ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: Veronica*Oz.10更新中&オリジナル募集中 ( No.144 )
- 日時: 2011/02/05 17:22
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: インフルフル、インフルフルフル、インフルフル
>>143 楓様
おおっ、そういえばそうでしたね!有難うございます^^
いえいえ、そんなことないですよ—(^^ゞ
フリッグはですねえー。好きって言ってもらったの初めてですよ(笑)
もしかしたら意外にもOKかもしれませんよwてかぶっちゃけツボればとことんな少年なので(どんな…
コメ有難うございました!また鑑定等頼むかも知れません^^
- Re: Veronica*Oz.10更新中&オリジナル募集中 ( No.145 )
- 日時: 2011/03/12 17:43
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 9nPJoUDa)
- 参照: インフルフル、インフルフルフル、インフルフル
女はその日の朝、いつものように買い出しに行っていた。
庶民の出であった彼女は、生まれながら持っていた美貌を買われ、有力者の息子の元に嫁ぎ、一気に幸福を手に入れたのだった。子に恵まれ、孫に恵まれ———幸せの絶頂だった。
趣味の買い出しは、昔から家の召し使いにも譲らない程楽しみだったものである。彼女はいつも鼻唄を歌いながら行ったものだった。
だが。
家に着き、入った彼女は目を疑った。
夫も、子も、孫も、家に仕える人間も、皆殺しにされていたのだ———!彼女が家に入ってすぐ、何かが燃える臭いが室内に立ち込められた。
『これで良いんだろうなぁ?』
と、聞き覚えのある低い声。
『おうよ。今、この家の×××××も入って行ったしよ。これで次の選挙に邪魔者は消え失せたぜ』
続いて聞こえたのも、聞き覚えのある若い声。
———あやつら、が?
女の中に憎悪が芽吹いた。彼女は今の会話を聞いて、確信した。———この惨劇の犯人を。
———あやつらが、殺ったのか……!?
憎悪がふつふつと沸き立つ。押さえきれなくなった怒りや憎しみ———負の感情は一気に溢れ出る。女性は、まるで獣のような咆哮を上げた!
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
次第に女の躰が深緑の鱗に被われて行く。女の白髪が混ざった金の髪は抜け落ち、目立たない小皺か多少ある綺麗な顔立ちは、面影を残さない。紅の目からは血が滴り、口は裂け、綺麗な歯並びは全て鋭く剥き出した牙に変わり果てた。女の躰が膨張する。細かった四肢は鱗に被われ、爪が鋭く光った。躰は竜のようになっていく———!
『おいっ、アレは何だ!?』
燃え盛る木造の豪邸の中から、竜の姿が現れた。
若く、筋肉質の男が先に気付き、もう一人の少し年上の男に訊く。若い男が指差す先には、深緑の鱗の体躯があった。
『竜?何で此処に———?』
年上の男の声に反応した竜は、二人の男を睨んだ。と、同時に口から赤々と燃える火を吐き出し、焼き尽くす。
『ッア、ア゛!?』
焔に焼かれ、男の躰が爛れていく。苦しむ姿はまるで踊っているようだ。躍り疲れて倒れるように男たちは倒れた。黒く焼け焦げた部分と、皮膚が溶けた部分とあった。命は無かった。
———まだ足りんッッッ!!
