二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
- 日時: 2013/04/14 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394
今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。
参照をクリックすれば前作に飛びます。
では、英雄達の新しい冒険が始まります……
皆様にお知らせです。
以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
となっています。
皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。
登場人物紹介等
味方side>>28
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624
目次
プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695
第十六幕 錯綜
一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756
第十七幕 決戦
零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕
>>774 >>812 >>818
最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851
2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825
あとがき
>>852
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
- Re: 516章 イリゼvsアシド ( No.765 )
- 日時: 2013/03/19 02:09
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、一人先走っていったイリゼが辿り着いたのは、古代の匂いが漂うこの都市で最も近代的なデザインの建物だ。
ガラス扉は自動で開き、内装も機械的。さらに奥に進むと、照明は暗くなり、床や壁、天井には幾重ものコードが伸びている。
どんどん奥へと進み、恐らく最深部と思われる部屋に、イリゼは到達した。何故そこが最深部だと思ったのかというと、それは単純明快。
この建物の主が鎮座していたからだ。
「ケヒャハハハ! ようこそ、僕のラボへ。歓迎するぜ、前代英雄」
高笑いながらイリゼを出迎えたのは、紫色の髪にGENIUSとプリントされたTシャツの上から白衣を羽織った男。首からは、プラズマ団の紋章が描かれたプレートを下げている。
毒邪隊統率、序列七位——7P、アシド。
「お前とはいっぺん戦ってみたかったんだよ。現英雄のデータは腐るほどあるが、父親であるお前のデータは全然なくてよー。だが、最後の最後でこうして直接対決ができるとは、夢にも思わなかった。ケヒャハハハ!」
ホログラムでも人工知能でもない本物のアシドは心底嬉しそうに笑うが、イリゼは全く笑っていない。むしろ不機嫌そうだ。
「……データが目的ってことは、実際に俺とまともな勝負をするつもりはねぇってわけか。くだらねぇ」
「そう言うなよ、前代英雄。データをとるのが目的だからって、本気でバトらないわけじゃない。むしろ、本気のお前のデータが欲しいんだよ」
言いながらアシドとイリゼは、それぞれボールを構えた。なんにせよ、アシドもイリゼも、やる気はあるようだ。
「勝負は分かりやすく三対三でいいか? あんまだらだらしててもしゃーねーしな」
「好きにしろよ。俺はお前をぶっ飛ばして、他の7Pとやらも潰すんだ。そんで次は雑魚狩りだ。スケジュールが詰まってんだよ」
「余裕だなぁ、僕に勝つのが前提かよ。確かに僕は7Pじゃあ一番弱い。その分をプラズマ団の科学力を上げることに努めたからな。だが、そんじょそこらの四天王は、余裕で薙ぎ払えるぜ?」
「だから、その程度なら余裕でぶっ倒せるつってんだよ! ぶちかませ、カンカーン!」
「そうかよ! なら、実験スタートだ、ダンカンス!」
イリゼが繰り出したのは、赤い球状の体にエイのようなヒレが付いたポケモン。日照りポケモン、カンカーン。
カンカーンが場に出ると、薄暗い室内は一気に明るくなった。カンカーンの特性、日照りが発動し、日差しが強い状態となったのだ。
対するアシドが繰り出すのは、石頭ポケモン、ダンカンス。異常に大きな球状の頭を持つ、シーラカンスのようなポケモンだ。
ダンカンスが場に出ると、突如、縁をなぞるように数十cmほどのガラスが出て来て、フィールドの四方を覆ってしまう。さらにフィールドには水が注ぎ込まれ、ちょうどダンカンスの高さ分の水が、フィールドに満たされる。
「……こっちは特性で下地作ってんのに、そっちは直接手ぇ出すんかよ」
「邪道か? だがそれが僕だぜ。ケヒャハハハ! それに、今回の戦いは戦争だ。卑怯とか汚いとか、言ってる場合じゃねえだろ」
「……それもそうか」
これはアシドの言うことが正しい。そもそも悪の組織に対して卑怯汚いと言う方が間違っているのだ。それに戦場がアウェーである以上、相手側に有利なのは致し方なのないこと。ここは素直に退くしかない。
「水と岩か。俺のデータはないとか言ってたが、どういうポケモンを使うのかは分かってるみてぇだな」
「あ? いやいや、これはまったくの偶然だよ。お前のデータは本当にねえんだよ。分かってんのは、お前が前代英雄で、現英雄の父親だってこと。あとは精々、最強メンバーは今まで使っていたポケモンとは別にいるってことくらいだ」
何気なくイリゼがそう呟くと、アシドは少し呆気に取られ、手を横に振って否定した。
