ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: Veronica ( No.64 )
- 日時: 2010/12/17 21:41
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 黄身のそばに居るよ、それが優しさなら
* * *
「———やあ☆」
薔薇柄のティーカップを片手に高級そうなソファーに掛けているフレイが扉を開けた瞬間に眼に入ってきた。ウェスウィウスは嫌悪感丸出しの表情だ。
「何だよお前。急に俺呼んで」
「いやいやぁっ!ツレないなぁっ、もう☆
出番久しぶり過ぎて嬉しいんじゃないの?」
肘でウェスウィウスを小突きながら、妙に高い声でからかう。ウェスウィウスの肩は、小刻みに震えている。現在進行形で、だ。
「確かに、久しぶりだけどよぉ……」
混血の青年の顔に青筋が立ち始めてきた。だが、構わずフレイという名の変態は続行する。
「確か、最後の出番が〜えっとぉ?Oz.2のPart4だったかな?それ以降名前がちらつく———といっても一回ぐらいしか出て無かったよねぇ。
いやぁ、いや。メインキャラ(仮)で作者にもお気に入り発言されてるのに一体如何したんだい?」
「何で知ってんだよ!!!」
フレイの発言の中に引っかかるキーワードがあったようで、とうとう我慢できなくなったウェスウィウスは変態の首根っこを掴んだ。ちなみに、身長は二人とも同じくらいである。(厳密にいえばフレイの方が二センチほど高い)
フレイの手から、ティーカップが落ちて割れた。中に入ってた熱い紅茶は全てその男の足にかかった。ばちがあたったようだ。
「あっっつ!」流石に、これとばかりは我慢ならなかったようでフレイの表情が苦痛に歪む。「嗚呼っ———僕のホット☆ティーが!そしてカップが!あーあ…。まあ、仕方ないかァ……。
ウェス君久しぶりの出番だからね」
「だから……」
「作者情報」
ぶりっ子し、フレイはウィンクをして見せた。が、その顔に銀の筒が押し当てられる。ウェスウィウスの愛人———じゃなくて愛銃S&W M10(スミス&ウェッソン ミリタリー&ポリス)である。殺意にまみれた、阿修羅の様な形相の男は、右の深紅を少し見せながら静かに安全装置を外した。
「世界の為だ、許せ」
そう言って、引き金を引こうと指に力を込めた瞬間だった。
眼前のフレイ=ヴァン=ヴァナヘイム(変態)が、勢いよく飛んだ。何かに飛ばされたかのように、それは飛んでいき、壁に激突して落ちた。眼鏡に皹(ひび)が入っている。割れればよかったのに、とウェスウィウスは舌打ちした。
ウェスウィウスの前に、紅い流れが見えた。
紅の髪と瞳、白いブラウスと対極的な黒のロングスカートを纏った華奢な女性———リーゼロッテ=ルーデンドルフだ。右足が上がっていたことから、恐らくフレイを蹴り飛ばした本人だろう。
「久しぶりだな、ウェス」
凛とした声が室内に響いた。鋭い紅の瞳が優しく微笑む。
「先日会ったばかりですけど、ども」
ウェスウィウスはリーゼロッテに頭を下げ、笑った。それを機に二人はにこにことし始める。
暫く他愛のない会話をしようとしていたところに、起き上がった、復活したフレイが猛ダッシュで二人の中に強引に乱入。
「いっやぁー!私を置いて二人で仲良くするなんて、は・ん・そ・く、だよ」
この後、二人が何をしたかは想像がつくであろう。
素早く二人同時にホルダーから銃を抜き、標準をフレイに定め———
「お嬢!如何か致しましたか!!?」
乾いた銃声を聞きつけたビスマルクが血相を変えて部屋の扉を乱暴に開けた。リーゼロッテの身に何かあったのだと勝手に思い込んでいたのだが、室内に居るウェスウィウスとリーゼロッテの二人は悠長に自分の銃に付着した埃(ほこり)を拭いていた。
「………」
まさに、ビスマルクは"眼が点"だった。ポカンと馬鹿みたいに口をあんぐりと開けて、眼の前の光景をただただ眼の中に入れている。
「うむ……、やはり君の銃の腕前は素晴らしいな」
「リーゼロッテ、貴女も相変わらず凄い。尊敬します」
「はっはっは。誉めても何も出ないぞ」
「あっはっは、そうっすよねぇ」
二人とも軽快な笑い声を出していたのだが、表情が全く笑っていなかった。
足元には、ダイイングメッセージと思わしき、"ウェスウィ…"と"リーゼロ…テ"という文字を書いているフレイが倒れこんでいた。
* * *
「撃ちこむことは、普通無いと思うんだけど」
体中に包帯を巻かれ、ミイラ状態になっているフレイは不機嫌そうに茶をすすっていた。意外にも生きていたようだ。いや、死んでしまうとこの小説の存亡にかかわるので(割愛)
