二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
- 日時: 2013/04/14 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394
今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。
参照をクリックすれば前作に飛びます。
では、英雄達の新しい冒険が始まります……
皆様にお知らせです。
以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
となっています。
皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。
登場人物紹介等
味方side>>28
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624
目次
プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695
第十六幕 錯綜
一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756
第十七幕 決戦
零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕
>>774 >>812 >>818
最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851
2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825
あとがき
>>852
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
- Re: 396章 空手 ( No.525 )
- 日時: 2012/07/07 01:34
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「任せたぞ、デンチュラ!」
リーテイルと入れ替わりに繰り出したのは、蜘蛛のような姿の虫・電気タイプのポケモン、デンチュラ。
イリスの一年前からのポケモンなのだが、打たれ弱さからどうにも出番が少ない。
「行くぞデンチュラ。まずはシグナルビーム!」
デンチュラは色彩を束ねたようなカラフルな光線を発射する。なかなかの速度でナゲキに向かっていくが、レンブは動じない。
「どう来るかと思えば、拍子抜けだな。ナゲキ、岩石封じ!」
ナゲキは地面を隆起させ、岩石の壁でシグナルビームを防いだ。
「忘れたのか? 我がナゲキの岩石封じは、如何なる遠距離攻撃をも防ぐ、絶対の壁。その程度の攻撃など効かん」
「ええ知ってますよ。でもその技、確かにどんな攻撃でも防げるっぽいですけど、大きな穴があるんですよね」
余裕綽々といった感じでイリスは言う。
「その穴は相手が相手なら本当に致命的で、大敗の可能性もある欠陥です」
「……何が言いたい」
訝しげにそう返すレンブ。そしてその時、隆起した岩石が地面へと吸い込まれるように戻っていき——
——ナゲキの目と鼻の先に、デンチュラが鎮座していた。
「なっ!」
流石のレンブも、これには驚く。なにせ、巨大な蜘蛛がすぐ目の前に接近していたのだ。無理もない。
しかもデンチュラは、体に電気を帯びている。帯電で攻撃力を高めたようだ。
「その岩石封じは、どんな攻撃も防ぐ。けれど、代わりに視界が塞がれてしまうのが欠点です。デンチュラの低い姿勢なら、完全に岩が沈降しないと目視できませんからね」
「くぅ、だがそれだけだ。それだけではナゲキは倒せんぞ。山嵐!」
ナゲキは腕を伸ばしてデンチュラにつかみかかろうとするが、デンチュラはスッとその腕をかわす。
「ぬぅ、冷凍パンチ!」
次は凍てつく拳を連続で繰り出すが、どれもデンチュラのつかみどころのない動きで回避されてしまう。
「格闘家っていうのは、相手の動きを先読みして攻撃を繰り出すらしいですけど、このデンチュラの動きは読めないでしょう。デンチュラ、シグナルビーム!」
ナゲキの拳を紙一重でかわしたデンチュラは、すぐにカラフルな光線を発射し、ナゲキを押し返す。
「追撃だ、エナジーボール!」
「くぅ、岩石封じ!」
自然の力を込めた球を発射するデンチュラ。対するナゲキは岩石の壁を作り出し、防御態勢を取る。
