ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: 【Veronica】 →雪国事変突入 ( No.234 )
- 日時: 2011/04/09 21:13
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: されど駄目人間は愛鳥と踊る。
* * *
「うっひゃあ、寒いなー」
シュネーに降り立ったメリッサがまず最初に声を立てた。一面雪景色に近かったが、冷戦下にあるエターナルの首都ニーチェと張り合っても良いくらい発展していた。高いビルディングに雑踏。光を宿す店頭テレビから絶え間無く流れるコマーシャル。予想していたよりも開けている。
「さって、これからまた一本乗ってスノウィン近郊まで向かわなきゃだからなぁ」
「あー、田舎だからね。僕もエターナル言ったときは乗り換えで大変だった」
ウェスウィウスの言葉にフリッグは苦言を吐いた。ネージュの首都ニーチェは拓けているものの、彼らが住んでいたスノウィンは全くのド田舎なのだ。電車もまともに通らず、近くと言っても三キロメートルは離れた場所にしか駅がなく、しかも一日数本単位でしか通っていないくらい交通に不便な場所であった。
ウェスウィウスから手紙を預かってニーチェまで行った日を思い出す。ひたすら乗り換えであった。電車で相当な時間がかかるのだ。それを思い出したら、また鼻フックをしたくなった。
電車の時刻表を見ていたフォルセティが
「あと一時間くらいありますね。少し巡れるかもっ」
と時間をなぞって目を輝かせた。
「まあそうだねぇ〜。折角のネージュだし、ちょちょーいっと巡ってきたいもんね。な、ポチ」
アンバー種の少女はフリッグから取り上げて腕の中に押し込めていた竜に同意を求めた。残念ながらフリッグ以外には声を聞かせることが出来ないらしいポチは不服そうな顔をしている。雪国用に厚手のコートを買って着ているメリッサの腕を少し噛んだ。が、厚手のコートであるため効果は無い。
軍服から、茶色のジャケットとレッグウォーマーを纏ったズボン姿になったウェスウィウスは三人に言う。
「乗る前には便所。済ませとけー」
まるで引率する教師のようだ。いや、事実そうなのかもしれない。十代前半、または中盤程度の少年少女の中でウェスウィウスだけが二十歳なのだから。
その直後にフリッグの下半身が異常をきたし始めた。股下が疼く。突然の尿意に焦り始めた。我慢しようと思ったが無理のようだ。リュックサックとヘッドホンを装備したままのフリッグは顰めっ面で引率者に小声で
「ごめん、トイレ言ってくる」
と素早く言い、早足で化粧室という案内板に沿いながら去っていった。姿が消えてからポカンとした様子のウェスウィウスは「ほい……」と言いながら手を振っていた。
……その後ろではメリッサがにやつきながら「トイレに行っトイレ〜」と寒いギャグを連呼していた。
* * *
解放感が躰に染み渡る。用を足し終えたフリッグは手洗いで几帳面に手を洗っていた。水道から出る冷水が手に染みていく。それが彼の手を冷やしていった。
ふと顔をあげた。手洗いについている鏡には白けた翡翠の目をし、橙が混じった山吹色の様なボサボサの金糸の自分の顔が写っている。思わずそれに濡れたままの右手を重ねた。憎らしく鏡に写る左の頬を押す。
———これが自分……。
思い出された記憶にいたマーリンとは目付きや雰囲気が違うもののクリソツだった。過去の自分には興味がなかったが、今起きている事態に自分が深く関係していた———というかある意味原因———のだから今は嫌でも気にならなければいけなかった。自分に嘲笑を向ける。
「———ははっ……」
鏡を覆う硝子ごと握りしめようと爪で表面を引っ掻いた。自嘲の笑みが零れる。もう嫌と言えば嫌だった。そう一人で居たときだ。
「久しぶりだなァ、フリッグサマよゥ」
軽々しい、聞き覚えの無い男の声が不意に背後から聞こえた。フリッグの耳は聞き取って居なかった。咄嗟に振り向く。
自分と同じ翡翠の目、後ろで結んだら橙の長髪。どこかの民族衣装らしい、くすんだ茶色のローブを纏っている。目の細い長身の、美形と言っても良いくらい整った顔立ちの若い男だ。
「……誰」
常識的に必ず見知らぬ人に親しげに話しかけられたときに発する言葉を吐いた。男は口を大きく開けて、掌を上下させ笑い、フリッグに歩み寄って彼の肩をポンポン叩く。
「やーっぱ忘れてっかァ。そりゃそうか、そりゃそうか。シグルズことジークフリード、昔のお前の友人的なポジションだった奴だよ。
わかんね?」
シグルズと名乗った男はフリッグの肩を叩き続ける。少年は疑惑の目を向ける。
「分からない、てか知らない」
「やっぱかァ……。ま、そゆことよな」
「うん」
見知らぬ人間であったが、恐らく自分と同族だと思ったので親近感を得ていた。が、やはり滅びた種族であるのだから居るわけは無い。 可能性とすれば敵、ファウスト等という輩と同じ部類なのだろう。相手に悟られぬようにそっと戦闘態勢に入った。隙が生まれたと同時に"追走曲<Kanon>"を放つつもりで可能な限り自然にヘッドフォンへ手を忍ばせる。
その手が突然掴まれる!
