二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 498章 短絡 ( No.735 )
日時: 2013/03/05 23:26
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 プラズマ団の基地内を歩く二つの影——と言っても、二人の人間が歩いているわけではない。一人がもう一人に抱きかかえられている形だ。
「でさー、最近フォレス冷たくてさー。ぜーんぜんあたしに構ってくれないでやんのー」
「そうですか……」
 抱きかかえられているのは、浴衣を着た赤い総髪の少女。抱きかかえているのは、青いストレートロングヘアーの女性。
 7Pフレイ、そしてレイだ。
「時にフレイちゃん……少し気になっていたのですが」
「んー? なーにー?」
「いつもより……髪を結ぶ位置が高いような気がするのですが……」
 確かにフレイのポニーテールは、いつもより少し高い位置で括られている。
「あー、これねー。たぶんねー、ハンゾウがやったからじゃないかなー? さっき言ったみたいにさー、今日起きてもフォレスいなかったんだー。あたしは一人じゃ髪括れないしー、しょうがないからハンゾウにやってもらったのー」
「そうでしたか……」
「そーゆーレイもさー」
 フレイはグッと腕を伸ばす——が長さが足りず届かなかったので、身を乗り出してレイの肩に顎を置くような姿勢で、
「なんで髪切らないのー? 毛先が焦げたまんまで変だよー?」
 レイの髪をつまみあげる。
 レイの髪は以前のような異常な長さではなく、普通にありふれたストレートロングとなっている。本人はそうなった理由を頑なに言わず、毛先も切り揃えないまま放置しており、それはそれで異質だった。
「……たかだか髪です。放っておいても平気でしょう……」
「まーレイがそう言うならいいけどー」
 と言ってフレイはあっさり引き下がる。
 それから二人はしばらく他愛もない話を続け、廊下を歩く。すると、思いがけない人物に、呼び止められた。



「ちょっと! そこの二人!」
 ティンは迷いなく、フレイとレイの二人を呼び止めた。二人は意外そうな顔を——していなかったが、静かに足を止める。止めるのはレイだけだが。
「あなたは確か……フォレスさんのところの」
「てぃっちーだー。どしたのー?」
 てぃっちーというのは、ティンのことらしい。
 それはともかく、ティンが二人呼び止めたのには理由があるというか、どうやってフォレスとフレイを引き離すかの作戦を思いついたからだ。
 作戦というほど立派なものではないが、ティンにとっての障害はフレイだけでない。フォレスがレイを気にかけているのは流石のティンでも分かる。なのでレイの存在も、ティンにとっては邪魔になるのだ。しかしこの作戦なら、フレイだけでなくレイ諸共フォレスから引き剥がすことができる。
 そういうわけで、ティンは躊躇いなく二人に向かって叫んだ。

「私とバトルしなさい!」



 もう一度言うが、この時ティンは非常に疲れていた。精神的に追い込まれていた。その余裕なさが彼女のなけなしの思考力を低下させ、冷静な判断を奪っていったのだ。
 邪魔なものは排除すればいい、というのは短絡的な思考だ。特に相手が自分よりも格上の相手に対しては、作戦とも言えない作戦だ。
 しかしティンは過度のストレスにより精神的に疲弊していたため、7Pが自分よりも強いことを忘れている。自分よりも年下の少女と、自分と同年代の女が、自分よりも上の立場にいることを、完全に忘却していた。
 その可能性は非常に高いだろうが、仮にティンが負けるとするなら、敗因はそこになるのだろう。



