二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 285章 囮 ( No.324 )
日時: 2011/10/14 23:16
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「テペトラー、冷凍パンチ!」
「ヨマワル、影分身」
テペトラーは拳に冷気を纏わせてヨマワルに殴りかかるが、ヨマワルは分身を無数に作り出し、その拳を回避する。
「シャドーパンチ!」
次にテペトラーは拳に纏わせた影をヨマワルへと撃ち出す。
「無駄ですよ。ヨマワル、守る」
影の拳は数多の分身の中から本物のヨマワルを見つけ出し、高速でん飛んで行くが、ヨマワルは自分の周囲に防御の結界を張る事でその拳を完全に防ぐ。
「ちっ、テペトラー、シャドーパンチ連打!」
「ヨマワル、守るです」
テペトラーはとにかく、あらん限りの影の拳を撃ち出す。
ヨマワルは結界を張ってその無数の拳を防御するが、しかし如何せん数が多いために全てを防御することはできず、結果何発か喰らってしまった。
だが
「くそっ、やけにかてぇな、そのヨマワル!」
「当然です。そのように鍛えていますからね」
ヨマワルは効果抜群のシャドーパンチを受けたというのに、平然としている。
どうやらこのヨマワルは、種ポケモンと言えど結構防御面を鍛えられているようだ。
「……まあ私のヨマワルが堅いのは確かですが、ヨマワルにダメージが通り難いのは、あなたのテペトラーだって関係があるんですよ?」
「……てめえがやったんだろうが」
ザキはチラリと、テペトラーを見遣る。
するとそのテペトラーの腹部は、焼けていて、今もなお熱を持っている。
早い話が、テペトラーは今、火傷状態なのだ。
「あなたのテペトラーは、見るだけで相当攻撃に特化されているのは見て取れましたからね。それなら毒々より、鬼火の方が良いと思いまして」
テペトラーはバトルが始まってすぐ、ヨマワルから鬼火を喰らった。
鋼や毒タイプにも持久戦を持ち込むためなのだろうが、この場合はテペトラーの強大な火力を抑制する役割もある。
水タイプなのに火力の高いテペトラーを、炎技の鬼火で制す。別段、面白くもなんともないが。
「しかし思いの他耐えますね、そのテペトラー。そろそろ倒れる頃と思っていましたが……どうやら予測が外れたようですね。これは多少リスクを負っても、毒々で早めに終わらせるべきでしたか……まあ、今となっては後の祭りですね」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!テペトラー、オーシャンクロー!」
ザキはキレ気味にそう叫び(もしかしたらもうキレているかもしれない)、テペトラーもそれに負けないくらいの気迫を持ってヨマワルに飛び込み、海の力と水を纏わせた爪で襲い掛かる。
「無駄だと言っているでしょうに。ヨマワル、守るです」
案の定、ヨマワルは守るでオーシャンクローを防御する。
しかしザキだって、それが分からないほど馬鹿ではない。
「そこだ!シャドーパンチ!」
テペトラーはヨマワルが守るを解いた所に影を纏わせた拳を放ち、ヨマワルをぶっ飛ばす。
……馬鹿ではないとは言っても、遠くからで効き目が薄いなら近くから、という子供でも分かるような稚拙な作戦ではあった。
「そんな程度の低い策で、私に勝つなんて不可能ですよ」
確かにその通りで、ヨマワルはさっきよりも効いてはいるようだが、まだ普通にバトルを続行できる程度にしかダメージを受けていない。
「くっそ……こんなとこでタラタラ時間喰ってるわけには——!?」
「おや、気付きましたか」
ザンバの言う通り、ザキは気付いた。
ザンバの目的は境界の水晶を金庫から取り出し、盗み出すこと。本来なら取り出し、そのまま逃げるつもりだったのだろうが、そこで思わぬザキが来てしまい、仕方なくバトルとなってしまった。
だがザンバの目的は水晶を盗み出すことであって、ザキとバトって倒すことではない。ザンバほど頭脳明晰な者ならばアシドでもない限り当初の目的を忘れてバトルに没頭したりはしない。それにザンバほどの腕があれば、ザキの脇をすり抜けて逃げることもできたはずだ。あまり長々とバトルしていては、イリスやキリハなどの仲間も来るかもしれない。それどころかザンバは、勝つだのなんだのとペラペラ喋り、まるで時間を稼いでいるかののようだった。
これらの要素が導き出す結果とは

