ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
日時: 2012/01/15 17:20
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/

投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350



Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。

クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)

気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!

◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30

◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲コンチェルト- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226 
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!

◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様

◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^

◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…

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Re: 【Veronica】 *Oz.13更新 ( No.224 )
日時: 2011/04/08 19:45
名前: 風(元:秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: sCAj955N)

初めまし……えっと,違うファジーの方ではお世話になってます♪
えっと,設定とか細かくて凄いと思います。
キャラ名が神様とかの名前なのが何だか拘りを感じます!

Re: 【Veronica】 *Oz.13更新 ( No.225 )
日時: 2011/04/08 20:40
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
参照: されど駄目人間は愛鳥と踊る。

>>224 風さん
はじめましてー←
ファジーでは本当お世話になってます(;´ω`)
設定は全体的にがたがたです(真顔)ぶっちゃけ把握し切れてません←

キャラ名が神様!いやあ、神話好きなので^^;特に北欧神話からとってますねえ・・・。コメントありがとうございましたぁ〜

Re: 【Veronica】 *Oz.13更新 ( No.226 )
日時: 2011/04/08 20:43
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
参照: されど駄目人間は愛鳥と踊る。

* * *

 長い夜だった、とフリッグは思う。


 全員無事に合流し、尚且ポチも無事だったので安心した。と同時にこれからの呼び名に悩み始める。
「……今まで通りポチ———」
そう言うと竜は妙に機嫌の悪そうな顔を作る。急いでフリッグは繋げる言葉を作って無理矢理くっ付けた。「じゃなくてティアマットで良いかな」
『今まで通り、ポチで良い。……どうせそう言おうとしたのだろうに』
しゃがれた声で返されたフリッグは苦笑いを浮かべる。彼女にはお見通しだったらしい。

「でも驚きでしたね。ティアマットにマーリン、歴史上でも伝説的な存在なのに」
感心したアメジスト種の少年がフリッグとポチをまじまじと見た。今まで本の中でしか見たことのなかった者らが目の前で他愛の無い会話をしている。凄いものだ、と思った。
「まァ、何が何だろうとフリッグはフリッグだし、ポチはポチだからね。気にしなくて良いんじゃない?」
ポン、とフリッグの肩が叩かれる。琥珀玉からウィンクが飛ばされ、呆れた翡翠の目を返したが内心は感謝していた。こう言ってくれるメリッサが有難い。更にこれを素で言ってくれている。慰めじゃなく、本音なのだ。



 帰ってきたベテルギウスを見て申し訳の無い気持ちになった。前回ウェロニカが召喚したバジリスクと戦りあった時とは比べ物にならないくらい破壊しくされている。瓦礫の中で呆然とする筋肉質の男を見つけた。フリッグは駆け寄るが、言葉が詰まる。何を言って良いのか、全く分からなかった。
「えあ———……」
「全く毎回コレはヒデえなぁ」
銅鑼声を飛ばされ、心臓が一時停止するような感じがした。バレット・アイゼンヴァンクは足元の瓦礫を一つ拾い上げる。コンクリが痛々しい。
「お前が来てからこんなことばかりじゃねえか」
———いや、まだ二回。と普段なら言いたいところだが流石に今は言えなかった。すみません、と小さな声で謝罪。項垂れて言う。が、こんなもの謝罪にならないことは分かっていた。でもこうしか出来なかった。面と向かって彼に謝罪出来なかった。

「三千万プラッタ」
バレットが言う。
「———え」
フリッグは聞き返す。
「三千万プラッタだ、ここのローンは」
苛立った口調だったが振り向いた男の口許は笑みを浮かべていた。
「つまり、借金?払えってこと?」
そう訊くジェイド種の少年に呆れながらバレットは言った。
「お前がくる度に三千万プラッタも損害出してちゃしょうもねえ」そしてまた笑う。「半分借金としてやる。——— 一連の事が終わったらここで働いて返せよ」
くるり、と男はフリッグに背を向けた。少年の目に思わず涙が込み上げてくる。うん、そうだね。一連の事が終わったらココに働きに帰ってきてやるよ。何度も何度も頷いた。


* * *


「行っちゃうんですねー」
赤々とした目は寂しげだった。今日は黄色を基調とした服のコレットは決してフリッグと顔を合わせない。
「そうだね」
酷い返事だ、と思う。
「なんか色々たすけられたなあ……」
涙が込み上げてきて、溢れそうになったコレットは手で目を覆った。然り気無く。横の少年に気付かれぬよう。
「……僕もね」
繕われた言葉では無かった。それから暫く沈黙が流れる。