 ティンはバトルを申し出ると、フレイとレイの二人を基地内のバトルフィールドへ連れてくる。
 勝負の方式は二対二のダブルバトル。使用ポケモンはフレイ&レイのペアが各一体ずつ、ティンは二体ということになった。
「それじゃあ出て来なさい! カンカーン! リザードン!」
 ティンが繰り出したのは、赤い球状の体を持ち、ヒレの付いたポケモンと、がっしりとした体つきの、翼の生えた龍のようなポケモン。
 日照りポケモン、カンカーン。と、火炎ポケモン、リザードン。ともに炎タイプで、リザードンは飛行と複合している。
「……なにゆえこのような状況になったのかは分かりませんが、まあいいでしょう……これも修行の一環だとでも思えばいいでしょう。おいでなさい……ヤミクラゲ」
「そーだねー。あたしとしちゃーいい暇潰しになりそうだしー、てぃっちーとバトんのもなかなか面白そうだしー、別にいいかなーってねー。そんじゃーノコウテイ、出番だよー」
 レイとフレイも、それぞれポケモンを繰り出した。レイは海月ポケモン、ヤミクラゲ。水・悪タイプ。フレイは土蛇ポケモン、ノコウテイ。ノーマルタイプ。
 四体のポケモンが出揃うと、フィールドには強い日差しが差し込む。カンカーンの特性、日照りだ。
「私から行くわよ! カンカーン、火炎放射! リザードン、エアスラッシュ!」
 先に動いたのはティン。カンカーンは日照りで強化された激しい火炎を放射し、リザードンは飛び上がって空気の刃を無数に飛ばす。
「……フレイちゃん、前衛は頼みました。私は、後ろから援護に回ります……」
「おっけー。そんじゃーノコウテイ、潜るだよー」
「ヤミクラゲ、吹雪です……」
 ノコウテイは地中に潜って炎と刃を回避。残ったものはヤミクラゲに襲い掛かるが、ヤミクラゲも吹雪を放って威力を減衰。ダメージを最小限に抑えた。
「だったら、カンカーン、ソーラービーム! リザードン、龍の波動!」
「させないよー」
 日照りの影響で溜めなしのソーラービームを発射しようとするカンカーンだったが、発射直後にノコウテイが地面から這い出てカンカーンを打ち上げる。
「ヤミクラゲ、悪の波動です……」
 ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を放って龍の波動にぶつけるが、特性サンパワーで強化されたリザードンの特攻はヤミクラゲを凌駕する。龍の波動が悪の波動を撃ち破り、ヤミクラゲに直撃した。
「……吹雪です」
 しかし特防の高いヤミクラゲだ。減衰された龍の波動などものともせず、すぐさま猛吹雪を放って反撃に出る。
「やばっ……リザードン、大文字!」
 リザードンは大きく息を吸い、大の字の巨大な炎を放って吹雪を打ち消そうとするが、しかし、
「ノコウテイ、ドラゴンダイブだー」
 ノコウテイが飛び上がり、打ち上げられたカンカーン諸共リザードンに突撃。上から重圧をかけるように急降下し、二体を押し潰す。
 ノコウテイが離れると、直後には吹雪が二体を襲う。
「まだまだ行くよー。スピンテールだー」
「カンカーン、怪しい光!」
 回転しつつ尻尾を振りかざし、追撃をかけるノコウテイ。流石にこれ以上連撃を受けるのはまずいと判断したのか、カンカーンは怪しげの閃光を放ってノコウテイの動きを止めようとする。
 だがまたしてもカンカーンの攻撃は止められる。エネルギーの凝縮された球体がカンカーンを直撃したのだ。
「ヤミクラゲの、気合球です……」
 レイがそう申告した直後、ノコウテイの尻尾がカンカーンにに叩き付けられる。
「くぅ……! カンカーン、火炎放射! リザードン、大文字」
「潜るだよー」
 カンカーンとリザードンは同時に灼熱の炎を放つ。カンカーンは放射状に、リザードンは大の字に。
 しかしどちらの炎も、地面に潜ってしまったノコウテイには届かない。
「ヤミクラゲ、吹雪です……」
「それはもう見切ったわ! カンカーン、火炎放射!」
 ヤミクラゲが放つ吹雪を、カンカーンが火炎放射で相殺する。しかし、カンカーンの真下の地面が揺れ、ノコウテイが頭を出す。
「だから見切ったって言ったでしょ! カンカーン、右に移動! リザードンは龍の波動!」
 カンカーンはすぐに右へと体をずらし、ノコウテイの地中からの一撃を回避。さらにすぐさまリザードンが龍の波動を放ち、ノコウテイを吹っ飛ばした。
「おー、やーるねぇー。だったらノコウテイ、怒りの炎だよー」
 空中で態勢を立て直したノコウテイは怒り狂ったような炎を出現させる。その炎も日照りで強化されているので、視界を覆い尽くしてしまうほど大きい。
「レイー、後は頼むよー。ノコウテイ、潜るだー」
「分かりました……ヤミクラゲ、悪の波動です」
 怒りの炎を目くらましに、ノコウテイは地中へと身を潜める。ヤミクラゲも悪の波動を連続で放ち、攻撃に出た。
「当たんないわよ! カンカーン、大地の力で悪の波動を相殺! リザードンはダイヤブラスト! 炎を消し飛ばしなさい!」
 カンカーンは地面から土砂を壁のように噴射して悪の波動を防御。リザードンも煌めく白色の衝撃波で、炎を消し飛ばした。



