ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
- 日時: 2012/01/15 17:20
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
- 参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/
投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350
Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。
クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48)
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)
気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!
◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30
◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!
◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様
◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112・>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^
◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…
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- Re: Veronica*参照700突破嬉しくて昇天しそう ( No.89 )
- 日時: 2011/01/02 10:07
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-
>>88
お久しぶりです!そしてあけましておめでとうございます^^
メリッサはもうダメ人間ですから(笑)フレイと比べてどっちの方がダメ人間なんだろうか…
リュミちゃんはあまりキレたシーンが無いのでちょっと冷や汗ッ…なんですけど((おま
はひ、そーです^^(何だお前w
なんかいつの間にかなってました((
今後、チビ同士のセティ君とそういった関係で仲良くしてくれれば…神器で結ばれる二人…なんて冗談ですが(((
応援有難うございます!
- Re: Veronica*参照700突破嬉しくて昇天しそう ( No.90 )
- 日時: 2011/01/10 14:43
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-
北の大国、ネージュ。さらにその北、大陸最北端の極寒の地。万年吹雪と呼ばれる吹雪が、その名の通り一年中吹き荒んでいる。人が住むにはあまりにも酷な地だ。そのため、人など住んでいなかった。
そんな真っ白の白銀の世界の中に、小柄な何かが一つだけぽつんと立っている。よくよく見ると女性だ。
くすんだ白色の軍服の様なロングコートと、防寒帽子を身に着けている。背中には大きめな狙撃銃を背負い、肩からは散弾銃を提げ、まるで軍人のような出で立ちだ。防寒帽子から食み出る、癖のある灰色の若干長めの髪。青白い顔。アンバー種特有の琥珀色の瞳は沈んだように暗かった。
ザクザクと足を雪に埋めながら進む。彼女のひざ下は完全に雪の中に埋もれていた。
ふと立ち止まり、そのままぼーっとその場に立ちつくす。雪が躰に降り積もり、数分もしないうちに彼女の頭と肩に降り積もった雪が盛り上がる。彼女はそれを払い落しもせず、逆になにもしないで立ちつくしていた。
———琥珀が鏡の様に雪を映す。
「雪は、何もかも消し去る」
深々と降り積もる雪は音を消す。小さな呟きはすぐに消された。
「雪は———、消し去ってしまう」
彼女の目は、ひどく悲しかった。
* * *
さく、さく、さくっ
スニーカーが雪の白に足跡を作って、白を他の色で蝕ませていく。
厚手の、フード付きのコートを着込んだ、まるで細身の雪男の様なその男は漸くスノウィンにたどり着く。
「結構遠かったな」
ふぃーっ、と深く息を吐く。黒フードを被った頭から僅かに顔が現れる。ラピス種の蒼透石の様な目が静かに寂れた集落を見つめた。
二度も紅耀珠の支配する国に襲われた哀れな村。
焼かれ、殺され、傷つけられ。村人の受けた傷など我々が易々と口にすることではない。
簡単に「可哀想だ」と哀れむのは、村人にとっては寧ろ侮辱に近いのかもしれない。その痛みも苦しみを味わっても感じても無い人間が簡単に悲観的に彼らを評価し、変に同情めいた言葉を吐くのは恐らく罪だ。
この男がスノウィンに来たことには理由があった。
ここ数年、スノウィンが見せる不穏な動き。ニュースをよく見る彼は自分でそれを確認したいと思っていた。
———スノウィンに近付いたものは死ぬ。
この謎の噂は事実だ。最近、スノウィンに行って帰ってきた奴は居ない。
そしてスノウィンの村人は村から出ず、国内でも孤立している。
実に妙だ。
そして、独自に調べた末に知ったこと。
"千年前、大魔導師マーリンが、ウィンディア最後の巫女クリュムを此処に葬り、神器を封印した。"
「神器が関係してんのかも、な……」
気になることだ。"百聞は一見にしかず"。聞くよりもその場へ行って、体全体で感じる!だから彼はスノウィンに来たのだった。
<Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ->
「あらあらっ。結構あっさり逝くわね〜」
若紫のツインテールを揺らし、俗にいう″ゴスロリ服″を纏った女性が破壊された集落のちょうど中心に立っていた。
白髪の、皺の刻まれた老人の髪を掴み、無造作に投げる。投げられた人間はぐったりとし、動かない。それを当たり前のようにヒールで蹴り飛ばす。———もう、老人はこの世から消えていた。
頬にこびりついた血液を舌でぺろりと舐めた。
「任務完了かしら。これで天使の亡骸———エンジェル・ダストも生成れたしっ♪」
髪と同じ若紫の瞳が妖しい光を灯す。女性の掌から、白く、発光を放つ半透明の石が現れる。どうやら、エンジェル・ダストと言うもののようだ。
すぐ後ろで何か光った。女性は後ろを向く。
小さな魔法陣の上に二人のアンバー種とエンジェルオーラの童女、一匹の小竜、そして女性のよく知るあの男によく似た少年が立っていた!