いつの間にか急接近したシグルズは口元を歪ませて言う。
「おいおい、そんなに警戒されちゃ俺も参るって」
全く気付けなかった。フリッグは完全に動揺する。忍ばせていた左手は男に掴まれ、遠ざけられた。少年は口腔をパクパクと開閉させる。男の手は力が込められており、逃げることが出来ない。空いている男の左の人差指には金に光る環と、それに嵌められた蒼い石が有り、光を発していた。その手を強くコンクリの壁に押し当てた。指輪から激しい蒼い光が迸り始める。するとコンクリートが鋭い突起物に変形し、フリッグの横っ腹を掠めた。思わず顔を顰める。
———やっぱりコイツ……!
確信したフリッグはすぐさま右足のスニーカーを強く男の脛(すね)にぶつけた。男は短い呻き声をあげ、フリッグから手を離す。ジェイド種の少年はすぐさまヘッドフォンを首元まで下ろした。膨大な音が耳に吸収される。操るように手を男に向け、衝撃波を放った。が、衝撃波は発射と同時に男の前に現れた壁に辺り分散する。シグルズは床に手を当てていた。手を当てた少し先が盛り上がり、盾を作っていたのだ。
「攻撃のセンスは相変わらずだな。……まあ、"昔のお前"なら俺がコレ———指環アンドヴァリナウトを持ってることを想定して放ってるんだろうけどね」
くすくすと笑いを上げながらシグルズは蒼い石の嵌った指環を右の人差指でこんこんと叩いた。少年は確信する。奴も神器を持っている。
トイレという狭い空間で戦うには不向きだと思った。が、外は空港で人通りが多い。幸いにも人が入って来ていないものの、これでフリッグが外に出、奴がついてきてしまえば膨大な被害を及ぼす可能性があるのだ。シュネーもニーチェと同じくらい人口が集中している。此処で倒してしまうのが一番なのかもしれない。しかし、その前に素性を訊いておく必要性があると思えた。簡単に吐いてくれるとは思っていないがやらないよりやった方が良い。
「アンタも、十二神将———とか言う奴らの一人?」
「ん?ああ———今の名前は十二神将【愚者】のロキ」
右の小指を耳孔に突っ込み、穿りながら男は答えた。ロキと言ったシグルズはフリッグに左手の掌を見せた。また指環による攻撃だと思ったフリッグは一旦姿勢を低くし、男の股下へ潜り込んで抜けようとする。
シグルズの左手から白光が噴射された!と同時にフリッグは地面を蹴り上げ、前に飛ぶように進んだ。が、フリッグの足元に突如黒い穴が発生し、吸い込まれる。どぷん、という音を立てて穴はフリッグの右足を呑み込んだ。———先程とは違う。
「———な……!?」
声を上げ、驚愕の表情であるフリッグを十二神将は笑みを浮かべて見下していた。……嘲笑とは違う。
「お前さんにスノウィンに行ってもらっちゃこっちは困るわけ。ちょーいと、最北端にでも飛んでってくれや」
男はそう言って翡翠の眼を弧にした。
「おまっ———!一体何を企、んッ——————!!」
足掻くフリッグの左足が完全に沈んだ。次に腹部、そして腋(わき)。そのまま首元まで一気に沈み込む。
「だから暫く最北端で万年吹雪を堪能して貰おうと思ったんだって。良いねえ、観光。美人に雪景色、最高じゃないの」
「全っぜ、ん!最高なんかじゃない!!」
ワイングラスを持つような手の動きをして笑うシグルズにフリッグは怒号を飛ばした。とうとう穴に顎が触れた……!
