リストカット中毒
作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
伝えたい,短い話
追いつめられ追いつめられた人間の末路
小さな闇。深くなった傷。小さな傷から大きな闇。
追いつめられ追いつめられた結果。
+
勘違いから始まった。
弁解しなかった僕も悪かったのかもしれない。だけれど,あそこまで追いつめる必要はなかっただろう。
一緒に遊んだクラスメイトのゲームソフトが一枚無くなった。無くなる前にそのゲームソフトを見せてもらっていた僕が疑われた。すごく,追いつめられた。
僕は確かにそのクラスメイトに返した。彼も確認した。僕が追いつめられてる時も,「返されました!」と言ってくれていた。
だけれども,誰も信じない。
女子は信じていたけれど,男子は信じてくれない。
そして翌日。
僕が学校を歩けばすれ違う人が皆隣の人とヒソヒソと何かを話す。聞こえてくるのは「あいつ泥棒なんだってよ」という心無い言葉。
誰が言いふらしたのだろう。学校中に広まっていた。
歩く度に聞こえてくるその言葉。
時々「あいつには近寄らないようにしようぜ」という刃。
恐怖と怒りで腸が煮えくりかえるみたいだった。
そして始まった「無視」。それだけだった。
だけど,ただの無視じゃなくて……存在を無視されてる。不在してるみたいなそんな。
不安になった。一週間それが続いて,心は折れた。
最初は不登校だけだった。一か月休み続けた。
また行った時,やっぱり僕は居ない。
僕はむしゃくしゃして,勢いで。クラスメイト達の前で,脈を切って――リストカットして――,自殺した。
+
すごく適当。
ただ,誰かを追いつめてほしくないという願いをこめて。
一瞬だけ追いつめたら,その人は一瞬で出来たとは思えないくらい大きな傷を背負う事になるかもしれないから。
小説大会受賞作品
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