「随分と久しいお顔が見えるものね〜。
久し振りぃ、フリッグ」
女性がフリッグに向かってにこやかに手を振る。無論フリッグには面識がなかった。
「誰」
フリッグのあっさりとした応答に女性はハァーと呆れて息を吐く。
「ヤァだ。ヘルよ、ヘル。久し振りじゃないのよ」
ヘルはそう言ってフリッグに歩みより、彼の顎をくいと上げた。妖艶な雰囲気を纏うヘルにフリッグは唾を吐き捨てた。
「止めてよ、オバサン」
『止めてくださいよ。貴女に興味はありません』
鋭い緑の光を放つ男の顔をヘルは思い出す。全く変わっていない。そのことに軽く彼女は笑った。
———やぁねえ、態度は変わらず……か。
そんなヘルにリュミエールが声をかけた。
「おねえさん、なにしてたの」
何か嫌な気配を感じたリュミエールはおそるおそるヘルに歩み寄った。この、変に静寂を保つ空間から思いたくもない感覚を感じる。
「やだ、まだ残ってたの」
にこにこと微笑みながらリュミエールを向くヘルだが殺気を帯びていた。
右掌が若紫の光を発し、掌から短い刃が生える。それを勢いよくリュミエールに向かって刺そうとした。姿勢を低くし、彼女の心臓を目掛け、一突きしようとする。
速い!
閃光の如く放たれし一突きにリュミエールは全く反応していなかった。何も気づかずただ立つ。その童女の左胸の少し上に刃が刺さる———!
キィンッ
金属同士が重なりあう音が響いた。ヘルの体が何かに飛ばされる。飛んだ体は咄嗟に右足を地面に突き刺し、土煙をあげながら無理矢理体を止めた。
「やーね、邪魔者お?」
何事もなかったように平然とし、土煙を手で払う。「何よぅ」唇を尖らせて言う姿は不服そうな子供の様だ。
「うっせーよ」
メリッサのノルネンがヘルに向けられる。
彼女の隣で怯えているリュミエールのツーピースに小さく血が滲んでいた。まだ心臓には届いていなかったようだ。その小さな体をレイスが受け取った。
ノルネンの形状をベルザンディの形に変えたメリッサはヘルへと飛ぶように向かった。ヘルの後ろへはフリッグが竜を携えて向かう。二人で挟み撃ちにするという寸法である。
運命聖杖ノルネン、スクルド。
聖属性魔法の最高位呪文レ・ラクリスタル、発動。
ヘルの足元に淡い黄色で光る魔法陣が展開された!平面の円であるレ・ラクリスタルの魔法陣はだんだんと円錐状になり、ヘルをその立体の中に閉じ込める。
閉じ込められつつも彼女は平然としていた。
———暗黒系の敵に有利な聖属性魔法はその名の通り闇に属する者を葬る呪文である。
禁呪———あまりにも力が強大で習得には禁書を読む必要がある呪文———聖なる審判が事実上聖属性最強魔法であるが、そのすぐ下に属するレ・ラクリスタルは習得上聖属性最高位の魔法とされている。
魔法は、まず一番弱い第一階位の魔法を覚え、それを使っていくうちにその上の第二階位、第三階位と自然に習得していき最終的に最高位———第五階位の呪文を習得する。
だがそれは魔道書を使わない例であり、魔道書を使えば人によっては読むだけで習得可能だ。第一階位から覚えるのでは最高位習得までに果てしないくらいの時間がかかる。
メリッサの場合、ノルネン自体がそれを使えるようにされていたので魔道書を読んでいないが。
レ・ラクリスタル。円錐の中に閉じ込めた標的を容赦なく、面から突き生やした鋭利な水晶で刺す。
ヘルの肉体に次々と刺し込まれ、彼女の体に余裕がないほどにまで水晶が刺さる。避ける間も与えず、そして水晶から逃げれなかったヘルの体にはまるでそれから生えているように水晶が刺さっていた。
女体から紅いものが吹き出す。まるでスパッタリングでもされたように、吹き出したそれは水晶でマスキングされた円錐の面に飛び散って模様を描き出す。
それはたいへん綺麗だったが、人の生き血で描かれた物だと言うのだからなんとも賞賛出来るものではなかった。
Next>>
- Re: Veronica*参照700突破嬉しくて昇天しそう ( No.91 )
- 日時: 2011/01/05 21:22
- 名前: 葵那 ◆nCuTvDr8cY (ID: MLajaLHR)
- 参照: 元、雅でっすv
雅からこの名前に戻すことにしましたw
改めてよろしくです^^
そしてかなり遅れてしまいましたが、明けましておめでとう御座います!
