ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: Veronica*Oz.10更新中 ( No.134 )
- 日時: 2011/01/29 21:52
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 祖に会えば祖を殺せ。期末に会ったら逃げよwこれが朔の唱える無一物(ry
轟く、鈍い轟音にメリッサは恐らく建物内にいる人物で一番早くに気付いたのだろう。物音のでかさを不思議に思った彼女は窓から身を乗り出して上を見た。レイスと思わしき人影が手ぶらで何かと応戦している。
「なーにしてんだか、あいつはっ!」
寝間着を持っていなかったメリッサはそのまま服を着ていたので、ベットの下に入れていたブーツを取り出して履いた。
ベットの近くにある小さなドレッサーの上から黒いリボンを手に取り、走りながら頭に結ぶ。邪魔な前髪を後ろにやった。
そして彼女はバタバタ走り、隣のレイスの部屋に押し入り、彼の愛剣クレイモヤを取った。屋上まで態々階段で行くのは煩わしい!そう思ったメリッサは部屋の窓を抉じ開けた。
そして壁と垂直に走り、屋上に向かったのだ———!
* * *
「———っぐぅ!!」
突風にフリッグの小柄な躰が吹き飛ばされた。コンクリートに躰を打ち付け、小さく唸る。
『弱いなフリッグよ』
ポチは低く笑った。見下す様子は妙に楽しげに見える。———不愉快だ。フリッグは口内に滲み出した血を、地面に吐き捨てた。
レイスは応戦したくても出来ない。竜に手ぶらで挑むのは自殺行為だ。仕方無くフリッグを助けに行くくらいしか出来ない———その時、彼の背後から声がした。少年の様な言葉遣いの、少女の声。
「レイスッッ!!」メリッサだった!彼女は壁を垂直に上り、上に着く前にレイスへとクレイモヤを投げた。「受け取れェッッ!!!」
「すまないッ」
パシリと剣を受け取り、柄を握ったレイスは一直線にポチへと向かった。下からメリッサがノルネンを振り上げて現れる。
だがポチは容赦無く二人に火焔を吐き出した。灼熱の焔はレイスの青みがかった黒髪の先をチリチリと燃やす。風に吹かれ、直ぐに消えたが。
「っ、たく!アレかっ?アニメオリジナルでは火吹くけど、原作は吹かないみたいな!」
「前から吹いてるしッッッ」
スタンと着地したメリッサがふざけていった言葉にフリッグは真面目に答えていた。———スライディングして擦りむけた膝が痛い。イヤホンを投げ捨て、彼は応戦体勢に入った。
ズシン!とポチの右足がコンクリートにめり込み、破壊する。破片が飛び散る!敏捷かつしなやかにレイスはそれを避けていく。
でんぐり返しをするように、ドッジロールをしてフリッグは隙間に入り込む。両手を激しく動かした。指揮をして音を操る。
「いつから反抗期になったんだよ、ポチ!!!」
"鍵盤曲<Canzona>"!!!
