リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

強がり嫌われ者


「嫌われ者だから,しかたないのよ」
 嘘を吐いて,吐いて,吐いて,偽者を表に出して,「変人変態異人」で通ってる「あたし」は言った。
 それを聞いた「私」は言った。「そんなに自分を責めないで,むしろ私を責めないで」と。
 強がりかっこつけで,本当は弱虫で,とても泣き虫笑い虫だった幼い「わたし」と何一つ変わってない。
 「あたし」は「私」に言った。
「あたしを好いてくれる人なんて,ほんの一握り。ただ面倒臭いから,ついてきてくれるだけなんだよ。彼らが欲しいのは,『学級委員副委員長』じゃなくて,『学級委員副委員長の肩書を持った人間』なんだよ。
 委員長にも,書記にも,クラスメイトにも,元クラスメイトにも嫌われてたあたしが,本当の意味でクラスのトップ組に入れるわけ,ないでしょ。自惚れないで」
 ストレスで痛む胃を押さえ,無理に笑った「あたし」。「私」は,「わたし」は,何も言えなかった。
 「あたし」は,強がりだから,うそつきだから。
 「私」は,偽るのが大嫌いだから。
 「わたし」は,見守る事しか,できないから。

 「あたし」は言葉を重ねた。
「なんで日直だからって,爆弾投下しちゃったんだろうね。月曜日から大変だね。いじめられたら,どうしようかしら。十倍返ししてやろうかしら。ああでもそれだけじゃつまらない!」
 嘘と,真とを,幾重にも重ねて。

+


胃痛はんぱない。やばい。
痛みを紛らわすためにここにきたのに、意味ないや。
……も、なんでだろうね。
後悔はしてないけれど。

自分の生き方に、後悔なんてしたくないよ。




メッキで覆われた心は傷だらけです


 愛されたかったの。
 どんなに,誰かに嫌われたって良い,なんて嘘嘘。

「あたし,嫌われ者で,「守ってくれそうな人ランキング一位」だったからね。
それは,つまり「守りたくない人ランキング一位」と同じだよ。だから,さ」

 ぽろりと零れた涙をすくってひとはいなくって。
 頭を撫でてくれるひとはどこかへいって。
 抱きしめてくれるひとは,抱きしめてくれたひとは,もうあたしのこときらいで。

 あたしを好きだと言ってくれたひとは,どこまでもやさしくてこわくて。
 私を好きだと言ってくれたひとも,つらそうで。
 頼っちゃいけないのかな,なんて。


 しくしく痛む,胃。
 空腹をうったえてくるのに,たべものが喉を通らない。
 ほろほろ泣いた。


+

こわがりで
つよがりで
かっこつけで
うそつきで
やさしいふりして
かめんをかぶって
みんなをだまして
生、きていて
いのちがおわるのがこわくて
かまってほしくて
迷惑かけまくって
うざがられて
きらわれて
きらわれて
きらわれて
嫌われて
嫌われて
嫌われて
嫌われて
傷跡を撫でてみるけど
ちっとも安心できなくて
はさみを握ったけど
怖くて怖くてきれなくて
刺さった嫌悪の、悪意の矢が抜けなくて
くだけだ心の一部が刃物を拒んで
あたし、どうすることもできずに
ひきこもってないてる
馬鹿じゃないのかな
あたし


+


ああ、わたしの背中に翼があれば
酸素のない世界に
飛びこんでいけるのに