ラッドウィンプスさんは、おかずのごはんとか無人島に持っていきたい(略)のCDくらいから好きになりましたw
12月にまたCD発売決定らしいので嬉しいばかりde((話が長くなるので強制終了
リアルですかー…私も慌ただしくなってきました((
朔さんもお体に気を付けて下さいね、また風邪が流行っているようなので…
おぉっ、参照700ですか!おめでとうございます^^
いくら更新が遅れようと、必ず見に来ますよ(`・ω・´)キリッ
なので朔さんも無理せずに頑張ってください!
- Re: Veronica*参照700突破嬉しくて昇天しそう ( No.92 )
- 日時: 2011/01/06 18:25
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-
>>91 葵那様
あけましておめでとうございます!今年もまたよろしくお願いしまっす!
この前音楽番組でマニフェストだったかな?のPVやっててかなりテンションHIGHで見てましたw
私の場合、母親がBUMP OF CHICKENと間違えたのがきっかけで聞いて好きになりましたよ〜vCD出たんですか!それは大変だ—((
今日休み明けしょっぱなからテストでやばかったですorz
受験…ですよね。無理しないでくださいね!応援してます^^
応援コメント有難うございます!いまさらですが、もうタメとかでオッケーですよ!^^
- Re: Veronica*参照700突破嬉しくて昇天しそう ( No.93 )
- 日時: 2011/01/08 17:30
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: 出逢いが人を強くするの?それとも、別れが人を強くするの?-Veronica-
———生き血である。女はまだ生きていた。
「やだ、服に穴空いちゃったじゃない」
———は?
ごぷりと口元から黒くどろりとした液体を吐き出しながらにやりと不敵に女は笑った。そして全くのノーモーションで躰に突き刺さる水晶の槍を、それだけでは無く魔法陣すら一瞬で消し去った。硝子を割ったかのように全て砕け落ちる。
ヘルは右手で自分のつま先から頭のてっぺんまで、一本の直線を描くように撫でた。すると手が通り過ぎた場所から傷口も、服の穴も全て塞ぎ始めあっという間に最初フリッグらが見かけた姿となんら変わらぬ姿になっていた。
———聖属性魔法最高位のレ・ラクリスタル……だぞ!?
その光景にレイスは驚愕する。魔法と言っても種類は様々。第一階位に属する聖属性魔法だけでも数百種類はある。そんな数多の魔法の中でもレ・ラクリスタルは聖属性魔法の頂点に立つものだ。同じ属性魔法でもこれを超えるのは、禁書を読んで習得するしかない"聖なる審判(ホーリエスト・ジャッジメント)"だけである。
そんな呪文を悉(ことごと)くヘルは破り去った。だが茫然としている暇は無い———!
跳躍したフリッグが背後からヘルの背中にスニーカーを押しつける。全体重をこの脅威の女の体に押しあて、前方へと踏み倒す。まるで女体をトランポリンのように扱い、少年の小柄な躰は後方へ、そして地面にそっと着地した。
「なんだか分からないけど、眠ってろ!」
フリッグの怒鳴り声と同時にヘルの周囲にあった音が一瞬で刃に変わり、ヘルに降りかかる。———が。
「———弱くなったわね」
攻撃に呆れたヘルは呟くように言った。フリッグに幻滅したのだ。ああ、あの頃の強さの欠片もないじゃない。
手を一振りするだけで音で出来た刃を全て振り払うことが出来た。こんなもの、私たちにとってはくだらない餓鬼の足掻き。余裕綽々のヘルの背後から大剣を振り下ろすレイスの姿があった。
斬!!
