ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
日時: 2012/01/15 17:20
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/

投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350



Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。

クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)

気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!

◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30

◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲コンチェルト- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226 
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!

◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様

◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^

◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…

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Re: Veronica -Oz.5更新中- ( No.79 )
日時: 2011/03/25 18:01
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-

* * *

———思い出したくない光景が、あった。




 アタシたちアンバー種ってのは、どうも周囲から毛嫌いされてて———特にアメジスト種、アースガルドなんて最低だった。

 何時(いつ)だったっけなぁ。ああ、多分十年くらい前だなぁ。

 未だに絶対王政で、しかも鎖国同然の国アースガルドの第一皇子が殺されたって。
 何が何だか分かんないけど、急にウチら———アンバー種がスパイ容疑をかけられてさ、暗殺したっていう証拠もクソも無い容疑を勝手にかけられて、さ。


 その日から、アースガルドに居たアンバー種の生活は一変した。



 根こそぎに刈られたよ。ウチらだけが、アンバー種だけが。





 種族なんて、色のついた水と変わらないのにね。


 人種なんて区別があったって、皆"生きてるモノ"なのにね。




 何が違うんだよ。何が種族だ何が国家だ何が正義だ何が悪だ何が世界だ何が何が何が何が何が何が何が。

 違うんだよ。



 この、クソったれた世界が。

 こ
  の
   、 
    ク
     ソ
      っ
       た
        れ
         た 
          世
           界
            が
             。



 強制収容所に送り込まれたっけなぁ。いや、送り込まれたんじゃないね。

 "ブチ込まれた"んだよね。

 その中で、アタシと家族は逃げた。脱走した。

 追いかけられて、追い詰められて。逃げれなくなった時、アタシの父親は何したと思う?

 魔法で地面に穴開けてさ。その中にアタシだけブチ込んだよ。

 その後、家族が如何なったかは知らない。皆きっと殺られたんじゃないのかな。だってそうでしょ。あの状況からして、絶対そうでしょ。


 落とされた先で見た光景は忘れない。



 古びてんのに、妙に神々しい———古い遺跡が、アタシの眼の前にあった———


 眼の前に見えた、古くもどこか新しく、妙に神々しい遺跡。それを見てメリッサは幼いころの情景を思い出していた。ああ、全く一緒だ。運命聖杖ノルネンと出会ったあの場所と全く同じだ、と。場所は違えど光景は変わらない。実に不思議だった。

「こんな場所、あったんだね」
天井は破壊されており、光が燦々(さんさん)と差し込んでいた。森の中にぽっかりと開いた穴の様だ。久しぶりに吸う空気に感動したリュミエールは空を仰ぐようにしながらひとり言を言っていた。彼女の言葉には、同感できる。レイスとフリッグは知らず知らず頷いていた。

 近づき、開いている入口から中に入ってみる。所々破壊されていたがある程度綺麗に残っていた。古代ヴィエント文字で書かれている場所が多々あったので少なくとも千年前のものだとレイスは確信する。ヴィエント文字はジェイド種が使っていた文字なのだから———。

「ジェイド種が神器を隠してる遺跡かもね。ヴィエント文字書かれてんなら」文字の前でしゃがみ込みながら考えているレイスの後ろから唐突に声がした。咄嗟に振り向くとメリッサが口元に笑みを浮かべて立っている。「ホラ」彼女は一文を指でなぞって見せた。

「読めるのか?」
「いいや」
レイスの問いかけに即答し、少女は首を横に振る。千年も昔にあったものだ。どんなに高名な考古学者でさえ、誰一人として解読に成功した者はいない。そもそもジェイド種自体、他種族との交わりを嫌っていたのだ。
「神器を隠している遺跡……というのは確かかもしれないな」
"ヴィエント文字で書かれているものはジェイド種のもの"と"ジェイド種は作り出した神器を各地に封印した"という伝承からレイスはその考えをしっかりと持った。恐らく間違ってはいないと思われる。


