二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
- 日時: 2013/04/14 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394
今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。
参照をクリックすれば前作に飛びます。
では、英雄達の新しい冒険が始まります……
皆様にお知らせです。
以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
となっています。
皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。
登場人物紹介等
味方side>>28
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624
目次
プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695
第十六幕 錯綜
一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756
第十七幕 決戦
零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕
>>774 >>812 >>818
最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851
2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825
あとがき
>>852
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
- Re: 567章 先手 ( No.835 )
- 日時: 2013/03/31 20:17
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「デスカーン、祟り目!」
「バイバニラ、冷凍ビーム!」
デスカーンの黒いオーラとバイバニラの凍てつく光線がぶつかり合い、共に消滅する。
それと同時に、二体のポケモンは猛毒と攻撃のダメージが蓄積し、地に落ちた。
「むぅ、戻りなさい、デスカーン」
「戻ってくれ。ありがとう、バイバニラ」
最後は耐久力の勝負となり、共に戦闘不能となった二体を、ゲーチスとNはそれぞれボールに戻す。
「次は君だ。僕に力を貸してくれ、アバゴーラ!」
「ドクロッグ! 惰弱な民に暴力の制裁を!」
Nの二番手は、古代亀ポケモン、アバゴーラ。
分類通り今は絶滅した亀のような姿のポケモンで、青い体に黒い甲羅と嘴を持つ。前脚はヒレのままだが後脚が発達しているため直立しており、全体的にゴツゴツでがっしりした体つきをしている。
対するゲーチスのポケモンは、毒突きポケモン、ドクロッグ。
こちらも直立した蛙のような姿で、首元には不気味な音を鳴らす赤い毒袋。手も四指のうち一つだけ赤く、爪のように長く鋭い。
「ふむ、アバゴーラですか。タイプではドクロッグが有利ですが」
ゲーチスは言葉を区切り、ドクロッグを見遣る。
直後、ドクロッグは早くも動き出した——と言っても、身震いしただけだ。だがそれだけで、ゲーチスは何かを察知した。
「ワタクシのドクロッグの特性は危険予知。それが弱点となる技を予知た。アバゴーラというポケモンから考えれば、地震あたりでしょうか?」
危険予知は場に出ると、相手のポケモンが自分に対して弱点を突ける技を持っていた場合、身震いする特性。つまりアバゴーラはドクロッグに対して弱点を突ける技を覚えている。それを知られたNは、
「正解だ! アバゴーラ、地震!」
その技を隠そうともせず、真っ先に指示する。アバゴーラは大きなヒレを地面に叩き付け、地震を引き起こす。
「ドクロッグ、かわしなさい。ダストシュートです!」
ドクロッグは大きく跳躍し、地震を回避する。そして空中でゴミの塊を生成すると、それをアバゴーラに投げつける。
アバゴーラは鈍足なポケモンであるため、ゴミの塊をかわせず直撃を喰らってしまった。
「休ませてはいけませんよ。ドクロッグ、クロスチョップ!」
ドクロッグは空中で腕を交差させ、勢いよく落下。その勢いも合わせて交差させた手刀をアバゴーラに叩き込む。
クロスチョップは格闘タイプの中でも高威力な技。それを効果抜群で受けたのだから、アバゴーラへのダメージは大きいはずだが、
「アバゴーラ、ストーンエッジだ!」
アバゴーラは至近距離から鋭い岩を連射し、すぐさまドクロッグに反撃する。
「僕のアバゴーラの特性はハードロック。効果抜群の攻撃を受けても、その攻撃の威力を抑えるんだ。そのくらいじゃやられたりはしないさ。アバゴーラ、噛み砕く!」
追撃にとアバゴーラは嘴を開き、万力のようにドクロッグを噛み砕こうとするが、
「不意討ちです!」
次の瞬間、ドクロッグはアバゴーラの背後に移動し、鋭い爪の一撃を叩き込んだ。
「続けて雷パンチ!」
さらに拳に電撃を纏わせ、続けて硬い甲羅を殴りつける。ハードロックで威力が落ちてるとはいえ、効果抜群は効果抜群だ。それなりのダメージは通る。
「くっ、アクアジェット!」
「無駄です、不意討ち!」
アバゴーラは水流を纏って飛び上がり、頭上からドクロッグに突っ込もうとするが、それより早くドクロッグがアバゴーラに接近し、爪を突き込む。
「先制技同士なら、素のスピードが高い方が勝つのは道理。あなたのアバゴーラでは、ワタクシのドクロッグには追いつけません。ドクロッグ、ダストシュート!」
ドクロッグは巨大なゴミの塊を生成し、アバゴーラ目掛けて投げつける。
「アバゴーラ、アクアジェットだ!」
アバゴーラは再び全身に水流を纏い、飛来するゴミの塊をかわしてドクロッグに突撃する。
「噛み砕く!」
「無駄だと言っているでしょう! 不意討ち!」