かつて女だった竜は叫んだ。そして彼女は両翼を広げ、空へ飛び立つ。家族を一瞬で喪った理由を作った奴等を殲滅するために———。
* * *
「———暴れ竜?」
口からウィンナーをポロリと落としたフリッグ=サ・ガ=マーリンを見て、黄土色の髪をしたジェイド種の女性は頷いた。
「そう、暴れ竜」両サイドの前髪だけ胸の辺りまで伸ばし結んでいるが、後ろ髪は肩までしか無い。まだ二十歳を超えていないようだが妙に大人びた雰囲気を醸し出している。丸い翡翠の目がフリッグを頼るように向けられた。「皆殺す気なの。フリッグ、どうにか出来ないかなって」
「いくらなんでも無理じゃないかな……」
フリッグは溜め息を吐いた。自分の愛する巫女クリュムの頼み事でもそれはいくらなんでも無理がある。
ジェイド種が繁栄している時代。魔法を極めた者に与えられる最高の称号[大魔導師]を十五の頃に取った、最年少の大魔導師フリッグ=サ・ガ=マーリン二十歳。
「ねえ、お願いっ!」
両手を眼前で合わせて請うクリュムにフリッグは困った。———断れそうな雰囲気では無い。
「仕方ないなぁ……」
フォークをテーブルに置く。食事を終えた彼はクリュムの様子を見て、仕方なさそうに言った。彼女の目が輝く。
「本当!?」
「クリアーの頼み事なら仕方ないし。……どうせ、無理矢理やらせるんでしょ?」
フリッグの的を射た発言に照れながらクリュムは笑った。図星だった。
人が二人入るだけで窮屈な部屋には、小さな本棚と、小さな円テーブル、そしてベッドがあるだけだ。クリアーこと、巫女クリュムの部屋である。
ジェイド種の都ウィンディアには"巫女"と呼ばれる者が、一人だけいる。
巫女とは、都の中心にある遺跡ラッフレッドーレで、ウィンディアの未来を占い、祈祷する神聖な存在だ。癒しの力に長けた女性を一人選び、死ぬまで巫女としての職務を全うする。巫女が死ねば、次の巫女候補を探しだし、一番力のあるものを巫女とする。クリュムは先月連れて来られたばかりの巫女だった。
巫女に選ばれた者は遺跡内部にある大書庫に居なければならない。逃げ出さないようにそこで幽閉するのだ。外出以外の必要最低限の生活は保障されるが、容易に人に会うことも禁じられているため知識は書庫にある本から拾うしかなかった。
だからフリッグはいつもこの窮屈な部屋で彼女との時間を過ごすのだ。調理場の無い部屋なので、彼が外で作ったものを持ち込んで一緒に食べる。勿論、それは許されていないので隠れてやっているのだ。
空になった皿はそのまま机の上に置かれたままだ。フリッグは目の前にいるクリュムをそっと自分の元に誘い込む。
「やるなら、お礼とかってこと?」
悪戯にクリュムは笑った。頭をフリッグの胸板に付け、彼の顔を見上げる。
「いーえ。
出掛ける前に少しでも触れておこうと思いまして」
にこにことした笑みを浮かべながらフリッグはクリュムの黄土色の髪をくるくると指に巻き付ける。この仕草はなにかやらしいことを考えている証拠だ、とクリュムは確信する。
「敬語ってことは何かヤラしいコト考えてますなあ♪」
クリュムはにやにやしながらフリッグの胸に躰を埋めた。男の腕が、女を優しく包み込む。女は至福に包まれた笑みを男の顔に近付けた。細い指が、女らしさを秘めた細い顔に触れる。顔に触れるクリュムの折れそうなくらい細い指をフリッグはそっと包むように触った。
それから暫くの間、彼らの間に万人が立ち入ることを禁じた時間が流れた———。
>>Next
- Re: Veronica*Oz.10更新中&オリジナル募集中 ( No.146 )
- 日時: 2011/02/06 18:23
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: インフルフル、インフルフルフル、インフルフル
『元は、人間だった竜———らしいの』
———人間が竜になる?聞いたこと無い……。