 ノルネンを手に入れた遺跡も同じような場所だったのでメリッサは此処がすぐに神器のある場所だと分かっていた。あの独特な雰囲気。間違いない、此処には神器が封印されている。
 

「我は翡翠の種。この地にグレイプニルを封印す……。……リ…グ=サ…=マ……ン?読めん」
指で文字をなぞりながら読み進むジェイド種(仮)の少年の様子を見て、他の三人はポカンと口を開け直立不動で居た。

 千年前、千年前である。このヴィエント文字が使われていたのは。常識的に考えてみておかしい。

 頭を掻きむしりながらフリッグに歩み寄ったメリッサは彼の必死で読む横顔を見ながら訊ねる。
「読める、ワケ?」
眼をぱちくりさせ、少年は当たり前のように答えた。
「うん」
 
 唖然、である。

「でも名前の書いてあるとこは薄れてるし。封印した年もおかしい。
ホラ」

 立ちつくしているレイスとリュミエールの方を振り向き、二人を手招きする。三人の視線を自分の指に集めさせた。視線が集中したのを確認すると書かれている文字をゆっくりとなぞり、其れに合わせながら少年は言葉を紡いだ。
「鳳凰歴一七九五年。鳳凰歴はジェイド種が定めて、そのまま今も使ってるんだよね?
この年は十八年前。冗談で記してなければ、おかしいことになるじゃん」

 確かに少年の言う通りである。フリッグの言ったことが正しければ恐らく未だジェイド種は生きていることになる。

 取り敢えずさ〜と言ってメリッサはフリッグから離れ、遺跡内の奥へと突き進む。単独行動は危険だと思い、フリッグ、レイス、リュミエールの順で後に続く。
 奥まではひたすら一本道が続いていた。所々壊れていて歩きにくかったものの魔物の出現、それどころか生物など一匹も居らず、何事もなく進めた。
 カツン、カツンとそれぞれの靴の素材によって異なる音がバラバラに鳴る。大理石の静寂な空間にその音と、よくわからない会話だけがこだましていた。

* * *
 
 進み続け、とうとう行き止まりと思われる場所に到着した。

 やけに広い空間。地面には魔法陣と思われるものが刻まれている。その中央にはそこそこ大きな祠らしきものが聳え立っていた。
「ほーこら、吃驚(びっくり)」
ふざけて駄洒落を言ってみたリュミエールだったがことごとく無視されてしまう。ガックリとした彼女をそっとメリッサが宥めた。ごめん、白けるつもりは無かったんだ、と言葉を付け足して。

 足元の魔法陣をレイスはそっと見た。恐らく神器を封印するための魔法陣であろう。規模からして相当の魔力の持ち主が書いたものだ。古代ジェイド種の魔導師のうち、此処までの力を持っていると聞く男はレイスの知る限り一人しかいない。

「大魔導師マーリンかもしれないな、この封印は」
レイスの呟きに即座に反応したのはフリッグだった。
「———マーリン?」
「ああ」レイスは頷き、続ける。「ジェイド種滅亡間近まで生きていた、歴史上最強の魔導師マーリン。フルネームは明らかになっていない。
弱冠十五歳にして魔導師の最高称号"大魔導師"を手に入れ、それから約五年後に没したと伝えられている者だ。
分かっているのはマーリンという名と、大魔導師というだけだ。若くして死んだため、謎が多い」
何時になく饒舌な青年の姿を眺め、フリッグは唖然とする。殆ど間も開けずに喋るこの男の知識量は半端ないものだろう。



「いっ———!!!?」

 突如童女の叫び声と共に、男子二人の眼前を紫電が奔った。
「「如何した!?」」
二人同時に叫び、振り向き声の方へと走り出す。祠の前で激しい光に包まれるリュミエールの姿が見えた。
 メリッサは其処から少し離れた場所に吹き飛ばされていた。重い体を起き上がらせ、フリッグらと共にリュミエールの躰へと手を伸ばす。

 メリッサはこの光景を見た事があった。ノルネンを手に入れたあの瞬間と同じだ———!

