茶飯事的な日常は奴らを乗せて回ってく

作者/ハネウマ ◆N.J./4eRbo

第二十三話「それは一般的に災難や事故などによる怪我を負った人や病人のもとを訪れ慰める行為である・忠弘の周辺の人々の場合」1/2


 ベッドは暖かかった。

 窓から見える初冬の景色にも幾分か慣れ、それゆえに少し退屈な気分を持て余している。

 僕は佐藤忠弘。今、茶飯市総合病院にて入院中だ。入院した理由は、茶飯高校変態四天王の一人であるあくる先輩の必殺技、“なんかよくわかんないけど行動不能になっちゃう謎のアレ”を食らってなんかよくわかんないけど行動不能になってしまったからだ。

 リハビリのお陰で、一日でなんとか自力で歩けるようになった。入院二日目、更なるリハビリが僕を消耗させている。

 しかし、僕には楽しみなことが一つあった。

「よ、忠弘」「美人看護婦いるかー?」

 それは、友達がお見舞いに来てくれるということだ。

「外さん、僕と会って第一声がそれかよ。そこそこ美人だよ、看護婦さん」僕は上体を起こし、笑顔になる。

 外さん、ケンタウロス、ワンダー、ミスドの四人がやってきて僕のベッドの傍に立った。

「まぁ、お前みたいなロリコンは美人看護婦がいても意に介さないだろうけどな」外さんがにやにやしながら言う。

 僕は同じくにやつきながらツッコむ。「ハッハッハここには他の患者さんもいるんだよ黙れコノヤロー」

「……もう一度言うけど、お前みたいな、『ロ』『リ』『コ』『ン』は……」「はい面会謝絶ですので外さんは帰ってください」

 ケンタウロスが顎鬚を撫でながら言う。「すまんな、外さんは最近ツッコミ不足で体調が悪いのだ」ツッコミ欠乏症……だと……?

「ミスドにツッコミ役やらせようとしても、コイツつまんねーツッコミしかしてこねぇし」と外さん。

 ミスドが外さんを向いて指差して言う。「安藤だ。ていうか何だよ! 俺のツッコミ『お前は藤原不比等か!』のどこが悪いんだよ!」なにその高度なツッコミ!?

 ワンダーが頭の後ろで腕を組んで笑いながら言う。「ハハハ、俺もツッコミ役やらされたんだけど、『お前はロナウジーニョがボールを一度も落とす事なく四連続でクロスバーに当てるテクニックを披露した時に驚いてた撮影スタッフの一人が愛用している眼鏡についた僅かなホコリか!』ってツッコミしたらダメ出しされちゃったよ」それ最早ボケだろ!

「よーう忠弘ー」「美人看護婦いるかー?」ニシオカとユウユウがやってきた。

「何でニシオカは開口一番外さんと同じこと言うんだよ……」僕は少しげんなりする。「ま、来てくれてありがとう」

 ニシオカが真剣な表情で問う。「動けないんだろ? ちゃんとチ○コ動くか?」

「ああ、心配ない。元気ビンビン、水揚げされた魚のようにピチピチだ」「何で外さんが答えるんだよ」

「え!? そこは『僕の股間のビッグマグナムは魚の硬さのそれとは比にならないだろ!』とツッコむところじゃね!?」「はい『断固』面会謝絶なのでニシオカさん帰ってください」

 ニシオカとユウユウの二人と一緒にいることが多いあの人の姿が見えない。「そういえば、西城さんは?」

 腕を組んで壁によりかかっていたユウユウが答える。「ああ、姫なら友達と一緒に来るってさ」

「お前も友達だろ?」「俺は恋人だ」「『自称』でしかないことをよく堂々と言えるな」

 誰かが病室に入ってくる音。

 ニシオカが気づく。「おっ、噂をすれば」

「忠弘くーん、やっほー」「美人看護婦いるかなぁ?」西城さんとエルしぃが手をつないで僕の前に姿を現した。両方天然娘だ。クラスは違えど、類は友を呼ぶらしい。

「美人看護婦についてはツッコまないとして、二人とも来てくれてありがとう」手を振られたので小さく振り返す。

 異性にお見舞いにきてもらえるなんて僕は幸せだな。……ちなみにニシオカとユウユウはこういう時には異性にカウントされません。

「今日はー、エルしぃと姫ちゃんで、お見舞い品を持ってきましたー!」エルしぃが満面の笑顔で言う。

 僕は驚いて、「えっ、そういうのいらないってメールしたのに」と遠慮の仕草をする。

「よいではないかよいではないかー。じゃじゃーん! はい、忠弘くん」西城さんがバッグから取り出した物を僕に渡す。

 円盤状のそれは金色に鈍く輝いていた。

「…………シンバル…………」

「音がないと寂しいかなーって思って借りてきましたー!」「きましたー!」「すいませーん誰かこの二人の極度天然ボケ症候群を治療してあげてくださーい」

 シンバルを擦り合わせる。エルしぃと西城さんが満足ならいいか……。