「残念ながら、私は境界の水晶は持っていません。かの水晶は、他の仲間が所持しております」

ザンバは手にする箱の中身をさらけ出しながら言う。箱の中身は見事に空っぽだった。
「畜生が……!」
怒りを抑え、呻くようにそう呟くザキは視線を移す。すると閉鎖的なこの金庫室の中でもう一つ、他の場所と繋がる穴……通気口を発見する。そして思った通り、通気口にはめられていた鉄格子は外されていて、何者かが出入りした痕跡がある。
「お前はただの時間稼ぎだったんだな」
「ええ、そうですとも。いやはや、上手く掛かってくれるものですね。ま、この場合はあなたが短絡的なのが幸いした、と言うべきでしょうか」
「……ほざけ」
言ってザキは踵を返そうとすると
「おっと、逃がしませんよ」
ザキの進行方向に突然ヨマワルが現れ、ザキの動きを制する。
「あなたを引き止めるのが私の役目ですから。この部屋は電波も通りませんからあなたは仲間も呼べない。今頃は私の仲間が、目的の物を持って外の者に届けているでしょう」
「……外の者?」
ザキはザンバの言った引っ掛かるワードを復唱する。
そしたらザンバは、律儀にも答えた。
「はい。あなた方は気付いていないかもしれませんが、私達だってたかが5、6人の少数で敵の本拠地に乗り込んだりはしませんよ。外にいくつか部隊を待機させています」
「部隊……だと……?」
「ええ、そうですとも」
そしてザンバは次の瞬間、事も無げ途轍もないことを言い放った。

「具体的には、焦炎隊、森樹隊、氷霧隊、毒邪隊……四部隊の総勢が、この拠点を包囲しています」



今回はザキとザンバのバトルだけとなってしまいましたが、その分結構細かい所まで書けました。ザンバは実は囮で、水晶を持ち去ったのは他のプラズマ団……さて、一体誰なのか。……まあ、まだ侵入したプラズマ団はフォレスとザンバしか明らかになっていませんがね。ですが次回からはちゃんと出していきますよ。というわけで、境界の水晶を持っているのは誰か!?次回もお楽しみに。