「フリッグーっ、フレイん所から連絡ぅーっ。ネージュ行きの便が出るから乗れってさぁー」

流れていた静寂を破るかのようなメリッサの元気な声が響き渡り。ハッとしたフリッグは咄嗟に返事をし、立ち去ろうとした。———なんだか気まずい。
「じゃ、あ……。世話になりました」
声を絞りだし、くるりと踵を返した。そのフリッグの袖が何かに引っ張られる。振り向くと俯いたコレットがしっかと裾を掴んでいた。

「……あ、の」
言葉を言いかけたコレットだったが、途中で止めた。言えそうに無かった。自然と掴んでいた手が緩む。
「え?」
「また、会えれば良いですね。ま、た……———」
「うん。じゃあ、ね」
フリッグは手を振った。コレットも手を振り返す。少年はそのまま走り去っていく。徐々に小さくなっていく背中をコレットは消えるまで見つめていた。


———交わることなんて、無いんだって。
姿が消えたあと、彼女の目から涙が零れ落ちた。分かっていたのだ。無意識に彼に惹かれていたことを。皮肉屋で、どこかを見つめている少年。その視線は平行線だ。コレットの視線と決して交わることは無い。

いくら思いを寄せても、彼はどこかを見ている。それはコレットの知らない、"ウェル"という人間なのだ、と。

 切なくなった。いくら恋慕しても彼は気付いてくれないのだから。

涙が溢れる。落ちて、地面を濡らしていく。頬を伝わず、直接地面に落ちていく。溢れだした涙は止まることを知らない。次第に嗚咽混じりになってくる。———分かってた、分かってた。叶わないことを。でも、でも———……。哀しいものがあった。


 そう言えば、と彼女は顔をあげる。



 彼は「またね」とは言わなかった。


* * *



 エターナル首都ニーチェからスノウィン首都のシュネー行きの便が出る時間を確認したウェスウィウスが空港から出てきた。
「昼は機内だな。出航まであと一時間、どうする?」
「レイスたちはそろそろ、だよね?」
メリッサはちらりと黒いコートの男を見た。レイスの黒コートはラピスとの戦いで消えてしまった為、今さっき新しいのを買ってきたのだ。彼は襟を立てながら答える。
「———ああ」
リュミエールの小さな手をそっと握っている。二人がどこに行くのかは知らなかった。

なのでフォルセティは訊ねる。
「どちらの方へ?」
「アースガルド王国だ」
短刀のような短い言葉で答えられたものにメリッサの琥珀が見開かれた。目にも見えない速度でレイスに急接近し、彼の襟首を掴む。二十センチ近くの差があったが気にはしなかった。

「アースガルドって———」フォルセティも驚いた様子だ。「確か、アンバー種との領土問題で……迫害、してますよね」
長身のアンバー種はコクリと顎を引いた。

 アースガルド王国は未だに絶対王政を保っている国だった。ネージュも王国であるが、実質政治的な力を持っているのは国王では無い。他国同様国の象徴である。だが、アースガルドは国王の支配する数少ない国だ。

 そしてアンバー種を異常に迫害している国でもある。

 第二次永雪戦争中、戦力不足を感じた帝国はあることを思い付いた。丁度その時期、流民であるアンバー種のミストという男が「国を持たねば我らは滅びる」と主張していたのだ。彼らはアンバー種建国派と名乗っていた。数も多かった。そこで帝国は思い付く。

「彼らに建国を許し、戦力として協力を得る」、と。

アースガルド王国にはアルフヘイムという広い"聖域"があった。帝国はそこに目をつける。アンバー種建国派との間に「アルフヘイムでの建国を認める」というアルメニ=ミスト協定を結び、アンバー種の協力を得た。

 だが、アースガルドはそれを知らなかった。それだけでなく、帝国との間に永地不干渉条約を結んでいたのだ。建国派がアルメニ=ミスト協定を主張しても帝国側な介入出来ない。そしてアースガルドは知らないと主張。この歪みは大きかった。

