二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.740 )
日時: 2013/03/09 11:10
名前: プツ男 (ID: DN0pvQeX)

どうも、前日無事に中学の教育課程を終えたプツ男です。

まずは500章突破、おめでとうございます。
いやあ、500章分の話がずらりと並んだ目次を見ると、圧巻ですね・・・・

暫く映像板に立てこもって、なんやかんややっていたら、いつの間にか第四節までおわっていましたね・・・

第三節の忠義は、第二節でそれとなく焦炎隊のモットーが忠義とか書いてあったので気づきました。
時の流れって怖いですね・・・活躍している忍者でも、現代ではこんな事になってしまうだなんて・・・
そして、フレイは・・・・あー、こりゃ恋慕ですね。

第四節の思慕は、辞書を引くまではどの部隊かは気づきませんでした。恋しい思いとかそういう意味だから、森樹隊のフォレスを好いているティンだったんですね。
いやあ、動く理由が軽いとはいえ、凄い行動力ですね。まあ、恋は盲目って言いますし、好きな人のためならこれくらい・・・いや、無理か。
ティンがどれだけフォレスを好いているのかが良く解りました。
フォレスモテモテですね(笑
二人の女性から好かれているだなんて・・・
そう考えると、この節はフォレスを賭けて熾烈な争いをする女性の図にも見えますね。

それにしても、フォレスの性格はいい変化ですね。あのヘタレかませ性格とトラップマスターの称号はもう、過去の話ですね。今やイケメン、恋愛フラグマスター・・・
今幕は地縛隊と神龍隊の出番がない、ということですが、白黒さんのコメントにあった「ガイアが泣こうがわめこうが〜」で噴き出してしまいました。
もちろん比喩でしょうが、ガイアが泣きわめく所って・・・
そういえば、ガイアって夢の跡地以来は、名前登場しかしていませんね・・・まさか、次の出番が最終決戦なんて事は・・・

双子の過去設定を統合して少し追加修正しました。
確認よろしくお願いします。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.741 )
日時: 2013/03/09 14:28
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

プツ男さん



 お疲れ様です。白黒は高校の授業要領が難解すぎて……仮進級にならなければよいのですが……

 それはともかく、ありがとうございます。
 僕としても、まさかここまで長く続くことになるとは思いもしませんでした。

 それぞれの部隊にはそれぞれのモットーがありますからね。焦炎隊は三節のタイトル通り、忠義です。皆フレイ第一に動いています。
 ちょっとオーバーな気もしますが、時代に即さないものは淘汰されるのが、厳しい現実なんだと思います……温故知新という言葉もありますけどね。
 さて、どうでしょうね。フレイの心情については、まだ詳しくは触れません。恐らく最終幕直前くらいで明かされるでしょう。

 正直、第四節のタイトルはかなり悩みました。今回の騒動を表す熟語は何かと考え抜いた結果、フォレスを思うティンの心情を表す思慕になりました。
 流石に7P二人に挑むのは……盲目の域を超えている気がしないでもないですね。とはいえ、彼女の行動力は自分で書いていて驚きました。
 その図だと、人間関係の相関図が物凄いことになりそうですね……

 フォレスは……本当に変わりましたね。ガイアが活躍する分を根こそぎ奪い取ったかのような……
 フォレスはなんだかもう、昨今のライトノベルの主人公染みてきました。いや、彼らほどではないですが、この作品では相当なものです。
 ガイアは……いつか出るはずです。いつか出ます、いつか。
 ……最終決戦までに出る幕あるかな……?