Re: 286章 対抗心 ( No.325 )
日時: 2011/10/15 00:31
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「なあリオー。俺リオに無理矢理引っ張られて連れて来られたみたいなもんで、いまいち状況を理解してねーんだけど」
リオとアキラは、現在共に行動している。しかし敵が全く来ないために手持ち無沙汰になってしまい、アキラは今のうちに今がどういう状況なのか聞こうと(しかし彼にそんな思惑はないかもしれない)、リオに尋ねてみる。
「……プラズマ団って、知ってるよね」
「プラズマ団? ……うーん、聞いたことはある気がするんだが、俺、最近イッシュに戻ってきたばっかだからなぁ……知らない」
「最終的にはそうまとまるのね……」
リオはややげんなりとしていた。
「プラズマ団っていうのは、端的に言って悪い奴ら」
「ホントに端的だな」
「そのボスが世界を支配しようとしているの」
「誇大妄想狂かよ」
「だから伝説のポケモンが危ないの」
「どこをどうやってそう結びつくかは分からんが、まあ漫画とかでよくあるパターンだと、伝説のポケモンを利用して世界を支配する気なんだな」
流石は幼馴染、ある程度の意思疎通は言葉を介さずとも出来るらしい。
「しっかし、俺がいない間、随分と変わったんだな、イッシュも……リオはなんとかって組織に入ってるし」
「PDOね、PDO。プラズマ団(P)壊滅(D)組織(O)。PDO……分かった?」
「分かった分かった……PKOだな」
「それは世界の平和を守る……なんだか次元を超えたような会話をしそうな気がするから止めよう……」
次元と言うか、世界観の違いである。
「……アキラがいれば、もしかしたら変わってたかもね」
唐突に、リオはそう言い出す。
「ん? 何が?」
「プラズマ団のこと。去年は、相当大変だった。プラズマ団もPDOも結構前から細々と活動はしていたけど、去年を境にプラズマ団の活動は活発化したからね。……まあ、今年も今回で、多忙にはなりそうだけど」
とリオがそう言い終えた時、ガコン、と何かが外れる音がした。
「いやはや、ダクトは細くて敵いませんね……いや決して私が太いというわけではないんですよ? ただ通気孔が細いんです。全く、PDOとやらはちゃんと換気するつもりがあるのか——」
タンッ、とその人物が通気孔から飛び降り、リオ達と目が合った。
その人物はそういう人種なのか肌が白く、蒼い瞳、ボブレイヤーの金髪で、ガイアとはまた違った軍服。腰には回転式拳銃を吊っている。
この人物は、7Pレイの部下、サーシャだ。しかし以前とは出で立ちが微妙に違う。軍服の細部と、吊っている拳銃の種類、それから前はベレー帽を被っていたが、今は被っていない。
しかしリオ達(しかしアキラはどうだか不明)はそんな些細な事はどうでもいい。それどころか彼女とは初対面だ。

だがサーシャが手に持っている、境界の結晶が入っている箱だけは、どうしても見逃すことは出来ない。

「……どうやって金庫まで辿り着いたかは知らないけど、ここで私達に見つかったのが運の尽きだね。その手に持ってる物、返してもらうよ」
「……返せと言われて素直にはいどうぞと返すほど、私は馬鹿ではありません」
ただし、通気孔から出て敵に見つかるほどに、抜けてはいるようだが。
「え? なに? このキレイなお姉さんが敵? マジで?」
「マジで。だからほら、さっさと構える」
リオはアキラにそう促すと、アキラは渋々ながら動く。
「なーんかいまいちやる気出ないけど、しゃーねーわな。……サンダース」
アキラがそう呼ぶと、今まで触れなかったがずっと彼にくっついていたポケモン、サンダースが前に出る。
「サンダース、電気タイプですか……ならばこのポケモンで行きましょう。リベルラ(Riberura)」
サーシャが繰り出したポケモンは、リベルラと名付けられたドラゴン・地面タイプのポケモン、フライゴンだ。
「地面タイプかよ、こりゃ、ちっとばかし不利かもな」
「なら、手を貸そうか?」
リオは言う。
「今回はあんまり、正々堂々とか言ってられない事態らしいんだよね。庫は破られちゃったらしょうがない。だからこういう場合は、無理せず協力すべきだ……って、キリハが言ってた」
受け売りだったらしい。
微妙に決まらない。
「出て来て、シャンデラ!」
リオが繰り出すのは、誘いポケモンのシャンデラ。リオのエースポケモンだ。

ポンッ

と、その時、もう一つボールが開く音が聞こえた。
しかしこの場にいる全員——今し方ポケケモンを出したばかりのリオを除き——誰もボールには触れていない。
だがしかし、この場にはもう一体のポケモンが現れた。
赤と白の蝋燭型のポケモン、青い炎は頭になっていて、白い手が宙に浮いている。
蝋燭ポケモン、ホムロソク。タイプはシャンデラと同タイプだ。
「あっちゃあ……そういえば忘れてたな、こいつのこと」
ホムロソクは勝手に出てくるなり、凄い気迫でシャンデラを睨み付ける。
「えーっと……なんだっけ、このホムロソク」
リオはアキラに尋ねる。
「ホムロソクはお前のシャンデラに対抗心燃やしてんだよ、炎なだけに」
「別にそんなに上手くない。で、なんでそうなんだっけ?」
「タイプ同じだし、どっちもメスだからじゃないか?」
まあなんにせよ、いくら正々堂々と挑まなくとも何体もポケモンを出して戦うのは流石に気が引けるので、アキラはサンダースを下がらせる。
ついでにリオはシャンデラをボールに戻す。するとホムロソクは途端にやる気を……そんなになくしているわけでもなく、矛先がリベルラの方へと向いただけだった。
「……まーそんじゃ、ここは俺が相手になるよ」
「そうですか。しかし、私に簡単に勝てると思わないでくださいね?」
「当たり前だ」
アキラはにやりと笑い

