リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

余裕たっぷりの傍観者といつでも怖がりな虐めっ子ちゃん


 怖い,怖いよ。

 いつかバレて叱られて,軽蔑されるのが怖い。
 怨まれて,虐められるのが怖い。
 誰も話してくれないのが怖い。
 怖いの。

 一人じゃ何もできないって分かってるのに,いざとなったら高等生物になった気分の馬鹿。バカバカバカバカバカ私の馬鹿。
 気付いてる。気付いてるのに何故やめられない? 親友が,親友と思ってる子が,「いじめやっちゃいなよ」というからなの?
 まるで踊らされてる人形だ。

 くすくすと私は笑う。それをあの子はいつも笑ってみてた。それが気に食わなくて,一度理由を訊いた事がある。
 すると飄々と言ったのだ。


「仮面被ってまでいじめなんかやってるあんたが面白くって」


 と。


 どうして私の素顔がバレた? どうして見破られた?
 そこまで余裕があるなら助けてよ,と叫びたかったけど,虐めっ子のプライドがそれを許さなくて,私は「あっそ」と吐き捨ててその場を去った。

 私の後ろ姿を見ながら,やっぱりあの子はくすくす笑ってる。


+

いつでも余裕たっぷり。
観客席が一番楽しいと,言った子。

余裕なんてなくて,いつだって怖い虐めっ子ちゃん。
それを見て笑ってる,見て見ぬふりする傍観者ちゃん。
くすくすくすり。こぼれおちてく微笑みを拾う事もああ面倒!




大切な人を「守る」事の犠牲者


痛い、痛い。
知らない感覚が体を襲う。
どんどん沈んでいく。
深く深く、戻れないくらい深く沈んでいく。
必死に手を伸ばしたって届かないくらいに。
泣きだしそうな貴方の瞳を見て私は優しく笑った。
大丈夫、このまっしろな空間の中でも私は幸せだよ。
そう言う様ににっこり笑った。
それでも不安そうで、泣いてしまった貴方の、目。
届かないけど手を伸ばして、そっと涙を拭きとった。

+

もう、戻れないけれど。
大切な「貴方」を守るために事故にあってしまった「私」。
死ぬ間際って、こう言う風なのかもしれない。

私は死にたいという感覚しか知らないから、わからないけれど。