 了解です。後程確認しておきます。

Re: 501章 砂嵐 ( No.742 )
日時: 2013/03/09 14:31
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 他の連中も思っていることだろうが、そろそろこの組織も潮時だ。
 しかし連中と自分の一番の違いを挙げるなら、この組織における思い入れだろう。思い入れという表現もおかしい気がしないでもないが、この際そんなことはどうでもいい。重要なのは、この組織と自分を如何に容易く切り捨てられるかだ。
 連中と同じく、自分もこの組織に入る条件として奴からは恩恵を受けている。正直、この組織の研究環境は相当なものだ。同じ環境を探せと言われても、そう簡単に見つけることは不可能に近い。それだけは惜しいが、その他のものはゴミクズ同然だ。なくなったところで痛くもかゆくもない。どころかむしろ清々する。
 ……と、思っていたのも昔の話か。今ではほんの少しだけ、惜しいと思ってしまう。連中との別れが。本当に、ほんの少しだけだが。
 それはともかく、自分はこの組織から抜けたら何をする? 決まっている。いつも続けてきたことを、別の場所で続けるだけだ。それだけは揺るぎない。
 ちょうど今、いい研究テーマが見つかった。そのためのデータだけは、組織を抜ける前に手に入れたいところだ。
 英雄の弟子。英雄に最も近い場所で、最も長く共にいた奴が、英雄の影響をほとんど受けていない。そのデータが欲しい。できることなら、その兄と、最近見つかったという父親の分も。
 そしてもう一つ。英雄の研究を進める上で発見した、奴のデータ。この偉大で天才なる我が手でもって収集したいデータがある。
 英雄の父親、前世代の英雄。奴のデータは、非常に興味深い。是非とも、直々に戦ってみたいものだ——



 プラズマ団基地唯一のラボ。その最深部にて、7Pアシドはいつものように巨大なコンピューターの前を陣取っていた。
 いくつも表示されるディスプレイ。それらを見つつ、高速でタッチパネルを操作する。一人の人間が処理できる情報量とは到底思えないが、アシドはそれを、口笛を吹きながら軽くこなしている。
「……っと、こんなもんか。あとはここが浮上する直前くらいに微調整するくらいだな。ケヒャハハハ! これを見たらあいつはどんな反応すんだろうな。再び復活する古生代ポケモン、しかもこの僕が徹底的にチューンアップしたスペシャルバーションだ」
 アシドはタッチパネルを操作し、開いていたディスプレイをすべて閉じ、新たな画面を開いた。
「次はこっちか。ちっ、相変わらず英雄共々は見つかんねえな、どこ行きやがったんだ……だが、弟子の方は一向に動く気配がない。ゲノセクトの調整も大体終わったし、そろそろこっちに手ぇ出してみるか。おい、ザンバ!」
 アシドが暗闇に向かって叫ぶと、そこから一つの影がゆっくりと出て来た。
 アシド毒邪隊の直属部下、ザンバだ。
「お呼びでしょうか」
「ああ。ちょっくら英雄の弟子の所に行ってこい」
「人数はどうしましょう? 私一人ですか?」
「そうだな……向こうは三人だが、レイの報告通りの奴なら、たぶん父親の方は手ぇ出さねえだろ。だから二人だ」
 指を二本立て、アシドはもう片方の手でパネルを操作し、新しい画面を表示する。
「二人……ちょうど手の空いてそうな奴は……ちっ、ロクな奴がいねぇ。だが、早くしねぇと時間も迫ってるしな……気は進まねぇが、双子を動員するか」
「双子というと……彼らですか。聖電隊の」
「ああそうだ。エレクトロが言うには、相当な実力者らしいが……どうなんだかな。あいつらに仕事を任せるのは不安だぜ。ま、つっても今回はデータの計測。その役目はお前だから、双子はバトル専門になる。まだマシか」
 言ってアシドはさらにパネルを操作する。どうやら、その双子と連絡を取っているようだ。
「つーわけでザンバ、命令だ。英雄の弟子とその兄……ミキ、ザキ兄妹のデータを収集してこい」