やばい、かなり微妙な終わりになった……でも文字数の関係で、これ以上書けなさそうなんですよね。それはともかく、第四節その二、ティン対フレイ&レイのダブルバトルです。そういえば、最近は解放していない7Pのバトルを書いていないですね。いや、当然と言えば当然ですが。ともあれ、7P二人を相手にティンはどこまで善戦できるか……と書くとティンが負けることが確定しているようになってしまいますね。では次回、短いですが、たぶん第四節終了です。お楽しみに。

Re: 499章 善戦 ( No.736 )
日時: 2013/03/06 01:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「うーむ……ティンの奴どこ行ったんだ……?」
 きょろきょろと辺りを見回しながら歩を進めるのは、迷彩柄の服に漆黒のコートを着て、無造作に跳ねた緑色の髪の男。
 7P、フォレスだ。
「時間に遅れたのは悪いと思うが、いつもならビオトープで待ってるはずなんだがな……うーむ……最近、なんかあいつ変じゃないか?」
 その変になっている原因が自分にあるとは露ほども思っていないフォレスは、ティンの行きそうな場所を片っ端から当たっていくが、一向に見当たらない。
「つーか変なのはティンだけじゃねえか。フレイもアシドも、エレクトロもドランもレイさんも……あと、俺もか」
 自分ではあまり自覚がないが、少なくともフレイやアシドは変わったと言っている。長い付き合いのフレイと、変化の原因をほぼ突き止めているアシド。この二人が言うのだから、つまりはフォレスも変わったのだろう。
「変わりねえのはガイアくらいだろうな……あの揺るぎのなさ。ゲーチスの目的とのシンクロ率。やっぱあいつが、俺たちのリーダーなんかね……」
 仕切っているのがエレクトロであるが故に、どうしてもガイアがリーダーであるという感覚がないフォレスなのだが、最もゲーチスに近いという形でいえば、やはりガイアがリーダーに相応しいのだろう。
「それに、トップは参謀に従う方がいいともいうしな……いや、実際の参謀はゲーチスか……」
 などと呟きながら歩いていると、焦炎隊の居住区まで来てしまった。
「期待薄だが、こっちも覗いてみるか」
 いるとしたらあの忍者んとこだろう、と言って廊下を進み、中程まで到達すると脇の襖を静かに開く。
「む……今日は客が多いな。何用であるか」
 中にいたのは、座禅を組んでいる忍装束の男、ハンゾウだ。
「野暮用だ、すぐ済む。なあ、お前ティン見なかったか?」
 あまり期待していなかったのだが、ハンゾウの返答は、
「どちらもこの部屋に来たぞ。ティン殿は相当興奮していたようで、すぐに出て行ってしまったがな」
 というものだった。
 結局所在は知れなかったが、どうやらティンはそこら中を駆け回っているようだ。
「……あ、そうだ。一つ頼まれてくれねえか? フレイなんだが、たぶんまだ部屋で寝てると思うんだ。起こしといてくれねえか?」
「それは心配無用だ」
「あ?」
 どういう意味だ、とフォレスは問う。
「ついさっき、フレイ殿は自力で拙者の所に来られた。そして今しがた、レイ殿と共にいずこかへと行ってしまった」 
「そうか……珍しいな、あいつがこの時間に起きてるなんて。まあいい。ありがとよ、邪魔したな」
 一応の礼を言って、フォレスは襖を閉める。
「……さーて、あいつは本当にどこいったのやら」



