ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: 【Veronica】 ( No.294 )
- 日時: 2011/06/23 22:12
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: rbVfLfD9)
- 参照: 文化祭始まったよ—
「さようなら、私の"愛した"人————」
——————待って、待ってくれよ。
意識が薄れていく。額に穿たれた穴が、脳を侵食する前に。
君に触れられるなら。
——————理解したくないんだ!何も、何もかも!!
小刻みに震える手がすがるように伸びた。指には銀光がぼんやりと。手の真っ直ぐ先の女はヒールの音を奏で、遠ざかっていく。
————俺が堕ちる。
力尽きた腕が虚しく降下。
————地面を這ってでもお前を、エイルを——————。
静寂。
冷たい大理石が、噴射された水に薄められた紅い液体に染められている。男の頭蓋は一極集中したところで噴射され水に貫かれていた。双眸で色の違う目から光が消えた。澱んだ硝子珠は虚しく大理石に向いていた。額に穴、止めどなく脳漿と水と血液が溢れ出る。それは男の美しい白金の髪を染め物のように染め上げていた。
目から涙。
—————景色が反転していく。
<Oz.17:Lament-哀しきさゝめごと①->
第二次永雪戦争。大陸中央部に位置する大国エターナル帝国と北のネージュ王国間で勃発したスノウィンの領土を巡る戦争だ。その戦争の真っ只中、問題とされているスノウィンで奇妙な出来事があった。
村娘が帝国軍人に恋をし、子を儲けたのだ。
案の定村人達は母子を迫害した。戦争で死んだ男の遺した妻子をだ。女はそれでも絶えた。愛する我が子と共に。彼女らに逃げ道は他に無かったのだ。————戦時中のスノウィンからの亡命を、手を差し伸べるものは居ない。挙げ句、母子は村人の管理下に置かれた。「彼女らに罰を与えよ、さすれば我らは救われる」————そんな狂った思想を抱き、更に傷付けた。
—————どうして?
何度自問自答しても答えなんて出なかった。
父親が死んでから数年、戦争も終戦に近付いた頃だった。
漸く、彼等に光が差し込む。
* * *
スノウィンの遺跡のすぐ外、アメジスト種の女は結った栗毛を解いていた。すぐ近くで拍手がする。女——エイルの口許が緩んだ。拍手の音源、雪原の中に視線を送る。
「【狂信者】様」
彼女が言うと同時に雪原のあった空間が歪に歪み、中から腰の曲がった老人が現れる。気味が悪いほど剥き出たギョロ目でエイルを舐めるように眺める。最後に舌舐めずり、満足げになった。
「その様子では、どうやら成功みたいだ」
エイルも微笑んでいる。しゃがれた声は乾いた笑いを産み出し、静寂を破り捨てる。
それを林の中から隠れてみていた者が溜め息を吐いた。主の橙の髪がさらさらと揺れる。軽快な低い声で呟いた。
「ファウストのオッサンに比べりゃあ、まだまだだろ」
「ロキか、戯れ言を言うのは!!」
【狂信者】は聞き逃さなかった。その声に向かって怒鳴り散らす。ロキは手をヒラヒラと振って現れ出た。何故か巨大な熊の毛皮を羽織っている。
「まあまあ、落ち着けやマドネス」ロキは狂信者マドネスを宥める。「そりゃあ、すげえよ?なんだっけ、あ、そうそう。屍を自由に操るっつーのは」
禿げ頭の【狂信者】マドネスの顔全体が赤くなる。怒り狂った雄牛の様だ。声が荒ぶる。
「屍を自由に操る?————カルディナーレとは違うのだよ!」
「残念だけど、まだまだファウストにゃ及ばねえだろ。その女は【巫女】ぐらい生々しく、感情を捨てた生きた人形か?