「なんでもいいが、そろそろ始めようぜ。こっちは時間も押してんだ」
「ああ。お前のデータ、存分にとらせてもらうぜ」
そして、二人と二匹は、同時に動き出した。
「カンカーン、ウッドハンマー!」
「ダンカンス、諸刃の頭突き!」
カンカーンは水面すれすれを飛び、樹木の力を宿した拳を振りかざす。
ダンカンスは水面から顔を半分出した状態で、凄まじい殺気を発しながら突貫する。
両者の攻撃が激しくぶつかり合ったが、結果はあっさり決まった。
「カンカーン!」
カンカーンが大きく吹っ飛ばされて、ガラスに激突。その衝撃でひび一つ入らなかったことと、ぶつかった際の音からして、恐らくは強化ガラスだろう。
カンカーンとダンカンス。素の攻撃力ではどちらも同じくらいなのだろうが、やはり諸刃の頭突きという技の威力は凄まじい。しかもダンカンスは特性、石頭により、諸刃の頭突きの反動を受けないというのだから、恐ろしい限りだ。
「……カンカーン、サイコバレット!」
今度は遠距離から攻めるつもりなのか、カンカーンは念力を固めて作り出した銃弾を乱射するが
「弾き返せ! スターフリーズ!」
ダンカンスも巨大な星型の氷塊を飛ばそ、銃弾を弾いてそのままカンカーンに直撃させる。
「地震だ!」
「っ! ぶち壊す!」
続けてダンカンスは地面を揺るがして地震を放つが、カンカーンも素早く地面に拳を叩き付け、地震を相殺した。
しかし、
「スプラッシュ!」
直後にダンカンスが水飛沫を散らしながら特攻し、カンカーンを突き飛ばした。日照りで威力は半減だが、タイプ一致に効果抜群なので、ダメージはそれなりにあるだろう。
「もう一発スプラッシュ!」
「っ……調子に乗んな! カンカーン、ぶち壊す!」
再び特攻してきたダンカンスを、カンカーンは上から思い切りヒレを叩きつけることで強引に止めてしまった。
「ウッドハンマー!」
「スプラッシュ!」
続けて樹木の力を込めた拳を振り下ろすカンカーンだが、ダンカンスは身を捻ってそれをかわし、飛沫を散らしながら尻尾をカンカーンにぶつけ、吹っ飛ばした。
「追撃だ! スターフリーズ!」
さらに星型の氷塊も直撃させ、追撃をかける。
「くっ、最弱とか言うわりには、案外強えじゃねぇか……!」
「ケヒャハハ! 当然だ。今の僕のポケモンは、最高状態までチューンアップさせてっからよ。既に解放も済んでる。今ならフォレスの野郎にも負ける気がしねーよ。ダンカンス、地震!」
強気な態度のまま、アシドは技を指示。ダンカンスが強力な地震を引き起こす。
「かわしてサイコバレット!」
カンカーンも大きく飛び、地震を回避。そのまま念力の銃弾をダンカンスへと撃ち込むが、防御の高いダンカンスだ。まだまだ余裕の表情をしている。
「もう一発だ! サイコバレット!」
「突き抜けろ! 諸刃の頭突き!」
カンカーンは再び念力の銃弾を連射するが、今度はダンカンスもただ喰らうだけでなく、銃弾を受けながらも凄まじい勢いで突っ込んで来た。
「ちっ、もう避けられねぇか……ぶち壊す!」
もう回避は手遅れだと判断し、カンカーンはすべてを破壊する勢いで拳を突き出すが、ダンカンスの頭突きの方がずっと威力が高い。そのため、カンカーンはあえなく吹っ飛ばされ、強化ガラスに叩き付けられる。
「スプラッシュだ!」
そこにダンカンスが、飛沫を散らしながら特攻。カンカーンへと迫る。
「寄せつけるな! カンカーン、サイコバレット!」
対するカンカーンは念力の銃弾を乱射してダンカンスを銃撃。諸刃の頭突きよりも勢いの劣るスプラッシュでは突き抜けることができず、ダンカンスは中途で止まってしまう。
「今だ! カンカーン、フレアドライブ!」
そこでカンカーンは全身に燃え盛る爆炎を纏い、ダンカンスへと突撃。日照りで威力が増したフレアドライブは強烈の一言に尽き、如何に効果いまひとつでも、それなりのダメージは通る。
「終わらせろカンカーン! ウッドハンマー!」
最後にとどめとして、カンカーンは樹木の力を宿した拳を振り上げるが、
「そいつは食らいたくねーな。スターフリーズ!」
振り下ろす直前でダンカンスは星型の氷塊を発射し、カンカーンを押し戻した。よってウッドハンマーは、ダンカンスには届かない。
「ダンカンス、諸刃の頭突き!」
さらにダンカンスは、身を削るような凄まじい勢いでカンカーンへと突貫する。
効果抜群に加えてタイプ一致。なにより素の威力が高い諸刃の頭突きをまともに受ければ、戦闘不能は必至だ。しかしカンカーンは動かない。
「まだだ、まだ動くなよ」
ジッと強化ガラスを背にしてダンカンスを見据えるカンカーン。その距離はぐんぐんと縮まっていき、あと少しで触れる距離までダンカンスが迫った刹那、カンカーンは動いた。
「飛べ!」
イリゼから発せられる短い指示で、カンカーンは真上に飛ぶ。するとダンカンスは強化ガラスに勢いよく激突した。
凄まじい激突音が鳴り響くが、強化ガラスもダンカンスも、傷一つつかない。しかしダンカンスは勢いを殺され、完全に停止していた。
そこを、カンカーンが襲う。
「今度こそ決めろカンカーン! ウッドハンマー!」
真上から落下してくるカンカーンは、樹木の力を拳に宿し、勢いよく振り下ろす。
「っ、ダンカンス!」
如何に強固なダンカンスと言えど、四倍弱点を突かれればひとたまりもない。その一撃で、ダンカンスは戦闘不能となった。
- Re: 517章 ミキvsフレイ ( No.766 )
- 日時: 2013/03/19 03:04
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、街の道から少し外れたミキは、広場のような場所に辿り着いた。
円形の広場で外周は段々に高くなっており、コロシアムのようだ。
とりあえず一番下まで降りたミキが見据えるのは、広場の向かい側。そこでミキを待ち構えていた、一人の少女。
華奢な体躯を簡素な淡いピンク色の浴衣に身を包み、赤髪のポニーテール。背中には、プラズマ団の紋章が描かれた団扇を差している。