 炎を消し飛ばした刹那、地面からノコウテイが飛び出す。
「それも想定済み! カンカーン!」
 ティンが叫ぶと、カンカーンは地面からさらに土砂を噴射。尻尾を振り下ろすところだったノコウテイを攻撃し、態勢を崩す。
「今よリザードン! ダイヤブラスト!」
 空中で、しかも態勢の崩れたノコウテイでは、至近距離からの攻撃は回避も防御もできない。その隙を狙い、リザードンは白色に煌めく衝撃波を放つ。
「やっばー……レイー」
「はい……ヤミクラゲ、悪の波動です」
 しかしそこは7Pの紅二点。すぐさま意思疎通をし、レイがフォローに出る。
 ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を束ねて発射し、遠くから衝撃波にぶつけて相殺した。
「続けて気合球です……」
「こっちも攻めるよー。ノコウテイ、ドラゴンダイブだー」
 ヤミクラゲは続けて気合を込めた球体を放ち、ノコウテイも跳び上がってカンカーンとリザードン目掛け急降下。
「リザードン、エアスラッシュ! カンカーン、怪しい光!」
 リザードンは空気の刃を無数に飛ばし、気合球を相殺。さらに残った刃でヤミクラゲも切り裂く。
 カンカーンは怪しい閃光を発してノコウテイの動きを止め、混乱状態にする。
「ソーラービーム!」
 そして太陽光を集めた光線を発射。至近距離からの大技を食らい、ノコウテイは吹っ飛ばされた。
「おぉー、やっるー。しかも混乱かー、面倒だなー……レイー」
「はい……ヤミクラゲ、悪の波動です」
 ヤミクラゲは再び悪の波動を発射。しかし連射でもなければ束ねてもいない。むしろいつもよりも波動の小さい攻撃だ。
 波動はカンカーンに向かっていく——が、途中で大きく進路を変える。そして——

 ——ノコウテイの顔面に直撃した。

「っ!?」
 味方に攻撃するという奇行を目の当たりにし、ティンは驚愕する。戦慄と言ってもいいかもしれない。
 ダブルバトルは、如何に味方へダメージを与えないかが重要だ。地震や放電などの技は、威力が高く攻撃範囲も広いが、味方にもあたってしまうのがネック。そこを如何に工夫するかがポイントになるわけで、味方にあえて攻撃を当てるということは、普通のバトルでもそうであるようにまずありえない。
 勿論、あえて味方の体力を削る。あえて味方を倒す。などといった戦法もないわけではないが、ヤミクラゲやノコウテイの特性、覚えている技から判断するに、その手のコンボはまずない。
 ならばなぜ、とティンは疑問符を浮かべるが、その理由はすぐに明らかになった。
「ノコウテイ、スピンテールだよー」
 ノコウテイは回転しながら跳び上がり、空中のリザードンへと尻尾を叩き付け、地面に落とす。その攻撃には一切の迷いがなく、よく通った指示だった。
 率直に言って、ノコウテイは混乱してなかった。
「まさか、さっきの悪の波動で……?」
「まーねー」
 つまりフレイは、味方の技を喰らって強引に混乱状態を解除したようだ。のほほんとした空気感のある少女だが、意外とやることが大胆だ。
「んじゃー次ねー。ノコウテイ、怒りの炎だー」
 着地したノコウテイは怒り狂ったように燃える業火を放ち、リザードンとカンカーンの視界を塞いでしまう。
「潜るだよー」
 そしてすぐさま地中に潜る。また怒りの炎を目くらましに使った奇襲だろうか。
「ヤミクラゲ、悪の波動……」
 ヤミクラゲも悪の波動を連射する。しかし、
「だからもうそれは読めてるのよ! リザードン、ダイヤブラスト最大出力! 悪の波動ごと消し飛ばしなさい!」
 太陽光を受け、最大の火力でリザードンは煌めく爆風を放つ。爆風は怒りの炎と、同時に襲い掛かってきた悪の波動をまとめて相殺し、消し飛ばしてしまう。
 直後、地面からノコウテイが這い出る。
「カンカーン、ソーラービーム!」
 だがそこにカンカーンのソーラービームが発射され、ノコウテイは地中に逆戻り。カンカーンから離れたところからまた出て来た。
「……そろそろですか」
 ヤミクラゲの立ち位置を見遣り、ポツリとレイは呟いた。