「簡単に勝ったら、面白くないだろ?」



今回はサーシャを出すので精一杯でした。まあしかし大丈夫でしょう、なんとかなります、たぶん。さてご覧になれば分かるでしょうが、水晶の箱を持っているのはサーシャです。ですが次回はたぶん、他の人とのバトルフラグになると思います。というわけで、次回もお楽しみに。

Re: 287章 漏洩 ( No.326 )
日時: 2011/10/15 01:32
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

実はイリス、イリゼ、Nの三人(+アキラ)には特定の持ち場がなく、各々適当に巡回してくれと、キリハから指示されていた。
なのでイリスはその指示通り支部内を適当に歩き回っていたら、Nを見つけた。
「あ、N!」
「ん……イリスか」
イリスはNに駆け寄る。別段、特に意味はない。
「N、プラズマ団は見つかった?」
「いや、まだ一人も見つかってないよ……イリスは?」
「僕もだ……向こうは、結構少数で攻めてきてるのかもしれないな」
「もしかしたら、大人数かもしれないけどね。単に控えているだけで」
まあともかく、Nはまだ敵を見つけていないとのことだ。それにそれは自分も同じなので、イリスはすぐにNと別れ、巡回に戻ろうとする。
しかし
「それじゃ、イリス」
「うん……。……?」
イリスはその時、何か違和感を感じた。いや、違和感とは少し違うかもしれないが、そうとしか形容できない感覚。何かが違う。真実ではない。そうイリスは感じ取った。
イリスは背を向けるNの腕を掴み、そして

「お前……誰だ?」

そう、言い放った。
「……流石は真実の英雄。物事の心理を見抜く目に優れているな」
その声はNだったが、口調はまるで違う。
Nの姿をした何者かはイリスの手を振り払い、若干の距離を取る。
「もう少し隠し通せると思ったが、まあ流石に幾度と一緒にいれば、違和感も感じやすくなってしまうか」
そしてその口調はNではなく、声ももっと低い、成人男性の声だった。
「お前……誰だ?」
イリスはもう一度、さっきと同じことを尋ねる。
「誰、とな。しかし主は既に拙者のことを存じているはずだがな」
Nの姿をした何者かは次第にその化けの皮を剥がしていき、最後には、全く違うものとなった。
立たせた黒髪のせいもあるのか、背が高く、現代ではおよそありえない忍装束を着て眼帯を掛けた男。
そして手には、今までそうやって隠していたのか、如何にもという感じの重箱を携えている。
「以前、既に名乗ったが、今一度言おう。拙者の名はハンゾウ、フレイ殿率いる焦炎隊の者だ」
「……その重箱、境界の水晶が入っているよね」
イリスはハンゾウの名乗りを無視し(というかイリスは普通にハンゾウのことを覚えていた)、重箱の中身をピシャリと言い当てる。
「……ほう、そこまでとは。真実の英雄、侮りがたしだな」
ハンゾウは本心ながら、感心したような事を言う。
「はぁ……今までのNは、お前が化けていたんだな」
「左様。いやしかし、よくあそこまで騙されると思ったよ。主らは宝物庫の場所、守護の配置、経路……我々が知りたがっている情報を全て話していたからな」
つまりまとめると、ハンゾウは今まで——恐らくホワイトフォレストでイリス達と出会った時は既に化けていたのだろう——Nに化け、イリス達を騙し、仲間と思い込ませて境界の水晶の情報を引き出していた。
プラズマ団の本拠地に乗り込む前日を狙ったのも、自分が水晶を守る振りをして逆に水晶を奪うのも、思惑の一環だろう。
「でも、水晶をキリハさん見つけたか否かは、僕らにも分からなかったはずだ。なのにその情報を引き出すってのは、ちょっと無理がある気がするね」
「なに、元々境界の水晶がどこにあるかの目星は大体ついていたのだ。だから今回は、上手く事が運んだに過ぎない」
そう言いつつ、ハンゾウはボールを取り出す。
「……やるか」
そしてイリスも同じように、ボールを手に取った。
両者睨み合い、今正にバトルが始まる、その時だった。