焦炎隊統率、序列六位——7P、フレイ。
「やっと来たねー。待ちくたびれちゃったよー」
彼女はいつものように間延びした口調で、そんなことを言う。
いつもと変わらぬ雰囲気、変わらぬ眼の彼女だが、一つだけ相違点がある。いつもはうつ伏せで寝そべっているのに、今は広場の観客席と思しき段の上に腰かけている。
「……まるで、私が来るのを分かっていたみたいな口調だね」
「んー? まー、来るのが分かってたっていうより、君はあたしのとこに来るはずなんだよねー。だってミキちゃん、一回あたしにフルボッコされてるしー」
ゆるやかな口調で挑発するフレイだが、ミキは簡単に乗ったりはしない。ただ、少し顔をしかめるだけだ。
「リベンジ、したいと思ってたんでしょー?」
その一言が、とどめだった。
「……うん。次こそは勝つよ。絶対に!」
素早くボールを取り出し、ミキは強気に宣言する。フレイはそれを見ても、表情一つ変えない。
「かっこかわいいっていうのかなー。まーなんでもいいけどー。そんじゃー始めよっかー? 前は三対三だったけど、今回は四対四でー。ちなみにあたしはもう解放してるから、手加減とかできないよー?」
言って、フレイも側に置いてあったボールを手に取り、放り投げる。
「ニートン、出番だよー」
「出て来て、ハンタマ!」
フレイの一番手は、怠けポケモン、ニートン。ぬいぐるみのようなずんぐりした体に、如何にも物臭な雰囲気を醸し出すポケモンだ。
対するミキが繰り出すのは、半霊ポケモン、ハンタマ。二足歩行の白いオコジョのような姿で、体からは黒い魂が飛び出している。
「……あたしが最初にニートン出すこと読んでのハンタマかー。常々思ってたことだけど、君にはセンスを感じるねー」
「それはどうも。ハンタマ、シャドーパンチ!」
フレイの言葉を軽く流し、ミキは先制の指示を出す。ハンタマは拳に影を纏わせると、ニートンに急接近。ニートンを殴りつける。
「ブレイズキック!」
そしてそのまま足に炎を灯し、回し蹴り。
「ニートン、シャドーパンチだよー」
対するニートンは、遠心力で腕を振り、影の拳でハンタマを引き剥がすが、実際の攻撃はいなされてしまい、ハンタマへのダメージはほとんどない。
「もういっちょー」
ニートンは続けて腕を振り、今度は影の拳を飛ばす。
「サイコバレット!」
しかしハンタマの発射した念力の銃弾で拳は消滅、ニートンもそのまま撃ち抜かれてしまう。
「んー、これはまずいかもー。ニートン、一旦回復ー。怠ける」
ニートンはぐったりと体を地面に預け、怠けるようにして体を休める。すると、ニートンの受けた傷がみるみるうちに癒えていくが、
「シャドーパンチ!」
怠けている最中にハンタマのシャドーパンチがニートンにクリティカルヒット。この一撃で怠けるは中断。ダメージで回復量も微量となってしまう。
「ブレイズキック!」
さらにハンタマは炎を灯した足でニートンに正面蹴りを食らわせ、後方へと吹っ飛ばす。
「サイコバレット!」
続けて念力の銃弾を連射し、ニートンを撃ち抜いて追撃する。
ニートンは防御寄りのステータスではあるが、全体的にあまり強いポケモンとは言えない。ハンタマの猛攻をこれだけ受ければ、そう長くはもたないだろう。
「ニートンが鈍いからって速攻で決めにかかってるねー。だったら……ニートン、怠ける」
ニートンは再び怠け、体力を回復する。しかしそこに、すかさずハンタマが接近し、
「ハンタマ、シャドーパンチ!」
影を纏った拳を叩き込む。
ニートンの怠けるは中断されてしまったが、同時に一瞬だけハンタマの動きも止まる。そして怠けるが中断されたということは、ニートンはいまから動くことができるということになる。つまり、
「ニートン、大欠伸だー」
ニートンは大きく口を開いて欠伸をし、ハンタマの眠気を誘う。これでハンタマは眠り状態、ここからニートンの反撃が始まる——はずだった。
「ハンタマ、ブレイズキック!」
ニートンが口を開いた瞬間、ニートンの顎にハンタマのブレイズキックが炸裂し、大欠伸は中断。どころかニートンは舌を噛み、悶え苦しんでいる。
「んんー、今のは速い……流石にあたしもびっくりだー。ニートン、大丈夫ー?」
フレイはハンタマの反射神経に驚きつつも、ニートンに声をかける。ニートンはなんとか態勢を立て直すが、まだ苦しそうにしていた。
「噛んだ舌に染みるかもだけど、我慢してねー。ハイドロポンプ」
ニートンは大きく息を吸い、直後、大量の水を噴射する。
「ハンタマ、かわしてブレイズキック!」
対するハンタマは跳躍して水を回避し、そのまま宙返りしつつ、炎を灯した足でニートンの脳天に踵落としを決める。
「続けてシャドーパンチ!」
「引き剥がしてー。ハイドロポンプ」
ハンタマが影の拳を繰り出し、ニートンもそれを阻止すべく水流を発射しようとするが、やはりハンタマの方が速く、ニートンは拳を喰らって吹っ飛ばされた。
「やっぱ相性が悪いなー」
フレイの言うように、これは相性が悪すぎる。ただタイプだけを見れば、格闘タイプがある分、通らない攻撃のあるハンタマが不利に見えるかもしれないが、ハンタマは高い機動力から効果抜群の技をほぼ確実に当てられるのに対し、ニートンは鈍足なため攻撃がかわせない。攻撃のモーションも遅く、攻撃する前にやられる。そもそも攻撃が遅いので避けられる、などといった面が出てしまう。
つまり単純な話、遅いニートンは速いハンタマには勝てないのだ。
しかしそこを引っくり返そうとするのが、7Pフレイだ。
「ニートン、シャドーパンチ。二発ねー」
ニートンは遠心力で腕を振り、二発のシャドーパンチを飛ばす。しかし影の拳はどちらも明後日の方へと飛んでいき、ハンタマは捉えない。
「続いてー、ハイドロポンプ」
そして直後、大量の水を噴射。水は一直線にハンタマへと向かっていく。
「ハンタマ、かわして!」
ハンタマにとって、直線軌道で襲い掛かってくる水流など恐れることはない。跳躍して簡単に回避する。