キャリアが違えよ、ハゲ」
ロキの口許は歪み、澱んだ言葉を吐き散らしている。【狂信者】マドネスは怒りに震えたまま黙っていた。
流石に男も自重し、言うのを止めた。老人に寄り添うエイルが鋭い紫電の眼光を突きつけていた。彼女は最早マドネスの忠実なる人形となっていた。
「【愚者】、貴様にも寄り添う女が居たろうが。————シギュンもエイルと同じだろう?」
挑発染みた老人の愚問にロキは口笛を口ずさみながら
「違えよ」
と冷たく言った。狂信者は懲りずにもう一度。
「シギュンも貴様に忠実なる部下だろう?エイルと何が違う、いや同じだろう。【愚者】の言うことには疑問すら感じず————」
「黙れよ」
切らしたロキから汚泥の様な声が冷たく吐き出されている。ロキの指に嵌められた指環が光り、いつの間に老人の骨が突き出した喉をかっ切らんとする鋭利な刃物を樹氷から生やしていた。マドネスは苦笑いする。
「これは言い過ぎたねぇ」
血走っていた水晶の両目が妖しく光る。ロキは何も答えず、相手から出る言葉すら許さない雰囲気を剥き出して突き出ていた樹氷を戻した。
そのまま彼はくるりと方向転換。毛皮を引き摺り、真白に足跡を作って去っていく。
「言っとくが、お前が思ってるほど人間っつーのは弱かねえ」
「そんなことはないね」老人はピシャリと言い切る。「人は脆弱さ。だから超えようとする」
直後、僅かに差した【愚者】の翡翠の鋭い眼光を見たマドネスとエイルは硬直する。青年の唇から言葉が漏れた。
「精々足を掬われないように気を付けろよ」
そのままロキは去っていく。しんしんとする音しかその場には響いていなかった。
* * *
「ウェス」
ミシュリがウェスと呼んだ子の髪を撫でる。よく似た白金の髪だった。
「はい、母さん」
母は天使のような我が子の頬に触れた。左右の眼孔にルビーとサファイアを嵌めたように見事なオッドアイだ。
「話したいことがあるのだけれど、良いかしら?」
母がそう訊ねるとウェスウィウスは笑顔で顎を引いた。
「はい、母さん」
「では紹介しないとね」
ミシュリは家の中から慌ただしく出て、遠くに声を飛ばした。呼んだ名には既に聞き覚えがあり、これから何を言われるのも何気無く分かっている。先週まで何かで母が病院に居た。その間、暫く母の知り合いだという男に面倒を見てもらっていたのだ。————ウィーゼルという名が記憶の片隅に辛うじて引っ掛かっている。顔も一致はしていた。面倒見の良い、家庭的な好青年である。
ウェスウィウスだけが残された部屋の扉が開く。白金の髪をしたラズリ種の男が母ミシュリに連れられて入ってきた。男は何かを大事そうに抱えている。ミシュリはウェスのまだ幼い腕を引き、男と向かわせた。
「今日から君のお父さんになるんだ」男の穏やかな表情がウェスウィウスと同じ高さに合わせられる。「良いかな」
「ウィーゼルさんが?」
世話をしてくれていた男が突然そんなことを言うのだから思わす聞き返した。しかし、ウェスウィウスの中に反対の意があった訳ではない。寧ろ大賛成だった。ウィーゼルは亡き父の様に、いやそれ以上によくしてくれた。彼と付き合ってから泣いてばかりだったミシュリも笑うようになっていたのも、子供ながら分かっていた。母の為でも、それはとても良いことだと思う。
ウィーゼルは少し不安そうな顔をしている。子供は鋭いのだ。一気に断られた時の不安が込み上げてくる。
「お母さんは大切にする。それに君も、だ」
「君も——じゃなくて、ウェスだろ?」
紡いだ苦言に返ってきた子供の言葉に思わず聞き返す。
「————は?」
「だからぁ」ウェスウィウスは切らしたように言った。「息子なんだから名前で呼ばなきゃでしょ、父さん」
その言葉を聞いたウィーゼルは思わず涙する。おかしいな、と何度も繰り返しては目元をこすっていた。ミシュリはそれが微笑ましい。
やがて二人は真っすぐとウェスウィウスに向いた。
「ウェス」
とウィーゼルが声をかける。そのまま母のミシュリは抱き抱えていた何かを彼の眼に入るように見せた。腕に抱かれ、すやすやと穏やかな寝息を立てている赤子が、母とウィーゼルと同じラズリ種がそこで穏やかに眠っていた。母によく似た顔とウィーゼルに良く似た雰囲気。一瞬でウェスウィウスはその赤子がなんなのか悟った。———父の違う、兄弟だと。
「お前は今日からお兄さんなんだ」
