 残される身にもなってみやがれ!!!!!!」「お前だけにかっこつけさせるかよ!!!!!!」
次々と天井を支える(というフリをしている)奴らが増え、ついに河野先生がキレた。
「お前らァ!!!! さっさと教室から避難しろォ!!!!!!!!」まさに鬼の形相。
「うわあああああ!!!! 今度は怪獣だあああああああああ!!!!!!!」「逃げろオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」先生を怪獣扱いした外さんを筆頭にした馬鹿どもは奥義河野スペシャルの制裁を受ける覚悟はできているんだろうな?
ため息をつき、僕は教室から脱出した。
校庭に出てうろうろする。じきに誰か偉い人が演説を始めるのだろう。そう思っていたら、ちょっとした高台に小太りの男の先生が出てきて話をした。
「えーっと、今から私から話を、ああすいません、メガホンがなくちゃね、はい」あの先生かよ! もっとましに演説できる人に喋らせろ!
ありがたぁいお話が終わり、僕らは教室に帰る。
「忠弘~。今回こそはお前もノってくれると思ったのによお」「ノらん。金払われたってノってやらん」「一万円あげるよ」「よしきたノってやる!!!!!」
教室に帰ると、死んだフリをしたケンタウロスが横たわっていた。
僕は静かに彼の頭を踏み潰した。

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