視界が塞がれるのが弱点なら、すぐに壁を戻せばいい。そう考えての指示だったが、
「それから、岩石封じのもう一つの欠点を挙げるなら」
イリスはまた、そんな言葉を投げかける。
「それはポケモンから放たれる攻撃しか防げないこと。全く関係ない、全然違うところから攻撃が飛んできたら、避けられないことです」
そして、デンチュラに指示を出す。
「デンチュラ、雷!」
雷鳴が轟き、刹那、激しい雷電がナゲキを襲った。正面しか守れない岩石封じは全く役に立たず、電撃がナゲキの全身を駆け抜ける。
「ナゲキ!」
ナゲキはばたりと倒れこむと、それっきり動かなくなる。戦闘不能だ。
「戻れ、ナゲキ」
倒れたナゲキをボールに戻すと、また迷いなく次なるボールをつかむレンブ。
「そのデンチュラの力は理解した。成程、柔よく剛を制するナゲキを、変幻自在の動きで逆に制するとは、考えたものだ。ならばこちらは、その幻惑すらも打ち砕くほどの、圧倒的な破壊力で攻めるぞ。ダゲキ、押して参る!」
レンブが次に繰り出すのは、青い体に道着を纏ったポケモン、ダゲキ。ナゲキとは双璧をなす空手ポケモンだ。
「ダゲキ、ストーンエッジ!」
ダゲキは周囲に鋭い岩を浮かべると、一斉にそれらを射出する。
「デンチュラ、かわしてシグナルビームだ!」
襲い来る岩を俊敏な動きで回避し、デンチュラはカラフルな光線を発射する。
「その程度では、我がダゲキは怯まんぞ! 炎のパンチ!」
次にダゲキは、拳に炎を灯し、デンチュラに殴り掛かる。
「かわしてエナジーボール!」
後ろに跳んで炎の拳をかわすと、今度は自然の力を凝縮した球を発射。ダゲキに直撃するが、
「効かん! ダブルチョップ!」
ダゲキは気にせず前進し、強烈な手刀を二撃、デンチュラに叩き込む。
「ぐぅ、シグナルビーム!」
「炎のパンチ!」
シグナルビームを発射してダゲキを攻撃するデンチュラだが、ダゲキはそんな光線をものともせず、炎が灯った拳を繰り出す。
「しぶといというか、打たれ強すぎる……エナジーボール!」
繰り出される炎のパンチに対し、デンチュラはダゲキの逞しい腕にエナジーボールを発射する。それによりダゲキの拳の軌道は大きく逸れ、また態勢も崩れる。
「よし、チャンスだ! デンチュラ、雷!」
デンチュラは超高電圧の雷撃を、天に向けて放つ。すると次の瞬間、雷鳴が響き渡り、激しい稲妻がダゲキを襲う。
「よし、決まった」
帯電で攻撃能力を高めているデンチュラだ。如何にダゲキといえども、早々耐えられるものではない。そう思った、その時だった。
「ダゲキ、炎のパンチ!」
轟く雷電の中から、ダゲキが飛び出す。その拳には炎が灯っており、そして、デンチュラを狙っていた。
「! しまった……デンチュラ!」
いくらデンチュラでも、もう避けられない。ダゲキの拳はデンチュラを確実に捉え、吹っ飛ばしていた。
「くっ……戻れ、デンチュラ。よく戦ってくれた」
デンチュラを労わりつつボールに戻すイリス。
正直、このダゲキには驚いた。まさかデンチュラの猛攻をここまで耐えるとは。
だがそれも、永遠ではない。あと何発か、強力な技を叩き込めれば、きっとダゲキは落ちる。
「だったらお前だ。出て来い、ダイケンキ!」
ここでイリスが繰り出すのは、耐久力があり、かつ強力な技を多く覚えているダイケンキだ。ダイケンキは大きく吠えると、ダゲキを睨みつける。
「ダイケンキか、威勢がいいな。相手にとって不足なし。行くぞダゲキ、ダブルチョップ!」
「ダイケンキ、シェルブレード!」
ダゲキは手刀を構えてダイケンキに飛びかかり、ダイケンキもまた、アシガタナを抜いて迎え撃つ。
ダゲキとダイケンキ、二匹のポケモンの二つの刀が、互いに鎬を削る。
白黒です。なんだか四天王線を早く終わらせたいなーとか思っていたら、キーが乗ってきました。それはさておき、レンブ戦その四です。正直、ダゲキが半端ないです。デンチュラの攻撃をあれだけ喰らっておきながら耐えてるって、相当ですよ。では次回はそのダゲキとダイケンキのバトル。レンブ戦はあと二回くらいですかね。では、次回もお楽しみに。
- Re: 397章 筋肉 ( No.526 )
- 日時: 2012/07/10 21:15
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「ダイケンキ、メガホーンだ!」
ダイケンキはダゲキの手刀を無理矢理押し切ると、法螺貝のような長大な角でダゲキを突き上げた。
「ぬぅ。ダゲキ、ストーンエッジ!」
だがダゲキもただではやられない。空中に浮いた状態で周囲に尖った岩を浮かべ、それらを一斉にダイケンキへと射出する。
