ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: 【Veronica】 雪国コンビついに登場?致しました汗 ( No.244 )
- 日時: 2011/04/16 13:15
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: rs/hD2VF)
- 参照: 巡音ルカは雰囲気的にライトニングに似てると思わないか?
ふおおおおお!ク、クラウドが……!
かっこいいですね〜。さすが、朔様です。
以前、呼び捨てでもって仰ってましたよね?
そそそそそそそ・・・そんなっ!
「さん」でもめちゃプレッシャー感じるのに呼び捨てなんて持っての他。
……ゴクッ(※どうてーじゃありません
では、せめて「さん」付けでお許しを……!
「うぜー」って思ったら、直ぐに戻しますゆえ。
では、更新頑張ってください。
同じく新学期始まったんでいろいろと大変って気持ちが分かりますw
応援してます。
- Re: 【Veronica】 雪国コンビついに登場?致しました汗 ( No.245 )
- 日時: 2011/04/17 14:53
- 名前: 姫梗 ◆geiwiq3Neg (ID: vLlTyC08)
おっす!久方ぶりっ(`・ω・´)
雪国編も進んでるなーって思って読んでたら…
ちょ、レイス短編独占してるじゃないかw
相変わらずお世話になってすみませぬ(-ω-`;)
名前は桔梗ってのをいじっただけというシンプルイズベストな名前w
可愛いと言ってもらえて何よりっス!
え?行っちゃっていいのか?雪、いいなぁ(*´∀`*)
部活は朔っち(!?)に影響されてイラスト部に入ったよw
美術部は部員が少ないから…うん、絵、描ければと思った(笑)
小説…高校忙しくなったから更新する暇が無くまた放置状態っス泣
もうこの際見てるだけでいいやーっとか思って…orz
そんな訳で、またコメしに来ますぜっ!
- Re: 【Veronica】 雪国コンビついに登場?致しました汗 ( No.246 )
- 日時: 2011/04/17 16:47
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: 新学期意外な多忙さにもたねえ…。
>X4さん
初めましてー^^そう言っていただけて光栄です←
雪国はねー…。いやあ、本来ならば冬の間に入って終わらせる予定だったんですけどね(殴
ありがとうございます^^
>千臥さん
お久しぶりっす^^雪国良いですけど大変ですよー寒いし(一応雪国在住)
信州の冬は地獄ですorz(
そんなあ!きゃーきゃーだなんt(((
ありがとうございます^^ちょいとこれから更新しますね!
>風さん
素敵ですか(笑)でも毎日雪は厳しそうです←
レイス君はなんだか主人公にしたいくらい好きになってますww
いやあ、出来る限り人間の心理的なものまでこれからは書いていければ良いなあと思ってるんですよー。序盤は出し過ぎるとネタバレになる可能性があったので控えたけど^^;
>月夜の救世主さん
クラウド早速((殴 というのでごめんんなさああいいいいいいい!!!!
いや、呼び捨てカム・オーン☆ですよwどーて…ww
全然オッケイですよb好きに呼んでください^^
いやあ、意外にも新学期忙しくって吃驚しました。一年生と全く話していないし←
応援ありがとうございます^^月夜の救世主さんも無理せず更新頑張ってください!
>姫梗
おひしゃー!
レイス君への愛情が強すぎてしまったのです!いや、もう主人公にして良いすk(
お花の名前って可愛いじゃないか!憧れだよ憧れーvそう言う名前にして欲しかった←
雪は大変だよー。標高高いからなかなか溶けないし(苦笑
四月なのにこの前は雪降ったりしたくらいさ!(( でもウェールカームッ待ってるよーぅ!