しかし、白々しく二人のガンナーは紅茶を飲んでいた。流石にその様子に変態はがくりと肩を落とした。
「しっかし、何でリーゼロッテが此処に?」
ウェスウィウスが隣に座るリーゼロッテにさり気無く訊ねた。彼女はティーカップをそっと置き、優しく微笑みかけるような表情で彼の問いかけに答える。
「うむ。合同練習で君と腕試しをしてからこの変態に呼ばれてな。そもそも、出会いというものが私がまだ共和国に居る時———つまり合同練習の前日に来ていてそのままストーカーの様についてきたのだ。そして此処に誘拐———といった感じに連れ込まれてな。
まあ、ウェス。君ともゆっくり話がしたかったものだからちょうど良い機会だったよ」
リーゼロッテのすぐ前にいるフレイの顔が引きつっていた。リーゼロッテは、ティーカップに口を付け、中身を飲み干す。空になったカップをそっと彼女の後ろに居たビスマルクが受け取り、紅茶を注いだ。さり気無く、同じく空になったティーカップを持っているウェスウィウスのカップを手に取り、注いで渡す。フレイは貰おうという素振りをしていたが完全にスルーされていた。
「ウェス君。スノウィンに戻れって言われて、休暇取ったんだって?」
フレイの唐突な発言にウェスウィウスはハッとする。そのまま、取り敢えずこくりと頷き、肯定した。フレイの顔に厭らしい笑みが浮かび始める。
「そうなのか、ウェスウィウス?」
女性の後ろに居た、人狼が低い声で訊いた。
「まあ」
ニカリ、とウェスウィウスは笑って返す。唸るような声を、ビスマルクは出していた。
「丁度いい。
君たちに、頼みたいことがあるんだ」
そう言ったフレイは、パチンという音を指で鳴らして見せた。鼻で笑う声と共に、閉まっていた扉がゆっくりと開き始めた———。
Next>>
- Re: Veronica ( No.65 )
- 日時: 2010/12/16 01:20
- 名前: 雅 ◆2WetyLTYZk (ID: 7hV223vQ)
久方ぶりです^^
す…素晴らしすぎるぅああああああ!((※荒しじゃないです
絵凄いですね、ありがといございますw
いやぁ、想像以上に男前じゃないか!
それに話もだいぶ進んでますね、サクサク読ませていただきましたb
あ…そうなんですよね、可決されちゃったんですよね!
あーチクショウ、解せん!愛読しているパンドラハーツが…何て事してくれるんだorz
絶対通らんだろーとか軽視していた私が悪いのか(涙目)
鑑定ですか!朔さんの才能があれば大丈夫ですよ、きっとb
悪い点なんて逆に出てきそうにないですよ(笑)
と、言う事で更新頑張ってください!
私は明日(あ、今日だったw)のテスト頑張ってきます^^;
- Re: Veronica ( No.66 )
- 日時: 2010/12/17 20:35
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
>>65
久しぶりです^^
一応漫研と美術部兼部という完全美術系人間(笑)なんですけど、絵全然だめなんですよ〜orz
絶対他の方が描いた方が男前です汗
なんかもう、すみませんッッ
リクエストの方も、早いうちに書きますね!白戸家との相談が終わったのであとは書くだけ…の筈です(オイ
可決されちゃったんですよね、本当 (つд`)
パンドラもそうなっちゃいますよねー…。好きなマンガ全部アウトだよぉ(涙)
ただ、うちの県(長野県)にはそもそも『青少年保護育成条例』たるものがないらしく(うちの県だけ無いとかw)、いざとなったら業界全部長野にWelcome!という長野県独立計画をしてました(笑)Welcome!!((オイ
鑑定は———勇気を振り絞って依頼してきました(笑)
いやいや、ありまくりですよ(;´Д`)
テストですか!それは本当お疲れ様です!!頑張ってくださいね^^でも、返信してるこの時間には終わってるのかorz
- Re: Veronica ( No.67 )
- 日時: 2010/12/18 11:29
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: http://west7496.blog25.fc2.com/blog-entry-35.html
参照500突破!
皆さま有難うございます!これからもがんばります!!
URLにて突破記念落書き乗せてます(おま
- Re: Veronica -参照500突破!Thanks!- ( No.68 )
- 日時: 2010/12/18 17:48
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 20XX年、長野県は日本から独立し、信濃国を建国する!