レイスが振り下ろしたクレイモヤの刃は女性の髪をバサリと切り落とす。いや、それしか出来なかった。精一杯の攻撃でたったそれだけ。
だがそのヘルの不意を突いたかのよう、彼女の腹部に大きな衝撃が走った。内臓が圧迫され、躰の中にある臓器が口から出そうな感覚に陥る。
よろけた女の足元を魔法陣が捕えた!運命聖杖ノルネンのウルズである。咄嗟に地面に錫杖を突き刺したメリッサをヘルの目が察知する。軽く女は舌打ちした。
レイスの攻撃はブラフだ。そちらに気を行かせ、背後からフリッグの攻撃を与える。それにより隙の出来たヘルの足元をウルズで捕え、身動き出来なくするといった寸法だ。
そのチームワークの良さにヘルは多少ながら感心する。
ヘルに歩み寄ったフリッグが冷徹な視線を浴びせながら、言った。
「質問に、答えて貰おうか」
女は頷くしかなかった。
* * *
不安な程の静寂にリュミエールの小さな体躯は″ある嫌な現実の肯定″に蝕まれつつあった。
童女は周囲をきょろきょろと見回す。誰も居ないし、破壊された痕跡が残っている。
あの若紫のおねえちゃんが殺ったのかと、決定的な証拠もなくただ自分の考えに思考が支配されてそのような答えだけがリュミエールの中に生まれる。それは徐々に″憎しみ″という名の糧に育まれてゆく———。
真ん前で足を魔法陣に吸い付けられた女の姿を見るだけで激しい憎悪が込み上げてくる。
———だめだめ、そんなの考えちゃ。
首を激しく横に振り、感情を呑み込んだ。まだ微かに残っている理性が、それを心の奥深くに押し込めた。
感情は沈む。心という大海原の深海に感情を押し込めた痕跡であろう、水面に静かに波紋が広がり、消えた。
卑しく笑うヘルに堪えながら少女はたっていた。
「立場分かってんの、アンタ」
琥珀の眼をぎらつかせ、メリッサはヘルに言う。
「ふふ、分かってるわよ」嘲るような笑みを浮かべる様子は、実に不愉快だった。捕らわれているにも関わらず何故か余裕な振る舞い方である。「訊きたいことでもあるんでしょ」
静かに歩み寄ったフリッグの先を、小さな体躯が駆ける。フリッグの先に立ったリュミエールが不安にまみれた表情を向けて、静かに訊ねた。
「み、みんな……マックールの、みんなは………………?」
「死んじゃった」
ヘルの容赦ない返事がリュミエールの躰を貫いた。悪いとも思っていない、実に清々しい返事だった。鋭い刃に変わったそれは幼い少女の心に深く刺さり、空いた穴を″絶望″で満たしてゆく———。
「てか、私が殺ったわ」
女の言葉で一瞬でその場が凍り付いた。フリッグの、メリッサの、レイスの———リュミエールの瞳が絶望の色に染まってゆく。
感情が理性よりも先に走った。
絶望と憎しみという空気を注入されてゆき、リュミエールの心の役割を果たしている様な″風船″は止まる気配も無い空気をひたすら受け入れて膨らんでゆく。
「あ……あ、あ………あああ……ああああ………———」
———所詮は器。出しっぱなしの水道水がコップを満たせば溢れるのと同じように、風船はぱちんと弾けた。まるで押さえていた壁を破壊したかのように。声と共に躰が震え、白の流れが黒く染められてゆく。まるで無垢で純粋な心を絶望や憎悪が染めていくのを比喩しているかのよう。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッ!!!!!!!!」
鎖から解き放たれた獣の様な咆哮をし、手に持つ紐———神器グレイプニルを握りしめ、一変したリュミエールはヘルの首を紐で絞め始めた。
「ぎ、ぎざ……っ。貴様がっ、みみ———っん、皆、をっっ———………!!!!」
理性がぶっ飛び、リュミエールの口からは上手く言葉が紡がれていない。言葉を紡ぐ糸車が完全に狂っている。
ぎりぎりぎりぎり———。細いリボンの様な紐が女の肉に食い込む。徐々に絞まってゆく、がヘルは平然としていた。
「絞めても死なないわよ。それに、グレイプニルの使い方違うし」
へらへらとするその姿に憤ったメリッサが首を絞められているヘルの躰を殴り飛ばした。
そして咄嗟にレイスがリュミエールの小さな手から紐を無理矢理外した。抵抗する小さな体躯を押し倒し、意地でも止めさせた。