鍵盤曲———カンツォーネと唱えたと同時に、回りの大気が大きく揺らぎ始めた。振動は深緑の鱗に覆われた巨体の肉を削るようにして浸食していく。が、ポチはそれをやすやすと振り払った。
『名も忘れたかッッッッ!!!!』
ポチの口から真っ直ぐ一本の青白い光が放たれた!それはまるでレーザー光線の様な焔。フリッグを焼き殺すように、彼の周囲を燃やす。コンクリートは黒く焦げ、一部は溶けていた。
「お前はポチだろ!!?」
悲痛な叫び声をあげるフリッグの背後になにかが現れる。鋭い刃物の様なものが彼の血肉を突き破った!ポチがいつの間にか背後に居たのだ。奴の爪には、フリッグの脇腹の肉片がこびりついている———………。
『弱い、弱いなフリッグよ……。貴様はいつからそうなった』
くっく、と卑しい笑い声あげたポチは悶え苦しむ少年の躰を地面に叩きつけ、抑え込む。それだけでは終わらず、彼の躰に爪を突き立てた。
「———っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
痛みに苦しむ声が深夜に響き渡る。ズプリと血肉がこびりついた爪をフリッグから抜いたポチは笑う。
『苦しいか』
余裕を見せたポチの背後にノルネンを振りかぶるメリッサが跳躍して向かった。彼女は<ベルザンディ>で大きくなった錫杖を竜の脳天に叩き込む!が、鈍い音を出しただけで奴は何も反応していない。
ぎろり、と赤血色の、瞳孔の開いた目がメリッサを見た。目が合った瞬間、メリッサの細い躰が弾き飛ばされる。そのまま彼女は町並みへと落とされた。
「面倒ですね!"風网(ウィンド=ワン)"」
旋風系第一階位の呪文が響いた。飛ぶメリッサの躰を、風で出来た網が受け止める。真下で本を開くフォルセティが使ったのだ。
「さ、さんきゅっ……」
声を捻りだし、ウィンクをするメリッサに呆れながらフォルセティは訊ねる。
「お礼は良いですよ。———それより、あれは?」
「フリッグのペット」
「嘘だぁ!!」
メリッサの答えにフォルセティは叫んだ。
空中に張られた網から飛び降りたメリッサは、フォルセティとリュミエールの真ん前に着地する。
「マジだよ」
髪を整え、彼女は口元に滲んだ血を拭き取った。
直後に黒い塊が地面に落ちてきた。———レイスだ。クレイモヤを握る彼の手には血が滲んでいた。
「やばい」
「———やばい?」
不安げな顔をしたリュミエールが聞き返した。
「ああ」レイスは頷く。「ポチはフリッグを殺そうとしているみたいだ」
「藤崎か。またウチか………」
バレットが悲痛な声を出している。破壊された民宿ベテルギウスを見て、目に涙を浮かべている。まあ、当然のことであるが。
暴れまわる竜に人間は為す術が無かった。今更上に登っても、ポチは軽々と人間を振り払ってしまう。フリッグが上に居るのが心配でならない———。
「藤崎さん………」
コレットは祈るように両手を組んで、それを額に押し付けた。神は信じていないが、こういうときにだけ信じてみたいと思っていた……。
- Re: Veronica*Oz.10更新中 ( No.135 )
- 日時: 2011/01/30 16:46
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 祖に会えば祖を殺せ。期末に会ったら逃げよwこれが朔の唱える無一物(ry
上げといてみる
- Re: Veronica*Oz.10更新中 ( No.136 )
- 日時: 2011/02/01 21:47
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 祖に会えば祖を殺せ。期末に会ったら逃げよwこれが朔の唱える無一物(ry
* * *
———何の冗談だよ、コレは!!!
鍵爪が引き抜かれた部分には大きく穴がぽっかりと空いている。中から液体が溢れ出ていた。夜空の下、はっきりと色は確認できないが、恐らくあの"赤黒い液体"だろう……。
視界が霞んでいた。血液を大量に失ったからだろうか———恐らくそうだろう。血は止まる様子を見せず、絶え間なく流れ出ている。傷口を抑えようにも、そこまで躰が動いてくれなかった。
『滑稽だな』地面を這っているフリッグを見て、ポチは嘲った。その竜を少年はきつく睨みつける。それを見て、ポチは笑い声を上げた。『———ハハハッッ!その顔は相変わらずだ!!昔と変わらんな、フリッグ』
「うっさい、黙って、くん、ない?」
躰は重力に従うのか、地面の方に力が働いているように重い。フリッグはそれを無理矢理起こした。最早、体中を回っている血液が枯渇するのも時間の問題の様に思える。
立ち上がるフリッグを見て、竜の口元が卑しく吊りあがる。
『ほう、まだ立ち上がれたか。流石だな』
腹立たしい言い方は挑発のつもりだろうか。奴の喋り方は常に上から目線である。
「主人に向かって、上から、目線な……わけ?いつから、お前の……ほうが……う、えになった、ん……だ、よッッ!」
重い躰を無理矢理動かし、彼はバックステップを踏んで竜の背後に回る。そしてポチが反応するよりも早く"音の弾丸"を撃ちこむ。それはポチの腹部に深く減り込んだ。流石の彼女もそれには声を上げた。
直後、すぐにポチの口から火炎が吐きだされた!紅蓮の炎はフリッグを正確に捉えたつもりだったのだが、少年が避ける方が僅かに早かったようで瓦礫と化したコンクリートを焼いただけだった。ポチは羽を広げ、空へ向かう。
そして鋭い牙が並んだ口が開かれ、咆哮した。それはフリッグの足元を焼き尽くす。目には焔は見られなかった。本当に"完全燃焼"を起こすと、火は透明になるのだ。
それをすれすれで避けたフリッグは両手を上げた。右が激しく上下するのに対し、左は顔の前で左右に切るように動かされている。その動作にポチは覚えがあった。
———躰は覚えていたか!