第四節その三。終わらなかったですが、それにはれっきとした意味があるのです。それは次回明らかにしますが。それはさておいて、久々にフォレスが登場した気がしますね。なんだか最近はよくフォレスの名前を出していたような気がするのですが、こうして登場させるのは久しく感じます。錯覚か本当に久々登場なのかは、読み返せば分かる事ですがね。そういえばガイアの名前も本編で久々に出ましたね。名前だけですが。フォローとかされちゃってますが。そしてティンのバトルですが、ティン、結構善戦してます。未解放とはいえ、7P二人を相手に結構押してますよ。二人はまだまだ余裕な感じですが。ではあとがきもこの辺で。次回こそは第四節、終了です。お楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.737 )
日時: 2013/03/06 23:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: bn3dqvGS)

早くも第四節突入ですね。

サーシャ、ハンゾウと来て、次はティンな訳ですが、どうもこいつは今までの二人と比べて動く理由が軽いですね。
サーシャは上司のためと思って過去を知り(それがいい方向につながった訳ではなさそうですが……)、ハンゾウは命の恩人として忠義を尽くすと誓う。
なのにティンはフォレスと過ごす……こいつだけ何か……まあ投稿したのが僕だから仕方ないですけど。
確かにフォレスが出て来たのは久しぶりな気がします。

神龍隊、地縛隊が無いとなると、あとは毒邪隊と聖電隊ですか。
どっちの7Pも目立っていますし、楽しみです。

参照数がすごいことになってますねww
二万五千越えって……

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせ ( No.738 )
日時: 2013/03/07 02:24
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: u.mhi.ZN)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

パーセンターさん



 まあ、理由は軽いですが、それゆえにティンは簡単に動くので、作者としてはやりやすいです。
 その結果として、7P二人にバトルを挑むという暴挙に出ていますが。
 フォレスは大分騒がれたりしてたと思うんですけど、実際に登場するのは久しぶりです。まあ、本当に名前ばかりで実際に登場していないのはガイアなんですけどね……

 地縛隊と神龍隊は他の部隊とは少し違う立場ですからね、今回は除外です。
 7Pはキャラが立つように色々と考えましたね……性悪なアシド、緩やかなフレイ、人格が変わりつつあるフォレス、過去が壮絶なレイ、まとめ役のエレクトロ、解放したら口調が激変するドラン。その中で、活躍どころかまともなバトルすらほとんどないガイアが不憫……本当、どうしてこうなったのでしょう。

 僕も、流石にここまで伸びるとは思っていませんでした。
 これもひとえに皆様のお陰です。

Re:500章 唯一 ( No.739 )
日時: 2013/03/07 17:44
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ティンを探す道中、フォレスはとある人物を見つけた。
 軍服を着て、腰に拳銃を吊っている女性、サーシャだ。速足で急いでいるようだが、構わずフォレスは話しかける。
「なあ、ちょっといいか」
「…………」
 フォレスは話しかける、が、サーシャは一瞥するだけで無視した。直接のではないとはいえ、上司に対してあるまじき態度だ。
「おい、無視すんな!」
「……私は急いでいるのです。用件があるなら手短にお願いします」
 速足を止めず、心底鬱陶しそうなサーシャ。彼女の性格は変わらないなと思いつつ、フォレスは用件だけ手短に伝える。
「ティン、見なかったか?」
 サーシャは少しだけ間を置き、答えた。
「さあ、知りません。少し前にレイ様、フレイ様と一緒にいましたが、どこかの訓練場にでも行ったのではないですか」
 かなり適当ででまかせかと疑いたくような物言いだったが、フォレスは眉根を寄せ、険しい表情になる。
「なに……? 本当か?」
「だから知りませんよ。用が済んだのならさっさと消えてくれませんか?」
 苛立ちを隠そうとしないサーシャの発言。しかしフォレスはそれを咎めることをせず、
「ああ……邪魔したな」
 とだけ言って去って行ってしまった。
 向かう先はサーシャの言っていた訓練場。ここから近いのは第五訓練場だ。
「レイさんにフレイと一緒……? あいつ、なに考えてやがる……急いだ方がいいか」
 そう呟き、フォレスは駆けだした。