Next>>

Re: Veronica -Oz.5更新中- ( No.80 )
日時: 2010/12/23 23:25
名前: 葵那 ◆2WetyLTYZk (ID: 7hV223vQ)
参照: 名前間違えたw雅です、御免なさい(汗)

どうも、旧の名前で来てます雅ですw


話の核心に近づいている予感…!
…あ、お久しぶりです(!?)
ささささ参照ヤバいですね!600て、600て!((黙
ついでに冬の大会あるらしいんで、この小説に一票入れて来ましたw
更新頑張ってくださいね!また時間ある度見に来ます^^

と言っても冬休みは勉強三昧で来れるかどうか(泣)
でも無理して来ちゃうぜw((黙

…色々失礼しました〜;

Re: Veronica -Oz.5更新中- ( No.81 )
日時: 2010/12/25 10:24
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-

>>80
ども〜^^お久しぶりです 「え、誰だろ」と一瞬戸惑ってしまいました^^;すみません汗

そうですね〜。妙に核心に近づいてますね((おま
でも多分これは単なる布石で(略
参照数にはおったまげましたw本当に(笑)
清き一票(?)有難うございました!感動して、あれ…眼から汗が…

日々多忙の受験生にとっては長期休みって貴重ですもんね。無理せず頑張ってください^^

Re: Veronica -Oz.5更新中- ( No.82 )
日時: 2010/12/26 12:42
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-

 クリスマス———俗に言う、キリスト降誕祭である。この日は家族でクリスマスディナーを食べ、眠りについた子供達の元にはサンタクロースがやってくる———………

「んで、なんでそんなコトするのさ」
緑の紙で出来たラメ付き三角帽子を被り、豪勢に並べられているディナーを目の前にしたフリッグは不服そうな表情で言った。

「ジングルジングル♪」
「ジングルベェ——————ルッ!」
が、彼の言葉に答えるものは誰も居らず、全員部屋の飾り付けを続けているのだった。


 「お゛いっ!!!!」


<Oz.Biography2: Noel-聖夜->


「フリッグ、知らないの?クリスマスっていってぇ———」
「いや、知ってるから」隣で喋るリュミエールの口に手を当てて塞いだ。もごもごと彼女の口が動いているが、気にしない。「そうじゃなくてさ」少年は近くでクリスマスツリーの飾り付けをしているメリッサへと視線を送った。「おかしいでしょ、この展開は」

 そのフリッグの言葉に指を振りながら舌をならしたメリッサが答える。
「チッチッチ……。君は分かってないなぁ。
タイトルからして、違うでしょ。今回、明らか違うでしょ。
外伝だよ、が・い・で・ん。世界観的にクリスマス無さそうだから、作者が無理矢理作った結果こうなったね!」
ああ、そう……と、フリッグは呆れた目線を彼女へ無意識に送っていた。

 背の高さを存分に生かし、ツリーのてっぺんに大きな星の飾りを取り付けたレイスは無言を貫きながら着々と作業を行っている。その様子をみてフリッグは完全に呆れた。こんなつまらないことに付き合ってる暇何てない。

「皆暇だなあ。なー、ポ———……」
頭に乗っていた筈のポチに語りかけたが、竜はいつの間にかメリッサと共に飾り付けを楽しんでいた。それを知り、愈々(いよいよ)つまらなくなったフリッグはそっと、外へと出て行った。———必死にしがみつくリュミエールを無言で振り払って。

 その様子を、突っ立って見ていたメリッサは溜息をついてから作業を再開した。



 * * *

———クリスマス、か。
 そんな楽しみの染み込んだ"家族ごっこ"など要らない。フリッグは足元の小石を蹴り飛ばした。

 カラカラカラカラ——————。音を立てて転がり、最後には近くを流れる小川にポチャンと落ちたその姿が滑稽で仕方なく、少年は小さく笑った。

 アリアスクロス家ぐらいでいいのだ。家族の様な存在など。
 あんな風にまだあって然程経たない奴らと気安く関わりたくなかった。関わってくるのは、いい迷惑に感じた。

 友達、少ないんだよなァ。そう思うが自分はそれで満足している。必要以上の交友関係は望んでなどいない。




「フリッグ!」
リュミエールの声が自分に迫って来ていることに気付いたフリッグは咄嗟に振り向いた。———放っておいて欲しいのに。
「何だよ」
「い、一緒にやろうよ、パーティ。クリスマスパーティ」
ぜえぜえと荒い息を立てながらその少女は一心にお願いした。だが返事すらしないフリッグ。しょうがなくリュミエールは彼を力ずくでも連れて行こうとする。