アバゴーラはそのまま嘴で噛み砕こうとするが、ドクロッグは一瞬のうちにアバゴーラの背後に回り、爪を突き刺して反撃してくる。
「クロスチョップです!」
そしてそのまま交差させた手刀を振り下ろし、切り裂くようにアバゴーラを追撃。しかし、
「アバゴーラ、地震だ!」
アバゴーラは素早く地面にヒレを叩き付け、地を這う衝撃波を引き起こす。ドクロッグは跳躍してかわそうとしたが避けきれず、衝撃波を喰らって吹っ飛んだ。
「今だ! アクアジェット!」
すかさずアバゴーラは水流を纏い、高速でドクロッグへと突撃し、追撃する。
耐久力の低いドクロッグだ、これらの攻撃だけでもかなり体力が削られただろう。
「もう一押しだ。アバゴーラ、ストーンエッジ!」
アバゴーラは周囲に鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらを吹っ飛ぶドクロッグ目掛けて一斉に発射する。
「たかだか二発攻撃を入れた程度で、調子に乗るものじゃないですよ! ドクロッグ、不意打ちです!」
ドクロッグも吹っ飛ばされながらなんとか態勢を整え、地に足を着ける超高速でアバゴーラの背後に回り込み、ストーンエッジを回避。そのまま鋭い爪を突き込んだ。
「雷パンチ!」
続けて電撃を纏う拳も叩き込む。防御が高く、ハードロックの特性も併せ持つアバゴーラだが、これだけ攻撃を打ち込めばそろそろ限界が来るはずだ。
「くぅ、アバゴーラ、地震!」
「同じ手は喰らいません! ドクロッグ、回避です!」
アバゴーラは素早く地面にヒレを叩き付けるが、今回繰り出したのは大技のクロスチョップではなく雷パンチ。すぐさま襲ってくる衝撃波にも素早く対応し、ドクロッグは跳躍して衝撃波を回避した。
「ダストシュート!」
そして空中からゴミの塊をアバゴーラに投げつける。
アバゴーラにとっては運の悪いことに、ダストシュートの直撃を受け、アバゴーラは毒状態になってしまった。
「くっ、アバゴーラ!」
ただでさえ残り体力が少ない時に毒のダメージまで受ければ、アバゴーラももうもたない。そしてゲーチスは、そこを狙ってくる。
「そろそろアバゴーラの体力も尽きる頃。決めましょう、ドクロッグ。雷パンチ!」
拳に電撃を纏わせ、ドクロッグは一直線にアバゴーラへと駆けだす。
「アバゴーラ、アクアジェット!」
アバゴーラは雷パンチが届く前に水流を纏い、決死の覚悟でドクロッグに突っ込む。
その覚悟が功を奏したのか、アバゴーラの一撃はドクロッグにヒットし、ドクロッグを吹っ飛ばした。そして今度は、アバゴーラがドクロッグにとどめを刺すべく、ヒレを振り上げる。
「地震!」
振り上げたヒレは、そのまま勢いよく振り下ろされ——
「この技を忘れてもらっては困りますねぇ。不意討ちです」
刹那、ドクロッグはアバゴーラの真後ろに接近していた。
「っ!? アバゴーラ!」
今まさに攻撃しようとした瞬間に横槍を入れられ、アバゴーラの攻撃は失敗してしまう。
「ドクロッグ、クロスチョップ!」
そしてドクロッグは交差した手刀をアバゴーラの甲羅に叩き付け、遂にアバゴーラは戦闘不能となった。
「オニゴーリ、地震!」
「デンリュウ、パワージェム!」
イリゼのオニゴーリが地震を引き起こし、デンリュウは煌めく宝石を発射する。
どちらもホワイトキュレムに直撃したが、ホワイトキュレムは身じろき一つしない。
「くっそ、やっぱりマジもんの伝説は洒落になんねぇなぁ。こんだけぶち込んでもまだ耐えるか。オニゴーリ、もういっぺん地震だ!」
「というか、本当に力ずくで攻撃すればキュレムとレシラムは——っつ、デンリュウ、コットンガード! ——キュレムとレシラムは分離するの?」
ゲーチスからの指示はなくなったものの、ホワイトキュレムはイリスたちを敵とみなしたのか、自律して攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を捌きつつこちらも攻撃していくが、キュレムとレシラムが離れる様子はまるで見られない。
「知るかよ。だが、どっちにしろチャンスがあるとしたら分離した時だ。あの状態のキュレムを捕獲するのは、流石に無理がある」
「それはそうかもしれないけど……デンリュウ、気合球!」
デンリュウは気合を凝縮した球体を放ち、ホワイトキュレムに直撃させる。効果抜群で、普通のポケモンなら大ダメージになるところだが、
「やっぱりダメか。こうなったら、やっぱり全ポケモンで一斉攻撃しかないのかな」
「それでも怪しい気はするが、やるっきゃねぇか」
と言う間にも、ホワイトキュレムは龍の力を込めた波動を撃ち出し、攻撃してくる。その出力が尋常ではなく、レシラムが放つ龍の波動の比ではない。地面は抉れ、衝撃波だけで周囲の木々は砕け散る。指示がないからか、こちらの攻撃を避ける気配はないが、それでも相当な脅威であることに変わりはない。
「ちっ、おいイリス! やるなら早くした方がよさそうだぜ」
「そうだね……!」
真実の英雄を軸とした、ホワイトキュレム捕獲作戦。こちらも、長い戦いになりそうである。
- Re: 568章 砲火 ( No.836 )
- 日時: 2013/04/01 00:23
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「よくやってくれたよ、アバゴーラ。戻って休んでくれ」
Nは戦闘不能となったアバゴーラをボールに戻し、三番目のポケモンが入ったボールを取り出す。
「相手はドクロッグ、次は君に任せるよ。僕に力を貸してくれ、アーケオス!」
Nの三番手は、最古鳥ポケモン、アーケオス。
アバゴーラ同様、分類通りの始祖鳥のような姿をしている。腕は翼と一体化し、後脚の付け根にも翼がある。また頭頂部から首の後ろに賭けては緑、首元と足、尻尾は赤、体や腕は黄、羽や尻尾の先端は青と、非常にカラーリングにも富んでいる。
「一気に決める! アーケオス、アクロバット!」
アーケオスはダッと駆け出し、瞬く間にドクロッグに接近。そのまま鋭い爪を振りかざす。
「ふん、ドクロッグ、不意打ちです!」
だが如何にアーケオスが速くとも、不意打ちには敵わない。ドクロッグも一瞬のうちにアーケオスの背後を取り、真っ赤な爪を突き出すが、