 思いのほか接戦となっているティン対レイ&フレイのバトル。今までサポートに徹していたレイが遂に動き出した。
「フレイちゃん……そろそろ」
「んー、分かったー。ノコウテイ、最大出力で怒りの炎だー」
 ノコウテイは怒り狂うように燃え盛る火炎を放つ。その火力は段違いで、今までよりもずっと大きい。
 しかし日照りで強化されても、炎タイプの技は炎タイプには半減される。そのためか、この炎も視界を塞ぐようにして放たれていた。
「怠けすぎて遂に脳みそまで腐っちゃったわけ? もうその手は効かないわよ! リザードン、こっちも出力最大でダイヤブラスト!」
 リザードンは炎に向かって突っ込むと、煌めく白色の爆風を放つ。爆風は衝撃波となり、轟々と燃え盛っていた憤怒の炎を簡単に消し飛ばしてしまう。しかし、
「ドラゴンダイブだよー」
 直後、リザードンとカンカーンに影が差す。見上げると、そこには龍の力をその身に宿し、凄まじい殺気を発しながら急降下してくるノコウテイの姿があった。
「っ……!」
 ティンは気付く。さっきの怒りの炎は目くらましではなく、リザードンとカンカーンを一ヶ所に集めるための誘導。本命はドラゴンダイブで、二匹同時に押し潰すことだ。
 ノコウテイは回避の難しい距離まで迫っていたが、ティンの対応は早かった。
「リザードン、大文字! カンカーン、火炎放射!」
 リザードンは大の字の炎を、カンカーンは放射状の炎をそれぞれ放ち、ノコウテイを押し返す。
 タイプ一致に加え日照りで強化された二体の大技だ。それを至近距離から喰らっては、流石のノコウテイももたない。押し返され、天井に叩き付けられた後、落下する。恐らく戦闘不能だ。
 しかしティンは気付いていなかった。怒りの炎は誘導で、カンカーンとリザードンを集めるためのもの、という考えは当たっていたのだが、肝心の攻撃の要がノコウテイだと思い込んでいたために、もう一体の存在を忘れていたのだ。
 普通の状況なら真っ先に警戒するだろう相手。しかし今は日照りが出ているため、その警戒を怠ってしまった。その相手とは、

「……ヤミクラゲ、大洪水です」

 ヤミクラゲだった。
 いつの間にかリザードンとカンカーン、二体の目と鼻の先まで接近していたヤミクラゲは、洪水を引き起こすような水量の激流を放つ。
「なっ……!? リザードン、カンカーン!」
 至近距離からの大技を直撃され、なす術もなく二体は押し流される。日照りで威力が半減しても効果抜群、加えてタイプ一致だ。サンパワーの特性で体力が削られていたリザードンと、序盤の潜るで削られたカンカーンは、あえなく戦闘不能となった。
「やったー、逆転勝利ー。さっすがレイだー」
「いえ……フレイちゃんの陽動あってこそですよ」
 怒りの炎は誘導、ドラゴンダイブは陽動、そして本命はヤミクラゲの大洪水。序盤からサポートに回っていたのも、ティンがヤミクラゲの存在を忘れる一因となったのだろう。
 レイとフレイの二人がポケモンをボールに戻す中、ティンはわなわなと震えており、
「嘘……嘘よ、こんなの絶対おかしい! そうよ、まだ私にはポケモンが——」
 ティンが叫び終えるより早く、バァンッ! と、蹴破るように訓練場の扉が開け放たれた。