「直ぐに帰って来てやる……!そしてお前を倒して」
その怒号が少年の最後の言葉だった。言葉を言い終わらせるより先に穴は少年の金糸のてっぺんを吸い込んだ。ぽちゃん、という虚しい音が鳴り、その後余韻だけをその空間に残し、穴も消え去った。
フリッグが消えたのを確認し終えた【愚者】は着物の袖口に手を突っ込む。手探りで携帯電話を取り出した。アイゼン共和国で最近開発され、全世界一斉販売をしたばかりの最新型の携帯電話"Ipon(アイポン)"だ。画面に触れて使うものである。その液晶の上を男の細い指が走る。ぽん、と小さく跳んだ。一通りの作業を終えた指は男の反対の袖の中に腕ごと入れられる。携帯を持っている手は耳まで機械を運んだ。そして男の歪んだ口元は言葉を紡ぐ。
「ウェスウィウス・フェーリア=クロッセル・アリアスクロスさまァ。
お宅の弟さんは遠くへ行ってしまいましたあ〜」
不気味な男声が響いた後の空間は、何所か卑しく笑っているような雰囲気であった。
>>
- 外伝系目次 ( No.235 )
- 日時: 2011/04/09 21:16
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: >>0がきつくなってきたので別離。
◇Oz.Biography1: OtherEyes-とある竜のとある日常-(>>1雅様リク) ・Patr1>>69 ・Part2>>72
◇Oz.Biography2: Noel-聖夜-(>>50玖炉様リク) >>82(分け忘れたので、長いです!!)
◇Oz.Biography3:Talking-座談会-(>>100ささめ様リク)
・Part1>>137 ・Part2>>138
- 履歴 ( No.236 )
- 日時: 2011/04/10 19:37
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: >>0か窮屈なのでお引っ越し
11月30日 開始。
12月11日 小説データベースに登録しました(今更w
12月18日 参照500突破!有難うございます!そして今後もがんばりまっす!!!>>67
12月23日 参照600突破>>78 有難うございます^^
01月02日 遅れましたがあけましておめでとうございます。気付けば参照700突破!
01月11日 2011.1.11と1が揃ってる(゜∀゜)。参照800超えてました!有難うございます
01月15日 参照900突破?今日はエイプリールフールじゃないぞぉ!ってマジすか!?有難うございます>>106
01月19日 参照1000突破。号泣中>>116
02月05日 参照1300突破。>>142
02月10日 参照1400突破。
02月27日 参照1600突破。>>173
03月12日 気付いたら参照1700超えてた。
03月20日 参照1900突破>>197
03月24日 参照2000・返信200突破>>201
04月01日 四月馬鹿仕様^p^
04月03日 やっと四月馬鹿仕様から戻しました(殴
- Re: 【Veronica】 ( No.237 )
- 日時: 2011/04/10 21:50
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: されど駄目人間は愛鳥と踊る。
* * *