「ドラゴンクロー!」
ガキィ! と鋭いものがぶつかり合う音が響き渡る。見れば、ドクロッグの突き出した爪は、アーケオスが振り向き様に振るった爪によって防がれていた。
「不意討ちは必ず背後から攻撃する。相手の攻撃に対して確実に先制できるのは強いけど、その分攻撃パターンも読みやすい。アバゴーラじゃ鈍くて対応できなかったけど、アーケオスならそれも可能だ。さあアーケオス、アバゴーラの仇だ。アクロバット!」
アーケオスは爪でドクロッグを押し飛ばすと、そのまま超高速でドクロッグに突っ込み、吹っ飛ばす。
「ドクロッグ!」
効果抜群の直撃を受け、ドクロッグはあえなく戦闘不能となった。
「……まあ、アバゴーラを倒しただけで良いとしますか。戻りなさい、ドクロッグ」
ゲーチスは怒りの感情を抑え、ドクロッグをボールに戻す。
「生憎、ワタクシの手持ちにはそのアーケオスを超えるスピードのポケモンはいません。なので、ここはそのアーケオスとは逆のベクトルで攻めるとしましょう」
言ってゲーチスは次のボールを取り出し、放り投げる。
「シビルドン! 飢える民に餓死の害悪を!」
ゲーチスの三番手は、電気魚ポケモン、シビルドン。
腕の生えたヤツメウナギのようなポケモンで、尻ヒレが足のようになっている。円形の口は吸盤状になっており、内側には鋭い牙が並ぶ。
「シビルドンか。特性は浮遊だから、地震が通らない……」
勿論ゲーチスの狙いは地震云々ではなく、飛行技半減と電気技で弱点を突くことだろう。
「シビルドン、ギガスパーク!」
シビルドンは巨大な電撃の球体を生成すると、それをアーケオス目掛けて発射する。
「アーケオス、かわすんだ! アクロバット!」
アーケオスは地面を蹴り、滑空するように飛行してギガスパークをかわし、そのままシビルドンに体当たりする。
「ドラゴンクロー!」
さらに龍の力を込めた爪でシビルドンを引き裂き、追撃する。
「瓦割り!」
「アクロバットだ!」
シビルドンは拳を突き出すが、俊敏な動きで駆け回るアーケオスを捉えることは出来ず、今度は逆方向から攻撃される。
「もう一度アクロバット!」
跳躍するように飛んだアーケオスは、続いてシビルドンの脳天に尻尾を叩き込む。効果はいまひとつだが、何度も攻撃していればダメージも蓄積する。シビルドンが相手なら、アーケオスは手数で勝負するのが最も効率的だ。
「アクロバットがあなたの専売特許だと思ったら大間違いですよ。シビルドン、アクロバットです!」
アーケオスが地に足を着けた瞬間、シビルドンは意外な敏捷性で跳躍し、頭上からアーケオスに殴り掛かる。だが、
「アクロバットだ!」
アクロバットがアーケオスの専売特許でなくとも、アクロバットのスピードは圧倒的にアーケオスの方が上。アーケオスはシビルドンの拳を回避すると、またしてもシビルドンの脳天に尻尾を叩き込む。
「ぬぅ、シビルドン、ギガスパーク!」
シビルドンは電撃を圧縮した球体を至近距離から放つが、その時には既にアーケオスは大きく飛び退いており、電撃は当たらない。
「ちょこまかと! ドラゴンダイブです!」
シビルドンは龍の力を纏い、アーケオス目掛けて突っ込むが、アーケオスにはまたしても跳躍して回避される。
「ならば今度は上からです! シビルドン、ドラゴンダイブ!」
シビルドンは飛び上がり、龍の力を纏って落下するようにアーケオスへと突撃するが、
「アクロバット!」
ドラゴンダイブはかわされ、シビルドンは背後からアーケオスのアクロバットを喰らう。さらに、
「ドラゴンクローだ!」
続けて繰り出された龍の力を込めた爪に切り裂かれ、シビルドンはかなり体力を削られた。実質的に弱点のないシビルドンだが、耐久力自体は並み。そろそろ限界が来た頃だろう。
「シビルドン、ギガスパーク!」
「アーケオス、アクロバット!」
シビルドンが発射する電撃の砲弾を、アーケオスは俊敏な動きで回避。そのままシビルドンに接近し、鋭い爪で切り裂く。
「続けてドラゴンクロー!」
さらに龍の力を込めた爪も振るって追撃。
「瓦割り!」
そこにシビルドンは拳を突き出すが、アーケオスはすぐさま後ろに飛び、拳をかわす。
「そろそろかな……決めるよ、アーケオス!」
そんなNの声を聞き、アーケオスは空高く飛翔する。
そして、
「アーケオス、諸刃の頭突き!」
アーケオスは凄まじい勢いでシビルドン目掛けて急降下する。自身が傷つくことも厭わず、一直線にシビルドンへと突撃していった。
「ぐっ……シビルドン、迎え撃ちなさい! ギガスパーク!」
ゲーチスは慌てて指示を出すが、もう遅い。
アーケオスの捨て身の特攻はシビルドンへと直撃し、氷の木々を粉砕しながら吹っ飛ばす。
「シビルドン!」
四方八方からの攻撃で削られたところに、高威力な諸刃の頭突きの直撃を喰らい、シビルドンは戦闘不能となった。
「……戻りなさい、シビルドン」
ゲーチスは静かにシビルドンをボールに戻す。しかし、彼が浮かべているのは、怒りの形相であった。
「デンリュウ、雷! メタゲラス、メタルブラスト! ディザソル、辻斬り!」
デンリュウ、メタゲラス、ディザソルはそれぞれを代表するとも言える技を繰り出し、ホワイトキュレムを攻撃するが、それでもホワイトキュレムの攻撃は止まらない。
ホワイトキュレムは頭上に紅色に燃える火球を生成し、容赦なくそれを放ってくる。
「クロスフレイム……!」
疑っていたわけではないが、ホワイトキュレムがレシラムの専用技であるはずのクロスフレイムを使用したことで、ホワイトキュレムがレシラムの力を吸収していることが確定した。
デンリュウとディザソルはすぐにその場から飛び退いたが、鈍重なメタゲラスは逃げ遅れ、クロスフレイムの直撃を受けてしまう。
「メタゲラス!」
途轍もない破壊力を持つホワイトキュレムが放つ技、それも効果抜群の一撃を喰らい、メタゲラスは一発で戦闘不能となってしまった。
「くっ、戻ってくれ、メタゲラス……」
ただでさえ少ない戦力が、これで一体いなくなってしまった。だが、まだイリスには戦えるポケモンが残っている。