やがて、アンバー種の迫害を促すかのようにアースガルド現国王第一子の暗殺事件が発生する。容疑者一味とされたアンバー種を国は弾圧し始めたのだ。アルフヘイムからアンバー種を強制排除。
 アンバー種は抵抗勢力ヤンターリをラヴァードゥーレとメグオームが設立するもラヴァードゥーレの銃殺により弱体。以降、アースガルド王国はアンバー種の中でも最も忌むべき危険区域とされてきた。


「そんなアースガルドになんでッッ……!」
声を荒げたアンバーの少女は拳をきつく握りしめる。メリッサはアルフヘイム出身だった。丁度十年前に強制排除を経験している。その際に家族を喪っていた。
「俺もアースガルド出身だ」
レイスの答えにリュミエール以外の人間は目を丸くした。ただ一人、状況理解出来ないエンジェルオーラの娘はキョロキョロとしているが。
「ならぁ!!」
「育ちもアースガルド———アンダーグラウンド、だ」
聞いたことも無い名前だった。フリッグは聞き返す。
「アンダーグラウンド?」

「ああ。アースガルドの地下遺跡を利用したアンバー種の小国家みたいなものだ。———無論、無断でだかな。
俺はそこの孤児院で育ったから、な……。意外に安全な場所だ。そこに行く」
青みがかった長髪の青年の双眸は遠くを見た。そのまま手を引く娘の白い頭を撫でる。

「……そっ、か…………」
目を閉じる。メリッサは内心驚いていた。アースガルド王国に同族がそんなものを作っていたことなど知らなかったのだ。
「じゃあ、行くんだね?」
フリッグが改めて訊く。青年は口許を緩めながら頷いた。手を握るリュミエールは寂しげな表情を浮かべている。……やはり離れたくないようだ。


『十二時半発、アースガルド王国行き二〇七便にお乗りのお客様は———』

雑音混じりのアナウンスが響き渡った。手荷物を抱え、レイスはフリッグらと反対方向に足を一歩進め、振り向く。
「じゃあ、俺たちはこれで。……リュミエール」
声をかけられたリュミエールの目には涙が溜まっている。今にも泣きそうな童女の側にメリッサは歩みより、彼女と目線を合わせるようにしてしゃがみこんだ。

「リュミぃ、泣くなって」
白い歯を見せながら頭を撫でられたエンジェルオーラはとうとう涙をこぼした。
「う……ぅえ、ぇっ」
嗚咽ばかりで言葉になっていなかった。そんな子供に怒りもせず、メリッサは撫で続ける。そして何かを思い付いたのか、ポケットから何か物を出した。それをそっとリュミエールの細い頚に付ける。手が退いたところで、銀の十字架がライトに反射して光っている。それに手を当ててリュミエールは首を傾げた。
「こぇは?」
涙声で滑舌が悪い。「これは」と訊いているらしい。
「アンバー種はねぇ、再会を約束するときに相手に物を預けるの」そう言ってメリッサはリュミエールから手を離し、立ち上がり始める。「だからリュミ。泣くなって。また会えるよ、それが真実ならさ」
十字架に指を当てるリュミエールは笑顔になり、大きく頷き言った。
「うん!」


「『会える』じゃなくて、『会う』んだろ?」
然り気無く訂正したレイスは笑いかけた。そして右手をフリッグたちに向けて振り始める。リュミエールも始める。
フリッグは返す。メリッサも、フォルセティもウェスウィウスも。その場の者らが全員手を振ったと同時にレイスの足が進み出した。背中を向け、幼い少女を引き連れて、それでも手を振っていく。徐々に消えていく二つの背中を見ながらフリッグは声を飛ばした。

 再び合間見えることを願って。




「うん!」




<Oz.13:Dawn-You're ALONE,aren't you?->

Re: 【Veronica】 →雪国事変突入 ( No.227 )
日時: 2011/04/08 21:03
名前: くろ ◆1sC7CjNPu2 (ID: bR6mg6od)

ヘルさんの武器の名前が好みすぎる。
メーディア……メディアからかな?魔性の女メディア(笑)
そしてケイの武器の名前かっこよす。素敵な名前をありがとう!←

これからの展開すげえ楽しみ!待ってるよ〜
雪国コンビが待ち遠しいw

では!頑張ってね!