空港内のカフェテリアに入り、四人用の座席を取る。フリッグがなかなか帰ってこないので彼が行ったトイレに近い場所に入って待つことにした。ホットココアを注文んだフォルセティの前に、白いカップに入った生クリーム入りのココアが置かれる。紺のスカートに白エプロンのウェイトレスと微笑みを交わした。去っていったと同時にカップに口を付けた。———ほんのり濃厚なココアの味がする。生クリームと混ざって甘さが相殺、旨い。
珈琲を注文した二人のうち、メリッサは砂糖とミルクをどす黒い海の中へ大量に投入した。黒に白が混ざり、ベージュに変わる。メリッサもそれを一口飲んだ。
「なっかなか来ないね」
カップから口を話したメリッサがトイレの方を見て呟く。
「ああ」言葉を拾ったウェスウィウスが携帯を気にしながら答えた。「連絡無し、遅い。やっぱなんかあったか」
短パンの上に乗る竜は咽を鳴らした。彼女は何か別の違和感を感じる。千年近く昔に感じていた空気を今感じている気がするのだ。少しだけ気に止めていたら、突然ウェスウィウスの携帯が音を発しながらバイブレーションした。
二十歳の好青年に似合わず、時代劇調の音楽だ。小節がきいた曲が店内に鳴り響き、一気に視線を集めた。フォルセティとメリッサは恥ずかしく思い、他人の振りをする。携帯の持ち主は気にせず、平然と電話に出た。———見たことの無い電話番号が表示されている。
「———はい」
『ウェスウィウス・フェーリア=クロッセル・アリアスクロスさまァ』
相手は聞き覚えの無い、若い男声だ。見知らぬ人間であるというよりもウェスウィウスには疑念を抱くものがあった。何故か相手の男はウェスウィウスの"本当の意味での"フルネームを言ってきたのだ。思わず彼の表情が凍りつく。
ウェスウィウスのフルネームはウェスウィウス・フェーリア=クロッセル・アリアスクロスと糞長いものである。それは彼の親の人数を示しているものでもあった。フェーリアは母の姓、アリアスクロスは養父の姓である。そしてクロッセルは実父の姓だ。スノウィンに居るときも、帝国で軍に所属している際も彼はクロッセルを抜いて名乗っている。と、いうかクロッセルを入れて名乗ったのは殆ど無かった。……昔から、母親に禁じられていたためである。
この名は"ラズリ種がカーネリア種と混じったことを示すもの"だから駄目なのだ、と。確かに戸籍上ではウェスウィウスに血の繋がった父親は居ない。隠れながら結ばれた者による子供だったからだ。
彼がこの名を教えたのは二名しか居ない。———自分を軍に導いたフレイ=ヴァン=ヴァナヘイムと恋人だったエイルの二人だ。彼らが外に漏らすことは有り得ない。フリッグや妹でさえ知らない名前である。
「何で俺の名前……」
思わず口走った。が、
『お宅の弟さんは遠くへ行ってしまいましたあ〜』
と、相手と会話が噛み合わない。
「弟……———」呟きの後で彼の双眸が見開かれ、声が張り上げられる。「フリッグをお前ッ、どうしたんだ!?」
それを聞いたメリッサとフォルセティは一瞬静止した。飲んでいた飲料物をテーブル上に置き、ウェスウィウスの電話のやり取りに聞き入った。二人の表情は深刻だ。
『まあまあ、そう焦らず』
相手は悠長だった。
「焦らずに居られる訳、ねえだろ!」
ウェスウィウスは憤慨する。
『俺もね、あまりこういうことはしたくないわけ。でもな?こうしないともっとややこしいことになるんだな、コレが。ウェスだって、これ以上家族を失いたくはないだろ?