ウィーゼルの厚い手が頭をくしゃくしゃに強く撫でる。瞬間で悟った。ウェスウィウスが今与えられた使命を。
「年上のものは、自分より下のものを護らなきゃならないの」
ミシュリが続く。彼女はそっと赤子の白金の髪を撫でていた。
「ウェロニカを、———妹を護らなきゃなんだよ、ウェス」
父の双眸を真っすぐ見たウェスはコクリと頷いた。其れを確認した二人はたがいに微笑み合う。そして二人でウェスの手を肩手ずつ取り合い、手をつないだ。温かい家族のぬくもりが流れる。
ウェスは心の中でしっかりと悟っていた。
『母さんも、義父さんも、妹も。————僕が護るんだ』
>>
- Re: 【Veronica】 ( No.295 )
- 日時: 2011/06/25 10:19
- 名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: .v5HPW.Z)
ウェスぅぅぅ……
冒頭でウェス君生存の可能性がだいぶ消されてしまった(ガーン
そしてウェス君の過去話、
いやー……死亡フラグが折っても折っても沸いてきますねww
自分の小説更新すらしないでVeronica読みに通ってる自分…
ウェス君の生存を願いながら更新しに逝ってきます(`Д´ヾ
- Re: 【Veronica】 ( No.296 )
- 日時: 2011/06/28 10:19
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: rbVfLfD9)
- 参照: ジ ー プ = は く り ゅ う (゜Д゜)
文化祭終わりました!これから一週間後にテストとかやる気うせr(ry
もう完全にウェス君はドラゴン○ールが無いと復活できないような状態になっちまいました← これから集まったフリッグ達が神龍を呼び出してウェスを生き返らせるために…(自主規制)
と言うのは冗談なんですが(おい
死亡フラグ立ちまくりですねーw自分でも読み返してびっくりしました(おいおい
有難うございます^^大丈夫、主要キャラ補正という強い味方が存在する筈ですから(笑)
- Re: 【Veronica】 ( No.297 )
- 日時: 2011/06/30 23:27
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: rbVfLfD9)
- 参照: ジ ー プ = は く り ゅ う (゜Д゜)
更新じゃ無くてすみません。
とりま、心配している方が居たら申し訳ないので安否確認的な…。
今朝、近いと言えば近い長野県の松本で震度5強の地震がありました。幸いにも死者は出ず、けが人だけで済んだそうですが(あ、松本城がorz)
えとですね〜…、なんか情けないのだけれども、私全く気付きませんでした←
丁度通学中だったんですけどね。電車に乗ってたのか、歩いてたのか分からないんですけど(ry
家族はある程度の揺れを体感して居たそうですが…(´・ω・`)
携帯の地震アラームみたいなのもなってる人居たらしいのですが、私全く気付きませんでした(殴
と、言うことで全然無事です。(あ、今サッカーので君と羊と青鳴ってら〜)
その代りテストッつー何とも言えない物がやってきます。あと5日で一歳老けます。多分更新滞り。でも勉強してないです。文化祭で燃え尽きてます←
近況報告的ですけどそんな感じですかね。
地震はいつ来るのか、本当に分からないのでいつも心のどこかで覚悟しておいた方が良いのかもしれないですねー…。
忘れないうちに、参照3000有難うございました。
- Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.298 )
- 日時: 2011/07/03 11:49
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: rbVfLfD9)
- 参照: ジ ー プ = は く り ゅ う (゜Д゜)
* * *
————我々が完璧であるという道理は何処に有る?いや、そんなもの何処にも無いのだ。
人は常に不完全である。
其故、人は貪欲に完璧を求める。
そして、我々が完璧で無ければならないと言う道理は何処に有る?