クリュムの意味深な言葉が頭を駆け巡る。そんな感じでフリッグはアイゼン共和国に到着した。最近建国したばかりの、スピネル種の国である。そう言えば、ここ近年は、南のアースガルドと言い、東のアクエリアと言い、結構な国が成り立ってきている。種族の上に立つジェイド種に対しての対抗勢力が強まってきている証拠かもしれない。
"転送魔法陣"といって、数年前にジェイド種が発明したものを使ってウィンディアからアイゼンまで数分足らずでやって来たのだった。貼られた魔法陣が、それに対応する場所と呼応して、上に乗る人間をワープさせる仕組みだ。便利だが、使う人間は限られている。所謂"職権乱用"をして、フリッグはアイゼンにやって来た。
「元は人間……。全く、どこのゴノーさんだよ———って、このネタ分かる人居るのかな……」
傍から見ると、単なる変人のような一人言を呟きながらフリッグは道を歩いて行く。
聞いた話だと、竜は人里離れた場所で暴れているそうだ。———人里離れた、と言ってもその前にはそこそこ大きな自治都市があったらしい。だが、今の其所は竜に焼き尽くされてしまったと聞く。つい、二月前程の話だ。
回りは森で被われている。が、鬱蒼とした深緑の奥で、補色対比の赤が鮮やかに広がっていっているのを翡翠の眼は捉えた。もっと近付けば、より分かるのだろうが、そう易々と近付くわけにも行かない。そっとフリッグは耳を澄まれた。遠くの音を、注意深く聞き取る。
「さ、しっ、ごっ………ろっ、しっ、はっ………」子音だけを発音するように———まるで母音の発音迄には気が行き届かないという感じに———フリッグの口が次々に言葉を発していく。「アバウト十人か。今、死んだ数は」
自分自身に言い聞かせるように言ってから、彼は遠くを見た。今、竜の居る場に"生きている人間"は居ない。
———厄介だな……。ダイレクトに突っ込むわけにもいかないか。
そうぼんやりと考えていた、その時だった。
「ヒト、か?貴様」
老婆の声にしては、酷くしゃがれすぎている、声だった。人間の声帯が出すような声ではない。咄嗟にフリッグは振り返った。自分のすぐ近くに、深緑の鱗に被われている巨体に深紅の眼があった。どうやら不意を突かれたようである。
———っ、遠くに居た筈なのに……。いつの間にか近付かれていたか!
竜は舐めるようにフリッグを見ていた。
「は、半分アタリですよ」
普段の饒舌な物言いは、逆に片言なものに変わってきていた。汗が静かに頬を伝う。焦りを見せてはいけないという焦りが、尚一層焦りを表面に表しているようだ。
「ヒトだけでは無いな。魔物の臭いがする」
「だから半分アタリですって……」
「そうか、貴様はヒトと交わった魔物か」
「そう簡単には答えられませんよ」詮索してくる竜に警戒しながら、一つ一つ問いに答えた。どうやら、竜にも敵意は無いようだ。
まだ鼻をフリッグの躰に押し付け、すんすんと嗅いでいる。しつこくそのようにしてくるのに、流石に参った青年は仕方無く吐いた。
「あまり言いたく無いけれども、僕は魔物と人間の間の子なんですよ」
人間と魔物の偶然の産物である自分の正体はクリュムにしか話したことはなかった。だが、この竜の警戒を解くには少しでも言っておいた方が良いとも思ったのだ。
「———ほう、やはりな。で、貴様は何をしにきたのだ?」
納得したように竜は何度も頷いた。警戒は解かれつつあるようだが、まだ気を許してはいない。
「恋人からの頼み事でしてね。貴女を止めに」
「は———はははははははははははははははははははははは!!!!」フリッグの答えを聞いた竜は笑い声をあげた!周囲の大気が篩にかけられたように、激しく振られる。「止めるか!そうかッッッ!!」
大きな両翼を広げ、竜は空に飛び上がった。空からフリッグを見下しながらまだ笑っている。
「遠くで死んだ人の数———。貴女ですね」
睨みを聞かせた二つの翡翠を見て竜は口を吊り上げた。
「その眼は今までの奴等とは違うな。何だ?殺した中に貴様の恋人でも居たか?友人でも居たか?家族でも居たか?」
「全部外れですよ。貴女は哀しい」
哀れむような瞳を向けた青年を見て、竜の中の怒りがふつふつと煮えだった。
「何が分かるか?哀れむのか、貴様は!?