「吹雪だ!」
ダイケンキも負けじと猛烈な吹雪を放つが、それが少しだけ遅かった。まだ勢いのつかない吹雪を、ストーンエッジは楽々と突き抜けてダイケンキの体に突き刺さる。
「攻めるぞダゲ。ダブルチョップ!」
着地したダゲキは、手刀を構えてダイケンキに接近し、鋭い一撃を二度、叩き込む。
「くぅ、ダイケンキ、シェルブレードで引き剥がせ!」
ダイケンキは前足の鎧から素早くアシガタナを抜き、一閃する。しかしダゲキは飛び上がってその攻撃を回避し、そのまま後ろに下がってしまった。
「ちょこまかとすばしっこいな……ダイケンキ、吹雪!」
「ダゲキ、かわして炎のパンチ!」
ダイケンキは吹き荒ぶ猛烈な吹雪を放つが、ダゲキは跳躍して回避し、ダイケンキの額に炎の拳を叩き込む。しかもダイケンキがカウンターで突き出したアシガタナも軽くかわし、また後ろに下がる。
「ヒット&アウェイってやつか。まさか、ここまで厄介なものとは」
「当然だ。ダゲキが身に付けた筋肉は攻撃のためだけにあらず。時には敵の攻撃を防ぎ、時には敵の攻撃をかわすためにある。ダゲキ、ストーンエッジ!」
ダゲキは鋭く尖った岩を無数に射出し、ダイケンキに突き立てる。
「くっそ、こうなったら一気に斬り込んでみるか。ダイケンキ、シェルブレードで突っ込め!」
ダイケンキは気勢を発すると、両前足から仕込み刀、アシガタナを抜刀する。そして両手にそれらを携え、ダゲキに向かって突貫する。
「無駄だ。ダゲキ、ダブルチョップ!」
ダイケンキの刀に対し、ダゲキも両手の手刀を構え、鍔迫り合いのように受け止める。
「ダイケンキ、そのまま押し切れ!」
「無駄だと言っただろう。ストーンエッジ!」
ダイケンキが刀に力を込める最中、ダゲキはリングより鋭い岩を上に向かって射出する。なれば必然的に、その岩はダイケンキの腹に深く突き刺さる結果となる。
「そこだ、炎のパンチ!」
ダイケンキが怯んだ隙に、ダゲキは拳に炎を灯してその顔面を思い切り殴り飛ばす。
吹っ飛ぶ、とまではいかなくとも、ダゲキほどの攻撃力を持つポケモンの拳がクリーンヒットしたダイケンキは、大きく後ずさった。
「さあ、そろそろ決めるぞ」
レンブはそう言い、ダゲキへと指示を出す。
「ダゲキ、インファイト!」
刹那、ダゲキはダイケンキの正面まで接近し、激しい打撃を嵐の如く繰り出す。
突き、蹴り、手刀、頭突き、貫手、掌底、膝蹴り、足払い、踵落とし……絶え間なくダゲキの猛攻が続き、最後の一撃がダイケンキの腹に叩き込まれる。
「……決まったか」
そう思ってダゲキは拳を引く。ダイケンキは俯いたまま、動かない。だが、ぐらりと、体が前へと揺れる——
「ダイケンキ、シェルブレードだ」
——そして、ダイケンキはアシガタナによる刺突を、ダゲキに突き込んだ。
「なにっ! ダゲキ!」
あえなくダゲキは吹っ飛ばされ、リングの壁に激突する。
「レンブさん、あなたは少し、僕のダイケンキを舐めてますよ。僕のダイケンキの打たれ強さは尋常じゃありません。あのくらいの猛攻、耐え切れて当然ですよ」
とは言うものの、ダイケンキの体力も残り僅か。最後の一撃を打ち込むだけが限界だろう。
しかし、その一撃さえ撃ち込めれば、それで十分だ。
「ハイドロカノン!」
ダイケンキは目の前に巨大な水の弾丸を生成する。大量の水を圧縮した、破壊の弾丸。そして自身はその銃身。
ダイケンキは今、その弾丸を発射する。
「ぬおぉ……!」
激しい水飛沫が散り、弾丸が発射される。弾丸はまっすぐにダゲキに向かっていき、その筋肉質の体を撃ち抜く。
「ダゲキ!」
流石のダゲキも、この大技を耐え切ることはできなかったようで、戦闘不能となる。そしてダイケンキもまた、力を使い果たし、地に伏せた。
「よくやったよダイケンキ。あとはリーテイルに任せろ」
「戻れ、ダゲキ。お主は力の限りを尽くした。遺恨はあるまい」
それぞれポケモンをボールに戻す。残るはお互いにあと一体。イリスはレンブの次のポケモンが何かは分からないが、格闘タイプであることは確か。ならば、飛行タイプを持つリーテイルが有利。
「これで最後だ。出て来い、リーテイル!」
「ラスト一匹、行くぞ。ローブシン、押して参る!」
イリスの最後のポケモンは、リーテイル。キノガッサとナゲキとの戦いの疲れは、もう見えない。
対するレンブのポケモンは、二本のコンクリート柱を杖のように使っているポケモン、ローブシン。その姿は年老いた老人のようだが、肉体は見事なまでの筋肉質。
「ローブシン、格闘タイプ屈指の攻撃力を持つポケモンか。強敵だな」