咄嗟にポチは急降下する!下にいるメリッサたちの眼前に降り立った。が、彼らになど相手はせず、そのままチェヴラシカ大草原に向かって低く飛んだ!激しい突風が建物の間に吹き荒んでいる。深緑の巨体は想像できないほどの速さで飛んでいる。———出来る限り低く、尚且つ遠くに逃げなければ"アレ"は避けられないと悟ったのだ!
だが、ポチが飛んでいる真下の地面には彼女を追うかのように恐ろしいほどの速度で魔法陣が描かれてゆく。白くぼうっと光っている魔法陣を見て、"あの日の出来事"が脳裏に再生された。まるでデジャヴの様な感覚に陥る。全くあの日と状況が一緒なのだ。
* * *
フリッグは大きく躰を起こした。右足を前に踏み込ませる!そのまま、コンパスの様に右足を軸にして左足で円を描く!その円は徐々に白い光を宿していく!それはどんどん広がっていく———!
彼はその行動に覚えはなかった。が、躰が勝手に動いて行く、口が勝手に言葉を唱える。流れに身を任せる様に、抵抗せず、何かを描く!唱える!謳う!!
魔法陣と化した円に両手をついた!すると、円は激しい閃光を発し始めたのだ。手を離し、くるりと一回転した。腹部からの血はボタボタと流れたままだが、慣れたのか痛みを感じない———というか感覚が消えていた。
フリッグは両手を真上に突き出した!光の粒子が付着したように、細かく光を放つ手は空を仰ぐかのよう。フリッグの口が言葉を唱えた。
「———叙唱……レスタティーヴォっ……!」
"叙唱<Recitativo>"!
唱えたと同時に円の光が緑白色に変わった。それは逃げ惑う様に飛んでいたポチの進路を封じた。目の前に見えない壁を造り上げたのだ!ごちん、とスピードを緩めれなかったポチは頭をぶつけた。マズイ、と彼女は確信する。
少年は今度は両手を前に突き出す。掌を地面と垂直にし、右手を上に重ねる。蒼白色の小さな光が手に灯った。
「えい……しょ、う………アリア」
"詠唱<Aria>"!
今度は蒼白色に光る、光の筋が、意思を持つかのようにうねり、ポチの躰を拘束した。もがけばもがく程縛りはきつくなってゆく……!
———"二重合唱<Cori Spezzati>"か!?
それは、かつてのフリッグが得意とした技だった。
二つのコーラス群が掛け合いで歌う合唱形態のことを二重合唱という(※divide…分ける、分割するの意)。
それと同じように、独唱(=叙唱)と重唱(=詠唱)を組み合わせたのが、フリッグの得意とする二重合唱だ。この後に続くものが、まだあった。
———来てしまう!
焦ったが、枷が解ける筈もない。ポチがどうなってるか知らないフリッグは、両手を横に広げた。前を見る。翡翠の目に火が灯った!
「交声曲……カンタータ!!」
"交声曲<Cantata>"!!
叫んだと同時に激しく周囲が光った!その光は縛られたポチの体躯を包み込んでゆく———!!