「シャドーパンチ!」
そしてそのまま、拳に影を纏い、ニートンを攻撃しようとするが、
「後ろ、注意ねー」
「え?」
直後、ハンタマの背後から二発の拳が襲い掛かる。効果抜群なので、ダメージは大きい。
「っ、やっぱり……!」
ミキは呻く。今の攻撃のからくりは単純だ。シャドーパンチは必中技で、飛ばせば敵を追尾する。それを利用し、最初、適当な方向へと飛ばしたシャドーパンチが戻って来たのだ。
「大抵の生き物は背後が死角だからねー。後ろからの攻撃にはどうしても反応が遅れちゃう。それは君のハンタマも例外じゃないっぽいねー。そんじゃーニートン、ハイドロポンプだよー」
ニートンは大きく息を吸い、大量の水を噴射する。
「っ、かわして!」
ハンタマはシャドーパンチを喰らって地面に落ちたものの、すぐに態勢を立て直し、真上にジャンプして水流をかわすが、
「追いかけてー」
ニートンもそのまま顔を上げ、水流の軌道を真上に修正。垂直に跳び上がったハンタマへと水流を命中させる。
「ハンタマ!」
「まだまだだよー。ニートン、シャドーパンチ」
続けてニートンは影の拳を飛ばす。必中技なので、ハンタマでもこの攻撃はかわすことができない。
「……ハンタマ、サイコバレット!」
それに対してハンタマがとった行動は、相殺。念力の銃弾を乱射し、影の拳を打ち消したのだ。
「ブレイズキック!」
さらにハンタマは足に炎を灯してニートンへと突っ込み、前蹴りを繰り出そうとするが、
「ハイドロポンプ」
直前でニートンもハイドロポンプを発射。ハンタマの足がなんとか水流を散らすが、ブレイズキックでは相性が悪く、ニートン程度の特攻でも相殺が精一杯だ。そして、
「ニートン、シャドーパンチ」
遠心力で腕を振り、ニートンの拳がハンタマへと直撃する——
「マッハパンチ」
「……え?」
——寸前で、ハンタマが消えた。
気付いた時には、ハンタマはニートンの背後に立っており、拳を構えている。ニートンは拳を振り切った姿勢で、完全に無防備。
「ハンタマ、シャドーパンチ!」
そしてハンタマの影の拳が、追尾するニートンの拳よりも早くニートンを直撃し、吹っ飛ばす。
地面を転がり倒れたニートンは、戦闘不能となった。
「……背後は生き物の死角、なんだよね」
ミキは得意げに言い、フレイも今の現象を理解する。
格闘タイプの技はゴーストタイプには効かない。これは格闘技をゴーストタイプに当てようとしても、そのまま透過するからだ。
逆に言えば、格闘技なら確実にゴーストタイプのポケモンを素通りし、通過できる。その性質を利用し、ハンタマはニートンの背後を取ったのだ。
「……戻ってー、ニートン」
フレイはニートンをボールに戻す。
- Re: 518章 ロキvsフォレス ( No.767 )
- 日時: 2013/03/19 04:55
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、ロキは森へと向かった。そこでも多数の下っ端に襲われたが、数は大したことがなかったので軽く撃退。そのまま奥へと進む。
森の中心部と思しき場所まで辿り着くと、そこには小さな湖——池と言ってもいいかもしれない——があった。そして、湖の対岸には一つの人影が。
「……誰かは来るだろうと思っていたが、まさかあんたが来るとは思わなかったな。前代英雄」
無造作に跳ねた緑色の髪。森の中だと保護色になる迷彩柄の服に漆黒のコートを合わせた男。ベルトにはプラズマ団の紋章が刻まれている。
森樹隊統率、序列五位——7P、フォレス。
「君は……誰だっけ? どこかで会ったことあるかな?」
本当に誰だか分からないと言った風に、ロキは首を傾げる。しかしフォレスはそれを気にすることもなく、
「いいや、初対面だ。加えて言えば、俺もあんたの顔を見るのは初めてだ。データにあった特徴と一致するってだけで、本当に前代の英雄だったかどうか、確証はなかった」
あくまでも冷静に返すフォレス。その目は、どこか違うところを見ているようにも感じられた。
「……ねぇ君、名前は?」
「あ?」
「名前だよ、名前。これから戦う相手のことくらい、知っていてもいいだろう?」
「……レイさんも言ってたことだが、変な奴だな、あんた」
ふぅ、と呆れたように溜息を吐き、
「7Pのフォレスだ。今はな」
フォレスは、そう名乗りを上げる。
「ふぅん、ボクはロキっていうんだ。知ってるだろうけど、まあ、よろしくね」
軽く挨拶をして、ロキはボールを一つ手に取り、フォレスに見せつけるように掲げた。
「一応、ボクらの目的は君たちを倒すことだからね。君はあんまり乗り気じゃないみたいだけど、戦ってもらうよ」
「別に、乗り気じゃねえわけじゃ、ねえんけどな。ただ、他に気になることがあるだけだ」
「気にしなくていいんじゃないかな? そっちの方は、ボクの愚息がなんとかしてくれるさ」
「……全部お見通しかよ、初対面だってのに」
今度は諦めたように溜息を吐き、フォレスもボールを構えた。
「とりあえず、俺の目的を達成するために、勝負の方式は四対四にさせてもらう。依存があっても聞き入れねえぞ」
「いいよ別に。それは個人的な目的っぽいからね。依存なんてないよ」
「そいつは良かった……んじゃ、行くぞ」
そして、両者は同時にポケモンを繰り出す。ポケモンが降り立つのは、湖に浮かぶ多数の岩の上だ。
「まずは君からだ。マイハニー、アメリシア」
「出番だ、マカドゥス!」
ロキの初手は、雨乞いポケモン、アメリシア。アメフラシのような姿のポケモンで、尻尾の先端には赤い球体が付いている。
対するフォレスが選出するのは、サーベルポケモン、マカドゥス。全身が刺々しく、攻撃的な意匠の化石ポケモンだ。
アメリシアが場に出たことで、突如、この森一帯に雨が降り注ぐ。アメリシアの特性、雨降らしだ。
「うーん? 雨雲がいつもより小さい……? これはどういうことかな?」
ロキは上空を見上げ、そんなことを言う。それに対してフォレスは、