だが、それと同時にローブシンは格闘タイプの弱点である、特殊攻撃力の弱さを持っている。なおさら、リーテイルならやりやすい。
「よし、一気に行くぞ。リーテイル、エア——」
「投げつける」
イリスがリーテイルに指示を出すよりも早く、そして速く、何かがリーテイル目掛けて飛んできた。
「っ!? かわせ!」
リーテイルはその何かを寸でのところでかわす。そしてその直後、ドガァン、という何かが砕け散るような爆音が耳に届いた。
イリスは恐る恐る振り向く。すると、そこには——
「うわっ……」
壁に深々のめり込んだ、コンクリートの柱があった。しかも壁は鋼鉄製。どう考えてもコンクリートが砕けそうなものだが、砕けているのは壁の方だ。
「英雄、イリスよ。一つ忠告しておこう」
レンブは威風堂々と、イリスをまっすぐに見つめて、口を開く。
「我がローブシンは、力なら四天王だけでなく、わが師、アデクのポケモンをも超える。その辺り、よく覚えておくことだ」
やたら終わり方が微妙になってしまいましたが、文字数的にしょうがないのです。さてテストが終わり、気兼ねなく更新できるようになった白黒です。とはいえ、テストの結果が散々なことになってそうなので、気兼ねなくというわけにはいきませんが。今回はレンブ戦、その……五くらいです。遂にレンブの切り札、ローブシンが登場しました。あいつ攻撃力が半端ないですよね。というか、BWのポケモンって、やたら能力偏ってるやつが多い気がするのは気のせいでしょうか。では次回はやっとレンブ戦が終わりそうです。次回もお楽しみに。
- Re: 398章 柱 ( No.527 )
- 日時: 2012/07/10 22:04
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「ローブシン、マッハパンチ!」
ローブシンは拳を構えると、その老いた体からは想像できないようなスピードでリーテイルに殴り掛かってきた。
「っ、かわせ!」
ローブシンが拳を突き出す寸前に、リーテイルは空中へと逃げ、回避する。しかし、ローブシンの狙いは、リーテイルに攻撃することではなかった。
「ローブシン、引き抜け」
ローブシンは先ほど投げつけるで投げ、壁にめり込んでいたコンクリート柱を引き抜く。どうやら、これを回収するためのマッハパンチらしい。
「なんにせよ、あの投げつけるは脅威だな。遠くから攻めるぞ。エアスラッシュ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばす。
しかし、
「ローブシン、防御せよ!」
ローブシンは両手に携えた柱を自分の前に置き、壁のようにその後ろに隠れる。そして実際、柱は壁の役割を担ない、エアスラッシュを弾き飛ばした。
「投げつける!」
そしてすぐさま、柱がリーテイルへと投げつけられる。かなりのスピードでその柱は飛んでいき、気付けばリーテイルの目前まで来ている。
「くっ、リーフブレードで弾き返せ!」
リーテイルは尻尾の葉っぱを振るって柱を弾こうとするが、投げつけられた柱の運動エネルギーはかなりのもので、若干速度を落とし、軌道をずらす程度のことしか出来ず、リーテイルは逆にに弾き飛ばされた。
「今が好機だローブシン、毒突き!」
リーテイルが地面に落下したのをいいことに、ローブシンはもう一つの柱を槍のように持ち、リーテイルへと突き出す。しかもその先端は、猛毒を帯びている。
「やばい……リーテイル、ドラゴンビート!」
ギリギリのところでリーテイルは持ち直し、龍の鼓動のような咆哮を放つ。ローブシンは屈強で、それで吹っ飛ばすことはできなかったが、怯んだ隙に空中へと退避できた。
だがリーテイルが咆哮を放ったことで、天井に突き刺さっていた柱が抜け落ち、ローブシンの手中へと収まってしまう。
「くぅ、あの柱が厄介だ。攻撃力は高いし、防御にまで使われる……!」
柱を持つことの利点を最大限に利用したレンブとローブシンに対し、呻くイリス。
付け加えるなら、ローブシンは投げつけるで格闘タイプに欠けている『遠くの敵を攻撃する』ことを解消しているうえ、マッハパンチにより一度投げた柱を回収し、弾切れも起こらないよう工夫している。
ここまでローブシンというポケモンの戦術を十全に生かすトレーナーは、レンブをおいて他にいないだろう。
「ローブシン、投げつける!」
「リーテイル、回避だ!」
リーテイルは空中へと飛び出し、飛来する柱を避け、ローブシンの上を取る。だがローブシンはそれにすぐさま反応し、真上へと柱を連投。しかしこれも、リーテイルは軽々とかわした。