* * *
吹き付けられた風は、哀しく啼(な)いている様だった。その冷たさが、未だ青年の頬に残っている。顔に触れる黒髪の冷たさは、頬に残る感触と同じ様にレイスは思えた。眼前の小さな少女の、涙を浮かべた瞳が胸の奥に突き刺さる。
「お……友達が、居な、くなったの」
嗚咽(おえつ)混じりの声で、漸く言葉を絞り出したようだった。それを聢(しか)と耳に受け取った青年の表情は衝撃に塗(まみ)れていた。
「リュミエール……それは、どういうことだ?」
驚きを隠せないまま、レイスはそっと彼女の頬に手を触れさせて訊いた。その優しさに触れた所為なのか、リュミエールの顔が徐々に泣き顔に変わっていき、とうとう泣きだしてしまった。
「一週間、ま、前に———っね、しん、親友の、アイザが……、い、一緒に遊んで……たら、ね……い、なく、なっちゃって……。ひっく……、つ、っぎはね、昨日、また、と、友達……のっ」
とうとう本格的に泣き出してしまったようで、ぼろぼろと涙を溢し、途切れ途切れの訴えになっていた。殺していた感情に綻(ほころ)びが生じ、一気に溢れ出たそれは堰(せ)き止めることが出来ず———まるで出しっぱなしの水道の水をひたすら受け止め、溢れさせている水一杯になったコップのように———レイスへと一心に向けられていた。
———ああ。この子供は誰にも言えなかったのだな。
アンバー種の青年は、静かに悟った。この感覚は、良く知っている。吐き出せない苦痛を、孤独感を。
「一緒に、探してあげようか」
青年の優しさの籠められた一言を聞き、リュミエールはくしゃくしゃになった顔で彼をじっと見上げた。———今は居ない、両親と同じ何かを心の底で感じる。
「ん……」
"うん"という筈が"う"の音が出て来ず、"ん"という返事になってしまった。涙を拭きとる。
レイスの温かい手の温もりが右手に感じられた。そっと手をひかれ、歩き出す。今フリッグの居る、"自分の家"への帰路を二人で歩み始めていた。
* * *
「この家は、あのリュミエールっていうちっこいのの家?」
ベッドから降り、着替え終わったフリッグはシーツを整えながら、帰ってきたポチと同室で戯れているメリッサに訊ねた。レイスの元から一足先に帰ってきたポチは尻尾を弄られている。メリッサはフリッグの方に顔を向けた。
「あの子の家っていうか、村長の家」
「じゃあ、村長の———子か孫?」
「いいや」
フリッグの言葉に首を振りながら否定した。彼女の頭にはポチが乗って居る。
「ちっさい頃に、———てか三年前だったかな?四歳だったリュミの両親が、魔物だったかに襲われて死んじゃったんだってさ。受け入れ口もないし、小さな村だから孤児院みたいのも無かったもんで、村長が引き取ったんだって」
そう言ったメリッサの顔は、何故か寂しげであった。
「ただいま!」
元気に満ちた少女の声が辺りに響いた。リュミエールが帰宅したらしい。だが、先に部屋に入ってきたのレイスだった。部屋に入ってきた彼は、メリッサだけを呼び出した。
「何さね」
部屋の外に出された彼女の前にレイスと、少し遅れてやってきたリュミエールが並ぶ。
「村の子供たちが行方不明になっている事件が相次いで起きているらしい。リュミエールの知り合いも数人被害に遭っている。
知ってるか?」
隣の童女の頭を右手で撫でながら、レイスは言った。メリッサは頷き返す。
「知ってる。村長から、その話が出てた。"アンバー種は金さえあれば何てもやってくれる"って思ってるみたいでさ、大金積み上げて土下座して頼んだんだけど、ホラ———よそ者がどうこうするっていう問題じゃ無いじゃん?