要らん、要らんぞッッ、哀れみなど要らんッッッ!!!!」
まるで怒りに囚われた竜はフリッグに向かって咆哮した!フリッグは咄嗟に音を盾に変えて防ぐ。何も見えなかったが、焔は吐かれていた。盾に弾かれた"見えない火"は周囲に飛び散り、草木を燃やした。
「凄い。本当に完全燃焼した火を吐いてくるとは予想外でしたね。
学校では『青い火が完全燃焼』と言いますけど、完全に全てが完全燃焼すると焔は透明になる———そんな高度なものが出来るとは。
ハイ、ここテストに出ますよ」
漸くペースを取り戻してきたようだ。饒舌になったのは、竜が攻撃してきたからである。相手から攻撃されれば、此方が出方を窺わずに済む!
竜はフリッグに暇さえ与えず焔を吐いて攻撃し続ける。その竜の眼をフリッグは見た。———哀しい、哀しい眼だ。
途端に自分を守っていた防壁を、フリッグは解いた。咆哮を直に喰らう。ギリギリで避けようとも思わなかった。そのまま皮膚の表面が焼かれた!
「何故、守りを解いた?」
萌黄色の服を焦がせ、その下の肉までも焼かれたフリッグは倒れもせずそのまま立っていた。それを見て不思議そうに竜はフリッグの元に降り立ってきた。彼の顔を覗き込む。
「哀しみに囚われる貴女を見ているのは、哀しいです」
ぜえぜえと荒い息をあげていた。彼から戦意は無かった。
「哀しみ?何を言うか若造。私には憎悪しか無いのだよ」
———家族を殺した奴等に対する、な。
嘲るような視線でフリッグを見下し、笑う。が、青年の眼は変わらなかった。それどころか、まだ言う。
「いえ、"哀しみ"です」
流石にこれには参った。この男は色々な意味で"特異"な人間である。
「貴様、名は何と言うか」
竜の問い掛けに、フリッグは声を張り上げて答えた。
「フリッグ=サ・ガ=マーリンです!」
が、答えたと同時に彼はその場に倒れ込んだ———。
>>Next
- Re: Veronica*Oz.11更新中&オリジナル募集中 ( No.147 )
- 日時: 2011/02/07 18:59
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: うちの高校はテスト多すぎよ、もうっ((誰
今週一週間テスト勉強期間
+
来週一週間テスト期間
のため、約二週間更新停滞すると思います
出来ればあg…いえ、なんでもないです((ry
と、いうことで暫し更新停滞。申し訳ない<m(__)m>
- Re: Veronica*Oz.11更新中&オリジナル募集中 ( No.148 )
- 日時: 2011/02/10 20:52
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: テスト期間だっちゃ
* * *
反転・現在———
「フリッグだよね、あれ、フリッグだよね!!?」
「多分そう!何してんだよ太郎の野郎!!」
夜の町を四つの人影が、走る、走る———。
「メリッサ、違う。ポチだポチ」
「あーっ、別に良いじゃんかぁ。ポチだろーが太郎だろーが」
夜道は暗い。会話だけで互いに顔を確認は出来ていなかった。
「ねえ、暗くて分かんないよ。灯り無いのー?」
暗闇を怖がるリュミエールはメリッサに手を握られていた。———灯りなど準備している暇が無かったのだ。飛んでいくポチを無意識に追い掛けていたのだから。
「灯り……。あ、これとかですか?」そう言ってフォルセティが本を開いて手を翳すと、本ののどからぼんやりとした光が現れてきた。「周囲を照らす、"照耀光源"っていう魔法なんですけど」
本から現れた光は周囲を僅かにだが明るく照らした。蝋燭の灯火に似た、暖かさのある光である。白熱灯のような色は心を落ち着かせてくれる感じで少しだが不安を消し去ってくれた。
「流石だな」
賞賛するレイスにフォルセティは照れ臭そうな表情を見せた。
「い、いえ……。僕は体力が無いので、これくらいしか出来ないっていうか……」
「セティは魔法使いの弟子なんだよ!」
「あれ、それ聞き覚えあるんだけど。違うよ」
相変わらずリュミエールの言動にはペースが崩されるようで仕方無い。というか、今自分の周囲に居る人間とのやり取りはフォルセティのペースを崩してくれるようだ。
破壊された道々がポチの進路を教えてくれる。