否、そんなもの何処にも無いのだ。
それでも人は完璧を求める。
それは無いものを貪欲に求める、
まるで欠けた部分を埋める虚しさのように。
「珍しい本を読んでるじゃないですか、お嬢」
良く通った声にピクリと肩を震わせる。リーゼロッテは振り向いた。艶やかな紅色の髪が靡く。
「やあ、ビスマルク。久しぶりに本を漁ってみたら、昔読んでいた本を見つけてね」
彼女は苦笑する。手に持った古く分厚い本を叩いた。頁に挟まっていた埃が舞い、光を浴びて輝く。綺麗だったが、正体が埃だというと非常に残念なものになる。
「賢者の言葉ですか」
人狼ビスマルクがリーゼロッテの開いている頁を覗きこんだ。彼女は笑いを漏らして答える。
「ああ、有名な者のだ。幼い頃に読んでいたのを思い出してね」
最期に小さくケイロンの、と付け足した。スピネル種の女性は再びをそれをまじまじと読み込む。横で狼は静かにその姿を眺めていた。
自分に有る最古の記憶を思い出す。
会ったばかりの少女は、年齢とは不相応なくらい大人びていて、自律していた。休む間もなく、背伸びをして。
今、彼女が読んでいる本を当時の彼女も彼に見せたもので、
『別に完全や完璧じゃなくて良いんだ。お前はお前らしく、"お前"を創っていけばいいのだから』
という言葉をいつも繰り返し呟いていた。
ふと思い出に耽っているビスマルクを現実に引き戻す呟きが聞こえた。リーゼロッテは本を棚に戻し、窓を開け、外を眺望し始める。そして、もう一度似たような言葉を誰かに言っていた。それは、今此処にいる者に向けられている言葉では無かった。
「ウェスウィウスは欠けているものを埋める何かを探していたんだと思うんだ」
彼女の真紅の睫毛が伏せる。北へ、故郷へ向かった友の顔が脳裏に横切っていた。しかし、それは非常に靉靆(あいたい)とし始め、まるで彼の存在がこの世から消え去るのではないかと言うくらい曖昧になっていっていた。
「埋めるものは、"愛"だったのかもな」
遠くを見つめる。尖晶石の双眸は、哀しく風景を見つめていた。
* * *
「ここまで来れば安心だろ」
更に薄暗さを増した狭い坑内に落ち着く。クラウドは担いでいたのを下ろした。
「何がだよ!」
復活直後でまだ傷口も塞がりきっていないメリッサが苦い顔をしながら声を上げた。途中で意識を取り戻していたフォルセティも同じ顔をしている。
「良いじゃねぇか、別に。村人に捕まったら殺られてた————そんな可能性も零じゃねえだろ?」
今のメリッサとフォルセティはただ与えられたものを有無を言わせずにこなすように命じられているとしか思えなかった。ネージュに到着してからまずフリッグとはぐれた。スノウィンに来てすぐ襲撃され、ウェスウィウスの行方も分からない。
フォルセティは恐る恐るクラウドに訊く。
「クラウドさん……は何か知ってるんですか?」
「いや、俺も詳しくは知らない」
ハッキリ言われ、メリッサが荒ぶる。
「それじゃ何が起きてるのか誰も分かんないじゃん!!」
クラウドは目を閉じた。彼の藍の髪が目元を隠すように流れる。
「そうだな」
少女の琥珀が陰った。フォルセティもその場にしゃがみこむ。場所とリンクして二人は闇の中に居た。模索する気力すらもがれた感じだ。行方知らずのフリッグとウェスウィウスを探す前に、どうにかこの状況を打開せねばならなかった。しかし諦めが発生し、蝕んでゆく。その所為で気力が失われつつあった。
それを読み取ったのか、クラウドはいつの間にか口を開いていた。
「スノウィンの村長バティストゥータを始め、村人が変貌したのは最近のことだ。噂によれば、神器を手にしてネージュを支配するつもりらしいんだけどな。————俺も調べに来て捕まった」
「バッカでぇ〜」
それを聞いたメリッサが小馬鹿にしてけたけた笑う。失礼なことに指を指して。その横にいるフォルセティも肩を震わせていた。笑いをこらえているのは、丸分かりだった。
隠すのが下手くそすぎて、面白くも腹立たしい。思わず怒鳴った。
「うるせぇ!!」
少しでも哀れみを感じたクラウドは自分が馬鹿らしくなった。一秒でもそう思ったのを後悔。黒歴史と刻まれたのを一秒でも早く削除、削除!