独唱(=叙唱)、重唱(=詠唱)、合唱(=二重合唱)から作り上げられた技・交声曲だ。三つの絶対音感による攻撃は組み合わされ、更に一つの絶大な威力をもった攻撃が加算されて、驚異の力を作り出すのだ。
光がポチの身体中に衝撃を与えた!外部からではない、内部へと直接に響くものだ。竜の口から血が滴り始める。彼女の巨体はよろめき、地面に落ちた。と、同時にフリッグもその場に倒れ込んだ。
『———まさか、四連魔法陣が使えたとは』
ふらふらと飛行しながらポチはフリッグの元へ戻ってきた。力尽き、倒れたフリッグに意識は無い。
フリッグ=サ・ガ=マーリンが得意とした四連魔法陣とは、絶対音感によって作り出した攻撃を魔法陣にし、それを重ねたものだった。三つの重なった攻撃に、さらに効果が乗せられるのだ。四つの重なった攻撃が醸し出すハーモニーは、恐ろしい程の威力を持っている。流石のポチもそれに堪えるのだが、幸いにも威力がまだ中途半端だったので動けたのだ。
フリッグは力尽きていたので、ポチが側に居ることに気付かずにいた。予想通り倒れていたフリッグに安堵する。ポチは彼を口にくわえた。と、同時になにか乾いた音がポチの体躯を貫いた———。
空を見た。帝国軍の飛行機が旋回している。ポチの躰は弾丸に貫かれていた。赤い血が滴る。ポチは翼を広げ、フリッグをくわえたまま飛び立った。それを追うように飛行機は飛んで行く。
チェヴラシカ大草原周辺までポチは飛んだ。着地しようとした瞬間、竜の右目に弾が当たった!
『———ッア゛!!』
痛みに耐えられず、ポチはフリッグを落とした。飛行機から飛び降りてきた人影はすかさずそれをキャッチした。そのまま草むらに転がり込む。
飛行機は旋回しながらポチを射撃していた———。
* * *
「————起きたか?」
徐々に視界がハッキリとしてきた。紅い光と青い光が一直線に並んで見えている。それはだんだんと輪郭線を顕してきた。———ウェスウィウスの顔が、そこにあった。
「……ウェス?」
「喋るな。死ぬぞ」
喉から捻り出された小さな声をウェスは止めた。膝枕をしてくれているウェスウィウスは後ろをちらりと見た。竜の悶え声や銃声が轟いている。
フリッグは腹部を見た。包帯が巻かれ、止血されている。恐らくウェスウィウスがやったものだろう。
「あれは、ポチか?」
ウェスウィウスの呟きにフリッグは頷いた。
「いきなり、襲って……きた」
「そうか」
「……ウェス、は?」
ウェスウィウスはここまで来た経緯を簡潔に述べた。深夜に、「竜が暴れている」という連絡が入って駆り出されたそうだ。
「……そっか」
静かにフリッグは瞼を閉じる。ポチが苦しんでいる———彼女の声は助けを求めていた。
ウェスウィウスはフリッグの躰をそっと持ち上げて近くの大樹の根本に置いた。そして優しく彼の手に銀の筒を持たせた。右手の指を引き金にかけ、安全装置を外す。———ウェスウィウス愛用のS&W M10だ。
「……これ、ウェスの———……」
愛人じゃないか、とまで言葉が続かなかった。途切れた細い声にフリッグの身を案じながらウェスウィウスは立ち上がる。
「俺の愛人……じゃなくて、愛銃だよ。手ぶらじゃ危ないから持っとけ。こめかみサイズだぞ。
かの偉い坊さんも愛用してる奴だぜ」
歯をニッと見せ、笑顔を向けたウェスウィウスに、呆れた目をフリッグは向けた。
「———誰だよ」
「だから、ある有名な偉い坊さんだって言ってんだろ。因みに最年少でお偉い坊さんの地位を手に入れたらしいぜ。その人愛用って、凄くね?」
「知らない」
意地でも突っ込みをいれていた。
フリッグに背中を向けたウェスウィウスは、先程までの優しげな雰囲気を一掃させた言い方で、静かにフリッグに語りかけた。
「———アイツがポチだろうと、関係なく殺る」
その言葉を聞いたフリッグの目が見開かれた。冗談であって欲しい……。
「な、何言ってんだか……理解出来ないよ」
「しなくて良い」
少年の言葉はピシャリと遮られた。
ホルダーからもう一丁、銃を取り出し弾を装填する。空の薬莢が地面に六弾落とされた。弾を込める音が静かに鳴り響く。不安な音だった。聞きたくない音だった。
———止めて。止めてくれ。いくら襲ってきたとしても、アイツはアイツなんだ。ポチにも事情がある。きっと昔の僕が何かしたんだ。"約束"ってやつを破ったんだ。だからウェス、止めてくれ!