俺も分かるよ?愛する存在を失った悲しみってモノ』
「やすやすと俺の仇名を呼ぶんじゃねえよ!!」
怒号を上げた混血の青年の拳がテーブルに叩きつけられる。強い衝撃音が店内に響き渡った。周囲は一気に静まり返る。が、青年は全く気に止めていない。
『ま、そう怒るなよ。お前さんはそのままスノウィンに行ってくれ、な?そうしないとフリッグがどうなるか俺、知らないから。
———お前さんと俺は何処か似通ったところがある。愛して抱いた女の様に、義弟をしたくないだろ?そう思うなら素直に帰郷するのを勧めるぜ。じゃ』
つらつらと言い残して、男との通話が途絶えた。携帯を切ったウェスウィウスの顔は蒼白だった。静まり返った店内に、さらに沈黙したウェスが作り上げる静寂が上乗せされる。それを破ろうと、メリッサが話しかけた。
「……なん、だって?」
「フリッグを置いて、スノウィンに向かおう」
いつもより一層低い声で男は言った。どうして、と理由を訊こうと思ったがメリッサは止める。訊いてはいけない気がしたからだ。膝元の竜は心配そうに青年の紅と蒼の眼を見る。彼の眼は曇っていた。
* * *
万年吹雪が降り付ける。吹雪の中にぽつんと立っている人影は、雪の中を漁っていた。食料になるような物を探す。———無い。
「食べ物、無し」
沈んだ琥珀の色を鈍く光らせ、青紫になった唇が小さく言葉を紡いだ。長い睫毛には雪が積っていた。くすんだ白の軍服の様なコートの胸元には少しだけふくらみがある。それ程歳を喰っていない少女だった。若干眺めの灰色の髪にも雪が積もる。その上にかぶされている防寒帽子は元の黒を白で塗りつぶされていた。手袋を纏った両手が雪の中に再び突っ込まれる。
がさがさ、と穿るような仕草をした。指先に触れるのは雪しかない。仕方なくその場から手を抜き、少し歩いた。さっきの場所から数メートル離れた地点でもう一度雪の中に手を入れ、探る。今度はなにか手ごたえがあった。取り敢えず引き抜く。
「———?」
手が触れた場所は妙に暖かい。動物でも埋まっているのかと思い、彼女は肩に提げている散弾銃を手に取り、それで掘り始めた。スコップ代わりだ。手よりも穴を空けられる。暫く雪を退かしていると、今度は橙色が混ざった黄色の毛が現れた。動物だとしたら、狐だろうか。更に効率を上げる為に、散弾銃を地面に投げ捨て、今度は背中に背負っていた大きめの狙撃銃を手に取る。道具を代えて、掘り起こし始めた。
金糸の下に肌色が見え始めた。睫毛が付いている。人間だ。この極寒の中、雪の下に人間が埋まっているのだ!遭難者にしてはえらく服装が準備不足に思える。少女は更に掘り起こした。首元にマフラーをつけ、軽いセーターとアームウォーマーにリュックサックをつけた人間の上半身が露わになる。———やはりおかしい。これは異常だと思い、スピードを上げた。下半身は半ズボンにスニーカーという状態だった。明らかに場違いの服装だった。
身長一六○センチ程度の少年の躰は雪から出た瞬間に急激に冷たくなっていった。少女は急いで着ているコートを一枚脱ぎ、少年にかぶせる。金糸の中からヘッドフォンが見えた。やはり風貌からして、登山感覚で此処に来たというのは間違いだ。青白い童顔を見る。唇が青紫に変色していた。
「まずいな……。このままじゃ死んじゃう」
少女は雪の中に捨てた散弾銃を拾い上げ、少年を担いだ。身長一六五センチ前後の自分の躰が一六○センチ程の少年を担ぐのは容易ではないと思いながらも自分が助けなければ少年は死んでしまうと思い、意地でも担ぎあげた。ずるずると下に垂れさがる少年の足が、二人の進路を白の下地に描いていく。吹雪は更に強まっていった。
* * *
「ハァッ!」
荒い吐息を吐きながら、襟の長い黒いコートを着た人間は路地裏に転がり込んだ。壁に背を当てて、一つ深く息を吐く。直後に周囲で
「何処へ行った!」
「見つけ次第殺せー!!」
と物騒な罵声が響く。
———行ったか?
被っていたフードを取る。中から藍の流れとラピス種特有の蒼い眼が現れた。ダボンとしたGパンの膝部分に頭を密着させる。藍色の髪の毛がさらり、と音を立てた。
——— 一安心する。まさか追われるとは予想だにして居なかった。興味本意でスノウィンにやってきたのだが、待ち受けていたのは狂った村人たちだった。
「まさか、な。こんなにおかしなことになってるなんて思っても無かったぜ……」
そう呟き、右手から神器【氷孤】を出す。氷の様な透き通った蒼の光から、透き通った氷の刃が生まれ、刀の柄が付く。氷を操る力を持つ、神器の一つだ。また追手が来た時の為に構えておこうと思った矢先だった。
「ああ———、此処にいたか」
「———!」
くく、と乾いた笑いを上げた老人がクラウドを見下ろしていたのだ。ラズリ種特有の白金の髪ととがった耳。スノウィンの奴だった。
「てめえッ!」
青年は刀を振るう。刃が通った後の空気が一気に凝結し、氷を作る。凍てついたそれらは老人に向かった、が。
「ッ……!?」
その前に青年が呻いた。腹部に視線を送る。寒がりによって着こまれた服の上に紅い染みが出来ていた。
「邪魔ものは排除だ」
冷たく男が言い放った。青年の蒼い眼が霞む。蒼透石の双眸が閉じられていく。
暫くして、どすんと大きなものが倒れ込む音がした。それを合図だと言うように、その場にぞろぞろと人が集まってくる。老婆に青年、そこそこ妙齢の女性と様々だった。彼らを前に、老人は冷たく凍りつくような目付きで言う。
「邪魔ものは排除だ。我々が求めるのはフリッグ=サ・ガ=マーリン———」
周囲を冷たい風が通り抜けた。
「そしてウェスウィウス・フェーリア=クロッセル・アリアスクロスの排除だ」
倒れ込んだ青年は動かぬ躰の中で思う。
———やはり、このスノウィンはおかしい!!