イラスト部だってぇぃ!!?そしてその渾名がとても素敵wで惚れた←
美術部は少数派だからねー。今勧誘中だけどウチの部活は全く誰ひとりとして勧誘に回ってません(笑)絵、良いよね^^
やっぱり大変ですもんね〜。高校生活は慣れるのが大変だからな〜…。まあ、無理せず^^
おうっ、また来るのを待ってるz((
- Re: 【Veronica】 雪国コンビついに登場?致しました汗 ( No.247 )
- 日時: 2011/04/17 16:56
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: 冒頭のイメージは"有心論"
「別れましょ」
唐突な君の言葉に俺の思考は停止する。君は涙で潤ませた紫紺の擦りながら続ける。
「ウェスに、飽きた……の」
「はァ!?」
俺は思わず声を荒げた。君は怒ったようにもう一度言う。
「だから、貴方に飽きたって言うのよ!!」
「じゃあ俺は遊びだったっていうのかよ!」
「そうよ!!」君は俺に鬼のような形相で怒鳴る。「遊びよ、遊びに決まってるでしょ!!」
それから暫くの静寂。
「———だから、別れよう……」
打ち破るように君は声を出した。お互い交わした婚約指輪に、手をかける。抜こうとして、止めた。
君は泣いていた。俺は仕方無く笑いかける。歳上の癖に、彼女は俺よりも泣き虫なのだ。
「『別れよう』って言ったのは、お前だろ?」
「———そうだね」
目元を擦りながら、君は笑顔を作った。今度はそれをみた俺の涙腺が崩壊し始めている。崩れ落ちた涙腺から涙が抽出。絶え間なく流れるそれを隠すように拭き取った。が、君にはお見通しの様だ。
「今度はウェスが泣いてどうするの」
君の柔肌に覆われた手が俺の涙を拭く手に触れてきた。君はそっと俺の手を退かし、変わりに涙を拭いた。
「泣き虫に言われたくないな」
「あら、その泣き虫に慰められてるのよ?」
彼女はくすりと笑う。
……いつもと変わらないやり取りだった。ただ一つ、"別れ話"という事実を除けば。
俺は声を絞り出す。その行為は雑巾絞り以上に難しく思えた。
「…………やっぱり、別れなきゃか?」
我ながら未練がましいと思う。が、正直俺は納得がいかなかったのだ。唐突な別れ話を持ち出され、意味が分からなかった。普段から気に入らない点があったのかもしれない。なら、それを聞きたかった。
「うん」
君は珍しく俺に目を合わせなかった。よく、耳にタコが出来るくらい俺に「人と話すときは目を合わせなさいっ!」と叱っていた人間なので、これは何かおかしいと俺は直感する。
「どして?」
そう訊くと彼女は一瞬躊躇った。が、そのあとに俯きながらひどく小声で呟く。
「言えない」
君は立ち上がり、俺の掌を強く握った。そのまま紫水晶を真っ直ぐの双眸に一致させた。一筋の流れを溢しながら、涙声で。
「さよなら、ウェスウィウス・フェーリア=クロッセル・アリアスクロス、
———生涯で私が唯一愛した男」
躊躇いを見せながら君は部屋を出た。最後に響いた扉の閉まる音がひどく長いものに感じられた。
君の姿が消えてすぐ、俺は掌を開いた。中には彼女が渡した紙切れ。それをゆっくり開いていく———………。
<Oz.15:Cruel-雪は白く、全てを消していって…->
『———ェスさん!』
真っ白な世界に声が響く。ウェスウィウスはゆっくりと瞼を開け始めた。微睡む中で、栗毛と紫紺の珠を見つける。
「エイルッ!!?」
恋人の名を叫びながら、青年は飛び起きた。が、眼前に居たのは萌黄色のベストを着た齢十の少年だった。
彼はウェスウィウスを心配そうに見つめ、
「……夢でも見てたんですか」
と言いづらそうに訊いた。どうやら魘されて居たようで何度も言葉と呻き声を発していたそうな。青年は苦笑いを浮かべる。
「昔の、な」
白金の髪を掻きむしりながらフォルセティを見て思う。エイルに似ていた。顔立ちも何処か妙に似かよっている。紫紺の双眸と栗毛———彼女と付き合っていた時期、ウェスがエイルにフォルセティのことを、『実は、禁書図書館にお前みたいな栗毛のアメジスト種が居るんだよ』と溢した時だった。
エイルは声を上げて笑いながら
『あら、それはそれは面白い冗談。
栗毛のアメジスト種だなんて、アースガルド王国の王族———アースガルズ王家の血筋にしか出ないわよ。前、一回帰ったけどそんな小さい子居なかったな。皆結婚してても子供いないし、一番下の弟でも十五歳だもん』
と言っていた。それを思い出したウェスウィウスの中に疑問が浮かんだ。———なら、フォルセティは一体何だ?しかし、その答えを知っている人は居ないのだろうと同時に思う。取り合えず、今は忘れた。