「ウォーグル、ブレイブバード! デスカーン、シャドーボール! デンチュラ、十万ボルト! チラチーノ、スイープビンタ!」
とにかくそれぞれのポケモンが持てる技を片っ端から繰り出し、ホワイトキュレムを攻撃する。相手が強力な一体であるのなら、手数で攻めるしかない……とはいえ、ホワイトキュレムからしたら雑兵が群がっているようなものだろう。
「火力で勝負してるはずなのに、やっぱ持久戦になりそうだな……デスカーン、鬼火だ!」
デスカーンは青白く燃える不気味な火の玉を浮かべ、ホワイトキュレムへと放つ。鬼火の相手は特殊技が中心なので攻撃力の低下は無意味だが、持続ダメージで少しでも体力を削りたい。
そう思っていたのだが、ホワイトキュレムは龍の波動を放ち、迫り来る鬼火を消し飛ばしてしまう。さらに直後、地面から連続して土砂を噴き出す。
「大地の力……当たったら一撃で体力のほとんどを持ってかれるな。みんな、耐えようとは思わないで、相手の攻撃の回避を優先して!」
手数で攻める以上は、こちらに戦力があることが前提だ。となると、こちらは生き残ることが重要となる。
「ウォーグル、恩返し! デンチュラ、虫のさざめき!」
ウォーグルはホワイトキュレムに果敢に接近すると、翼を打ち付け、すぐさま退避。デンチュラも離れた位置から虫がさざめくような音波を発して、ホワイトキュレムの体力を徐々に削っていく。
ホワイトキュレムはイリスだけでなく、他の方向から攻めているイリゼやロキ、その他の者からの攻撃にも対処しなければならない。なので、イリスはとにかく攻める。
「デスカーン、サイコキネシス! チラチーノ、ロックブラスト!」
デスカーンは強力な念動力を念波に変えて放ち、チラチーノはいくつもの岩石を連射する。
「デンリュウ、気合球! ディザソル、氷柱落とし!」
デンリュウは気合を込めた球体を投げつけ、ディザソルは虚空から無数の氷柱を落下させる。
他にも皆から集中砲火されているにも関わらず、ホワイトキュレムは動じない。
そして、刹那——ホワイトキュレムは冷気を集め、大量の熱気を放出する。
- Re: 569章 氷山 ( No.837 )
- 日時: 2013/04/01 01:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
静かに次のボールを構えたゲーチスは、怒りの形相でNを睨み付け、四番目のポケモンを繰り出す。
「ガマゲロゲ! 枯渇する民に濁流の氾濫を!」
出て来たのは、振動ポケモン、ガマゲロゲ。
直立した巨大なヒキガエルのような姿で、青くがっしりとした体つき。体幹の割に腕は細く、足も短い。また頭部、肩、手の甲、背中にそれぞれ振動するコブがある。
「今度はガマゲロゲで来たか。アーケオス、まずは地震だ!」
アーケオスは地に降り立つと、尻尾を勢いよく地面に叩き付け、大きな地震を引き起こすが、
「ガマゲロゲ、大地の力!」
ガマゲロゲも同時に地面を揺るがし、大地の力で地震を相殺する。
「濁流です!」
続けてガマゲロゲはどこからともなく濁った大波を発生させ、アーケオスを飲み込まんとする。
「アーケオス、アクロバット! 濁流をかわしてガマゲロゲにも攻撃するんだ!」
アーケオスは指示通り、まずは跳躍して濁流を回避。そして次に上空から滑空するようにガマゲロゲへと突っ込んでいき、がっしりした体幹に激突した。
「ぬぅ、気合球!」
「かわしてドラゴンクロー!」
ガマゲロゲは掌に気合を凝縮した球体を生成し、押し付けるようにアーケオスへと放つが、アーケオスはサイドステップでそれを回避。横から龍の力を込めた爪でガマゲロゲを切り裂く。
「ガマゲロゲ、アーケオスを引き剥がしなさい! 濁流!」
ガマゲロゲは再び濁流を放つが、アーケオスには当たらない。大きく飛び上がったアーケオスは滑空の姿勢を取り、そのままガマゲロゲ目掛けて下降する。
「アクロバット!」
そしてガマゲロゲへと突っ込んでいくが、
「迎撃です! ヘドロウェーブ!」
直前でガマゲロゲは毒液の大波を引き起こす。濁流よりも広範囲を襲うヘドロウェーブはアーケオスを飲み込み、押し流してしまった。
「アーケオス!」
効果はいまひとつなのでそれほど大きなダメージにはならないが、またしても不運なことに、アーケオスも毒状態になってしまった。
アーケオスの特性は、体力が半分以下にまで減ると攻撃と特攻が半減する弱気。普通の攻撃なら回避すればいいだけだが、毒状態になってしまうと少しずつ体力が削られるため、必ず弱気が発動してしまう。
「ぐっ、でもそれなら、弱気が発動する前にガマゲロゲを倒せばいいだけのこと! アーケオス、アクロバット!」
アーケオスは飛び上がり、滑空するようにガマゲロゲの周囲を旋回して少しずつガマゲロゲとの距離を詰めていくが、
「させると思うのか!? ガマゲロゲ、ヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは巨大な毒液の大波を放ち、アーケオスを寄せ付けない。毒のダメージが溜まる時間を稼ぐ気だろう。
「アーケオス、なんとか掻い潜ってガマゲロゲに接近するんだ!」
Nの指示を受け、アーケオスは波が来ない場所を探り、ガマゲロゲに近づこうとするが、
「だから、させないと言っているでしょう! ガマゲロゲ、連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲはどうしてもアーケオスを近づかせたくないようで、四方八方に向かって毒液の波を連発する。
流石のアーケオスもこれだけヘドロウェーブを放たれて接近するのは困難だ。どころか、普通に避けるだけでも精一杯である。
「まだだ! 濁流!」
連発するヘドロウェーブの合間に、ガマゲロゲは一発だけ濁流を発生させる。
アーケオスとしては効果抜群の濁流を喰らえば、弱気が発動するどころか一撃でやられかねないので、濁流だけは絶対にかわそうと飛行する。
しかし濁流にばかり目が行っていたためか、アーケオスは襲い掛かるヘドロウェーブを見落としてしまい、またしても毒液の波に飲まれる。