「ハンゾウ、ストップだよー。君はまだ戦っちゃダメー」

ハンゾウの後方から、やる気のない気の抜けた声が響く。
ハンゾウは後ろを振り返り、イリスもそちらへと目線を移す。
するとそこには、所々が巻き毛になった緑色の髪に、燕尾服を着た少年——に抱えられている、赤く長いポニーテールに浴衣という出で立ちの少女、7Pフレイがいた。
「ん、シャンソン下ろしてー」
「あ、はい。分かりましたフレイさん」
燕尾服の少年、シャンソンは、フレイをそっと床に下ろす。ちなみに床はお世辞にもキレイとは言えない。
「フレイ殿……」
「ハンゾウさー、そんな大切な物持ってんだから、無闇に戦わないのー。だからここはあたしに任せて頂戴なー。これは命令だよー?」
「……承知いたした」
ハンゾウは忠実に、フレイの命令を聞き入れ、通路を音もなく走り去っていく。
「! 待て——」
「おおっとー? 英雄君の相手はこのフレイちゃんだよー?」
フレイはイリスの前に立ち塞がり(立たずに寝転がっているが)、イリスの通行を防ぐ(正直簡単に跨げるが)。
「ここを通りたくばあたしを倒してからにしろ、ってねー。そんじゃー始めますかー。メタグロス、出番だよー」
フレイが繰り出したのは、その声に反して随分ゴツイポケモンだった。
蒼い鋼鉄の体を持つ四足歩行型のロボットのような形状、顔面にはX字型の鉄のプロテクターのような物が取り付けられている。
鉄足ポケモン、メタグロス。鋼・エスパータイプのポケモンだ。
「おいおい……今まで散々気の抜けたポケモン見せ付けといて、この期に及んでこんなゴツイの出すか、普通……?」
イリスはメタグロスの圧倒的な気迫に押されていた。ちなみに気の抜けたポケモンとは、恐らくノコウテイとニートンだろう。
「えへへー。メタグロスは驚異的な演算能力を有していて、そんじょそこらのスパコンなんかよりよっぽど優れたポケモンなんだよー。お陰で仕事がはかどるはかどる……いやー便利だねー」
なんだか宿題を代わりにやる学生のようだった。
「……まあでも、こんだけ強そうなら、その分やる気も出るってもんだ。逃げず臆せず屈せず、真正面から戦ってやるよ」
イリスは再度ボールを強く握り締め、敵を見据える。



今回は、実はNはハンゾウが化けていた姿で、情報が思い切り漏洩していたのが明らかになりました。そして境界の水晶を持っているのはハンゾウです。前回サーシャが持っていると勘違いした人、僕は水晶の箱を持っていると言ったのであって、水晶を持っているとは言ってないです……はい、すいません。完全に屁理屈ですね……ま、まあそれは置いといて。やたら登場してる割にはまだほとんどバトルをしていないフレイが、遂に本格的にバトります。次回になるかどうかは未定ですが、とりあえず次回をお楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.327 )
日時: 2013/03/28 02:31
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