これで、ローブシンは二本の柱を失ったことになる。
「ローブシンが柱を持っていない今がチャンスだ。リーテイル、エアスラッシュ!」
リーテイルは空気の刃を無数に放つ。防御手段を持たないローブシンは、その遠くからの見えない斬撃をなされるがままに喰らった。
「一気に攻め込むぞ! リーフブレード!」
さらに尻尾の葉っぱを構え、ローブシンへと突貫。血管の浮き出た体を切り裂く。
だが、この程度で怯む四天王のエースではない。
「ローブシン、捕まえろ!」
ローブシンはすぐに立ち直ると、リーテイルに手を伸ばす。リーテイルは避けようとしたが、ギリギリのところで捕えられてしまう。逃げようとしても、物凄い力で逃げ出せない。
「だった無理やりにでも脱出するんだ! リーフブレード!」
拘束されながらも、リーテイルは葉っぱの斬撃を繰り出す。地に足を着けていると尻尾は使えないので、背中の葉っぱで幾度となく切り刻む。
だが、ローブシンは怯まなかった。
「ローブシン、地震だ!」
ローブシンはリーテイルを掴んだまま、足を踏み鳴らし、震脚して地震を起こす。
だが、地震は地面タイプの技。飛行タイプを持つリーテイルには当たらない。足が地面に着いていてもだ。
なので、イリスは疑問符を浮かべていた。四天王ならそのくらいのこと、知っていて当然なのに。その無駄な行動の意味が分からなかった。
だがそれも、すぐに分かることとなる。
突然、リーテイルの背中にコンクリートの柱が激突したのだ。
「なっ、リーテイル!?」
一瞬イリスはわけが分からなかったが、すぐに理解する。つまり、さっきローブシンが放った地震は、このためだったのだ。
ローブシンは真上に向かって柱を投げた。そうすれば必然的に、柱は天井にめり込む。それをローブシンは、さっきの地震で“揺り落としたのだ”。
「今だ、マッハパンチ!」
ローブシンはリーテイルが柱の直撃を受けて動きが止まった隙を見逃さず、素早い拳を叩き込む。それにより、リーテイルはローブシンが投げたもう一つの柱がめり込んだ壁まで吹っ飛ばされた。
「もう一度マッハパンチ!」
再度マッハパンチが飛び、リーテイルも柱同様、壁にめり込む。効果はいまひとつだが、ローブシンの攻撃力がかなり高いため、相当なダメージだ。
ローブシンはめり込んだリーテイルをよそに、柱を引き抜く。そして、
「ローブシン、毒突きだ!」
柱を二本使用した毒突きを、リーテイルに炸裂させた。一撃目は払うような攻撃で、壁から引っこ抜き、二撃目で突き飛ばす。
リーテイルは壁に激突し、砂煙をあげる。
マッハパンチでもかなりの威力なのだ。効果抜群のこの技では、立ち上がるのは絶望的である。
実際、この時点でレンブは勝ちを確信していた。勝負は最後まで分からないとはいえ、瀕死のポケモンにまで攻撃することはない。オーバーアタックは原則禁止だ。なので、ローブシンの破壊力に自信を持つレンブからしたら、リーテイルはもう戦闘不能だと踏んでいた。
だがレンブは、知らなかったのだ。
代々受け継がれる、イリスのエースポケモンの、奇跡的なまでの打たれ強さを。
「リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは砂煙から飛び出すと、数多の葉とともに、荒々しく吹き荒れる嵐のような爆風を放った。
「なにっ! まだ立ち上がれるのか!」
レンブとローブシンは、驚愕の表情を浮かべる。
イリスのエースポケモンの耐久力の高さは、当然と言えば当然だ。ダイケンキは激流、リーテイルは深緑と、ピンチになって発動する特性があるのだから、打たれ強くなければいけないのは必然である。
だが、そんな理屈を抜きにしても、イリスのエースポケモンは最もイリスを信頼している。だからこそ、最もイリスの力の影響を受けるのだ。
緑色の嵐はローブシンを軽く呑み込み、その肉体を切り刻む。リーフブレードの比ではないその攻撃に、ローブシンはいとも容易く崩れ落ちた。
今回は本文がやたら長くなってしまったので、急ぎ足です。レンブ戦終了、次回は次の四天王戦へと続きます。では、お楽しみに。
- Re: 399章 イリスvsギーマ ( No.528 )
- 日時: 2012/07/11 07:00
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
レンブを倒したイリスは、次なる塔に向かっていた。
通称『イカサマ賭博場』。その塔は、とにかく内装が豪奢であった。螺旋状に渦巻く赤い絨毯は、パッと見るだけで上等なものだとわかるし、天井に吊るされたシャンデリアもまた同じである。