ふっと窓の外に目をやる。フリッグと離れた彼らは謎の男に言う通りにスノウィンへ向かっていた。スノウィン行きの列車の中で眠りについていたらしいウェスウィウスは思わず苦笑する。帰郷のくせに全く嬉しくない。スノウィンは故郷ながら"スノウィン"には良い思い出が無かった。家族の居ないその地に帰るのには気が退ける。
『間も無く、終点———。間も無く、終点———エリダナ—————』
よく伸びた機械音の女声が微睡みからウェスウィウスを現に引き戻す。スノウィンに最も近い駅、エリダナ。そこからひたすら歩いていけば故郷に着く。
「じゅーんびっ♪」
ピョンと椅子から軽やかに飛び降りたメリッサは鞄を振り回し、二人を見た。ウェスウィウスは頷く。
「さて、準備な」
それから直ぐに列車が音を立てて止まった。
先にメリッサが駆け降り、重たい旅行鞄を持ってふらふらのフォルセティが続いた。最後のウェスウィウスが切符を駅員に渡す。冷たい雪国の風が頬を掠めた。———懐かしく、嫌な感触だ。
「帰郷かい」
切符を受け取ったラピス種の男は混血の青年に唐突に訊く。突然だったウェスウィウスはどぎまぎした。
「あ、まぁ」
「それはそれは」
男は笑う。こんな辺鄙な場所に観光目的の旅行者など殆どいない。帰郷する人間以外はあり得なかった。やはり当たり前の答えだったと予想的中でもしたのか、男は笑っていた。
遠くで子供らが急かす声がする。ウェスウィウスが姿勢を低くし「では、これで」と会釈して足早に去ろうとした時だった。
男の口から笑いが消えた。だけでなく、空気が一気に冷却される。
「家族と愛した女を殺した男に安息は無いよ」
男から出た凍りつくような言葉が、ウェスウィウスを貫いた。振り向く。身体中に衝撃と恐怖が走り、彼の細いながらも逞しい体躯は震えていた。
……先程まであった駅員の姿は変貌していた。子供が一人居てもおかしくないくらいのラピス種の男は、目がぎょろりと飛び出た歳を食った男に変貌していたのだ。そのまま乾いた笑いを響かせて、風の中に消えていく。ウェスウィウスは呆然としていた。
彼の脳裏には、血だらけの女と夫婦の姿が映し出されていた。
>>
- Re: 【Veronica】 雪国コンビついに登場?致しました汗 ( No.248 )
- 日時: 2011/04/24 14:56
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: 新学期意外な多忙さにもたねえ…。
* * *
風の都ウィンディア。風を産み出すという伝承を持つウェラルディアの森に囲まれたこの巨大都市はジェイド種という"絶対音感"を持つ種族が生きる都市だった。
純潔を保たねば為らぬという制約を持った巫女が占い、それに民衆が従うという独自の文化を持っている。風の民と言ってもおかしくないのは、絶対音感という最高の聴覚を持つ耳が有るからで、彼らは常に風を聴いている為だ。
ジークフリード=ロカセナ=ヴェルスングは静かに歩く。ひたすらに続いている大理石の床に、革製のサンダルが一定のリズムを刻んでいる。赤みを帯びた黄の長髪は頭のてっぺんで一つに纏められていた。前を開け、厚い胸板を露出させた服装だった。彼のジェイド種特有の翡翠の目が、ふと前方の人間を捉える。
前方に居たのは、飴色の髪を揺らした萌黄色のローブを纏った男だった。顔立ちはすらりとして、女顔に近かった。翡翠は憂いを帯びているようだ。ジークフリードはそれが、巷で噂になっている"フリッグ=サ・ガ=マーリン"だと分かった。魔物の一種である夢魔に犯された女が産んだ大魔導師、マーリン。同じような境遇の自分だからか、以前から話してみたいと思っていたので、ジークフリードは駆け寄っていった。
呆けていた青年の肩をポン、と叩く。するとフリッグは一瞬肩を跳ねさせてからジークフリードに振り向いた。驚いた表情をする彼にジークフリードはニヤリと笑う。
「フリッグ=サ・ガ=マーリン?」
糞長いフルネームで呼ばれたフリッグは細い顎を引いた。有名人なので、名前は嫌なくらい広がっているのだ。大体の初対面の人間はこうやって話しかけてくる。
「えぇと」
「あ、俺、ジークフリード=ロカセナ=ヴェルスング。ヴェルスング家の人間」
人の顔を覚えられないフリッグが記憶からジークフリードを検索している間に彼は名乗った。———記憶に無い。フリッグは少しだけ目を見開いた。
「ヴェルスング家、ですか?」
聞き返す。
ヴェルスング家は代々十二神将の【英雄】の座を受け継ぐ名家なのだ。巫女に使え、都の騎士として君臨する十二神将。フリッグも一応その一員【魔導師】だった。が、この男との面識は思い出す限り一切無い。
「あー、でも異端児。ヴェルスング家だけど【英雄】の称号は貰って無いねぇ」
「やはり」フリッグは笑う。これで十二神将で、面識があったらそれこそ反応に困る。「良かった、十二神将で無くて。初対面、ですよね?」
