リストカット中毒
作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話
「さようなら愚かで愛した世界!」
ナイフを握りしめて,あたしは笑いながら泣き叫んだ。
「さようなら愚かで愛した世界!」
+
ねえねえ。
話しかける声をあたしは全力で無視をする。
二足歩行の変な生き物を,色々なものを作り出す変な生き物を,あたしはただのガラス越しに見守る。
口先だけで本当はそんなつもり全くなくて,気休めでしかない言葉を紡ぎ続け,花を咲かせた葉をむしり取る。
つくづく,変な生き物だわ,と思う。
ガラス越し見つめていたら,その変な生き物はこちらを見つめて,口を動かした。
あたしはずっと無視していたのにこりないね。
「そんなところにいて,つまらなくないの」
つまらない? つまらないって,何。
保留
美早希の心境
「私ね,今までの事全てが夢なんじゃないかって思う時があるの。生まれた時の話,笑い合った思い出,迷子になって泣きそうになった事,大好きなものを見つけた時の事,他にも色々あって…それら総てが長い長い長過ぎる夢なんじゃないかって思う時が。もしかしたら,もしかしたら全部全部夢で,私が目を覚ました時には私も皆も自分を失ってて,それで夢すらも失った私達は狂って,相手を傷つけ始める。全部全部ぜーんぶ,錯覚。夢。幻。長くて,寝てるのか覚めてるのか分からない状態で,夢の中生活していたんじゃないかって。本当はそうかもしれないよね? どこかへ行ったり,誰かとけんかしたり,嫌な事があって発散する方法を求めてたり,傷をつけたり。それが全部夢。悲しい夢,続きを求めて自分を失ってるんじゃないのかな。わからない。わからないよ。私ね,怖いの。何か大事なものを失いそうで怖い。この夢が覚めてしまったら,私の大事なもの全てが無くなってそうで。私もう夢か現実かわかんない。現実が,夢みたいな儚い存在なのが悪いんだよ。ねえ,今は夢? 現実? もうさっぱり」
わかんない。
++
ぐちゃぐちゃになってしまった彼女の脳内。

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