「以前、ヒオウギでの戦闘だがな。あんたのアメリシアの特性で、他のバトルに大きな影響が出てんだ。どうやらあんたのアメリシアは、雨降らしの効果範囲が広いらしいな。そん時は俺たちが有利になったが、あれを組織ぐるみで戦略的にやられたらたまんねえ。だからアシドに頼んで、この空中都市の各エリアに特殊な結界を張ったんだ。天候による影響を受けないようにな」
見れば確かに、雨雲が続いているのはちょうど森の中だけ。つまり森が一つのエリアとなっているようだ。
「ふーん、そうなんだ。ならいいや。いやはや、マイハニーの調子が悪いのかと思って冷や冷やしちゃったよ。でも、君らの干渉によるものなら、別に構いやしない。普通に攻めさせてもらうよ。アメリシア、潮吹き」
先に動いたのはアメリシアだ。
アメリシアは大量の潮水を空高く噴射し、雨による強化を受け、マカドゥスへと降り注がせるが、
「マカドゥス、かわしてダイヤブラスト!」
マカドゥスは一気に前進して潮吹きを回避。アメリシアに近づくと、宝石のように煌めく爆風を放ってアメリシアを吹っ飛ばす。
「磁力線!」
さらに磁力の波を放ってアメリシアを追撃する。効果はいまひとつなのでダメージは少ない。
「あんたは雨状態で戦うのが好きみたいだが、特性だろうとなんだろうと、雨は自然の産物。自然は俺の味方だ。マカドゥス、雷!」
マカドゥスは雨雲に向けて電撃を放つ。すると暗雲からは雷鳴が轟き、やがてアメリシアに向けて一つの稲妻が落とされる。
「アメリシア、守る」
が、稲妻はアメリシアの張った結界で完全防御。アメリシアはノーダメージだ。
「大地の怒り!」
しかし直後、マカドゥスは湖の脇の地面から大量の土砂を噴射し、アメリシアを攻撃。守るを使用してすぐなので、防御はできない。
「磁力線だ!」
そしてまた磁力線で追撃。効果いまひとつと言えど、何度も喰らってはダメージが蓄積してしまう。
「まだだ! マカドゥス、ダイヤブラスト!」
マカドゥスは攻撃の手を緩めず、アメリシアに接近して煌めく爆風と共に衝撃波を放ち、アメリシアを吹っ飛ばす。
「雷!」
「守る」
雷だけはアメリシアも受けたくないので、結界を張って防御する。そして、
「自己再生だ」
すぐさま自然治癒能力を高め、今までに受けた傷を回復させる。とはいえ、マカドゥスの猛攻が激しかったので、全快とはいかない。しかも、マカドゥスは回復技など気にせず、ガンガン攻めてくる。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
足場を飛び跳ねて接近してくるマカドゥスは、白色に煌めく爆風を放ち、アメリシアを攻撃。さらに、
「大地の怒り!」
地面から土砂を放って追撃を掛け、アメリシアを吹っ飛ばし、湖へと叩き落とす。
水タイプなので水中でも動くことは可能だが、マカドゥスは電気タイプ。電気タイプのポケモンに対し、水中に身を潜めることは愚行である。なぜなら、
「マカドゥス、雷だ!」
マカドゥスは雨空から一本の稲妻を落とす。稲妻は直接アメリシアを狙うが、直撃でなくとも、電気は水を伝わり、アメリシアに襲い掛かるだろう。
「アメリシア、守りだよ」
だがアメリシアには守るがある。この技で雷を完全に防御してしまう。
「潮吹き」
「かわして磁力線!」
続いてアメリシアは大量の潮水を噴射するも、マカドゥスに避けられ、そのまま磁力線を当てられる。
「もう一発だ!」
さらに磁力線がアメリシアを襲い、二連続の追撃を喰らってしまうアメリシア。しかも、マカドゥスの攻撃は止まらない。
「大地の怒り!」
「させないよ。潮吹き」
マカドゥスが大地を鳴動させようとするが、そこにアメリシアが潮吹きを放ち、マカドゥスの攻撃を中断させる。だがそれも一時的に凌ぐだけだ。
「磁力線!」
マカドゥスは違う足場に着くと、磁力の波を放ってアメリシアを攻撃。さらに、
「雷!」
雨雲から槍のような稲妻を落とす。
「またかぁ。守る」
アメリシアは守るで落雷を防御。ノーダメージでやり過ごす。
ここまで、アメリシアはほぼ防戦一方。たまに攻撃できる機会があっても、マカドゥスの機動力でかわされる。対してマカドゥスは素早く動き回って強力な攻撃を連続で叩き込んで来る。回復するにもタイミングが重要なので、このままではアメリシアも削り落とされるだろう。
「だったらとりあえず、動きを止めてみようかな。アメリシア、雷」
アメリシアはマカドゥスと同じように雨雲に向けて一発の電撃を放つ。しかし、
「……あ」
ロキはその時、自分の失敗に気付いた。しかしもう遅い。もう修正は利かない。
天高く打ち上げられた電撃は、雨雲の中で一本の槍と化し、稲妻となってマカドゥス目掛けて落下する。
マカドゥスはそれを避けようともしない。だが、そもそも避けられるはずがないのだ。雷は一直線にマカドゥスに直撃した。
しかしマカドゥスにダメージはない。効果いまひとつどころではないほど、マカドゥスへのダメージは皆無だ。なぜなら、
「そうかぁ……君のマカドゥス、避雷針なんだね」
避雷針とは、主にダブルバトルなどで使われる特性で、簡単に言うと電気技を吸い寄せる特性だ。そして吸い寄せた電気は自身の力へと変換され、そのポケモンは特攻が上がる。
つまりアメリシアの攻撃は、ただマカドゥスの特攻を上げただけなのだ。
「マカドゥス、ダイヤブラスト連発!」
特攻が上がった途端、マカドゥスの攻撃がさらに激しくなる。マカドゥスは足場を飛び跳ねながら煌めく爆風を放ち、アメリシアに連続攻撃を浴びせる。
「ん、んぅ……アメリシア、守る」
流石に耐え切れなくなったのか、アメリシアは守るで四方八方から放たれる爆風をシャットアウトする。
しかし、それこそがマカドゥス——そしてフォレスの罠だった。
「マカドゥス、雷!」
次の瞬間、暗雲から一本の槍が落とされる。雷撃と化した鎗は、一直線にアメリシアへと向かっていった。
ちょうど守るの効果が切れた瞬間を狙って落とされる稲妻。ロキが次に指示を出すよりも早く、稲妻はアメリシアを襲う。