我ながら愚問と思いつつも訊ねた。より正確に、"初対面"ということを確認するためだ。「あ、初対面初対面。お前さんのお噂はかねがね」
ジークフリードは笑い声をあげながら言った。ホッとしたと同時に、初対面の人間にも礼儀を弁えない男の行動に少々苛立った。が、自然と笑っている自分に気付いてその感情も消えていく。
フリッグに親しみを込めて話しかけてくる人間は少なかった。クリアーことクリュムと、【星詠み】のステラツィオ、ノルン三姉妹ぐらいだった。それに彼はそう簡単には気を許さない性分でもある。———だが、今真ん前に居るジークフリード=ロカセナ=ヴェルスングと言う男からは、何故か「共感を得られるのでは?」という不思議なものを感じていた。
「お前さんは魔物の血が半分入ってるんだって、な」
ジークフリードは唐突に言う。フリッグは目を見開いたまま停止していた。言ってはならなかったかと後悔しつつ、続けようとしたがその前にフリッグが喋った。
「は、い。……よく言われますよ、『だから大魔導師と言われるんだ』と。聞き飽きましたがね」
最後は吐き捨てた。
「俺も似たようなモンだ。巨人族の血が半分入ってる」
橙髪の男は左胸を拳でトントン叩きながら、自信有りげに言い放った。それから、フリッグの表情が和らいでいくではないか。同じような境遇に思えた彼は思わず親しげになっていた。
「そうなんですか!それはそれはっ。あ、普通に呼んで貰って構いません、ヴェルスングさん」
声を跳ね上げたフリッグは自分に指を指した。ジークフリードは笑う。
「じゃあ、フリッグか?俺はシグルズって呼んでくれや。ジークフリードっつー名前じゃ長ったらしくて仕方ねぇの」
「じゃ、シグルズさ……じゃなくて、シグルズ」
大魔導師は苦笑した。今まで他人行儀を貫いてきた所為で、相手と気安く名を呼び合うのになれていないのだ。
———考えてみれば、お互い初めて出来た友人だった。
* * *
景色がフェードアウト。暗い闇に変わる。うっすら開けた翡翠は微睡んでいる。そのまま上体を起こし、髪を鋤いた。
「ロキ様」
シギュンがじっと此方を見ていたのに気付く。……そう言えば戻ってきていた。フリッグをネージュ最北端に飛ばして、すぐに。
「懐かしい夢だ」
「……懐かしい?」
「ああ、懐かしい夢だ」
独り言のつもりで言った言葉に、思いがけない返しが来たので仕方無く繋げた。ロキは目を閉じる。夢はフリッグ=サ・ガ=マーリンと初めて会った時の思い出だった。
奴が魔物の血を半分持っているのと同じ様に、ロキ———シグルズも巨人の血を半分程持ち合わせていた。
世界三大人外種族というもののひとつだ。一つは竜———長命で高い知能を持つ———、一つは魔物———知能が低く、基本人に害を為す———、そして巨人だ。人間と変わらぬ知能を持ち、不老不死の肉体を持つ巨人。しかし容貌は大変醜く、竜ほどの巨体を持っている。が、普段は人間の躰を取り組み、擬態して暮らしているのだ。……実際、アングルボザは巨人族で、今現在オニキス種の少女の皮を被っている。
「懐かしい、ですか」
憂いを帯びた眼が閉じると同時にシギュンの髪が揺れた。ロキはその女に触れようとして、手を伸ばす。が、止めた。行き場を失った右手を髪にやり、とかして誤魔化す。
ロキは再び瞼を閉じた。
「もっかい、寝るわ」
閉じたままでシギュンに言って寝転がった。忠実なる女は静かに頷いた。そして【愚者】に寄り添う。
————静かだった。
静寂が、そのまま世界を包み込んだかのようで。
* * *
———誰だッッ!!
少年は飛び起きた。橙が混ざった黄の、飴色の髪を掻き上げる。額に汗が滲んでいた。———呼吸が荒い。そして、妙に肌寒かった。
また夢だった。シュネーで邂逅した十二神将【愚者】ロキという男が出てきていた。が、それ以外、内容は覚えていない。所詮は夢、記憶には残らないみたいだ。
フリッグは見回す。荒々しい岩肌が露出した洞窟と思わしき空間に合わない人が居住しているかのような痕跡———壁に沿って並べられた棚や、布団、携帯食料や携帯コンロ等———があった。躰を起こした少年はゆっくりと立ち上がり、近くに置いてあった冷めきったシチューを手にとった。リュックサックは剥ぎ取られ、また絶対音感を和らげていた筈のヘッドフォンも無くなっていた。冷めたシチューに口を付けようとしたが、止める。
そっと耳を澄ました。感度の良い耳は、吹雪が奏でる音を聞き取る。スノウィンやシュネーとは違った音、というか正直聞いたことの無いものだった。と、その時だ。背後から気配を感じ、振り向いた。
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