リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

童謡風に、愚かで可哀想な物語


 むかしむかしの とあるむら。
 むらいちばんの うつくしいむすめがおりました。
 むすめは とてもやさしくおだやかで おおくのひとに あいされるむすめでした。

 しかし ひかりさすところには かげがひっそりとそんざいするもの。
 むすめをねたむものも たしかにそんざいしていました。

 むすめは とてもやさしくおだやかで それゆえにたくさんきずつくこともありましたが それでもみなをゆるすことのできる ふところのひろさをもっていました。
 それらすらをもしっとのたいしょうとしてみていた むすめのいもうとは あいするひとにふりむいてもらうために あねをころしました。
 ばれないように だれにもみられないように しょうこをいんめつして。

「これでわたしはいちばん。これでわたしがむらでいちばん」


 しかし むすめはしんでもなお いちばんうつくしいむすめでした。
 いもうとはなやみました。「あのひとはこじんなのに!」どうしてだれもわたしをみないの?

 むすめのそうぎは いままででいちばんそうだいにおこなわれました。
 むすめのながいくろかみは さいごまできらきらとかがやいていました。


 いもうとはいかりくるいました。「どうしてわたしをこんなめにあわすの!」さいごまで,いや,しんだあとも!
 いもうとはきがつきませんでした。
 みにくいしっとをむきだしにしてるため だれもじぶんをみないのだということに。
 いもうとはきがつきませんでした。
 むすめをころしたのがばれてるということに。



**


「愚かだわ」

 書き終えたとき,私は思わずそう呟いた。
 自らの罪にすら,欠点にすら目がいかないなんて,自信過剰にも程がある。

 悪口ばっかり上手な人の典型的な例だなあ,とひそかに溜息をついた。




悪口なんか大嫌い


 悪口は嫌いだ。
 人を傷つけるから。言った人も,言われた人も傷つけるから。

 言葉は,思いを届ける為にあるものなのに。
 そんな悪意を,届けてはほしくないよ。


 私は言葉が好きだから。思いを育てるのが好きだから。
 人が大好きだから。

 「大嫌い」を形にするより,
 溢れる「大好き」を形にした方が,みんな幸せになれるでしょう?
 みんなじゃなくても,きっと。

 幼くて,浅はかな考えだとは思う。


 けれども,やっぱり。
 生きてる間くらい,幸せになってもいいと思うし,幸せにしたいって思うよ。