レイ・女・18歳
容姿:地面に着きそうなほど長い青髪に、氷のように冷たい眼差し、簡素な水色のワンピースを着ている。そして髪にはプラズマ団の紋章の形をしたヘアピンを付けている。両脚(正確には両太腿)にはキュレムの両脚を模した刻印が刻まれている。
性格:心を閉ざしていて、その声や眼差しは氷柱のように鋭く冷たい、もしくは心に突き刺さると形容されるほど。声や態度に反して誰に対しても敬語で接し、敵味方年齢上下関係に囚われず、誰に対してもさん付けで呼ぶ。ただ、何故かフレイだけはちゃん付け。心を閉ざすのは昔、プラズマ団に入る前に壮絶な苦しみを味わってきたからだそうで、話の端程度を知っているフォレス曰く「イッシュの中で最も傷ついた人」。解放すると押し止めていた感情が溢れ出し、感情のコントロールが利かなくなる。特に激昂すると力が暴走することもあるらしい。
序列:7Pで六番目に強い、解放状態なら序列四位。
備考:レイ氷霧隊を率いている。
名前の由来:氷河を意味する英単語、glacialから。

手持ちポケモン

レジュリア・♀
技:アイスバーン、サイコバーン、ハイドロポンプ、放電
特性:鈍感

ヤミクラゲ・♂
技:大洪水、気合球、吹雪、危険な毒素
特性:免疫

ヨノワール・♂
技:喰らいつく、怒りの炎、地震、サイコパンチ
特性:プレッシャー

テッカニン・♂
技:連続斬り、燕返し、潜る、高速移動
特性:加速

Re: 288章 電子音 ( No.328 )
日時: 2011/10/15 22:02
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「リベルラ、ドラゴンクロー!」
「ホムロソク、かわしてマインブラスト!」
アキラ対サーシャのバトル。
サーシャのリベルラ(フライゴン)は龍の力を爪に込めて襲い掛かるが、ホムロソクはゆらゆらとした不規則な動きでそれをかわすと、自分の周囲を爆発させてリベルラを吹っ飛ばす。
「くっ、しかしドラゴンタイプのリベルラには、炎技の効果は薄いですよ。リベルラ、燕返し!」
リベルラは空中で体勢を立て直すと再度ホムロソクに突っ込み、今度は高速で翼を振り、ホムロソクを切り裂く。
「まだですよ、騙し討ち!」
リベルラはホムロソクから距離を取り、そしてまた突っ込んでいく。
「そう何度も喰らうかよ。ホムロソク、マインブラスト!」
ホムロソクは爆発を放ち、リベルラを迎撃しようとするが、リベルラはその直前で軌道を変更し、ホムロソクの側面に爪の一撃を叩き込む。
騙し討ちは悪タイプの技、ゴーストタイプを持つホムロソクには効果抜群だ。
「地震!」
さらにそこに、リベルラは地面を大きく揺さぶって地震を引き起こそうとする。
「流石にそれはやばいぞ……乗り移る!」
ホムロソクはリベルラが地面に尻尾を叩きつける直前に自らの魂を切り離し、リベルラに憑依する。
「! リベルラ!」
するとリベルラは苦しみだし、地面へと落ちる。
「よし、もういいだろう。戻ってマインブラスト!」
ホムロソクは魂を元の体に戻し、爆発を引き起こしてリベルラを攻撃、ふっとばして壁に激突させる。
「くぅ、リベルラ、ドラゴンクロー!」
「させないぜ、ホムロソク、フラッシュ!」
リベルラは龍の力を爪に込めて襲い掛かるが、ホムロソクは眩い閃光を放ち、リベルラの目を封じ、動きを止める。
……はずだった。
「!? ホムロソク!」
リベルラはフラッシュを喰らい、しかし平然とホムロソクへと接近し、そのまま強烈なドラゴンクローを喰らわせた。
「なんでだ……?」
フラッシュでフライゴンの命中率は下がったはず。確かに一段階命中率を下げた程度ではたいした効果は得られないにしても、放った直後に全く効果がないのはおかしい。
「なに、簡単なことですよ」
サーシャは言う。
「砂漠で暮らしているフライゴンは、砂嵐から眼を防護するために、眼球の周りを赤い皮膜で覆っている。この膜は砂嵐だけでなく、赤外線や紫外線……強力な閃光をも、防げるのですよ」
つまり、その皮膜でリベルラにはフラッシュが効かなかったようだ。
「ではそろそろ終結と——」