軍も手荒なことだ。竜一匹に対し、まるで戦争でも起こすかのように幾つもの戦闘機を用意するのだから。その姿勢にメリッサは多少呆れた。やはり世界の覇者にでもなろうという野望を持った国家は違うものだ、と。
ふとフォルセティは声を漏らした。
「でも……なんでティアマットなんかが現れたのでしょうか」
俯きながらボソボソと呟いていたが、三人は決して聞き漏らさなかった。レイスは彼の言葉一字一句完璧に聞き取っていた。———ティアマット。聞き覚えは無かった。
「ナニソレ。新しいマット?」
ふざけだか本気だか分からないメリッサの言動に、フォルセティは眉間に皺を寄せて返す。
「ティアマット、ですよ。一般で知ってる方はほぼ皆無だと思いますけど」
「なんでアンタは知ってるのさ」
自分よりも遥かに年下(というと、かなり年寄りに思われるがメリッサは十七歳である)のフォルセティの無駄知識というか一般ではあまり使わない知識の膨大な量には本当何とも言えないものを感じる。
「古来に居た暴れ竜です。元は人間で、ええと……、まあ兎に角凄かったやつです」
———誤魔化したな。
———うん、誤魔化した。
言いたいことを急に忘れてしまったのか、妙に中身の無いフォルセティの説明を聞いてアンバー種同士顔を合わせた。期待外れだ。
「ちょ、なんですかその冷やかな視線ッッ!リュミもその哀れむような顔するのやめてよ。哀しいじゃないですか!!」
「……大丈夫、セティは偉い子だから」
ぽんぽんとリュミエールに肩を叩かれ、フォルセティは今にも泣きそうだ。三歳年下、しかも女の子に慰められるなど……情けない。
ゴゥンッ!
突然、まるで大気を揺るがすような轟音がかなりの近くで鳴り響いた!思わず四人、同時に身を屈めた。
激しく風が哭いている。砂埃が舞い上がり、それは視界を確認不可能にさせた。
———人の気配かっ。
まず気付いたのはレイスだった。只でさえ細い目付きを更に細め、砂嵐の中心を見る。
徐々に風が収まり、視界が明らかになっていく———。
* * *
一方、帝国内。
「遅かったね、ヴァナヘイム」
闇に溶ける漆黒の髪と、同じ色の目をした小さな少女が真っ暗闇の廊下に立っていた。彼女はまるでフレイを待っていたかのに、彼に近づいていく。
「すまないね、アングルボザ。貴女が態々出向くなんて、何かあったのかい?」
「もう片方は?」
アングルボザと呼ばれた女はフレイの質問に答えず、逆に問い掛けた。かなり自分のペースで歩いている。
少女の身長は低い。小学校低学年くらいの背に、まるで喪服の様な、黒い質素なドレスとヴェールを纏っている。両サイドで団子にした黒髪に深い黒曜石の眼。———東洋の島国に存在が確認されているオニキス種のようだ。
「フレイヤか。どうせ今ごろ男と部屋で戯れているんじゃないかな」
フレイの返答を聞き、アングルボザは溜め息を吐いた。
「フレイとフレイヤが揃わなくてどうするの。ヴァナヘイムの意味が無い。それでもお前は十二神将なの?」
自分よりもかなり年下の身なりをしているアングルボザはフレイを見下す姿勢を取っている。だが、正直なところ、それはフレイにとって極々普通の事なのだ。
真紅の絨毯が作る道の真ん中で二人は会話を続けている。突然背後から声がした。人を小馬鹿にしたような、苛立たしい喋り声だ。
「ククク……ボザ様とは、随分久しぶりの顔ですね」
振り向いた先に広がる廊下で、彼らに一番近い石柱に背中を合わしている男が声の主だった。後ろで一つに束ねた長い黒髪にカーネリア種の真紅の瞳。端麗な色白の顔立ちは、一般的に女性に人気のある感じだ。だが、卑しく歪んだ口元がそれを台無しにしている。
「ロードか」
はあ、とフレイは大きく息を吐いた。かなりのがっかり感が滲み出ている。
「どうせフレイ、貴方のことだ。女性でも期待したのでしょう」
「うん。ウェルちゃんとか、ラピスちゃんとか、ケイオスちゃんとか……。あー、ヘルは要らない。あれはオバサンだからね。あとフレイヤも」
指折りに女性の数を数え、名前を言っているフレイの姿に呆れたのか、アングルボザとロードで勝手に話を始めていた。
「ジャック・ロード。何か言いたいことでもあるようね。言ってみなさい」
少女は涼しい表情で淡々と言葉を紡いだ。ロードはペコリと一度軽く頭を下げてから言葉を始める。
「ファウスト精鋭の十二人から作られる【十二神将】にアングルボザ。知らないわけでは無いですよね?