「アメリシア、まも——」
ロキが言い切る前に、雷の神鎗が、アメリシアを貫いた。
- Re:519章 ザキvsレイ ( No.768 )
- 日時: 2013/03/19 06:03
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、ザキが向かったのは城だった。他の仲間たちを置いて、ザキは一人先走って城に突入した。
城に入ってから、ザキは素直に上を目指さず、下へと続く階段を探し、地下へと歩を進めていく。
地下へと進んでいったのには、理由が二つある。一つは、普通なら親玉は城の上階にいるものだが、盲点を突いて地下にいる可能性もあると思ったため。そしてもう一つは、なにかしらの冷たい気配を察知したため。
ザキはゲーチスが地下にいる可能性に賭けて階下へと進んでいったが、しかし当たったのは直感で感じた後者だった。率直に言って、見つけたのはゲーチスではない。
辿り着いたのは牢獄だった。四方は鉄格子で囲まれ、床や壁、天井は凍り付いている。まるで極寒地獄だ。
そんな中、一人佇む女の姿が一つあった。
簡素な水色のワンピースを着て、毛先の焦げた青い髪をロングヘアーにした女だ。非常に整った顔立ちをしているが、その眼差しは酷く冷たくて鋭い。髪にはプラズマ団の紋章の付いたヘアピンを付けている。
氷霧隊統率、序列四位——7P、レイ。
「……よくここが分かりましたね。わたしとしては、誰にも来てほしくないので、この場所を持ち場にしたのですが」
「よく言うぜ。お前の気配、ビンビン感じたっつーの。まるで誘ってるみたいだったぜ」
冷たく凍てつくような声のレイに対し、ザキは乱暴で荒々しい口調で返す。
まったく正反対の性格をした二人だが、しかしやることは同じだ。
「わたしはこの最終決戦で、あなたがたと戦うつもりはなかったのですが……こうして相見えてしまえば致し方ありません。再三、戦わせて頂きましょう」
「こっちは端からそのつもりだ。つーかてめぇ、戦うつもりはねぇとか言っときながら、やる気満々じゃねぇか。まさか、あれだけバトっときながら、俺には気付かれないと思ったか?」
「…………」
ザキに指摘され、鋭い眼差しで睨み付けるレイ。しかしザキは逆に睨み返し、文字通りの睨み合いとなった。
「……まあいいです。あなたは感情的なところがあるようですからね。話し合いなど、最初から期待してはいません」
「お前も感情的だろうが。なんだったか、感情の制御が利かないと力が暴走するんだったか?」
レイの言うことに対し、逐一揚げ足を取るようなことを言うザキ。それに対し、レイの眼差しはどんどん険しくなっていく。
「……もういいです、始めましょう。勝負は四対四でいいですか?」
「構わねぇ」
「そうですか、では」
レイはボールを手に取り、一番手のポケモンを繰り出す。同時にザキも、ボールを放り投げた。
「おいでなさい、ヤミクラゲ!」
「出て来い、ヘルガー!」
レイが繰り出すのは、海月ポケモン、ヤミクラゲ。暗青色の体に赤いコア、黄色い触手を持つポケモンだ。
ザキが繰り出すのは、ダークポケモン、ヘルガー。黒い狼のような出で立ちのポケモンで、尻尾や角は悪魔を思わせる意匠、首元には髑髏がある。
「……相も変わらず初手にヘルガーですか。ヤミクラゲとの相性を考えていないのでしょうか」
「どうだかな。俺だって、まったく何も考えてねぇわけじゃないんだぜ」
「そうですか……ヤミクラゲ、悪の波動!」
先に動いたのはヤミクラゲだ。ヤミクラゲは悪意を波動に乗せ、ヘルガーへと発射する。
「ヘルガー、かわして放電!」
対してヘルガーは小さな動きで波動をかわし、四方八方に電撃を撒き散らす。ヤミクラゲにもヒットしたが、特防の高いヤミクラゲでは、効果抜群でもそこまでのダメージにはならない。
「やっぱ特攻を上げるしかねぇか……ヘルガー、悪巧み!」
ヘルガーは足を止め、脳を活性化させることで特攻を急上昇させようとするが、
「させませんよ。ヤミクラゲ、危険な毒素です」
そこにヤミクラゲが毒素の集合体を放って妨害する。ヘルガーもこの攻撃は受けたくないので、悪巧みを中断して大きく跳び退った。
「気合球」
ヤミクラゲは気合を凝縮した球体を発射し、ヘルガーに追撃をかける。
「かわして火炎放射!」
ヘルガーも横に跳んで気合球を回避し、すぐさま灼熱の火炎を放つ。
「ダークロアーだ!」
そして続け様に闇の咆哮も放ち、ヤミクラゲを攻撃。しかしこの連続攻撃はヤミクラゲには効果いまひとつ。大きなダメージにはならない。
「……悪巧み!」
「危険な毒素」
頃合いを見てヘルガーは悪巧みをしようとするも、ヤミクラゲの放つ危険な毒素で妨害され、中断してしまう。
「以前は悪巧みを許したせいで追い込まれてしまいましたからね。今回は徹底的に邪魔させて頂きます。ヤミクラゲ、悪の波動」
ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を連続で発射する。波動は全てカーブを描きながら、ヘルガーへと襲い掛かる。
「ケッ……ヘルガー、放電!」
ヘルガーは四方八方に電撃を撒き、襲い掛かる波動を全て相殺する。
耐久力が極端に低いヘルガーにとっては、効果いまひとつの攻撃でも大ダメージになりかねない。ヤミクラゲの特攻も決して低くはないので、ヘルガーはヤミクラゲの攻撃を受けたくはない。
「もう一度、放電だ!」
ヘルガーは再び電撃を撒き散らし、ヤミクラゲを攻撃するが、
「気合球です」
特に堪えたわけでもないヤミクラゲが、気合を凝縮した球体を放って反撃に出る。
「火炎放射!」
ヘルガーも燃え盛る火炎を放射して気合球を相殺し、
「ダークロアー!」
闇の咆哮を放ってヤミクラゲを攻撃。しかし、やはりダメージは薄い。
(どのタイミングで悪巧みすっか……向こうは必至で悪巧みさせまいとしてるようだし、無理に能力上げんのは控えるべきか?)