「ガマゲロゲ、アーケオスを仕留めなさい! 気合球!」
ガマゲロゲは波が引いた瞬間、気合を凝縮した球体を生成してアーケオスに投げつける。
「アーケオス、アクロバットだ!」
アーケオスはなんとか立ち上がり、機敏な動きで気合球を回避。そしてガマゲロゲに接近すると、翼の一撃を叩き込んだ。
「よし、いいぞ。続けてドラゴンクロー!」
次に龍の力を込めた爪で引き裂き、追撃をかける。
「もう一度、ドラゴンクロー!」
「調子に乗るな! ヘドロウェーブ!」
アーケオスは続けて龍の爪を振るおうとするが、そこにガマゲロゲのヘドロウェーブが放たれ、アーケオスはドラゴンクローを中断。羽ばたいて毒液の波を回避する。
「連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲはアーケオスが離れた瞬間を狙って、またしても毒液の大波を連発する。こうなってしまえば、アーケオスでも接近するのは困難となってしまう。
「だったらこれだ! アーケオス、地震!」
羽ばたきながら毒液の波を回避するアーケオスは、波が引く隙を狙って地面に尻尾を叩き付ける。その衝撃で地面は揺れ、激しい地震が引き起こされた。
「ぐぅ……ガマゲロゲ、大地の力で相殺です!」
地震でヘドロウェーブが強制中断させられ、ガマゲロゲは仕方なく大地の力を放ち、地震を相殺する。しかし、次の瞬間、
「アクロバット!」
一直線に突っ込んできたアーケオスの突撃を喰らい、ガマゲロゲは態勢を崩してしまう。
「今がチャンスだ! アーケオス、ドラゴンクロー!」
ガマゲロゲの態勢が崩れた隙に、アーケオスは龍の力が込められた爪でガマゲロゲを切り裂く。
だがその威力は、さっきまでのものと比べて格段に落ちている。毒でダメージが蓄積し、弱気が発動してしまったのだろう。
「ガマゲロゲ、気合球です!」
「アクロバットだ!」
ガマゲロゲは気合を凝縮した球体を掌に生成し、アーケオスに押し付けるようにして放つが、アーケオスはすぐさまガマゲロゲの背後に回り、尻尾の一撃を叩き込む。
弱気で攻撃力が落ちても、スピードは健在だ。火力がなくなったのなら、今度は手数で攻めればいいと考え、アーケオスは攻撃を続ける。
「もう一度アクロバット!」
ガマゲロゲが反応するよりも早く移動し、ガマゲロゲに攻撃する。そうしてガマゲロゲにもダメージを蓄積させ、アーケオスが倒れるより先に倒す。それが出来れば最高だ。
しかし、
「大地の力!」
突如、ガマゲロゲの周囲を土砂が覆ってしまう。アーケオスは飛行タイプなので土砂によるダメージは受けないが、土砂によってアクロバットの移動範囲が制限されてしまった。
「ヘドロウェーブ!」
アーケオスが進路を縛られて困惑している隙に、ガマゲロゲは毒液の波を発生させ、アーケオスを押し流す。
「しまった……アーケオス!」
毒のダメージとヘドロウェーブのダメージで、アーケオスの体力はかなり削れてしまった。しかもガマゲロゲとアーケオスの間に距離が出来たということは、
「連続でヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは毒液の波を連発する。
アーケオスは飛行してこれを回避するが、ただ避け続けていても、いずれ毒のダメージでやられるだけだ。かといって波を掻い潜ることは困難で、地震で中断させる方法ももう通じないだろう。だとすると、
「あの手しかないか。アーケオス、君を捨て石にするみたいで悪いけど、やってくれるかい?」
Nの言葉に、毒で疲弊していることなどおくびにも出さず、アーケオスは力強く頷いた。
「うん、ありがとう。それじゃあ行くよ!」
アーケオスはヘドロウェーブから逃げるようにガマゲロゲからさらに距離を取り、
「アーケオス、ヘドロウェーブを突き抜けろ! 諸刃の頭突き!」
凄まじい気迫でガマゲロゲへと突っ込む。
掻い潜ることも中断させることも無理なら、力ずくで突破する。それが、Nの考えだった。
「ぬぅ、だったらガマゲロゲへと到達する前に、体力を全て削ぎ落すまで! ガマゲロゲ、さらにヘドロウェーブ!」
ガマゲロゲは標的をアーケオスに絞り、突っ込んで来るアーケオスに向けて毒液の波を連発する。
だがそれでもアーケオスは止まらない。弱気が発動しても、強気に向かっていくアーケオスは、次々と毒液の波を突っ切っていく。
そして遂に、アーケオスはガマゲロゲへと到達した。
「あれは……! みんな避けろ——!」
ホワイトキュレムが冷気を溜めこみつつ熱気を発するのを見て、イリスは先ほどの大技を思い出す。樹海の一部に燃える氷山を作り出した、コールドフレアという途轍もない技。
咄嗟にイリスは回避の指示を出し、直後——ホワイトキュレムの周囲が氷結した。
「っ——!」
大きさは最初に放ったものよりも小さいが、いたるところに炎を内包する氷山が出来ている。力を分散させて放ったのだろう。
そして氷山の中には、何匹ものポケモンが閉じ込められ、炎に燃やされていた。逃げ切れなかったポケモンたちだろう。その中には、デンリュウやディザソルも含まれている。
「くっ、なんて技だ。こんな技、そう何発も喰らってたら、あっと言う間に全滅するぞ……!」
再びその途方もない威力の技に戦慄し、イリスはデスカーンに指示を出す。
「デスカーン、金縛り!」
デスカーンはホワイトキュレムに金縛りをかけ、コールドフレアを一時的に封印する。これでしばらくは、あの規格外な技は放たれないはずだ。
「こっちもかなりやばいけど、N……」
イリスはホワイトキュレムから視線を外し、少し離れた場所でゲーチスと向かい合うNを見据えた。
- Re: 570章 懇願 ( No.838 )
- 日時: 2013/04/01 14:39
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「アーケオス!」
「ガマゲロゲ!」
諸刃の頭突きがガマゲロゲに炸裂し、ガマゲロゲは大きく吹っ飛ばされる。
同時にアーケオスも多大な反動を受け、ガマゲロゲとは逆方向に吹っ飛んでいった。