「何するんだよ!」
振り払おうと、腕を大きく振ったが依然としてリュミエールはしがみ付いたままだ。

「フリッグはいっっつも一人なんだもん!皆と一緒にやる気にならないの?ねえ、ねえ!!」

振られながら訴える真摯な姿に一瞬フリッグは心を奪われた。幼い子供が必死に訴える。冷めていた自分の心が馬鹿らしく思えてきた。

 はあ、とフリッグは息を吐く。
「仕方ないなァ…。つまらなかったら、出て行くから

ぶっきらぼうな言い方ながらもなんとか参加してくれる気になってくれたようでリュミエールは嬉しくて仕方なかった。
「それじゃ、行こ行こ!!!」
スキップと鼻歌を交え、リュミエールはフリッグの体を引っ張った。そのテンポとずれながらフリッグの躰はよたよたと引き摺られていったのだった。


* * *

「なーんだ、結局リュミに連れられて来たわけ」
眼の前で仁王立ちし、にやにやと笑うメリッサの腹をフリッグは拳で殴った。殴られたメリッサは声が出ないくらい痛いようでその場に蹲(うずくま)る。その姿に少年は嘲笑してやった。


 無駄に豪華な飾り付けのされている部屋。

 二メートルぐらいのクリスマスツリー。紙で作った環の飾りが壁に掛けられている。大円のテーブルには白い布が被され、上には即席であろうクリスマスケーキが一つ置かれていた。赤、白のシャンメリーが其々三本ずつ置いてある。

———暇だなア。
市販のスポンジケーキに生クリームをべっとりと塗り、買ってきたデコレーションで飾り付けがされている。汚い字で"Merry X'mas"と書かれている文字は恐らくメリッサのものだろう。彼女の字体は独特で、お世辞にもきれいとは言えないものなのだから。

「フリッグは炭酸飲めるか?」
唐突にレイスが背後から声をかけた。突然過ぎてフリッグは吃驚(びっくり)したので声が出ず、取り敢えず首を縦に振った。———炭酸は苦手なのだが、ついやってしまったのだ。

「おし。じゃ、皆炭酸飲めるんだねー。オッケェ、オッケェ」メリッサはそう言いながら紙コップに赤のシャンメリーを注いでいく。フルーツのいい香りが漂った。
 紙コップは四つ。どうやら、リュミエールの養父は参加しないらしい。

 背の低いリュミエールが必死にケーキを五等分にし、其々皿に乗せて配る。気のきいたことに(?)ポチにまで分けてあるのだ。それを見たメリッサが焦ってシャンメリーを新しくコップに注いだ。

 各々座席に腰をかけ、メリッサの掛け声で紙コップを手に取る。
「そんじゃま、メリー・クリスマス!(一日遅れ)」
阿呆作者の所為で一日遅れになってしまったのだ(本当申し訳ありません)。

 メリッサの掛け声で同時に完敗をする。リュミエールはすぐにケーキに突入、レイスとメリッサは静かにシャンメリーを飲む。ポチはケーキを突いている。フリッグは何もしていなかった。

 レイスがケーキを口に頬張った。奮発出来なかったので植物性の生クリームだったが味はそこそこ良い。自分が泡だてたものだった。味にまあまあ満足しながら食べ進む。
「……サンタとかって来るの?」
フリッグが此処に居る面子の中では最年長のレイスに突然訪ねた。レイスは首を横に振る。プレゼントなんてないしな、と。