歩み寄ったフリッグの背中から現れたポチが巨大化し、鋭利な爪でヘルの腹を貫く。まるで虫ピンに刺された虫のように地面に押し倒した躰を刺した爪で押さえつける。やはり相変わらずヘルは余裕であった。
「落ち着け、リュミエール!お前が何しても、駄目なんだ」
「嫌だ!!こいつだろう!?こいつがっ———!!」
暴れる小さな躰を押さえつけながら、そっとレイスは頭を撫でた。落ち着かせなければ、落ち着かせなければ。
「コイツを殺して、何が残る!!」
その言葉にピタリとリュミエールの動きが止まった。真白の目から一筋涙が溢れ落ちる。それは頬を伝って、冷たい地面を濡らした。
レイスはリュミエールの手に気付く。血が滲んでいた。紐を力一杯握っていた、手だ。そっとその手を握った。
「感情的で仕方ないわ。まぁ、今回は遊んでる暇ないけどね」
横たわりながら首から紐を取り、ヘルはメリッサの足元に投げて返した。そっと少女はそれを拾う。血が滲んでいた。
「———感情的、じゃなけりゃ人じゃ無いじゃんか」
俯きながらメリッサは呟いた。———誰にも向けてないのだろう。ただ自分に言うような風だった。
「相変わらず楽しい仲間に囲まれてるじゃない〜、フリッグぅ。
どーお、楽しい?」
「———何が、だよ」
肩が震えた。無意識にフリッグの目から涙が出ていた。
怒りに身を任せてはいけないと自分を押さえつけ、少年の二つの翡翠は哀れみを込めて女を見下していた。「アンタ、可哀想だよ」
『———可哀想な人』
———やぁね、言動もホンッと変わってないじゃないのよ。昔っから変わらないわぁ。クリュムを見る姿と。固いのね。
あの暖色の長髪を靡かせた男が自分に向けて言う台詞と同じだ。昔から変わらないこの様子をヘルは静かに笑っていた。
「千年ぶりに会っても同じ台詞。凄い男だわぁ」
ヘルの躰が透けてゆく。
その様子に四人はただ立ち尽くすだけだ。
「たお、し———?」メリッサがそう呟いたがそうでは無いようだった。ヘルがにこにこしながらリュミエールを見つめた。
右手から白く透明で綺麗な石ころが現れ、それをエンジェルオーラの童女に見せつける。
「貴女の仲間はこーこっ。また会いましょう〜、エンジェルオーラの生き残りさんっ。
二人の琥珀の種っ」
地面の色がヘルの肉体に同化してゆく。石ころを見せつけながら笑った。
そしてフリッグに視線を送る。
「フリッグ=サ・ガ=マーリン」
「待てよっ!!」
伸ばしたフリッグの手も虚しく、ヘルは消えた。手は空気だけを掴んだ。唇を噛み締める。鉄の味が口内に広がった。
泣きじゃくりそうなリュミエールに駆け寄ったメリッサがレイスを退けて童女の躰を抱き締めた。
男のすべき行為とは思っていなかったレイスはそっと全てをメリッサに委ねた。あれは母の温もりを感じるべきだと思い。
レイスは空を見上げた。日が暮れてきている。灰色が夕焼けを蝕んで行っていた。
小さくなったポチを頭に乗せたフリッグはレイスの隣に来て、彼と同じように空を見た。
メリッサの胸に顔を埋めたリュミエールは黒髪を掻き乱した。そっと暴れるような小さな体躯をメリッサは強く抱き締める。リュミエールの口が大きく開かれた。二つの真珠玉からは大粒の涙が溢れた。
「うっ————、ああああああああああああああああああああああっっっっ————!!!!」
———あ、雨………。
フリッグの掌に空から雫が落ちた。手を濡らすそれに気付き、少年は再度見上げる。———曇天。
降り始めた雨は、音を消してゆく。雨の降る、静かな世界にはただただ齢七つの女の子が泣く声だけがしていた———。
* * *
『神様って、居るのかなぁ』
かつてアンバー種の少年は孤児院の修道女にそう訊ねた。
レイスは覚えている。自分がそう訊ねたのを。
そして、今思う。
———もし神様が居るのなら、何故これ程まで残酷な運命をひ弱な存在に与えるのか、と。
そんな世界は、実に残酷で———。嗚呼、今もこんな世界が目の前にある。
———俺たち人間は実に弱い存在だ。
だから、きっと見えない″神様″という存在にすがるのだろう———。
口の中に入り込んだ″雨″は何かしょっぱいものを含んでいた。
<Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ- -Fin->
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