<Oz.14:affection-運命の糸は紡がれた- Fin.>
- 幼いレイス君主人公の外伝で ( No.238 )
- 日時: 2011/04/11 23:32
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: 小さいレイス君主人公の超短編
南方の大国、アースガルド王国の地下に広大に広がる地下都市遺跡を利用して建てられたアンバー種の"国"アンダーグラウンド。アルメニ=ミスト協定を主張するあまり迫害された憐れな流民たちが建国した国だった。地下の世界には人工的な太陽と風———自然が作られている。勿論此処に住む人々は本物のそれらを此処では感じられない。このアンダーグラウンドで生まれた子供は生まれてからずっと本物に出会ったことが無いのだ。
花崗岩の石畳が道を成している。同じ色をした建物が隙間なく建てられ、道の両側には市場が展開している。その市場から少し離れた、人気のない道で一人の子供が小石と遊んでいた。
———楽しくない。小石を蹴り飛ばす。からからからから、小石は転がり、用水路に落ちる。ぽちゃん、と飛沫。また足元で、見つけた小石を小突く。力を入れ、こん、と蹴る。また乾いた音を立てて石は進む。また飛沫。何度も続ける。……背後から忙しい足音が聞こえた。
<P.S.001:Espirito-少年、神に問ふ->
「レイス!」
自分を呼ぶ年配の声に気付いた黒髪のアンバー種は振り向いた。黒い修道服の裾を上げて忙しく向かってくる女が見える。顔に刻まれる無数の紫波は年齢以上に彼女を見せていた。
「シスター」
琥珀の目をぎらつかせてレイスと呼ばれた少年は老女をそう呼んだ。レイスが今居る孤児院の院長であり、修道女の彼女はそっとレイスの両肩に手を置く。目の高さを合わせてしゃがんだ。
「レイス、何時だと思っているの」
優しく叱咤するが目は怒っていた。感度の高い少年にはすぐにわかった。彼女はまた自分を叱る気だと。
「御祈りの時間が過ぎているじゃない」
「———別に行かなくて良いですから」
ふい、とそっぽを向いた。
地下に広がる巨大都市遺跡から作られたこのアンダーグラウンドには"風"がない。人工的に作られた紛い物の風が吹くだけだった。その紛い物がレイスの髪を揉む。生暖かく、気持ちが悪かった。だからレイスはこの風が嫌いだ。そしてアンダーグラウンドも。
「またそんなことを言って神の御加護がありませんよ?」
シスターの説教臭いどす声には反吐が出そうだった。聞きあきた説教言葉だ。だからレイスは訊いてやった。
「シスター。神様って居るのかなあ」
「それは勿論。神はいつも私たちを見守っているのですよ?」
老婆は自信満々に言い切った。それにレイスはピシャリと言ってやる。
「……もし神様が居るのなら、自分をこんな目に遇わせるはずがない」
吐き捨てられた言葉はその場に突き刺さっていた。
神は信じない。
見えないものは信じなかった。
そんなアンバー種に珍しくシスターは神を信じていた。が、やはりレイスは無神論者であった。
もし神が居るなら、何故人は争うのだろうか———。
その答えを知るのも、神なのだろうか———……。
<Fin.>
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