 ストレンジャーハウス一階。そこではペアが二組で、対面していた。
「……まさか、わざわざこんなとこまで来るほど暇な奴らだとは思わなかったぜ。そんなに人様の特訓する様子が楽しかったか?」
「べっつにー。ただ基地全部の掃除とバトルのどっちがマシかと一時間考えて、バトルの方が楽だと思っただけ」
 ペアの片方は、ミキとザキ。二人とも少々薄汚れた格好をしていて、髪も乱れているが、もう片方の二人組を見て険しい表情をしている。
 そのもう片方というのが、ツユサとウズメ。先日ヒオウギでイリスを追い詰めた二人組だ。
「消極的なバトルの申し出に、たった二人ってことは……私たち倒すため、とかじゃなさそうだね」
「どーだか。案外、近くに伏兵がいるかもしれねえぞ。ま、そいうのは親父に任せるが……つーかあいつどこ行った。トイレにしても長すぎるだろ」
 言ってザキとミキは、ボールを構える。ただバトルをするというのなら、特訓中の二人にとっては望むところだ。
「行くよ、カミギリー!」
「出てこい、ブーバーン!」
「出て来い、ハガネール!」
「行け、ボスゴドラ!」
 ミキとザキはそれぞれカミギリー、ブーバーンを繰り出す。
 対してツユサが繰り出したのは、鉄蛇ポケモン、ハガネール。複数の功績が連結した蛇のようなポケモンで、天井の高いストレンジャーハウスの天井に頭がつくほど巨大だ。
 ウズメが繰り出したのは、鉄鎧ポケモン、ボスゴドラ。分類通り鉄の鎧で覆われた、二足歩行の怪獣のようなポケモン。ハガネールほどではないが、こちらも大きい。
「鋼タイプ……カミギリーじゃきついかも……」
 カミギリーの覚える技のほとんどは、鋼タイプによって半減されてしまう。そのためミキは少し曇った表情を見せるが、
「安心しろ、俺がまとめて葬ってやる」
 ザキはミキそう言葉をかけ、ブーバーンが一歩前に出る。そして、
「ブーバーン、大地の怒り!」
 次の瞬間、ストレンジャーハウスの床板が吹き飛び、大量の土砂が噴出される。痛んでいる家を破壊するかの如き勢いだったが、この家を支える大きな柱は予めロキが補強しているので、問題ない。
 ともあれ大量の土砂がハガネールとボスゴドラに襲い掛かる。効果抜群なので、当たれば相当なダメージになるが、
「ハガネール、ジャイロボール!」
 ハガネールはボスゴドラを覆うようにとぐろを巻き、そのまま渦のように体を回す。高速でボスゴドラの周りを回転するハガネールは、ボスゴドラの盾となって土砂による攻撃をシャットアウトしてしまう。さらに、
「砂嵐!」
 そのまま回転を続け、大量の砂を竜巻のように舞い上げた。それにより家の中は砂で充満し、砂嵐が吹き荒れる。
「天候を利用したコンボ……師匠の言った通りだ」
 ミキは砂嵐に目を細めながら呟く。もっともイリスの場合は強い日差しで、コンボというほどではなかったが。
 しかし砂嵐の中だと、岩、地面、鋼タイプ以外のポケモンはダメージを受ける上、岩タイプのポケモンは特防が上がる。特殊技がメインのブーバーンにとっては、戦いにくくなったことだろう。
「ハガネール、捨て身タックル!」
「ボスゴドラ、ヘビーボンバー!」
 二体の攻撃はまだ終わらず、ハガネールはブーバーンに、ボスゴドラはカミギリーにそれぞれ突っ込んで来る。
「カミギリー、かわして爪とぎ!」
「ブーバーン、大地の怒りでぶっ飛ばせ!」
 真正面からは太刀打ちできないカミギリーは大きく横に跳んで攻撃をかわし、床に爪を擦りつけて研ぎ澄ます。
 逆にブーバーンは土砂を噴出し、真っ向からハガネールを迎え撃つ。しかしダメージは通っているのだろうが、ハガネールは土砂を突き破り、ブーバーンを吹っ飛ばして壁に叩き付けた。
「もう一度爪とぎ!」
「させるか! ストーンエッジ!」
 再び爪を研ぐカミギリーを、ハガネールは鋭い岩を乱射して止めようとするが、機動力ならカミギリーの方が圧倒的に高い。ストーンエッジは軽くかわされ、カミギリーは爪を研いで攻撃と命中を高める。
「起き上がれブーバーン! ダイヤブラスト!」
 砂煙が舞う中ブーバーンは体を起こし、白色の爆風を放ってボスゴドラを攻撃。効果いまひとつに加え砂嵐で特防が上がっているので、ボスゴドラへのダメージは少ない。さらに、
「メタルバースト!」
 ボスゴドラは鋼の光線を発射し、ブーバーンを再び壁に叩き付ける。
 メタルバーストは相手から受けたダメージを1,5倍にして返す技。元々のダメージが少なかったので、ブーバーンへのダメージもあまりない。
「カミギリー、辻斬り!」
「ハガネール、ジャイロボール!」
「ブーバーン、オーバーヒート!」
「ボスゴドラ、諸刃の頭突き!」
 隙を見つけては斬撃を繰り出すカミギリー。回転しながら動き回るハガネール。爆炎を放つブーバーン。凄まじい勢いで突貫するボスゴドラ。
 ストレンジャーハウス内で暴れまわるポケモンたちをよそに、一つの影が、家の階下へと進んでいく——