ん———でも、まァ……」
メリッサの行動から、レイスはある事が読み取れた。恐らくこの女は金に釣られて受けてしまったのだろう。彼は呆れた。
「———受けたのか」
「んま、そういうハナシかな!」てへっという笑い声を発しながらメリッサは軽々しい反応を返す。「レイスが出かけてる間、一旦村長に呼ばれてたんだよ。断るに断れなくて」
「———ふぅん、そういうコトか」
背後から聞こえた声にメリッサは仰天した!後ろでフリッグが恨みを込めたような瞳を向けて立ってる。頭にポチを乗せ、リュックサックを背負い———完全にどこかへ行くような支度をした状態だった。
「馬鹿メリッサと村長の話は全部漏れてたけど」
ふんっ、という貶すような笑いをメリッサにしてやった。あちゃーと言って彼女は頭を抱える。
「だから家について訊ねたんか、アンタは」
ニヤリという表情をメリッサに返すフリッグ。
「助けてもらった礼もある。魔物関連なら、ジェームズ・ノットマンとまた会った際、こっちの戦闘能力もあげとかなきゃいけないから実戦経験は必要だと思う。
ちっこい———じゃなくて、リュミエール。君の友達探しに、付き合ってあげるよ」
そう言ったフリッグの躰に、リュミエールが飛びついた。
「有難う、フリッグ!!!!」
感激のあまり、涙を溢しているようだ。フリッグの服が水に濡れる。
メリッサは、レイスの方を見た。
「レイス、アンタは巻き込むわけにいかないからさ。依頼は此処まで」
懐から出した札束を、メリッサはレイスにそっと投げ渡した。それを受け取ったレイスは考え込むような表情で居た。
「メリッサ———?」
ニカリと笑う少女をじっと見つめる。メリッサは答えた。
「護衛の依頼は、此処まで。これ以上、付き合ってもらうわけにはいかないっしょ。だから、もう———お別れってことかな」
彼女の言葉に、レイスは無言だった。リュミエールは支度をしに走って行った模様で姿がいつの間にか消えている。
フリッグがレイスにお辞儀をしながら言った。
「僕のこと、助けてくれたんだってね。有難う」
戸惑った。依頼上の関係でしかない。だが、自分の心は何か違うものを思っていた。
———リュミエール・オプスキュリテとの約束を交わしたじゃないか。
眼前の、フリッグという少年に何かを感じ取った。あの日の"英雄"に瓜二つ———。
———そうだよ、な。
この少年との出会いは、きっと決まっていた運命だろう。もしかすれば、俺の過去を知ることが出来るのかもしれない。あの日の"英雄"に会えるのかもしれない。
レイスは静かに笑った。そして、貰った札束を全て床へと投げつけた。
「俺も、行かせてくれ」
迷いのない、真っ直ぐな瞳(め)だった。
「ハぁ!?何で付き合うのさ!」
その言葉を聞き、驚きを隠せなかったメリッサは彼に言葉を投げつける。続けてフリッグの言う。
「君は、関係ないんだろ?このいい加減な奴が雇っただけで、全く僕らに無関係だし———。これ以上突き合わせるなんて申し訳ないよ」
「いや」レイスは静かに首を横に振った。
「ただ俺の意思で、君たちについていきたいと思ったまでだ」
流石に此処まで言われては拒否する理由もなくなっていた。改めてフリッグは、前に立つアンバー種の青年を見つめて言った。
「よろしく。僕はフリッグ」
差し出した手に、青年の手が握られる。
「俺はレイス・レイヴェント。レイスと呼んでくれ」
『僕は、××××。君の名前は?』
あの日の"英雄"が、自分に手を差し伸べた時の光景が鮮明にレイスの頭の中に流れた。
『———』
齢僅か二歳の子供は首を振った。何があったかも分からない。ただ覚えていたのは、"英雄"の呼んだ名前だった。
『分からない、ですか。
それじゃあ、僕の友人の名前を君に授けましょう』
抱きあげられた温もりはいまだに覚えている。赤ん坊の頃の記憶など残っている人間はほとんどいないと聞くが、彼の中には残っていた。———確か、あの日俺は"俺"になったのだ。
『レイス・レイヴェント。
今日から、君はレイス、です』
丁寧な文字で書かれたネームタグをそっと服に着けてもらった。それは未(ま)だ残っている。
———ああ、本当にそっくりだ。
フリッグの顔を、しぐさを見て青年は思う。十数年にわたって身に感じていた孤独が消え去った気がした。
「フリッグー!レイスー!メルおねえちゃんー!!
じーじが、呼んでるから来てー!!!」
リュミエールの元気な声が遠くで聞こえた。
向き合った三人は同時に頷き、一斉に声のする方向へと向かったのだった。
* * *
鬱蒼としている、人気のないウェラルディアの森。
嘗(かつ)てジェイド種が繁栄を極めた時代、中心であった風の都ウィンディアを取り囲むかのように広がっていたこの森はウィンディアへの侵攻を妨げる防壁とされていた。ウィンディアの中心にはラッフレッドーレと呼ばれる古代遺跡があり、ウィンディア人———古代ウィンディアに住んでいたジェイド種のこと———は五十年に一度、この場所で祈りの儀を行っていたとされる。そんな廃墟であるラッフレッドーレの中に数人、人影が見えた。
「エンジェル・ダストの生成は、誰が向かう?」
老人の様な、男の声が廃墟に響いた。闇の中である為か、どんな姿かたちをしているか全く分からない。
「わたくしにまかせてくださいな。マックールのエンジェルオーラは大半が温和な者ども。洞窟に放った魔物が子供を喰らっていますし、あとは村の殲滅だけですもの」
甲高い女性の声が、続いて響いた。
その後、ずっと不愉快な笑い声だけが響き渡っていた———。
<Oz.4: Obsession-戦意喪失- Fin.>
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