リストカット中毒

作者/ 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

伝えたい,短い話

劇の恐怖と絶望の間で狂った役者さん!


 あははたのっしい!
 そこらのゲームよりも楽しい,比べ物になんないくらい!

 ほらほらもっとおびえてよ! もっと絶望させてよ!
 その度に得られる痛みが私は大好きなんだから!


 なんなら同じ思いをさせてあげようか?
 ほら,その可愛い腕を出してみて! いちにのさん,だからね?


 ほら! 綺麗でしょ? 真白な床に真っ赤な色って素敵だよね!
 …何よその瞳。鬱陶しいわね! でも良い,許す。え? 変だって?


 やだなあ,変なのは貴方達。私はちっともおかしくないって!
 私は少しでも楽になりたいだけ。こんなに素敵な方法を試さない貴方達がおかしいのよ!



 だから,ね。












「包丁で,ちょっと切ってみてくんない?」


+


狂ったリストカッター。
なんかこういうものが異常に書きたくなった。後悔はしていない。




いつまでもこの平和な時が


 教室に入ってくる風。
 窓際の席の私の体温を下げる。

 生ぬるい。風よ! と心の中で命令してみる。
 揺らめく国旗と校旗,どうやら南風のよう。


 暑い。とりあえず三階なのとこの教室に居る人間の体積がでかいので熱気がすごい。
 暑い,とてもあつい。


 ぱたぱた,ぽこぽこ,はらはら。
 ハンカチや下敷きで仰いで起こす風。空気の振動が鼓膜に伝わり,脳に送られる。その時擬音に変換される。
 隣の席の女子が暑そうにしているのを見て,くすりと笑った。

 彼女はそれにも気付かず,黙々と黒板の文字を写している。いつの間にか追加されていたらしく,私も慌てて写しだす。

 前の席の男子が暑くね,と言いながら私のペンでペン回しをし始める。
 返せ私のペン,あと課題書けよと小声で呟いた。やだね,と返事が返ってきて私はため息一つ。

 先生もうだうだしている,初夏の教室。


+

どうかこの平和な時がいつまでも続きますように,と。
実話なんですねこれが。

三十八度ってなんだろうなとみんなで考えましたね。