弾が装填された銃を構え、前に進んでいくウェスウィウスを止めたくても躰が麻痺して動かなかった。次第に視界が白くなっていく。意識も遠退いていく。血液を大量に失ったからだろうか。動きたくても動けないもどかしさに彼は嘆いた。
だが、嘆いているうちに。
プツリ、と現実と自分を結び付けていた紐は何かに切られてしまっていた。
<Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路- Fin>
- Re: Veronica*Oz.10更新中&オリジナル募集中 ( No.137 )
- 日時: 2011/02/02 16:19
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: おげほっ、げほっげほ…
男の浪漫というのがある。
帝国某所、"リクエスト"ということなのだろうか、男共はよく分からない議論を展開していた。
「俺は、あれだ。上からボンッで、キュッ、ボンのタイプ」
そう語るは、作品中稀有な存在である混血児のウェスウィウス・フェーリア・アリアスクロス。
「私はやっぱり女性なら十六から三十くらいまでかな」
「え、それ身長?うわ、低ッ」
顎に手を当て、にやけるフレイを見下すように言ったフリッグに対し、フレイは反射的にに突っ込みを入れた。
「年齢だよ、年齢!!」
さて、何故こんな話になっているのかというと———………
<Oz.Biography3:Talking-座談会->
ことの始まりは、十分程前。
拠点として置いている、帝国中心部にあるフレイの自室には様々な年齢と種族が居た。
———恐らくジェイド種とされる、フリッグ。
その義兄でカーネリア種とラズリ種のハーフ、ウェスウィウス・フェーリア・アリアスクロス。
アンバー種の自称賞金稼ぎメリッサ=ラヴァードゥーレ。
アメジスト種の禁書図書館見習い司書フォルセティ。
アンバー種の傭兵レイス・レイヴェント、スピネル種のお嬢リーゼロッテ=ルーデンドルフ、彼女の従者・人狼ビスマルク、エンジェルオーラの童女リュミエール・オプスキュリテ、アメジスト種のフォルセティの母(仮)イルーシヴ。
彼らは世界を滅ぼそうと企む男の計画を阻止すべく、アゲート種の評議員フレイ=ヴァン=ヴァナヘイムによって組織された者なのだ。多分。
そんな彼らは取り合えず、フレイの部屋で色々としていた訳である。何故好みの女性について話をしているのかというと、メリッサのある発言が原因……と説明するのが妥当だろう。
「フリッグはねぇ〜、ボンッ、キュッ、ボンがタイプなんだってさぁ〜」
フレイに誘われたあの日、十六歳という少年が女性———フレイヤを見つめていたのを、メリッサが勘違いしたのだ。
そしてなんという無責任なのか。その様な発言をしたメリッサは、さっさと女組を連れて買い物に行ってしまったのだ。
残された男共の中心には、何故か"好みのタイプ"という話題の花が咲かされていた。
「やっぱりフリッグ君のタイプはあれかぁ。フレイヤかぁ〜」
まず喋ったのは、勿論フレイだった訳だ。
それから冒頭の会話に戻るのだ。
* * *
直立したウェスウィウスが、腰の辺りに両手をやり、くびれのラインを手で表現した。
「やっぱ女はアレだよな、腰のライン」
それにすかさずフリッグが言い放つ。
「顔は見ないんだ」
「いや顔もあるけどさ……」ウェスウィウスは頭を掻いた。「体のラインも大事じゃね?電気消したら顔見えないし」
「レイス君、君はどうだい?」
その会話に無理矢理レイスを引き込んだ。ぼんやりとしていたレイスはフレイの声に吃驚し、持っていた紅茶を溢しかける。