とはいえ、このままだとヤミクラゲに大したダメージが与えられないのも事実だ。せめて一回でも特攻が上がればいいのだが、その一回を作り出すのも、難しそうである。
「ヤミクラゲ、危険な毒素」
ヤミクラゲは多量の毒素を集め、凝縮してヘルガーへと放つ。
「考えても何も出ねえか……ヘルガー、かわしてダークロアー!」
ヘルガーは横に逸れて毒素を回避し、そのまま咆哮を放ってヤミクラゲを攻撃。さらに、
「放電!」
電撃を撒き散らしてヤミクラゲを追撃する。効果抜群でも特防の高いヤミクラゲにはもう一つ決定打にならない攻撃だが、ここではザキに運が味方をした。
電撃を受けたヤミクラゲは体を痙攣させ、麻痺してしまったのだ。
「ヤミクラゲ……!」
体が痙攣し、上手く動けないヤミクラゲ。攻めるなら今が好機だが、
「ヘルガー、悪巧み!」
ヘルガーは攻めず、脳を活性化させて特攻を高めようとする。
「っ、ヤミクラゲ、危険な毒素です!」
それを妨害しようと、ヤミクラゲは危険な毒素を放とうとするが、麻痺で体が痙攣し、失敗に終わった。
「もう一回!」
ヘルガーは続けて悪巧みを使用。特攻をさらに上昇させる。
「今度こそ。ヤミクラゲ、危険な毒素!」
今度は毒素を放つことに成功したヤミクラゲだが、ヘルガーに毒素は当たらないどころか、
「火炎放射だ!」
打ち消され、そのまま炎がヤミクラゲを襲う。特攻が四段階も上がったヘルガーだ。その火力は相当跳ね上がっているだろう。
「ここまで来たら最後まで上げとくか。ヘルガー、悪巧み」
「させません。ヤミクラゲ、悪の波動です!」
悪巧みをしようとするヘルガーに向かって、ヤミクラゲは強大な悪意を波動に乗せ、速く大きな一発を発射。ヘルガーを吹っ飛ばした。
「追撃です。気合球」
「打ち消せ! ダークロアー!」
思わぬ一撃に態勢を崩したヘルガーだが、すぐに立て直すと闇の咆哮を放って気合球を消し飛ばした。
「悪巧み!」
そして直後、ヘルガーはさらに悪巧みで特攻を上げようとする。それを見かねてレイは、
「そこまでするのなら、もう決めてしまいましょう。ヤミクラゲ、大洪水です!」
ワンチャンスの大技を指示する。ヤミクラゲはどこからともなく大量の水を発生させ、洪水の如き勢いでヘルガーを押し流す——はずだった。
しかし寸でのところで麻痺が発動し、ヤミクラゲは体が痙攣してしまったため、行動不能。その隙にヘルガーは特攻をさらに上げ、最大まで上昇させた。
「結局、最後まで上げさせてしまいましたね……仕方ありません。差し違えるつもりで攻めますよ。ヤミクラゲ、連続で気合球です」
ヤミクラゲは気合を凝縮させたいくつもの球体をヘルガーへと放つが、
「放電!」
ヘルガーは全身から電撃を解き放つ。電撃は球体をことごとく破壊し、そのままヤミクラゲにも襲い掛かる。今度の放電は、かなりダメージが通っているように見える。
「……ヤミクラゲ、大洪水!」
「ヘルガー、ダークロアー!」
ヤミクラゲはどこからともなく大量の水を発生させ、大きな洪水の如く水流と共にヘルガーを押し流そうとする。
対するヘルガーは闇の咆哮を放ち、襲い来る水を消し飛ばす。それでも襲ってくる水を、片っ端から消しては消し、どんどん消し飛ばしていく。
大洪水はヤミクラゲの剣であり盾だ。この攻撃が決まればヘルガーは倒れるだろう。しかし逆に押し返されれば、今度はヘルガーの攻撃でヤミクラゲがやられる。
大洪水の圧倒的な水量と、ダークロアーがどこまで水を消し飛ばせるかの根競べ。その競争に、打ち勝ったのは——
- Re: 520章 リオvsエレクトロ ( No.769 )
- 日時: 2013/03/19 14:00
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、リオはアキラと共に城へと突入した。先に突っ走っていったザキとは違い、二人は普通に城の上階へと進んでいく。
この城はかなり複雑な構造のようで、道中には和室やビオトープなど、様々な部屋が存在していたが、それらから気配を感じることはなかった。
しかし、正に城といった豪奢な内装の廊下に差し掛かった途端、二人は足を止める。そこには、一つの扉があった。
「……ここか?」
「たぶん。なんにせよ、7Pクラスの敵は、いると思う」
そんなやり取りの後、二人は扉を押し開け、中へと入る。
中はそれほど広い空間ではなかった——というより、広間か何かに続く短い廊下のようになっていた。そして奥には、また豪奢で重厚そうな扉がある。
そこにはゲーチスこそいなかったが、しかし、二人にとっては重要な人物がいた。
「……本当に来た。あいつの言う通りにことが進むと、なんか癪ね」
「……お姉ちゃん」
リオの実姉、マオ。しかし今はプラズマ団、即ち敵だ。
「先に言っとくわ。私は貴女たちを邪魔するつもりでここにいるわけだけど、片方はそのままここを通ってもいいわ。私が止めるのは、あくまで一人だけ」
「? どういうことだ? 通行止めしてんのに、片方は通す?」
「頭が固いわね。なら分かりやすくするためにもうばらすけど、この先にはエレクトロがいるわ」
その一言に、リオは反応を示す。しかしマオは構わず、
「プラズマ団としても、少人数で攻め込んできた貴方たちを殲滅したい気はある。だからただ足止めするんじゃなくて、こっちも各個撃破でそっちを全滅しようとおもってるのよ。だから、貴女たちふたりのどちらかが私と戦い、残ったどちらかがエレクトロと戦う。まあ、エレクトロと戦うのが嫌なら、尻尾巻いて逃げてもいいけど」
そんな安っぽい挑発に乗るリオとアキラではなかったが、しかしそれ以上に、彼女らにとって逃げると選択肢は最初から存在していない。
となると次の問題は、どちらがマオと戦い、どちらがエレクトロと戦うかだが、
「この場は俺がなんとかする。だから行け、リオ」
「アキラ……」
アキラが一歩前に踏み出し、リオにそう言った。
「お前のことだ。どうせマオさんを引き戻して、あのエレクトロとかいう野郎にもリベンジしたい、って思ってんだろうけど、人間欲張り過ぎると痛い目を見るんだぜ」
それに、とアキラは続ける。
「マオさんにしろあの野郎にしろ、片手間に戦える相手じゃねぇ。だからといって俺が野郎に勝てるとも思わねぇ。だったらリオ、ここは分相応ってことで、俺がマオさん、お前が7Pと戦うのが最適だろ」
「そうだけど、でも——」
「大丈夫だ、心配すんなって。あの人は、俺がきっちり元に戻してやる」
アキラの自信満々な態度を見て、リオはフッと微笑み。