ガマゲロゲはアーケオスの決死の攻撃を受けて戦闘不能。アーケオスも毒のダメージが蓄積したところに諸刃の頭突きの反動がとどめとなり、戦闘不能。つまり、両者共に戦闘不能だ。
「ありがとう。戻ってくれ、アーケオス」
「……戻りなさい、ガマゲロゲ」
Nとゲーチスはそれぞれのポケモンをボールに戻す。
これでNの手持ちは残り三体。対するゲーチスは残り二体と、現時点ではゲーチスが劣勢となっている。
二人はそれぞれ次なるボールを構え、ポケモンを繰り出した。
「ドラピオン! 逃げ惑う民に破壊の弾圧を!」
「力を貸してくれ、ギギギアル!」
ゲーチスの五番目のポケモンは、化け蠍ポケモン、ドラピオン。
紫色の巨大な蠍のような姿をしているが、上半身と下半身が独立し、長く伸びた蛇腹状の関節で接続されているという独特なシルエット。両腕や尻尾の爪は鋭く煌めいている。
対するNが繰り出すのは、歯車ポケモン、ギギギアル。
大きな歯車と、顔のある歯車、中央の歯車、赤いコアのある歯車の四つからなり、スパイクの付いたリングギアが下部を囲んでいる。
「ギギギアル、まずはギアチェンジだ!」
鋼タイプであるギギギアルには、ドラピオンの毒技は通じない。なのでギギギアルは無理に攻めず、ギアを入れ替えて攻撃力と素早さをあげ、準備を整える。
「ふん、だからなんだと言うのです。ドラピオン、こちらも爪とぎ!」
ドラピオン地面で爪を擦って研ぎ澄まし、攻撃力と命中率を上げる。ドラピオンも攻撃する準備を整えてから攻めに移るようだ。
「もう一度です、爪とぎ!」
「ギアソーサー!」
ドラピオンが再び爪を研ごうとするが、そこにギギギアルが二つの歯車を射出し、妨害する。
「小癪な、クロスポイズンです!」
飛来する二つの歯車を、ドラピオンは毒を含んだ爪を交差させて振り、弾き飛ばす。
「ドラピオン、地震!」
続けて尻尾を地面に叩き付け、強力な地震を引き起こすが、ギギギアルは素早く上空へと逃げ、地震を回避する。
「ギギギアル、ワイルドボルト!」
「クロスポイズンで押し返しなさい!」
ギギギアルは弾ける電撃を身に纏い、凄まじい勢いでドラピオンに突撃する。ドラピオンも毒を含んだ爪を交差させて振るい、ギギギアルと競り合う。
しばし押し引きがあったものの、最終的にドラピオンのクロスポイズンは電撃を切り裂き、そのままギギギアルを押し戻した。
「地震です!」
そしてドラピオンは、すぐさま地面に尻尾を叩き付け、地震を引き起こす。
「っ、避けろ、ギギギアル!」
宙に浮いていてもギギギアルの特性は浮遊ではない。衝撃波には当たってしまうので、急いで上昇して地震を避ける。
「ギギギアル、ギアチェンジ!」
ギギギアルは再びギアを取り換え、攻撃と素早さを上昇させる。そして、
「ワイルドボルトだ!」
弾ける電撃を纏い、ドラピオンに突っ込む。
「ドラピオン、クロスポイズン!」
対するドラピオンはさっきと同じようにクロスポイズンで迎え撃つが、ギアチェンジでさらに増した攻撃力には敵わず、今度は押し切られてしまう。
「いいぞギギギアル。次はぶち壊す!」
態勢を崩したドラピオンに、ギギギアルは全てを破壊するかのような勢いで突貫。ドラピオンを吹っ飛ばした。
「ギアソーサーだ!」
続けて歯車を二つ飛ばし、ドラピオンの体をギリギリと締め付ける。この連続攻撃には、防御の高いドラピオンでも効いただろう。
「小賢しい……! ドラピオン、爪とぎ!」
歯車に解放されると、ドラピオンは地面で爪を擦り、研ぎ澄ます。
「ギギギアル、ぶち壊す!」
「ドラピオン、クロスポイズン!」
ギギギアルは全てを破壊するかのような勢いで特攻し、ドラピオンは毒を含む爪を交差させながら振るい、お互いの技が激突する。
どちらも微動だにせず、しばらく静かな押し合いがあったが、やがてどちらも同時に身を退いた。
だが、その後の反応は、ドラピオンの方が速かった。
「喰らうがいい! 炎の牙!」
ドラピオンは素早くギギギアルに飛びかかると、炎を灯した牙で歯車に噛みつく。ギギギアルの防御は高いものの、効果抜群の攻撃では大きなダメージになる。
「くっ、引き剥がすんだ! ギギギアル、ワイルドボルト!」
「決してギギギアルから牙を離すな! ドラピオン、炎の牙!」
ギギギアルは全身に弾ける電撃を纏い、その電撃でドラピオンを引き剥がそうとするが、ドラピオンは牙を喰い込ませたままギギギアルから離れようとしない。
「こんな距離じゃギアソーサーも使えない。なら……ギギギアル、飛ぶんだ!」
Nの指示を受け、ギギギアルは上空へと浮遊する。それによってドラピオンは宙吊りにされるが、それでもまだ牙を離さない。
だが、次の瞬間。
「ギギギアル、ぶち壊す!」
ギギギアルは凄まじい気迫を発しながら地面に向かって突っ込む。ギアチェンジで三倍速となったギギギアルのスピードは相当なもので、途轍もない勢いで地面に激突する。
「ぬぅ、ドラピオン!」
上空から思い切り叩き付けられ、ギギギアルと地面の板挟みとなったドラピオンは遂に炎の牙を止めてしまう。
「今だギギギアル! ワイルドボルト!」
一旦ドラピオンから離れ、電撃を纏ってからギギギアルは再びドラピオンへと特攻するが、
「させん! ドラピオン、地震!」
ドラピオンも地面に尻尾を叩きつけて地震を引き起こす。その際に発生した衝撃波でギギギアルの纏っていた電撃を消し飛ばし、動きも止める。
「炎の牙!」
「ギアソーサー!」
ドラピオンはそのまま牙に炎を灯してギギギアルに飛びかかるが、ギギギアルも素早く歯車を二つ飛ばし、ドラピオンの動きを封じた。
「ワイルドボルトだ!」
その隙に電撃を纏い、ギギギアルはドラピオンに突貫する。
「クロスポイズンで押し戻せ!」
対するドラピオンは、力ずくで無理やり歯車を弾き飛ばし、毒を含んだ爪を交差させてギギギアルを迎え撃つ。
しばらく双方はせめぎ合ったが、やがてドラピオンがギギギアルを押し返した。
「今度こそ決めろ! 炎の牙!」
そしてドラピオンはすぐにギギギアルに飛びかかり、炎の牙を喰い込ませるが、
「ギギギアル、飛ぶんだ!」
ドラピオンが齧り付いた瞬間、ギギギアルは上空へと急上昇した。それが何を意味するのかは、もうゲーチスにも理解できる。
