リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

虐めの傍観者さん,空気を一体ね


 ひらひらの黒いスカートに,レースが裾についた白い服。レースが二重になったハイソックスに,大き目リボン。
 誰がどう見たって,ぶりっこ。

 口調は普通。ただ甘い声だから,ちょっとうざい。
 顔は普通。でも可愛いと自分で思ってるおばかさん。

 ほら。
 虐められる事になる。


 長い髪を掴まれて,ハサミで切られようとしてる。
 泣き叫んで,汚い顔。

 私は見るだけ。加害者でも被害者でもない。ただの観客,傍観者。自分の立場を守るためだけの道化師を見てる観客気取り。遠く離れた上の席,影からこっそり見ているの。


「痛い…やめてっ!」
「あはは! そんな顔で,声で言われたって説得力ねーから!」
「あ,スカート切るってのはどう?」
「あー良いねそれ! やっちゃおやっちゃお!」


 あらま,ご自慢の髪に加えスカートまで。
 あの子私に「これお母さんに選んでもらったんだー」って嬉しそうに話してたのに。

 だけど生憎,あの子にそこまで感情移入する理由がないの。だから,かばわない。



「ひ……いやあああ!」
「あ,逃げた! 捕まえろ!」
「こらー待てー!」


 あーあうるさいうるさい,耳栓ないかしら。
 そんな事を思いながら,私は劇場を出た。

 空いた席は,空気みたいだった。


+


ブリッコ虐め。
一番無難な立場を選んだ賢い子。

女は怖いよ。




美早希のリストカット講座!


 まず言いたいのは,私のリストカットは「切る」ということ。頭を打ち付ける系じゃないからね!


 最初に,ハサミを用意します。切れ味抜群のやつは楽かも。私は布切りバサミがお気に入り。針も良いよ,台所の肉切りバサミはお勧めできない。血が出過ぎて大変な事になるし,リアルに「肉」切れるから。
 切りやすいようにハサミを開き,尖った刃の部分を切りたい個所にぐっと押しあてる。力いっぱいでも軽くでも良いよ。

 そして,裂くように引く。


 それが軽くであれば,血が滲む程度かな。強くであれば,流血。
 跡を残したくなければしっかり消毒すること。菌が入らないようにすればそれでよし。

 刃物も消毒しとくと良いかも。


 以上,美早希のリストカット講座でした!