イリスは今、自動で上へと向かう絨毯に乗って、ジッとしている。
やがて最上階まで到着すると、どっかりとソファに座っていた男——四天王ギーマが、ゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩んで来る。
「来たな、チャレンジャー。待ちわびてたぜ」
小さい翼のような独特の黒髪に、燕尾服を着ている。首には黄色いマフラーを巻き、何故か裸足で革靴を履いている。
イリスの第一印象では、キザっぽい人だと思った。
「英雄と呼ばれているかなんだか知らないが、勝負の場に上がった時点で、そんな肩書は無意味になる。カードもコインも、実力が全てだ。勿論——」
ギーマは一旦そこで言葉を区切り、イリスを見据える。そして、次の言葉を、紡ぐ。
「ポケモンバトルもな」
イリスは悟った。ギーマは、今まで戦ってきたどのトレーナーとも違う。この者だけが持つ、何かがあると。
だが、そのくらいで怯む英雄でもない。
「上等ですよ。実力勝負。いいじゃないですか、分かりやすくて。むしろ純粋に力だけを比べる方が、手っ取り早くて好きですよ、僕は」
「そうか、それは重畳」
ギーマは務めて冷静に対応する。
「では、始めよう。勝者は全てを手に入れ、敗者は何も得られない。それが勝負の定め。そして私、四天王ギーマ。その役目に従い、お相手するまで」
サッとボールを取出し、ギーマからポケモンを繰り出す。
「ギャンブルオン、レパルダス」
ギーマの初手は、冷酷ポケモン、レパルダス。豹のようなしなやかな体つきのポケモンだ。
「レパルダス、悪タイプか。だったらこいつだ。出て来い、ズルズキン!」
イリスの一番手は、ズルズキン。攻撃面では格闘で弱点を突けるし、こちらも悪タイプを持っているので悪技は効きにくい。
「ほう、ズルズキンか。まあ、悪タイプに対しては堅実な手だが、レパルダスという一枚のカードに対する手としては、読みが甘いな」
「?」
ギーマの迂遠な表現に、いまいち言っている意味を理解できないイリス。ギーマはそんなイリスに構わず、レパルダスに指示を出す。
「レパルダス、猫騙し」
レパルダスは瞬時にズルズキンの正面へと移動する。本当にあっという間の出来事で、ズルズキンは反応すらできない。
そしてレパルダスは、肉球のついた両手を、パンッ、と叩き、衝撃を起こしてズルズキンを怯ませる。
「猫騙しは必ず先制を取り、必ず相手を怯ませる技。初手にしか使えないのが難点だが、この技は序盤の流れを引き寄せてくれる。勝負は最初の流れを掴んだ者の勝率が高い。そのまま燕返し」
怯むズルズキンに、レパルダス鋭い爪が炸裂する。効果抜群なので、なかなかのダメージだ。
「ズルズキン! ……くっ、読みが甘いって、こういうことか」
確かに、レパルダスなら燕返しを覚えていても不思議ではない。それに格闘タイプのズルズキンを出したのだ、読みが甘いと言われても仕方ない。
「続けてアイアンテール」
レパルダスの攻撃はまだ続き、レパルダスは鋼のように硬化させた尻尾をズルズキンに叩き付けた。
「ズルズキン、反撃だ! マグナムパンチ!」
「レパルダス、不意打ちだ」
ズルズキンは拳を構え、大砲の如き勢いで突き出そうとする。が、しかし、それよりも早くレパルダスの背後からの一撃が炸裂し、攻撃は中断される。
「燕返し」
加えて燕返しによる追い打ち。ズルズキンの防御力は高いのでまだ戦闘不能ではないが、このまま攻撃を受け続ければいずれやられるだろう。そのまえになんとか反撃しなければならない。
「くっそ、ブレイズキックだ!」
「そう来たか。ならばアイアンテール」
反撃にズルズキンは炎が灯った蹴りを繰り出し、レパルダスも鋼鉄の尻尾で迎え撃つ。
だがズルズキンの方が攻撃力が高い。ズルズキンが押し勝ち、レパルダスは吹っ飛ばされる。が、俊敏な身のこなしで華麗に着地した。さほどダメージはないようだ。
「ふむ。最初の流れは元に戻ったか。だが、ここからが勝負師の腕の見せ所だな。レパルダス、燕返し」
「迎え撃つぞ。マグナムパンチ!」
レパルダスは爪を構えて走り出し、ズルズキンも迎撃しようと拳を構える。
ズルズキンが拳を繰り出すが、レパルダスを捉えることはできない。あの素早い身のこなしで、軽々とかわされてしまうのだ。
「とりあえず一撃入れるんだ! そうすれば、そこから突破口が開ける! 噛み砕く!」
「不意打ち」
ズルズキンがレパルダスを噛み砕こうと大口を開けた瞬間、ズルズキンの背後に衝撃が走る。レパルダスの不意打ちによる一撃が入ったのだ。