ピリリリリ

とその時、サーシャの胸ポケットから電子音が鳴り響いた。
「おや、思った以上に次官を浪費してしまったようですね……では私は時間ですので、ここでおさらばです。リベルラ!」
サーシャは逃げる気なのか、素早くリベルラに乗り込んだ。
「おい待て!バトルはどうした!」
「私は元々工作員ですので、バトルは本業ではありません。ですから、途中で放棄したとしても、なんら関係ありません」
そう言い残すと、サーシャはリベルラと共に通路を突き進んでいった。
「リオ!」
「分かってる!」
そしてリオとアキラも、サーシャを追うべく通路を駆ける。



「テペトラー、オーシャンクロー!」
「ヨマワル、守る!」
ザキとザンバのバトル。
テペトラーは海の力を込めた爪でヨマワルに襲い掛かるが、ヨマワルは自分の周囲に結界を張り、その攻撃を防御する。
「……正直、信じられませんね」
ザンバは、唐突に言う。
「あなたのテペトラーは、鬼火を受けてからもう三十分以上戦い続けている。流石にもう体力が尽きてもおかしくないのに、それでも戦い続ける……一体全体、どういう育て方をしたんですか?」
「あぁ? どうもこうもねえよ。育て方云々じゃなくて、てめえとは根性が違うんだよ」
まさかの根性論だった。しかしザキならありえそうなのが不思議である。
「……そうですか。ヨマワル、影分身」
ザンバはやや呆れ気味になり、ヨマワルは自らの分身を多数作り出す。
「鬱陶しい、テペトラー、シャドーパンチ!」
テペトラーは拳に影を纏わせ、それをロケットパンチのように撃ち出す。
撃たれた影の拳は本物のヨマワルを見つけ出すとそれに向かって一直線に飛んでいき、その小さな体を吹っ飛ばす。
「冷凍パンチ!」
さらにテペトラーは拳に冷気を纏わせてヨマワルに殴り掛かる。
「守るです」
しかしヨマワルはそこで守るを使用し、テペトラーの拳を完全に防御。
「ふむ、これだけの力で何度も攻撃を繰り返し、なおかつ倒れない……さてはて、これは少々困ったことに——」

ピリリリリ

ザンバの言葉を遮り、ザンバの服の中から電子音が鳴り響く。
「おや、もう時間ですか。ではバトルはここまでですね。ヨマワル、戻りなさい」
ザンバはヨマワルをボールに戻す。
「って、おい!人を散々足止めしといて今更バトル放棄かよ!最後までキッチリやりやがれ!」
「善処します」
ザンバはザキの言葉をそう切り捨てると、ヨマワルとは違うポケモンを繰り出す。
「出て来なさい、サナギラス」
出て来たのは弾丸ポケモンのサナギラスだ。
「サナギラス、激突です」
サナギラスは近くの壁に全身全霊で思い切り激突し、破砕音を轟かせながら大穴を開ける。
「それでは、私はこれにて」
ザンバはサナギラスをボールに戻しながら、走り去っていく。
「……ちっ。待ちやがれ!」
そしてそれを、ザキは追いかける。



今回はアキラとサーシャのバトル、ザキとザンバのバトルとなっております。前半はアキラがやや押され気味でしたが、最後はサーシャが撤退していきます。後半もザキがやられていますが、最後にはザンバが撤退していきます。まあこれにはちゃんと意味があるんですけどね。というか、意味がないと正に意味不明ですしね。まあそんな話はどうでもいいですが。では次回はイリスとフレイのバトル。イリスは強ポケメタグロスに対し、どう戦うのか。お楽しみに。


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