リストカット中毒
作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話
何度目の後悔だろうか(呆れながら自嘲する)
あーあ。
またやっちゃった。
これで反省と後悔は何回目? 私の阿呆め。
今度は真白な腕の内側に真っ赤な傷。しばらく絆創膏は手放せないね。
ふとしたストレスが溜まりに溜まってとうとうマックスになってしまったようだ。
たかが虫を外に出す作業だけで何やってるんだか。
歌を歌って発散してるけど,歌を歌えない,皆が寝静まった深夜。
腕を引っ掻き回せるほど伸ばしてない,切ってしまった手の爪。
何を血迷ったんだか,真っ暗な廊下を手探りでふらふらと歩いて,台所に辿り着いて,電気をつけて。
カッターを手に取り,輪ゴムで腕を縛って血を集めたところを。
鋭い刃で切った。
さくり,と音がしそうな程軽快に切れた。流れ出す血。
べとべとしそうだったから,舐めたら,苦くなかった。
面白い。何本か切って,冷静になって,よく洗った後に絆創膏でカバーした。
母親に,それどうしたの,って訊かれたから,なんか痒くて掻き毟っちゃったら血出てさ,って言ったらリストカットかなあって思っちゃったよって言われた。
鋭いなあ。多分,嘘だって気付いてる。
でも,リストカットを隠さないと,また切ってしまいそうで怖いんだ。
ツキリ,と痛んだ真っ赤な傷を,私は一生抱えて生きてくんだ。
+
何も言わない言ってやらない。
例え名も知らない人だとしても
一人の少女は気がついた。
誰かが居なくなって,悲しむ人は一人だけでもいる,と言う事。
世の中にはたくさんの死を望み,自ら命を絶つ者がたくさんいると言う事を悲しむ人達がたくさん,たくさん。
「ねえ」
「私は,一体」
「いつまで生きればいいの?」
「早く早く」
「この体を抜け出したいのに」
私はもう空っぽよ,抜け殻になったって何ら大差ないわ。
そう切なそうに言った誰かを,抱きしめる人はいない。
+
私は、小説で、人を救う人間になりたい。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク