ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.74 )
- 日時: 2010/12/18 21:27
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
そういえば、妹からのツッコミでああ、やっぱ来るかあ〜と思っていたもの。
>>62の、フリッグの言葉。↓
「メル、付き合ってくれるかい?」
妹「告白だね☆」
確かに、そうだね———。意図して無かったよw
幼馴染が、居ながらまさかの告白でしたね。
でも、別に意図して無かったんだ(笑)
この小説は多分恋愛ものじゃないと思ってるし(笑)
まさか、うん。
これはフリッグが勝手に言いました((オイ
以上、わけわからん言葉でした。
- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.75 )
- 日時: 2010/12/23 11:34
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
「え、あ———?」
あまりの豹変ぶりに、思わずフリッグは言葉を失っていた。
周囲は、静寂を取り戻していた。童女が全て殲滅させたのだ。
「フリッグたちが、倒したの?」
きょとんとした表情で訊ねるリュミエールを余所に、フリッグは近くにいるアンバー種二名の方に視線をやり、さりげなく童女を指差した。
「———今の、何?」
あー、やっぱ訊くか……、といったような表情を浮かべ、嫌そうな雰囲気丸出しのメリッサはリュミエールの頭にポンと手を置き、少年の疑問に答えてやった。
「エンジェルオーラ族ってのは、好戦的なタイプとまったくその逆のタイプ———両極端な者が存在する種族なんだよ。
十歳までは、どちらにも属してるから、ちょっとスイッチが入ると性格が逆になる。つまり、まだ不安定ってこと。その間の、周囲の環境によって十歳以降どっちに属すか決まるんだそうな。
だから、リュミもこう、急に変貌しちゃうんだよ」
メリッサの説明に、レイスは度々(たびたび)頷いていた。
「は、ハァ?!」
いまいち納得出来ていないフリッグだったが、何となく訊けるような空気ではなかったので仕方なく黙り込んだ。そんなフリッグの頭をガブリ、とポチが噛む。どうやら、早く急げということらしい。
「ポチが、早く行けだってさ」
噛まれたときに感じた痛みは口に出さなかったが、相当顔を顰(しか)めていた。ふてぶてしい言い方で痛みを隠し、皆より一足先に先に進み始めた。
「はあ」
よくわからないまま、少年の後にレイスが続き、そしてそのまま女子組二名が続いて行くのだった。
* * *
ポンッ、という爆ぜた音を発し白い煙が立ち込める。地面の小石を削り、あまりのスピードになかなか躰が止まらず、予想していた着地場所から数メートル先で完全に停止した。
リュミエールの白いツーピースが焦げたように少し茶色く変色していた。好戦的な、釣り上げた純白の瞳を蔑(さげす)むように転がっている黒焦げたモノへと向ける。
「所詮は雑魚だな」
背後から飛びかかった蛙に、白のリボンを振りかざす。空気を切り裂くように横一直線に振られたリボンの足跡(そくせき)に存在していた空気は凝結(※気体が冷却または圧縮されて液体になること)され、水となりトードに降りかかった。
再度白の綬(ひも)を、水をかぶったトードに振りかざすと水は一気に氷結していった。間もなく、水晶の中に蛙が閉じ込められているようなオブジェがリュミールの周囲に形作られた。
頭上から降りかかる魔物———トードが自分の躰に触れさせる前にそれを容赦なく銀の刃が切り刻んだ。銀閃に切り刻まれ、ハムの様にスライスされた肉はボトリと宙から地に落ちた。
続けて横からやってくる魔物共を造作もなく、レイスは串刺しにする。大剣に躰を貫かれたトード達はまるで命乞いをするかのように泣き喚いたが、すぐにそれは治まり動かなくなった。
「どうやら、トードだけじゃなさそうだ」
すぐ近くで応戦しているフリッグにレイスはそう呼びかけた。少年の応答がすぐさま返ってくる。
レイスの真ん前に三つの頭が現れ、それぞれ口と思わしき所から三重の歯を剥きだして青年に襲いかかった。———スキュラである。ベースは女体と思われるのだが、足は十二本、六つの頭を持っている魔物であった。いや、魔物というより怪物といった方がしっくりくる外見であった。
「グギャル"ルるっッッ!!!」
三列に並んだ尖ったが、レイスに勢いよく喰らいつく。彼は咄嗟にクレイモヤを横に振り、まず見えている三つの頭を真一文字に斬った。そして、スキュラの躰を地面に押し倒し、踏みつける。が、横から人気(ひとけ)を感じたので直ぐに後ろへ退いた。
横から現れたメリッサのノルネンが倒れたスキュラに直撃した。通常打撃攻撃形態ベルザンディで巨大化した錫杖に怪物は潰された。ノルネンを通常形態に戻したメリッサは、レイスにウィンクする。
「大丈夫?」
「平気だ」
口元に付いた血を袖で拭ったレイスは会釈し、魔物の群れの中に入っていった。
進めば進むほど、魔物の数も種類も増えていっていた。洞窟という狭い空間の為、竜は巨大化して戦うことができない。フリッグは魔物の中心で音波を発し、一気に薙ぎ払った。
「数、増えてんじゃん」
激しく言うような感じではなかったが、かなりの苛立ちは含まれていた。隣に飛んできたリュミエールが焔を発しながらフリッグの言葉に反応する。
「知らんッ。おそらく奥に何か親玉がいるのだろう!」
やはり、"このリュミエール"にはまだ抵抗がある。そう思いながら彼女の横でフリッグは攻撃を続けた。リュミエールの放つ黒炎に自分の波動を絡ませ、焼いたと同時に内部に打撃を与えるようする。
"追走曲<Canon>"
頭の中で、輪唱を思い浮かべ"音"を放つ。それを具現化したかのように、音で出来た弾丸はスキュラの躰に穴を空けた。
氷結した魔物も全てそれで砕き落とす。割れた硝子の様に、それらはバラバラに地面に散らばった。
「誰か、回復呪文覚えてないワケ?」
息を切らせつつも、魔物の猛勢に必死に対応するメリッサが、全員に向けて訊いた。戦闘によって生み出される音に掻き消されつつも、三人は答える。
「僕は覚えてない!」
答えたと同時にフリッグはスキュラに右腕を噛まれた。傷口が激しく赤い液体を噴き出す。咄嗟に着ている衣服を少し破り、きつく傷口に巻いて出血を止めた。———暫く右手は使えなさそうだ。
「習得していない」
焔と氷を同時に操りながら応戦するリュミエールもフリッグに続き答えた。
リュミエールの真上から、蛙が麻痺毒を存分に含んだ舌を伸ばした。反応に間に合わず、しかもそれに吃驚(びっくり)したせいで一瞬彼女は無防備になってしまった。が、そこにレイスが剣を振るい、舌を斬り、魔物を薙いだ。
「俺も、だ」どさくさに紛れてレイスも返答。「お前は如何だ、メリッサ!」
「アタシは呪文じゃなくてノルネンがそういう力持ってるだけー!」
メリッサの声が、洞窟内によく通った。
運命聖杖ノルネンは三つの形態を持つ、杖の神器である。
状態を過去に戻す<ウルズ>———人々の動きを少し前に戻したり、傷付いた体を傷付く前に戻すことが可能だが、死者蘇生や過去に直接戻ることは不可能である。つまり対象のみを現在で"過去の状態に戻す"という能力を持っているのだ。ただし、戻した状態を暫くそのまま継続させることも可能だ。
特に魔法など特殊な攻撃に関係しないのが<ベルザンディ>である。杖自体を巨大化させ、打撃を中心とした攻撃を得意とするのだ。因みに重量は全く変わらない。
そして広範囲に及ぶ魔法攻撃を得意とするのが<スクルド>。杖を中心に瞬間的に魔法陣を作り上げ、広範囲への魔法攻撃を得意とする。
だが、<ウルズ>の使用は使用者に精神的・肉体的にも大きな打撃を与える為、それ程多用出来ない。なのでメリッサは回復呪文を覚えているかどうか訊いたのだが———どうやら誰も習得していないらしい。
メリッサの質問と、それに対する応答でフリッグはどうしようか悩んだ。
全体的に体力が消耗しているし、怪我も多い。いつ尽きてしまうか分からない状態である。回復役に回る人間が入れば良いのだが、いないのだから仕方ない。
取り敢えず、一旦逃げた方が良いのかもしれない。だが、どうすれば良いか思いつかなかった。
ふと、少年の脳裏にメリッサと初めて会った時の光景が再生された。
あの時、<ウルズ>で動きを止めていた。———ならば!
「<ウルズ>で一回敵を止めて、とんずらした方が利口かもしれない!
メル、やれる!!!?」
蛙や怪物の攻撃を音で弾き返しながら、叫ぶように声でメリッサに訊いた。暫く金属の交わる音や血腥(ちなまぐさ)さ、肉の焼ける臭いなどだけで彼女からの応答がなく、少しばかり心配に思ったのだが、もう一度声をかけようとした瞬間にメリッサから応答があった。
「オッケ!やれる!!!」
血の滲んだ服が大きく靡(なび)いた。血液の付着した運命聖杖ノルネンを、岩肌に突き刺す。闇の中から淡い緑黄色の光があふれだし、瞬く間に見ているものの視界を染め上げた!
光が徐々に消えてゆくと、魔物たちはピクリとも動かない状態になっていた。まるで時間が止まったかの世に、ある動作をしながらの状態で制止している。
<ウルズ>の使用の所為で、一瞬目眩がしたメリッサはふらつき、倒れそうになる。倒れかけたところで、ポチが彼女の襟を掴んだため、首は軽く絞まったが地面に激突することは無かった。
「大丈夫、メル!?」駆けつけたフリッグは真っ先に彼女の安否を確認した。声で答えることはなかったが、メリッサは白い歯を見せながらピースサインをする。無事であると言いたいらしい。「良かったあ」
メリッサの反応を見て、フリッグは安堵した。思わず息が漏れる。
フリッグは肩を叩かれたのに気付き、顔をあげた。するとレイスがどこかを指差している。小さな空洞があった。
「リュミエールが確認してきたところ、入口は小さいが中は広いらしい。
暫く其処で様子を見るべきだと思うんだが」
「異論はないよ」
フリッグはコクリと頷いた。
アンバー種の少女の手を受け止めながら立ち上がらせるのを手伝う。フリッグの助けを借りながらメリッサは立ち上がった。
そして、戻ってきたリュミエールとともに、三人はひと先ず空洞の中に身をひそめるのであった。
Next>>77
- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.76 )
- 日時: 2010/12/21 19:34
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
うは、気付いたら二日くらい完全放置でしたねっ((汗
そしてクリスマス近いし!(;´Д`)玖炉さん、リク遅くて本当すみませんッッ クリスマスまでには書きますので!
ってコトで、更新したいと思います
- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.77 )
- 日時: 2011/03/10 16:48
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
* * *
「君たちに頼み事があるんだ———」
フレイがパチンと指を鳴らしたと同時に扉が開いた。大きな扉の向こうには、薄汚れた黄緑のベストを着て分厚い書物を抱えた少年が立っていた。
栗毛に、あどけない紫紺の瞳が付いた幼い顔。身長や顔付きから見てもまだ年齢が二桁になったばかりぐらいである。
「———お前は」
ウェスウィウスは少年を指差した。少年も、彼の顔を見て何かを思い出したかの様な顔をして、とたとたと不安定な足取りで混血の青年に駆け寄った。
「ウェスだ!やっぱり、ウェスだぁ!!」
「なんだよ、セティか!!久し振りだなァ!」
少年の小さな躰を抱き締め、二人の男は互いに再会を喜ぶ。少年、フォルセティ。通称セティ、禁書図書館に務める見習い司書だ。
開けっ放しの戸から、蒼髪の女性が現れ、ウェスウィウスの頭を殴った。イルーシヴだ。
「鬱陶しいのよ」
「五月蠅ぇよ」
殴った手を振り払うような素振りをして、ウェスウィウスはイルーシヴを睨みつけたが、睨みかえした彼女の眼光に叶わず直ぐさま視線をそらした。その様子を見て、女性は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「帝国軍の双璧が——— 一体如何いうことだ、藤井たかし!」
「誰じゃ、藤井たかしっては!!」
真顔でフレイを"藤井たかし"と呼んだビスマルクにすぐさま変態……じゃなくてフレイはツッコミを入れた。一応突っ込み専用のハリセンを使用して、だ。その様子をリーゼロッテは静かに見守っている。温かな目で。
「話に進みたいんだが、良いかなぁ」
眼の前で鼻フックを掛け合う緋と蒼の男女を眺めながらひとり言を言っていた彼は、恐らく初めてまともな人間に見えたであろう。
* * *
結局、イルーシヴとフォルセティが部屋に入ってから三十分という時間が経ってからフレイの話が始まったのである。その間、ビスマルクとリーゼロッテは全く知らん振りをしていたのだ。この場でまともだったのは、皮肉にもフレイだったのかもしれない。
「取り敢えず」眼鏡を一旦取り、眼鏡ふきで汚れをふき取る。「ウェス君はスノウィンに行くのだろう?パスポートの申請、とかは?」
「一応済ましておいた」ウェスウィウスは紅茶を啜りながら答える。隣では同じようにリーゼロッテが茶を飲んでいた。「で、この生物学上は雌、事実雄の凶暴人間とフォルセティは何の関係があるんだよ」
フレイが喋ろうとした矢先、リーゼロッテは突然立ち上がり、持っていたティーカップをビスマルクに渡した。
「恐らく、変態男……じゃなくて、フレイ=ヴァン=ヴァナヘイム。君はネージュに関わる事を頼みたいのだろう」
「まあ、そうだね。愛しのマイスィートハニー」投げキッスをしたフレイの頭上に女性の怒りの鉄槌が下った。「当たりです、女王様」
頭を押さえながらも妙に嬉しそうな表情で地面に這いつくばるアゲートの男は言った。ロングスカート内の絶対領域に視界をやろうとしたみたいだが、既に彼女には気付かれており中を見る前に、頭は容赦なく細い足に踏ん付けられた。それから暫く喋りもしなかった。
「ウェスの義弟は、未だ戻られてないようだが、如何なんだ?戻るまで待つのか?何なら、ウェスは先に立って、後から戻ってきた義弟に己れから伝えておくが———」
ウェスウィウスの表情を気にしながら、人狼は訊ねた。青年は首を横に振る。
「いや、いい。アイツと一緒に行った方が良いと思うからさ」
彼はビスマルクに笑いかけた。『心配してくれて、ありがとうな』と言っているように。
そんな表情をされてしまってはこれ以上その件に関係するものはお節介になってしまうので、仕方なく止めた。
大人たちのやり取りの中、一人"子供"のフォルセティは文字通り"置いてけぼり"だった。話題に口をはさむこともできない空気。大人だけ、同年代の居ないという気まずさ。少しでもその感情を抑えたいという思いが無意識に作用したようで、隣に座っているイルーシヴの軍服をいつの間にか掴んでいた。イルーシヴは咄嗟にその心情を察知した模様で、そっと彼の栗毛を撫でて気を落ち着かせようとする。
「早く話してくれないかしら、変態。
思惑も、現状も全部頼むわよ。どうせ只事じゃないんでしょうに」
「仕方ない、美しい女性の頼みごとなのだから———喋り始めようじゃないか!」
ウィンクと投げキッスを決め、舞い踊っている変態男の姿を見ながら、子供は一人思う。
———お前がずるずる状況引きずってんだよ。
* * *
呆れたもので、魔物の数は一向に減らない。臭いやらなんやらで見付けられては困る。偶然レイスが持っている魔物避けの簡易魔法陣を持っていたのでそれを張った。魔物からは暫く攻撃を受けずに済みそうだ。
ある不安でいっぱいのリュミエールが側に居るにも関わらず、フリッグはつき口走ってしまった。
「これだけの魔物が居るんじゃ、もう皆オシャカになってるだろ。
これ以上の詮索なんて無駄。戻った方が———」
「でも、だって!!」
正直諦めかけてはいた。ただ、自分が現実を肯定することが恐くてたまらない———七歳の小さな躰に、そんな思いが募る。
認めたら、自分が壊れてしまうのではないか。
認めたら、自分を支えていられない。
泣きじゃくっては、きっとまたフリッグに馬鹿にされると思い、堪えた。唇を噛みしめる様子を見たフリッグは仕方なく彼女の頭をそっとなでる。慰めてやるべきだと思ったのだ。
「諦めたら、そこで終わりだもんな」
そんなスポ根混じりの、ありがちな言葉がつい零れた。それを聞いてリュミエールは少し笑う。
そんな矢先にフリッグの耳は、何かを捉えていた。自分たちの足元から風の流れてくる音が聞こえるのだ。
「風が、聞こえる」
「———何?」
誰にも向けていないフリッグの呟きを聞いた。レイスも耳を澄ましてみるが、聞こえるはずもなかったのですぐに辞めた。
何か臭いを嗅ぎ取ったポチがしゃがんでいるメリッサの足元にもぐりこみ始める。咄嗟にメリッサはポチの尻尾を掴み、がなり立てた。
「おまっ……!アタシゃ、一応短パンだぞ、短パン!!!浪漫求めちゃだめだって!!!」
そう言ってすくっと立ち上がり、一歩後退した瞬間だった。
突如、アンバー種の盗人の足元に丁度躰がすっぽり入るくらいの穴が開き———突然過ぎて叫び声を上げる暇もなかったメリッサの躰が消えた!ドシャリと重く柔らかいものがごつごつした地面に落ちた時の様な音が空洞に響き、それからは静寂を取り戻す。
「メルッ!!!?」
「メリッサ!」
「メルおねえちゃん!!」
ほぼ同時に年齢層、種族、性別の異なる三人が叫び、少女の落ちた穴へと駆けた。先ず最初にフリッグが覗き込むと、下ではメリッサが此方を見ながら何か指差していた。予想よりは然程(さほど)下に落下したという訳では無かった。なので彼女はピンピンしている。
「ちょっと僕、先に行ってみる」
先陣を切ったのは勿論フリッグだった。
彼はひらりと下へ降り、綺麗に着地する。高さ約二メートル。運動エネルギーが速度が上がるとエネルギーはその二乗になることに対し、位置エネルギーは高さが上がるとエネルギーはその二倍になるというので、此方にかかる衝撃は運動エネルギーが与える打撃よりもよっぽど良い方だと思い、軽視していたのだがやはり足にかかる衝撃はでかかった。暫く足がジーンとして、痛い。
彼に続き、リュミエールを抱っこしながらレイスが降りる。身長一八〇センチの青年には、天井と二十センチ程度しか余裕がないので窮屈に感じた。が、メリッサの指差す方向には光が差し込んであり、先に開けた場があることを指し示していた。
「なんか開けてる場所があるみたいだよ」
無邪気な笑みを、三人に向けたメリッサは歯をニッとさせた。
フリッグの耳が、その光のさしこむ場所からする風の音を感じ取った。ポチと顔を向き合わせる。ポチも何か臭いを感じ取ったようで、お互いに頷き合った。
「風の流れが聞こえる。だから、多分外か何かに繋がってるんだと思うよ」
少年は言いながら一歩を踏み出した。
「アイツの耳はマジで地獄耳だからね。保障できる」
フリッグの後に続いたメリッサは、レイスに抱えられているリュミエールに向かって笑いかけた。童女は青年から降り、自分の足で二人の後に着く。最後尾に、レイスが着いた。
光の中に、人影は全て溶けて行った。
Next>>79
- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.78 )
- 日時: 2010/12/23 10:46
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
はうあっ!気付けば参照600突破してました!
週末ぐらいにしか更新しなくて本当申し訳ないです<(_ _)>
あとオリジナルキャラの登場とか、リクエストのクリスマス話とか、"男"(←通称吉岡君)とか、ポチの正体、変態の思惑……etc
と、本当すみません!話のテンポと更新頻度のバラつきと謎・複線の多さ———いい加減にしなくちゃだZE☆(((殴
これからもVeronicaをよろしくお願いします!
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