「いや、プレゼントあるよ!」声を上げたメリッサが、手に持っている小包を掲げた。「アタシは用意周到だからね!全員分有るんだぜぇ!!」
「凄いや、おねえちゃん!」
リュミエールの眼がきらきらと輝いた。意外にも気のきく彼女に男子二人もさりげなく感動する。うん、いい奴だ。

「取り敢えず、配るか」
手伝おうとしてレイスが立ち上がり、メリッサの元から包みを二つ貰う。隣に居るフリッグに一つ渡した。メリッサもリュミエールに手渡しする。童女は嬉しそうな満面の笑みを浮かべていた。
「わーぁ、有難う!」そしてアンバー種の少女に抱きつく。「おねえちゃん、本当に有難う!!!」

 そんな感謝の言葉にあふれる空間なのだから、普段冷めている二人も自然と乗せられた。いや、感謝の言葉はとても大事なのだが。
「有難う、メリッサ」
先ずレイスが言う。彼はにこりと笑っていた。
「あ、アリガト」
ぺこりと頭を下げ、フリッグが言う。恥ずかしそうにしていた。

 今すぐに包みを開けようとした時だ。
「ちょ、タンマ!!!」
メリッサが声を荒げてその行為を止めさせる。両手を前で振り、必死に"止めろ"というサインを出した。取り敢えず三人はその行動を止めた。

「———何?」
不服そうにフリッグがメリッサを睨みつける。彼女は冷や汗をかきながら言った。
「あ、ホラ……。開けるのは終わった後のお楽しみ〜みたいなさ〜〜」

———怪しい。
怪しさ全開だ。仕方ないので彼女に従って開けるのを止めた。


 自分のコップのシャンメリーが切れたリュミエールは注ごうと白シャンメリーに手を伸ばした時だった。

 レイスが赤と白のシャンメリーをミックスして飲んでいる。アセロラの様な色の液体であった。

「………」
無言で、馬鹿みたいにポカンと口を開けているリュミエールに気付いたレイスはコップの中身を見せた。
「……美味いぞ」 


 結構、このような場では意外な一面が見れたりするものなのかもしれない。


* * *

 さて、部屋に戻ったフリッグが先ず行った行動は次のうちどれだろうか。



1.寝た

2.プレゼントを開けた

3.P○Pを弄り始めた


 そんなもの、展開的に勿論2である。早速プレゼントを開けたのだ。———中には何が入っているのかな、ああ。楽しみだ……!そんなことを思うところはまだ"少年"だった。

 開けた箱の中には、白い一枚の紙切れ。

———手紙か何か?

 折りたたまれていたので、取り敢えず開いてみる。




『請求額三十五万プラッタ』




「……………」

 ハイ、何だか分かりますよね。請求書ですね。

 請求先にはちゃあんと"Melissa=Loverdoule"の文字が。

 そりゃあ、阿修羅の如く、羅刹の如く。怒りに身を任せてフリッグはメリッサの部屋まで行こうと部屋を出ましたよ。
 出ると偶然なのか必然なのか、黒髪になったリュミエールの姿と普段の冷静さの欠片もないレイスの姿が。二人とも武器を構えて立っていた。

「———如何やら、目的は同じようだな」
くっくっく……と乾いた笑い声を上げたリュミエールの言葉に、二人は大きく頷いた。



 その後の出来事は大方予想がつくので割愛。


* * *


『昨夜、エターナルとネージュの国境付近にある森の奥地で大規模な爆発があり———』
プレッツェルを口に頬張りながらフレイはニュース画面を見つめていた。

「クリスマスにも、とんだ凄いことをする輩が居るんだねえ」

他人事のような物の言い方だが、この事故を起こした輩と後に関わることになるのは、まだ知らない。


 なにはともあれ、メリークリスマス(一日遅れ/汗)!!


<Oz.Biography2: Noel-聖夜- -Fin->

Re: Veronica -Oz.5更新中- ( No.83 )
日時: 2010/12/26 10:43
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-

参照が666…
不吉な!((

すみません、クリスマスに間に合わなくって…本当申し訳ないです<(_ _)>


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