リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

好きなんです


 好きなんです。
 とってもとっても,好きなんです。
 好きで好きで仕様がなくて,身動きとれないくらい好きなんです。
 その中でもがくことくらいしかできなくて,不意に私は喋ることを思いつくのです。
「好きです」




変化が怖くて


 変わって行くことに,恐怖を感じた。
 新しいものが好きで,だけど苦手だった。
 身体が拒絶するんだ。「いやだいやだ」とダダをこねる。
「い…ッた」
 胃が,関節が,脳が,腕が,足が,背中が,骨が。
 新しいに馴染むまで,私は身体をなだめるんだ。
 つらいを言葉に出来なくて,無意識に強がって,痛みは悪化する。

――笑顔の代わりに,心からの言葉を。
――涙の代わりに,優しい言葉を。

 そう言っていた過去の自分。彼女は段々と遠ざかって行く。
 笑顔の代わりに涙を,言葉の代わりに涙を。
 泣いて良いよと,笑うのは後で良いよと,表の自分はそう言って。
 表面からの刺激にたった一人で耐えている自分はそう言って。
 なんでよあなたが一番泣きたいはずでしょって思ったけれど。


 ああそういえば,自分は元よりひとりだったなと,今更ながらに気付いてしまった。