「続けてアイアンテール」
さらにレパルダスはその場を軸に体を半回転させ、あろうことか噛み砕くで開けていたズルズキンの口の中に、鋼鉄の尻尾を叩き込んだ。
さすがにこの一撃は効いたようで、ズルズキンはその場に蹲ってしまう。
「今が勝負どころと見た。レパルダス、燕返し」
レパルダスは蹲るズルズキンを爪で切り裂き、カウンター防止のためだろう、後ろへと下がった。
ここまででズルズキンは、レパルダスの攻撃をしこたま喰らってボロボロだ。もうあと一撃喰らうだけで、倒れてしまいそうなほどに。
対するレパルダスは余裕の表情。まだほとんどダメージを受けていないからだろう。
「こうなったら、大技で行くしかない。ズルズキン、諸刃の頭突き!」
ズルズキンは頭を下げ、トサカを突き出すような姿勢で、レパルダスへと突貫する。その気迫は、凄まじいの一言に尽きる。
だが、
「ピンチになっての大博打は、成功しないぜ。勝負をかけるのは、しっかりと勝てるタイミングを見測らなくてはならない。どうやら、まだ勝負というものが分かっていないようだな」
ふぅ、と嘆息し、ギーマは指示を出す。
「レパルダス、不意打ち」
突っ込んでくるズルズキンに対し、レパルダスは真正面からは向かわない。むしろ真逆だ。
レパルダスは跳躍し、ズルズキンの真後ろに着地する。そして、鋭い一撃を、その背中に叩き込んだ。
「ズルズキン!」
諸刃の頭突きによる勢いが悪い方向へと向いてしまい、ズルズキンは壁に激突、そのまま落下し、戦闘不能だ。
「くっ、戻れズルズキン」
まさかのズルズキンが負けてしまった。このレパルダスもそうだが、なによりギーマの戦術が厄介だ。
「……よし。なら、次はお前だ。出て来い——」
はい、ついにギーマ戦まで来ました。これで四天王三人目ですね。それにしても、ギーマのレパルダス、強いですね。普通、レパルダスじゃズルズキンは倒せませんよ。まあしかし、その辺は小説の仕様ですから、無問題です。さて次回もギーマ戦、いつになったらこの四天王戦は終わるのか。次回もお楽しみに。
- Re: 400章 先制 ( No.529 )
- 日時: 2012/07/13 00:57
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「次はお前だ。出て来い、デンチュラ!」
イリスの二番手はデンチュラだ。虫・電気タイプなので、悪タイプのレパルダスとは相性がよく、ズルズキンのように燕返しで大ダメージも受けない。
「レパルダスは一度見たカードだ。それに対して選んだポケモンなら、当然対策はできているんだろうな?」
「勿論ですよ。デンチュラ、まずは帯電!」
デンチュラは発電した電気を体の表面に帯び、攻撃能力を高める。
「ふむ、そう来るか。レパルダス、燕返し」
レパルダスは鋭い爪を構え、デンチュラへと駆け出す。そのスピードは、流石と言うべきか、かなり速い。
「デンチュラ、迎撃だ! エナジーボール!」
デンチュラは突っ込んでくるレパルダスに向かって、自然のエネルギーを凝縮した緑色の球を発射する。レパルダスは咄嗟にその球を切り裂いてダメージを免れたが、燕返しは切れてしまった。
この瞬間、レパルダスは完全に無防備。そこにデンチュラの一撃が入るかと思いきや、
「デンチュラ、帯電!」
デンチュラは再度、体表面に電気を帯び、攻撃能力を高めるだけだった。
どう考えても攻撃のチャンスだというのに、イリスは攻撃を指示しなかった。傍から見れば疑問を抱くが、ギーマは満足げに息を吐く。
「気付いたか。レパルダスのパターンに」
「ええ、おかげさまで。でもまあ、ズルズキンがやられた時に、やっと気づいたんですけどね」
得意げに言って、イリスは続ける。
「そのレパルダスはスピードが高い。けれど、そのスピードを生かすのはごく短い間。基本行動としては、先制できる技を使って一瞬で敵に接近し、逃がさないよう追撃を連続で浴びせるというパターンです。しかも厄介なことに、初手は猫騙し、それ以降はこっちの攻撃に対しての不意打ちから繋げていきます。こっちから攻撃を仕掛けようとすれば、必ず失敗する。ズルズキンじゃ倒せないわけですよ」
けれど、とイリスは付け加えた。
「その戦略には大きな穴があります。一つ、その作戦は完全に後手に回ってしまいますから、帯電などの積み重ねて能力を上げる技に弱い。二つ、そうなればそっちから攻撃を仕掛けなくてはならないので、攻撃を仕掛けますが、レパルダスの火力の低さによって、迎撃に弱い。以上の二点を抑えれば、そのレパルダスには勝てますよ」