「まずい……! ドラピオン、ギギギアルから離れるのです!」
慌ててゲーチスは指示を飛ばすが、もう遅い。
「ギギギアル、ワイルドボルト」
ギギギアルは激しい電撃を身に纏い、一気に急降下し——地面に激突した。
その衝撃で中途半端に牙を抜いていたドラピオンは弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。横たわってピクリとも動かないところを見ると、戦闘不能になったのだろう。
そして地面に自分から突っ込んでいったギギギアルも、ワイルドボルトの反動で体力が限界を迎え、戦闘不能。
またしても、両者戦闘不能になってしまった。
「またしても……!」
その光景を見てゲーチスは、さらに怒りの眼差しを、Nに向けるのだった。
ホワイトキュレムの龍の波動をかわすポケモンたちに、イリスはひたすら指示を出す。
「ウォーグル、ビルドアップからシャドークロー! デンチュラはアクアボルト!」
ウォーグルは筋肉を増強させてから影の爪でホワイトキュレムを切り裂き、デンチュラは電気を帯びた水流を直撃させる。
「デスカーン、鬼火! チラチーノ、とんぼ返り!」
デスカーンは青白い鬼火を放つが、大地の力で止められる。地面から噴き出す土砂を避けつつ、チラチーノはホワイトキュレムに体当たりし、素早くこちらへと退避した。
「このままじゃこっちのスタミナが持たないな……デンチュラ、ギガドレイン! チラチーノ、アクアテール!」
デンチュラとチラチーノはホワイトキュレムに接近し、体力を吸い取り、水を纏った尻尾を叩き込む。だが、効果は薄い。
そうこうしているうちに、ホワイトキュレムは巨大な火球を生成し、振り下ろすようにして放ってきた。
「クロスフレイム……みんな、とにかく回避だ!」
しかし火球は相当な大きさで、デンチュラとデスカーンに直撃、ウォーグルも火球を掠めてしまった。
効果抜群のデンチュラは一発で戦闘不能、防御力の高いデスカーンも致命傷で、ウォーグルに至っては戦闘不能でこそないが、今にも墜落しそうだ。
「でも、もう少しで行けそうなんだよな……」
なんとなく、漠然とした感覚ではあるが、イリスは感じる。キュレムとレシラムは剥がれかかっている。もう一押しで、分離するかもしれないと。
「N……」
同時にイリスは、ゲーチスと戦うNに視線を移す。ホワイトキュレムと戦っている間、何度もNの方を見てしまう。今はちょうど、Nのギギギアルとゲーチスのドラピオンが相打ちになったところだ。
あのギギギアルはNの四体目、対するゲーチスのドラピオンは五体目だ。となると、
「そろそろかな……頼むよ、Nに力を貸してくれ。そして今回も、あの三つ首の龍を倒すんだ、僕のエース——」
- Re: 571章 共闘 ( No.839 )
- 日時: 2013/04/01 20:28
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
Nとゲーチスは互いに倒れたポケモンをボールに戻す。これでゲーチスの残るポケモンはあと一体、対するNは二体と、ゲーチスがいよいよ追い詰められた形となる。
「……いや、まだ終わってはいない。ワタクシには、このポケモンがいるのだ……!」
ゲーチスは最後のボールを握り締め、血走った眼でNを睨み付ける。
「まだ、ワタクシは終わらない……! このイッシュを、そして世界を! 完全に支配し尽くすまでは、終わるわけにはいかないのだ!」
狂ったように叫び散らすと、ゲーチスは八つ当たりのように最後のボールを投げ飛ばす。
そして、三つ首の龍が姿を現す。
「サザンドラ! 抗う民に灰色の絶望を!」
ゲーチス最後のポケモン、凶暴ポケモン、サザンドラ。
両腕が頭となった三つ首の龍。三対の漆黒の翼を持ち、凶悪な眼光でNを睨み付けている。また、通常のサザンドラと比べて三倍以上もある体躯と、かなりの巨体だ。
サザンドラはゲーチスの最後の砦。今まで戦ってきたポケモンたちとは一線を画し、それを誇示するかの如く巨躯を見せつけ、威嚇する。
「……!」
その圧倒的とも言える覇気を前に、Nは一歩後ろに退いてしまうが、すぐに前に出る。
「……大丈夫だ。僕には、ゲーチスにない力がある。トモダチ——いや、仲間という力があるんだ」
Nも次のボールを取り出すが、それはNのボールではない。
長い年月を経たように傷の入ったモンスターボール。その中からは、溢れんばかりのたゆたう激流の如き力が伝わってくる。
「イリス……君の仲間の力、借りるよ」
小さく呟き、Nも手にしたボールを放り投げる。
そして、激流迸る一角の海獣が姿を現す。
「僕に力を貸してくれ! ダイケンキ!」
Nの次なるポケモンは、貫禄ポケモン、ダイケンキ。
青い体を持つ海獣のような意匠。豊かな白髭と、貝の鎧を纏い、兜は鋭い角となった法螺貝のような形をしている。
前足の鎧から一振りの刀——ダイケンキの分身とも呼べる武器、アシガタナを抜き、構える。
「そのダイケンキは……!」
ゲーチスがさらに険しい眼でNを睨み、露骨に不愉快だと言わんばかりの表情を見せる。
「あの忌々しいダイケンキ……真実の英雄め!」
そう、このダイケンキはNのポケモンではない。Nとは違う、もう一人の英雄、イリスのエースポケモンだ。
過去に一年旅をし、一年空白の時間があっても離れず、さらに一年再び旅をした、彼の仲間。
Nは最初の一年、何度もこのダイケンキと戦った。勝ったり負けたりを繰り返し、最後には自分のエースが敗北したポケモン。それが今、仲間として戦ってくれている。これ以上に頼もしいことはない。
「ふん。しかし、そのダイケンキはもう一人の英雄の力があってこそ真価を発揮する。貴様程度が使いこなせるわけがない!」
ゲーチスは二年前、このダイケンキ一体に、当時所持していた六体のポケモンを全壊させられた。そのためか、ムキになっているかのように叫ぶ。
「……そうだね。僕じゃあイリスのダイケンキの力を全て引き出すなんて出来ない。でも」
逆上しているゲーチスとは対照的に、落ち着き払ったN。Nは、静かに言葉を紡ぐ。