「とりま、ウチラは何かややこしいことに巻き込まれたっちゅーことだよね」
そう言ってからアンバー種の少女はその場で右手を振るった。美しい金錫が現れる。運命聖杖ノルネンを地面に突き立て、不敵な笑みを作る。クラウドは唖然。思ったより早い立ち直りである。
「思ったより早い立ち直りだな」
言われたメリッサは頭を掻く。
「なんつっか、"慣れ"だよね。今まではそんなに無かったんだけど、ある奴に会ってからドーっと色々起こったからさ」一呼吸おき、丸で今までのことを思い出すよう目を閉じた。「指名手配犯やら、伝説級の竜やら、大魔導師やら」
フォルセティも笑って立ち上がった。手には天命の書版を抱き抱えている。
「有無を言わさずに呑み込むしか無いですし。————まるでいきなり免許もないのに車に乗せられて運転させられてる感じ」
何を考えているのか、メリッサはそのままノルネンを振るって天蓋を破壊し始めた。一気に孔から光が差し込む。光が反射した雪がきらきらと光っていた。
「おい!!」
怒鳴りを散らすクラウドを総無視し、メリッサは天上へと跳躍した。フォルセティも続こうとしたらしいが、登れないらしい。なので声を掛ける。
「メルさん、僕は貴女みたいに猿のような跳躍力は秘めてませんよ」
すると上から「なら登ってこい」という無茶な要求が送られてきた。呆れ顔になったフォルセティはクラウドを見る。ラピス種の青年は蒼透石の目をぱちくりさせていた。
「クラウドさん、掴まっていただけると嬉しいのですが」
そう言って左手を差し伸べる。右手では書を開いていた。銀灰色の淡い光が灯っている。
クラウドは取り合えず手を取った。しかと握る。間も無く少年の幼い喉が震われた。
「氷雪系第四階位……"氷結舞踊"っと」
途端に二人の足元か凍結する。氷は下にどんどん土台を作り、階段のように連なっていった。数秒でメリッサの跳んだ場に届いた。
————氷雪系なら俺も使えるんだけどな……。
内心そう思ったが、封じておこうとクラウドは誓う。
集まり、顔を合わせる。が、そんな間はなかった。瞬時に感じた殺意に戦闘準備、体勢に入る。先陣を切ったのはやはりメリッサだった。雪の積もる繁みにノルネンを振るう。同時に返された銃撃を容易にフォルセティが盾を作って防ぐ。
「何が居るんですか?」
フォルセティの問いにメリッサは鼻を鳴らして答える。
「もち、村人だよ」
構えた運命聖杖ノルネンが形状を<ベルザンディ>から<スクルド>に変える。魔法攻撃に特化した<スクルド>はメリッサが——魔法系であるがゆえに——あまり使わない形態であった。だが、今は全体攻撃を要するとして変化させたのだ。ひょいと持ち上げ、くるりと舞う。振袖が風に靡き、まるで巫女のようだった。幻想的な舞いから最後にノルネンを天に掲げる。
「————運命聖杖ノルネン<スクルド>、"ムーン=ルミナ"!!」
声を張ったと同時に、太陽を覆っていた雲の上隙間から何故か月光が漏れ出し始めた。昼間とは思えぬ幻想的な景色だ。それを怪しく感じた輩が物陰から姿を晒す。晒した老若男女の村人が次々に苦鳴をあげた。
————"レ・ラクリスタル"同様<スクルド>専用魔法である"ムーン=ルミナ"は月光を呼び出し、邪なるものを浄化する。同じ聖なる魔法、第四階位に位置していた。つまり、"レ・ラクリスタル"とほぼ同位の上級魔法なのだ。
苦鳴をあげた村人が次々に光に包まれ、爆ぜる。一瞬で光の粒子となり、空気中の塵となって消え失せた。一秒も無い、本当に刹那的なものだ。
「やっぱりな」様子を見たクラウドが声を漏らした。「村人はもう人じゃねえってことか」
言った矢先に、眼前に穂先が飛び込んできた。クラウドは左手を伸ばす。目掛けてきた槍を瞬時に刀で弾き返した。大気が凍る。お下げのラズリ種の少女が凍結し、落ちた。
「"ムーライト・グローリー"!」
ノルネンを頭上で旋回させる。御来光の太陽の光が月光に変わり、燦然と降り注ぐ。凍った少女が光で溶けた。フォルセティは吐き気を催した顔をしている。嘔吐の呻き声を漏らしながら、口に手を当てている。
「シャキッとせい!!まだまだだよ!」
メリッサが青ざめたフォルセティの背中を強く叩いた。同時に草葉の陰から無数の人間が飛び出す。クラウドが二等銃から弾を発車、同時に左に持つ刀を振るう。大気を凍らせ、華麗に剣戟を繰り出す。隙からメリッサがノルネンで突く!顎鬚の大男が覆い被さってきた。少女はブーツで腹部を蹴り上げ、バク転、着地と同時にノルネンを<ベルザンディ>に変え、よろめいた大男の躰を振り払った。
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