「……うん。じゃあ、お姉ちゃんは任せたわよ!」
「おう! 任されたぜ!」
リオはマオの脇を抜け、次の扉を潜り抜けていく。
「……私も舐められたものね。この前あれだけ痛めつけたっていうのに、まだ戦う気?」
「悪ぃが、今回ばかりはマジで負けるわけにはいかねぇんだ。それに、前までの俺と、今の俺は違う」
お互いボールを構え、臨戦態勢となる。
「ふぅん。それじゃあ、ほんの少しだけ期待してあげてもいいわ」
「そいつはどうも。そんじゃあ、行くぞ!」
そして、二人の戦いにも、火蓋が切って落とされる——
扉を抜けた先は、大広間だった。天井は何階分あるのかと思うほど高く、床一面には赤いカーペット。真っ白なクロスのかかったテーブルは、数えきれないほど存在する。壁にも多数の輝くランプが備え付けられていた。、
そんな煌びやかで豪奢な広間の中央には、一人の男が直立不動でこちらを見つめていた。
肩につくくらいの黄色い髪に、きっちりとした執事服を着込んだ男。両手に嵌められた手袋の甲には、それぞれプラズマ団の紋章が描かれている。
聖電隊統率、序列三位——7P、エレクトロ。
「お待ちしておりましたよ、リオ」
エレクトロは第一声にそんなことを言ってきた。
「以前、私は貴女に勝利しましたが……後から考えてみれば、あれは私の完全な勝利とは言えません。貴女とは、是非もうい一度、戦いたいと思っていたのですよ」
「そう、それは好都合。こっちも、今度こそはと思って来たわ」
お互いやる気十分な姿勢で、ボールを取り出した。
「方式は以前と同じく、四対四にしましょう。この戦いが、私と貴女の完全決着です」
「望むところ」
そして二人は、同時にポケモンを繰り出す。
「夢の時間です、ファントマ!」
エレクトロの一番手は、幻影ポケモン、ファントマ。紫色の火の玉と、それを取り囲むような炎の破片が浮かび上がっている。
「頼んだわよ、プリン!」
リオの初手は、風船ポケモン、プリン。ピンク色の丸っこい体をした小型のポケモンだ。
「やはり最初はプリンで来ましたね。予想通りです」
「そっちもファントマが一番手。分かりやすいわね」
お互いに相手の一番手を読んでいてのポケモンチョイス。以前はプリンがファントマを圧倒したが、今回はどうなるか。
「ファントマ、悪の波動!」
先手を取ったのはファントマだった。ファントマは悪意に満ちた波動をプリンに向けて発射する。
「かわしてプリン! ベルカント!」
だが直線的な攻撃では、プリンには届かない。プリンは空気の逆噴射で波動をかわすと、そのまま歌声を響かせ、ファントマを攻撃する。
しかし特防の高いファントマには、ベルカントはあまり通らす、眠りの追加効果も発生しなかった。
「神通力です!」
ファントマは神々しい念力を発してプリンを突き飛ばす。そして、
「鬼火!」
不気味に燃える紫色の火の玉を多数浮かべ、プリンへと飛ばす。神通力で怯んでしまったプリンは回避が遅れ、鬼火に取り囲まれて火傷を負ってしまう。
「プリン!」
「休みはなしです。ファントマ、神通力!」
火傷状態のプリンを、ファントマは神通力で押さえつける。神通力自体のダメージは大したことがないが、火傷で少しずつ削られるので、拘束されるのはまずい。
(このファントマ、前と戦い方が全然違う)
そう、一番厄介なのはそれだ。
リオはエレクトロの初手がファントマだと読んでプリンを繰り出した。それはプリンがファントマに有利だと思ったからだ。だがプリンが有利なのは、あくまで黒い霧によって身を隠しながら戦うファントマであり、このように状態異状を絡めた攻撃重視で押すファントマではない。
「熱風!」
しばらくプリンを押さえつけていたファントマは神通力を解き、熱風を放ってプリンを吹き飛ばした。
「悪の波動です!」
「っ、かわして恩返し!」
吹っ飛ばされながらもプリンは空気の逆噴射で波動をかわし、そのままファントマに接近。連続攻撃でファントマを吹っ飛ばすが、火傷で攻撃力が落ちているのでダメージは少ない。
「だったら地球投げ!」
特殊技も物理技もダメなら、固定ダメージの技で勝負に出る。プリンは地球投げを決めるべく、吹っ飛んだファントマを追いかけるが、
「それは受けたくありませんね。ファントマ、神通力です」
ファントマが放った神通力に迎撃され、突き飛ばされてしまう。
「熱風!」
続けて熱風が放たれ、プリンはさらに吹き飛ばされる。
普通の風を利用した攻撃なら、風に敏感なプリンならかわせる。しかしファントマの熱風はただ放っているのではなく、かなり変則的な軌道で、空気を乱しながら放たれているので、プリンでもかわすことができない。
「悪の波動です!」
追撃として悪の波動が発射されるが、プリンは逆噴射で回避。今度こそファントマに接近しようとするが、
「神通力」
直前で神通力に拘束されてしまう。さらに、
「ファントマ、熱風!」
灼熱の熱風を至近距離から放たれ、プリンは吹っ飛ばされた。今のは大きなダメージになっただろう。
「まだ攻めますよ。ファントマ、悪の波動!」
ファントマは攻撃の手を止めず、悪意に満ちた波動を発射する。
「プリン、かわしてベルカント!」
悪の波動は逆噴射でかわし、そのまま歌声を響かせてファントマを攻撃。そのまま接近していく。
「また地球投げでしょうか。しかしさせませんよ、神通力」
ファントマはプリンを止めるべく、神々しい念力を放つが、
「もう一度、逆噴射!」
神通力がプリンを拘束する直前、プリンはさらに空気を吐き出して軌道を変え、ファントマに接近する。
「っ、神通力!」
だがファントマの反射神経も負けてはいない。すぐさま軌道の変わったプリンを追いかけ、神通力を放つ。しかしあと少しのところで届かない。
そして、プリンの短い腕が、ファントマに届いた。
「プリン、がむしゃら!」
刹那、プリンの怒涛の連続攻撃がファントマに叩き込まれる。文字通りがむしゃらな攻撃は全てファントマにヒットし、ファントマは吹っ飛ばされた。
がむしゃらは自分の体力と相手の体力を同じ値にするまで攻撃を続ける技。ファントマの攻撃で体力が残り僅かとなっているプリンのがむしゃらは、さぞ堪えただろう。
「あと少し……プリン、恩返し!」
「させません。ファントマ、熱風!」
プリンの小さな拳が届くか、ファントマの熱風が先に放たれるか。
両者の攻撃は、一瞬の差で決まる——
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