「おいティン! お前なにやってる!?」

 そして外からやってきたのは、怒り心頭のフォレスであった。



「すみません、レイさん。完全に俺の監督不行き届きです……今回のお詫びは、いつか必ずするんで、どうか見逃してもらえないでしょうか……ほらティン、お前も謝れ!」
「うぅ……なんで私が……」
 フォレスが乱入してから、フォレスとティンは平社員の如くペコペコと頭を下げていた——いや、ティンはうなだれるだけで、決して頭を下げようとはしなかったが。
「いえ……別に構いませんよ。気にしないでください……」
 ひたすら謝り続けるフォレスに、レイはどこ吹く風で返す。本当に気にしていないようだ。
「いや、そういうわけには……本当、今回のお詫びはいつか必ず。……お前も悪かったな、変なことに巻き込んで」
 今度は背中に飛びついて来たフレイに視線を向け、謝罪する。
「いんやー、あたしも別にって感じー。けっこー面白かったしねー」
「ならいいが……さて、もう行くから降りろ」
「んー」
 フレイは少し残念そうにするが、大人しくフォレスの背から降り、レイの腕の中に収まった。
「……では、俺はここで。本当にすみません。……ほら、行くぞ、ティン」
「はい……」
 最後にもう一度だけ謝り、フォレスはティンを引き連れて去っていった。



 その後。ティンはフォレスの部屋に呼び出され、説教を食らっていた。
「ったく、お前は本当にどうしようもねえな……なんでこんなことをした? 相手は7Pだぞ。俺はともかく、他の連中にバトルを挑むとか、信じらんねえ……」
 頭が痛そうにこめかみを押さえるフォレス。彼にとって最大の悩みの種は、もしかしたらティンなのかもしれない。そんなことを思っているのだろう。
「だって……フォレス様、最近冷たくないですか? 今日もビオトープに全然来てくれなかったし」
「フレイにも言われたな、それ。遅れたのは悪かったが、癇癪起こすにしても限度があるだろ。それに、俺たちの決戦はもう間近だ。俺だって忙しい。それはお前だってわかってるだろ」
「うぅ、でも……」
 もはや半泣き状態のティンは、しょぼんとした顔でフォレスに問う。
「……フォレス様は、私のこと、嫌いですか?」
「あぁ? なんでそうなる」
「だって、私に対してはやたら厳しいし、冷たいし、全然構ってくれないし……」
「…………」
 フォレスは困ったような表情で押し黙った。天を仰ぎ、しばらくして、
「構ってくれないとか、子供かお前……あのなあ、お前は相手の都合も考えず自分のことばっか押しつけて来る奴を好きになれると思うのかよ」
「うぅ、やっぱり……やっぱりフォレス様は——」
「だがな」
 ティンの言葉を遮り、フォレスはまっすぐにティンを見つめた。
「うざくても、鬱陶しくても、好意を寄せられて悪い気がしない奴は、そういねえよ。いるとしたらアシドくらいだろ。特に俺は、他の7Pとは違う。言っちまえば普通の一般人染みたところがある。感性も人並みだ。だから、好きだと言われれば、そいつのことを一方的に嫌うことなんざ、できねえよ」
 それに、とフォレスは続ける。
「お前は、俺が選んだ唯一の森樹隊直属部下だ。森樹隊の、俺の直属の配下はお前しかいないんだ。その意味を、もっとよく考えてみろ」
「フォレス様……」
 見上げるティンと視線を合わさず、立ち上がってフォレスはそそくさと部屋から出た。
 ティンはゆっくりと目を閉じて、フォレスに言われたことを反芻し、呟いた。
「森樹隊の、フォレス様の直属部下は私だけ……か」

 『その意味を、もっとよく考えろ』

 ティンの胸中で、そんなフォレスの言葉がこだまする。



第四節終了、そして記念すべき500章です。ちょうどキリもいいので、いい話に仕上げたかったんですよ。ただそれだけで一章分伸ばしました。ともあれ、今回はフォレスがイケメンの回ですね。フォレスってこんないい奴だったっけ……? 7Pのまともな人格枠をエレクトロから奪い取ってますよ、あのフォレスが。さて、フォレスがイケメンになったところで、第五節に移行します。次回は第五節 探究。今度は毒邪隊の出番ですよー。今までは四章分で終わってましたが、次からはもうちょっと長くなりそうです。それでは、次回もお楽しみに。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



この掲示板は過去ログ化されています。