Re: 【Veronica】 →雪国事変突入 ( No.228 )
日時: 2011/04/08 21:04
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
参照: されど駄目人間は愛鳥と踊る。



———。
 一面が雪だ。銀世界は美しいながらも怖い。何もかも覆って消してしまうのではないか、という無意識な恐怖に苛まれる。

 小さな体躯が雪に埋もれていた。むくり、と起き上がり、手袋を付けた手を右目にやる。そっと瞼を撫でた。———憎い、目だ。


———血みたいだ。

紅い瞳は血の紅だ。赤血色の眼を鏡で見る度に激しい憎悪を覚える。周囲と違う、自分の姿が憎い。耳は尖っていない。嫌だった。


 擦り切れた頬から血が流れ出ているようだ。すーすーする。ずっと投げられていた小石が肌を掠めていたのだ。こんなもの、日常茶飯事。種族意識の強いスノウィンなのだから、仕方無い。

 ウェスウィウス、十三歳。四歳下の異父妹と、彼女と同い年の捨て子の弟が居た。兄になったということは、護るものが出来たということ。———死ぬにも死ねなかった。差別を受ける日々から逃げたくても逃げられない、それは母も同じだ。

 生まれた経緯は知らない。でも、自分の父母はお互いに愛し合っていたらしいので、恐らく自分は、所謂いわゆる二人の"愛の結晶"というものなのだろう。父親はエターナルの軍人で、永雪戦争中に死んだ。父の「二つの種の架け橋になって欲しい」という呟きは確かに覚えていた。八年前に終戦、当時の自分は五歳だった。父親が死んだのは三歳の頃だった。終戦の一年前、母は幼馴染みとの間に子を成し、そのまま結婚した。弟フリッグを拾ったのもその年だ。当時は子供が出来る原理など知らなかったので「コウノトリが連れてきた」という母の言ったことを真に受けていたが、流石にこの年になると分かってくる。

 二人が遊びでやった、という訳でも無いのだろう。今の父は結婚を許して貰えなかったのだ。ウェスウィウスという存在の所為か、母がカーネリア種と交わったからかは分からない。ただ、結婚する為に"理由"が必要だったのだろう。だから妹ウェロニカが生まれたのだ。



 サクサクと雪の上に足跡を作っていく。ふと、背中から気配を感じた———。




<Oz.14:affection-運命の糸は紡がれた->




あか、黄、緑、紫ですか」色の名称に併せてフォルセティはその場に揃う三人に焦点を合わせていく。「……なんだか、色合いに運命を感じますね」
「ま、行くのは西じゃなくって北だけど」
恥ずかしそうに言った少年をあしらうように琥珀の娘は言った。
「まあ、そうですけど」紫を西の方角に向ける。「これでアイゼン共和国行きだったら良かったんですけどね」
西の大国の名前を紡いだ。

フォルセティはアイゼン共和国に行ったことが無い。先程別れたリュミエールとレイスが向かったアースガルド王国にも行ったことが無かった。というか行くことは育て親にもイルーシヴにもきつく禁止されていたのだ。理由は知らない。アンバー種を極度に嫌うきらいは自分にもあったが、だからと言ってあそこまで排除しようとするのには理解できなかった。


 フリッグらはエターナル首都ニーチェからネージュ首都シュネー行きの便に乗っていた。座席は二人ずつの席が向き合って四人の状態だ。フリッグとウェスウィウスは横並び、アンバー種を嫌うフォルセティの隣にメリッサが座っている。異様にアンバー種を嫌悪していた筈の少年であったが無意識に会話を交わしているのに気付き、思わず自分を疑った。「毒されてる」とは言い方が悪いが、少なからず影響されているようだ。

「そいえばさ」話題を作るべくメリッサが切り出す。「敵についてって何か知ってたりする?」
「ラスボスはファウスト、その一味が十二神将。で、奴らは殲滅呪文ジェノサイド・スペル発動を目論み宝珠と神器を集めている」
答えたのはウェスウィウスだった。整った顔立ちについた口がさらさらと言葉を紡いだ。
「……宝珠?」
フリッグが首を傾げる。首もとの竜は寝入っていた。アメジスト種の少年が説明を始める。