「お、俺……!?」
「君以外、何処に"レイス君"がいるんだい」
フレイはハッハッと笑い声を上げた。隣のビスマルクが豪快に笑い飛ばす。その所為でレイスの存在が一瞬で消し去られた。
「己れはあれだ。清純派!」
「居なくねぇか?清純派って」
人狼の言葉にウェスウィウスが静かに言った。確かにフレイが集めた面子の女性の中に"清純派"といえる女性は殆ど居ない———というか皆無である。
その事実に呆れるやら、なんやら。
* * *
フォルセティは一人浮いていた。今まで恋愛経験など皆無である。———人格の変貌したリュミエールの尻に敷かれ気味であるが。
「セティの将来の嫁さんはリュミか?」
突然ウェスウィウスから会話を振られたフォルセティは目を見開いた。
「———ッハァ!?」
「だってホラよ。明らかに"年下同士"っていうフラグ来てるしよ」
ビスマルクがウェスウィウスのテンションに悪乗りした。
顔を真っ赤にした十歳の少年は必死に手を顔の前で振る。
「ちっ、違うよ、違うってばぁ!!そ、んな関係なんかじ……ゃ」
「あっ、でも読んでると妙にレイスとリュミのフラグも!」
そう言うフリッグに、流石のレイスも声に力を入れて反論した。
「俺はロリコンじゃない!!」
それに悪乗りし、男たちは好き勝手言い始める。
「レイス君、七歳は犯罪だよ。せめてあと十年は待たないと」
「俺もそう思う。あと、二重人格の嫁は大変だと思うし。
あ、俺の妹美人だぞ」
レイスの肩をポンポンと叩き、フレイはにやにやと笑う。隣でウェスウィウスが、何処から出したか妹ウェロニカの写真を見せつけている。彼は微妙にシスコンなのだ。
「ちょっ、ウェルは駄目だよ、ダメダメっ!!」
焦ったフリッグが必死にウェスウィウスから写真を取り上げようとする。背丈が高いウェスウィウスは写真を真上に上げ、取らせないようにしていた。嫌な奴である。
「お嬢はまぁ、キレるとヤバイのだがなぁ。
普通に入れば才色兼備の美女(笑)」
目を輝かせるビスマルクに深くフレイは頷く。
「うんうん……。良いよね。だから嫁にくれ」悪ふざけしたフレイの脇腹にどこからか飛んできた銃弾が掠められた。「………悪ふざけしました」
「体型としては、イルーシヴ。男の理想はあれだな」
「異論無し。僕もそう思う。戦うときに、胸が邪魔にならないのか気になる」
ウェスウィウスの意見にフリッグが乗る。直後、二人同時に呟いた。
「「性格を除けば」」
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- Re: Veronica*Oz.10更新中&オリジナル募集中 ( No.138 )
- 日時: 2011/02/02 17:53
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: おげほっ、げほっげほ…
* * *
呆れた表情で居るフォルセティの肩をそっとレイスが叩いた。この場の空気に居心地の悪さをお互いに感じていたのだ。仲間を見つけ、二人は安心し合う———のだが。
「セティはイルーシヴ大好きっ子だよね。何となく」
という発言をフリッグがしたのだ。翡翠の目を悪戯に輝かせ、彼は年下の少年を軽く苛める。
「いや、違うな!」ビスマルクが声を張り上げた。「イルーシヴはフォルセティの母親だ。ウェスウィウスとイルーシヴの隠し子がフォルセティで……」
「俺いくつだよ!!」
すかさず突っ込みをかますウェスウィウス。彼は二十歳なのだから、十歳の子など有り得ない。———イルーシヴの年齢は不明であるが。