あの女が目覚めていたことを」
「娘のヘルは殺りあった割に気付いて居なかったわ。———やっぱり駄目、化石は。
フェンリルも消息を絶ってるし、ヨルムンガンドは元から駄目。
で、誰か行ったの?」
呆れた表情で喋る少女の姿に軽く笑う。笑いが混じった声でロードは答えた。
「"彼女"が行ってますねえ……。さて、どうなるのやら。きっと奴等は勝てませんね」
「———彼女。雇った奴のうちの誰か?」
ジャック・ロードの口が更に吊り上げられた。ククク、と小さく笑いを漏らす姿は不気味で仕方無い。男は紅い眼をフレイに向けた。
「まあ、そう言うことですねぇ。彼らに勝てるのやら」
* * *
———戻るは、過去。
「目醒めたか」
その声が耳に入った頃には既に起き上がっていた。橙の混じった金糸は、いつの間にかほどけてボサボサになっていた。着ている服を所々焼け爛れている、が不思議と皮膚———いや肉体に損傷は全く見当たらなかった。
急いで何があったかを思い出す。頭の中にある記憶を遡らせた。だが思い出すよりも先に、彼の躰を支えていた竜が経緯を語った。
「私の焔を喰らって倒れたのだよ。そのまま倒れていても困る。怪我を治しに連れてきただけだ。悪いことは言わぬ、早く帰れ」
そう言ってそっぽを向いた竜を見、フリッグは小さく会釈した。
「———ありがとうございます」
「別に礼など要らぬ」竜は目を合わせようとしない。「早く帰れ。貴様に私は止められん。私の気が変わる前に、消えろ」
まるで脅し言葉だ。フリッグに罵ってやったが、彼は顔色一つ変えずに竜を見詰めている。
「人を、殺す気か」
「………何?」
今まで穏やかだった声色が一変した。軽い羽のようだった声は鉄の塊のように重くなり、威圧感を纏う。その威圧感に気圧され竜は思わずフリッグを見た。流れていた風も変わっている———!
———何者だ、この餓鬼はッッ!?
魔物との混血と言ったが。だがこの威圧感はそれだけではないだろう。先程と立場が逆転している。今は竜の方が焦りを隠していた。
「一族皆殺しだぞ?許せるか?否、許せぬだろう!!同じ目に遭わせなければ気が済まんのだッッッ!!!」
竜は声を張り上げた!大気を揺るがす轟音に周囲の草木がざわめく。が青年は顔色を全く変えず、直立不動で竜を見上げていた。彼は口を開き、少しだけ大きめの声を紡いだ。
「それは貴女の虚無感を埋める破壊以外なんでもない。貴女は"一族の仇"という理由をこじつけ、破壊によって得る快感の為だけにその行為を行っている哀しい怪物だ」
「黙れよ餓鬼が!」
竜は紅に燃え上がった焔をフリッグに放った。フリッグは右手を前につきだしてそれを簡単に弾き飛ばす。
———無理ですか。
竜は聞く耳すら持ってくれないようだ。止めるにはあれしかない。彼は小さく呟いた。
「武力行使、実行ですね」
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