「百点満点だ。素晴らしい」
パチパチと、ギーマは手を叩く。賞賛のつもりらしい。
「だが、それを読み取られる程度のことは想定の範囲内だ。そのくらいで天狗になったりするなよ。レパルダス、燕返し」
「シグナルビーム!」
レパルダスが突っ込んで来るのに対して、デンチュラはカラフルな光線を発射。エナジーボールのように切り裂くわけにもいかず、レパルダスは光線の直撃を受けて吹っ飛び、戦闘不能となった。
「戻れ、レパルダス。お前の役目は終了だ」
ギーマは焦りも何も感じられない、ポーカーフェイスでレパルダスをボールに戻し、次のボールを取り出した。
「さあ、次のゲームといこうか。ギャンブルオン、ズルズキン」
ギーマの二番手は、イリスの初手と同じポケモン、ズルズキン。ただし、イリスは直感的に分かった。このズルズキンは♀だ。
「さあ行くぞ。ズルズキン、諸刃の頭突き」
ズルズキンは初っ端から大技を繰り出してきた。態勢を低くし、腰を屈め、頭を突き出す姿勢で、デンチュラに向かって突っ込んで来る。
「デンチュラ、かわしてシグナルビームだ!」
諸刃の頭突きは強力だが、一直線で来るので避けやすい。デンチュラはジャンプしてその攻撃をかわすと、カラフルな光線を発射してズルズキンを攻撃。効果は等倍だが、帯電で特攻を二段階上げているため、かなりの威力だ。
しかし、ズルズキンの耐久力も並大抵ではない。光線をものともせず、すぐにデンチュラの方へ向き直り、次なる攻撃を繰り出す。
「騙し討ち」
ズルズキンはまた頭を突き出して突貫する。が、何度来ても同じだ。デンチュラは同じ方法で回避するだけ——
「そこだ、ズルズキン」
——しかしズルズキンはすぐに軌道を変更。跳躍したデンチュラのところまで自分も跳び、拳を叩き込む。
「そのまま飛び膝蹴り」
ついでに膝を使った強烈な蹴りも浴びせ、追撃する。ただの膝蹴りで、跳んではいないのだが、まあいいのだろう。
「デンチュラ、大丈夫か?」
デンチュラは地面に着地し、頷いた。わりとダメージは受けているようだが、致命傷ではなかったようだ。
しかし、まさかの騙し討ちではあった。このズルズキン、使う技こそイリスの個体と似通った部分はあるが、バトルスタイルは全く違うようだ。
「おいおいチャレンジャー、この程度で驚くなよ。これは確かに勝負だが、別に真剣勝負ってわけじゃない。騙し討ちでもイカサマでも、なんでもありだ。条件はフェアでも、プレイまではフェアじゃないんだぜ?」
そんなことを言いつつ、ギーマはズルズキンに次の指示を出す。
「行けズルズキン。騙し討ち」
ズルズキンは拳を構えると、それを振りかざしてデンチュラへと駆ける。
「デンチュラ、あれは避けられない。だから迎撃するぞ。シグナルビーム!」
ズルズキンがデンチュラに拳を突き出した直前に、デンチュラは光線を発射した。騙し討ちの欠点としては、相手が攻撃に対してのアクションを起こさないと、成功しないことがあるのだ。そしてさらに、迎撃にも弱い。
なのでギリギリまで引きつけてシグナルビームを発射し、当たると確信していたが、それもギーマの策略により、失敗することになる。
「ズルズキン、砂かけ」
ズルズキンは拳を突き出す寸前、光線が発射される直前に、地面を蹴って砂をデンチュラに振りかけた。
地を這うようなデンチュラの態勢から、当然砂はデンチュラの眼に入り、シグナルビームは外れてしまう。
しかも、目に入った砂に悶えている隙に、ズルズキンの拳がデンチュラを捉える。クリーンヒットしたので、なかなかのダメージだ。
「くっ、砂かけなんて、完全に予想外だ……!」
「当然さ。常に相手の裏をかくのが勝負だからな。それ、もう一度行くぞ。砂かけ」
ズルズキンはまた地面を蹴ってデンチュラに砂をかける。
だが、デンチュラの特性は複眼。多少命中率を下げられた程度では、さしたる問題ではない。なのでイリスはこの時、まだ気付いていなかった。
四天王ギーマの、恐ろしいまでの狡猾な戦略を。
さて、今回は対ギーマ戦その二ですが、それと同時に400章到達です。これまで500以上の返信がありますが、そのうち400は本文、他にも人物紹介などでいろいろつかってますから、お客様からのコメはわりと少ないんですね、この作品……。まあ、それはいいとしましょう。次回はギーマ戦その三です。最後にそれっぽいこと言っていますが、あまり期待しないように。では、次回もお楽しみに。
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