ふとフリッグの脳裏にフレイヤの姿が思い出される。彼女も、男の理想のタイプだと思われる。あの豊満な胸、抉られた様な腰の括れ、そして何よりあの妖艶なる雰囲気———。少年はそれを出してみる。
「フレイヤさん、とかは?あれも良いんじゃないの」
それに何故かフレイが眼鏡を押し上げながら答えた。
「アイツは男タラシだよ」
「お前は女タラシ。良く似た双子だなぁ、オイ」
皮肉をぎっしりと詰め込んだ発言をウェスウィウスはしてやった。だがフレイはうんともすんとも言わない。
「ラインは、確かにな……。性格が非常に奔放らしいが」
一筋の汗を頬に流し、呆れた顔のレイスはフレイを見た。
「まぁ確かに、ね。見た目はグッド。躰も良い———だけど奔放過ぎだからね。今まで何人の男を捨てたんだか」
レイスの言葉に答えたフレイに、フォルセティと喋っていた本人を除いた男たちは一歩フレイから引き下がって居た。彼らは全員そこで声を合わせる。
「「おま、ちょッ………!」」
「何がだい?」
フレイは平然とし、眼鏡を押し上げていた。
「発言自重!!ここ全年齢向けだから!」
顔を真っ赤にしたフリッグが叫んだ。
「え、あの?どゆことですか……?」
まだ子供のフォルセティは何も分かっていない。勝手にヒートアップしていく周囲から除外された彼は説明を求めたが無視されてしまう。
「フレイお前もう駄目だわ。消されたらどう責任取ってくれんだよ」
「責任は書き手じゃないのかい?」
訪ねるフレイにウェスウィウスは呆れ顔で答える。言い訳がましいが。
「ホラ、よく有るだろ……。キャラが勝手に動くパターン」
「動く?じゃあ、何。アニメーションでもやるのかい?」
惚けたアゲートの男の脳天一直線にハリセンが振り下ろされた。乾いた音が気持ちの良いくらい周囲に響き渡った。ハリセンの主はレイスであった。
フレイは一同を改めて見た。いつの間にかフォルセティがビスマルクに連れられて部屋から出ていこうとしていたのだ。耳を塞がれ、「さて、アイスでも買いに」など如何にも物で釣ったかのようにビスマルクが手を引いて連れていく。
「ちょ、君たち何してるんだい!?」
焦るフレイに白々しい顔のフリッグがふざけて答えた。棒読み、何の抑揚も無い言い方で。
「息してるんだい(笑)」
「い、いやそんな回答は求めていないよ……?てか、何。"かっこわらい"って」
答えたと同時に足早に去って行ったフリッグを含む数名の男たちをフレイは止めようとしたが、誰かさんの華麗な銃の腕前の前に撃沈したのであった……。
* * *
「あー、で、何。結局、好みのタイプの話は如何なった訳よ」
ベテルギウスに逃げ帰って来た男たちに、買いだしを終えて帰ってきたメリッサが仁王立ちをしながら訊いた。
「結論からいうと、皆"ボン・キュ・ボン"の三拍子が好きって話です」
妙にかしこまった良い様のフリッグに、後ろに立っている男性陣は大きく頷いた。
その答えを聞きながら、まるでそれを確認するかの様に何か紙を見ながら、ボールペンで印を付けていっている。
少しして、ふっと彼女は顔をあげ、フリッグらを見て訊ねた。
「あり?アタシを仄めかすようなモンが一つもないのは、気のせい?」
その言葉を聞いて、一同硬直。
「気のせい……では、ないと思います先生!!!」
そう叫んで、彼らは一斉に駆けだした!
明日の夕日を目指して(笑)
「ちょ、ちょい待てや作者あああっ!!!オチついてないぞ!おい、聞いてんのか作者ッッッ」
メリッサの悲痛な叫びなど空しく———
終劇!(強制)
<Oz.Biography3:Talking-座談会- Fin>
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