「鳳凰歴一二二四年、ピエドラ・プレシオサが『ある一定区域にて特定の種族のみの大規模な殲滅があると、その場には種族の名を冠した石が残る』という事象を発見しました。
プレシオサはその石を宝珠と名付け、翌二五年に発表された『宝珠と種族による』によれば、『宝珠は強大な魔力をめる結晶であり製造には大量の種族のたましいが必要だ』とのこと。実際、古代ウィンディアがあったとされる遺跡周辺からは強大な魔力を秘める石が発見されました」
「へ、え……」
まるで講義のような説明だ。理解しきれていないが、一応相槌を打つ。
「恐らくファウストの殲滅呪文には宝珠のように桁違いの魔力を秘める物が必要だと僕は推測します。だから十二神将は宝珠を集めるために各地へ言っていると思われます。
マックールでエンジェルオーラ族が殲滅されたというのも宝珠創造のためかと」

そう聞いたフリッグの脳裏にヘルと名乗った女とマックールで遭遇したことを思い出した。紫巻き毛の女の手に浮いていた石はその宝珠だろう。そう考えるとやはり阻止めなければならないという使命感が込み上げてくる。

 一旦言うことを終えた少年は呼吸した。一息に近い説明だったので流石に辛かったようだ。と言ってもフォルセティは喋るのは嫌いではなかった。寧ろ好きである。
「なんかイケガミさんみたい」
解説上手の人名をメリッサにあげられ、フォルセティはくすぐったい感じがした。照れ臭い。思わず顔を紅潮させて後ろ髪を掻きながら小声で
「いやあ……へへ。そこまでは」
と漏らしてしまう。その様子をメリッサはにこにこ笑いながら見ていた。そして他二人にもそうだろう!?と同意を得ようと思い、顔を前に向けた。

「ね?あんたらもそう思———」

今まで気付かなかったのが不思議だった。いつのまにか、あの義兄弟の姿は忽然と消えていたのだった。

* * *

「急に抜けさせてすまねぇな」

チャリン、と小銭の音。トイレスペースにあう自販機のボタンが一気に点滅。一つ、炭酸飲料水を押す。ゴトン、と重い音。取り出し口に手を突っ込み、銀の指輪がついた青年の手にジュースが持たれ、それをフリッグに投げた。両手で取る。缶ジュースだ。
「別に良いよ」
フリッグの返答と同時にまた重い音がする。今度は自分用らしい。ウェスウィウスはフリッグと同じ缶ジュースを開けて一口飲んだ。プハァ、と年相応ではない音が彼の口から漏れる。

「どうせあの人らが居ちゃ話せない話なんだろ?」
「御明察」
ウェスウィウスは左の人差し指を立てる。引き金を引き続けた指だ。凝らさなければ見れないたこが出来ている。
「で、きっとウェルの件だ」
少年も缶を開け、一口飲む。炭酸特有のシュワッとした感触が口内に広がり、喉を攻撃する。———どうもこの感じは好きになれない。冷たさによって余計に攻撃力を増しているようだ。合成着色料の透明感のある紫が缶の中で揺れ、たぷたぷと音を立てる。もう一口。また泡が咽頭を攻撃し、同時に食品添加物によってつけられた人工的な葡萄の味が広まる。

ジュースを飲む姿を見てウェスウィウスは考え込んだ。一応精神メンタル面に気を配り、
「単刀直入に言って良いか」
と最初に訊く。
「良いよ」
さらりとフリッグは返す。

 暫く黙った。喉の辺りで低迷する言葉を汲み上げよう、と決心したのだがなかなか出来ない。だが悩んでいても仕方なかった。口に出す。



「ウェル———ウェロニカ・フェーリア・アリアスクロスは敵、だ」



淡と言った。やはり聞いたフリッグは動揺の色を見せている。嗚呼、やっぱりな。ウェスウィウスの予想通りだった。なんせ、幼馴染み———いや義理の妹であり好意を寄せていてもおかしくはなかった存在なのだから。我ながら残酷なことを言ったものだ、と青年は思う。
 フリッグの口がゆっくりと開口していく。



「うん。知ってる」



それを聞いたウェスウィウスは馬鹿みたいに転んだ。頭が床に激突。 二本の長い脚が浮く。
「何だよ、知ってんのか」
「一回会ってる」
「あ、そ」
どうやら先程の動揺した様子は演技だったらしい。完全に騙された。
「敵なら仕方ないじゃないか」そう言った少年は握りこぶしにさらに力を込めた。真っすぐとウェスウィウスのオッドアイを見つめる。「戦った先に、救いがあるのかもしれないんだから、さ」


そう言った少年が自分よりも大きく見えた。ウェスウィウスは色の異なる双眸を左手薬指にやる。嵌められた銀の輪が鈍い光を発していた。



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