「僕の仲間が貸してくれた力だ。その力と、思いには応えなくちゃいけない。ダイケンキ、もう一度言おう。僕に、力を貸してくれ」
真摯な面持ちでNが言うと、ダイケンキは静かに首を縦に振った。
「……ありがとう、ダイケンキ」
そして、バトルは再開される。
「ダイケンキ、シェルブレード!」
「サザンドラ、悪の波動!」
ダイケンキはアシガタナに水のエネルギーを纏わせて振るい、サザンドラは三つの頭から悪意に満ちた波動を発射する。
斬撃と波動がぶつかり合い、やがてダイケンキは身を退き、波導も消滅した。
「吹雪だ!」
「火炎放射です!」
ダイケンキは続けて凍てつく猛吹雪を放つが、サザンドラも三つの頭から同時に炎を吹き、吹雪を相殺する。
「生温い攻撃ですね。サザンドラ、大地の力!」
サザンドラは咆哮し、次の瞬間、ダイケンキの足元から土砂が噴き出す。
「くっ、だったらこれだ! ダイケンキ、メガホーン!」
土砂に襲われながらもダイケンキは地面を蹴り、大きく飛び上がって角の一撃をサザンドラに突き込む。
効果抜群の攻撃を喰らい、サザンドラはぐらりと姿勢を崩してしまった。
「そこだ! シェルブレード!」
その隙に素早くアシガタナを抜いたダイケンキは、二連続でサザンドラを切り裂く。
「もう一度だ! シェルブレード!」
「調子に乗るなと言ったはずだ! 火炎放射!」
ダイケンキはさらに刀を振るおうとするが、サザンドラも黙ってはいない。サザンドラも両腕の頭から炎を吐いてダイケンキの動きを止め、最後に頭からも火炎放射を放ち、ダイケンキを地面に落とす。
「悪の波動です!」
続けてサザンドラは悪意に満ちた波動を連続して発射し、ダイケンキを追撃。一撃一撃の威力が高いので、連続攻撃は辛い。しかし、
「吹雪!」
悪の波動で生じた砂煙を吹き飛ばし、ダイケンキは凍てつく猛吹雪を放ってサザンドラを攻撃する。これも効果抜群なので、サザンドラへのダメージは大きいはずだ。
「ぬぅ、サザンドラ、大地の力!」
「ダイケンキ、防御だ!」
サザンドラは大地を揺るがし、地面から大量の土砂を噴射してダイケンキを攻撃する。対するダイケンキは身を縮めて鎧に体を隠し、土砂によるダメージを最小限に抑える。
「火炎放射です!」
「シェルブレードだ!」
サザンドラは灼熱の火炎を放つが、ダイケンキのアシガタナで振り払われる。
「ダイケンキ、メガホーンだ!」
そしてダイケンキも勢いよく跳躍し、サザンドラに角の一撃を突き込む。
だが今度の攻撃は予測していたのか、サザンドラはその一撃を耐え切り、態勢も崩していない。つまり、
「撃ち落とせ! 悪の波動!」
直後にサザンドラの反撃が放たれる。至近距離から三発もの悪の波動を直撃され、ダイケンキは地面へと墜落した。
「ダイケンキ、大丈夫?」
砂煙を巻き上げ、体を起こすダイケンキは、大きく雄叫びを上げる。このくらいの猛撃なら今まで何度も受けてきた。まだ、ダイケンキもやられたりはしない。
「ありがとうダイケンキ、流石イリスのポケモンだ。頼んだよ、吹雪!」
ダイケンキはサザンドラを見据え、凍てつく猛吹雪を放つ。
「サザンドラ、火炎放射!」
だが吹雪はサザンドラの放つ火炎放射に相殺されてしまう。
以前のサザンドラは、大文字でやっとダイケンキの吹雪を相殺できる程度の力だった。しかし今は、タイプ相性で勝っているとはいえ、火炎放射で完全に吹雪を打ち消している。Nがダイケンキの力を全て引き出せないことを考慮しても、ゲーチスとサザンドラは以前よりも格段に強くなっている。
これが、ゲーチスの野望の力。善悪はともかく、世界を支配するという強い信念が、彼とサザンドラを強くしたといことなのだろうか。
「悪の波動!」
「シェルブレード!」
サザンドラの悪の波動を、ダイケンキはシェルブレードで打ち消す。
「大地の力!」
続けてサザンドラは大地の力を繰り出し、地面から噴き出される土砂でダイケンキを攻撃する。この攻撃は避けるどころか相殺も難しい。なので、防御することでなんとか耐え切る。
「いつまでも耐えていられると思うな! サザンドラ、悪の波動!」
サザンドラは悪意に満ちた波動を連射し、さらにダイケンキを攻撃。怒涛の攻めは衰えもしない。
「火炎放射!」
さらにサザンドラは、三つ首から同時に炎を噴射する。
「ダイケンキ、吹雪だ!」
ダイケンキは凍てつく猛吹雪を放って迫り来る炎を相殺。そして身を屈め、
「メガホーン!」
勢いよく飛び上がり、サザンドラに一角の一撃を突き込もうとするが、
「当たるものか! サザンドラ!」
二回目で耐えられ、三回目で見切られてしまったのか、ダイケンキが繰り出す渾身の一角はサザンドラに避けられてしまう。
「悪の波動!」
そしてすかさず悪意に満ちた波動を発射し、またもダイケンキを地面に突き落とす。
「まだだ! 悪の波動!」
まだ攻撃し足りないのか、サザンドラは両手を広げ、悪の波動を連射する。
「くっ……頑張ってくれ、ダイケンキ! 吹雪だ!」
ダイケンキも凍てつく猛吹雪を放つが、サザンドラの悪の波動は量が多いだけでなく密度も高く、一撃一撃が非常に重い。そのため高威力の吹雪でも、相殺するのが精一杯だった。
「やっぱり、あれで決めるしかないのか……!」
いつもダイケンキが勝利を切り開いてきた、彼の代名詞とも言える必殺技。些か時期尚早という気はしないでもないが、このままだとサザンドラに押し切られてしまいそうだ。
「でも、ただ撃っても避けられるだけ。なら……ダイケンキ、シェルブレード! サザンドラに突き刺すんだ!」
ダイケンキはアシガタナを二刀流に構えると、それらを両方とも投擲し、サザンドラの腹部に突き刺した。
「なぬっ、サザンドラ!」
ダメージ自体はそこまで大きくはないだろうが、サザンドラの動きを止めるには十分。今のうちに、ダイケンキは激流の力を凝縮させる。
「……イリス」
小さく呟き、Nはダイケンキに最後の指示を出す。
「ダイケンキ、ハイドロカノン!」
刹那、激流の弾丸が——三つ首の龍に撃ち込まれた
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
この掲示板は過去ログ化されています。