第五節 探究、毒邪隊の出番なのに、戦ってるのはツユサとウズメです。まあ、ザンバのバトルもありますけどね。ちょいネタバレになりますが。現状では、相性的に双子が少し有利ですかね。それでは、ストレンジャーハウスの地下へと足を踏み入れたのは誰か。次回もお楽しみに。

Re: 502章 上書 ( No.743 )
日時: 2013/03/10 13:25
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「こんなところで何をしているのかな?」
「……っ」
 ストレンジャーハウス地下一階。特訓するスペースを確保するためか、本棚がすべて寄せられ開けている中央に、二つの人影。
 一つは、赤黒い髪に眼鏡をかけた、如何にも胡散臭そうな男、ロキ。
 もう一つは、膨れ上がった銀色の服を着た、黒髪の男。ザンバ。その手には端末のような小さな機械と、ビデオカメラのようなものがある。
「人のバトルを覗き見るなんて、趣味がいいとは言えないよ。しかも、そんな妙なもの使ってさ」
「……残念ながら、それが仕事ですので」
 それより、とザンバは返す。
「あなたは上で戦っている二人の父親ですね。名前は……ロキといいましたか」
「ははっ、こっちの情報は筒抜けかな? 別に構わないけどね。隠すつもりはさらさらないし」
「いえいえ、あなたのことは分からないことだらけです。正直、プラズマ団内ではあなたと、英雄の父親が最も厄介なのですよ。なにせ、データがない。我々、特に毒邪隊にとって、相手のデータがないのは許されざることなのです」
「ふうん、そうなんだ。それで?」
 ロキが軽くそう返すと、ザンバはゆっくりとボールを持ち上げる。
「ちょうどいい機会です。ここで、あなたのデータをとらせていただきましょう」



「カミギリー、襲撃!」
「ハガネール、捨て身タックル!」
 カミギリーは隙を見つけてはハガネールにちょこちょこと攻撃を仕掛けていたが、それも限界のようだ。背後に回り込んで攻撃した直後、ハガネールが身を捻ってカミギリーを吹っ飛ばし、壁に叩き付けた。
「ブーバーン、ジオインパクト!」
「ボスゴドラ、地震!」
 ブーバーンも銀色のエネルギーを纏って突撃するが、ボスゴドラは地震を引き起こし、衝撃波でブーバーンを吹き飛ばす。疲弊していたカミギリーにも衝撃波が届き、二体は同時に戦闘不能。ハガネールにもダメージはあるが、防御が非常に高いからか、まだ倒れない。
「……やりにくい。戻れブーバーン」
「戻って、カミギリー」
 二人はそれぞれポケモンを戻し、新たなボールを手に取る。
「次は殴って攻めるか。出て来い、エレキブル!」
「頼んだよ、カブトプス!」
 ザキの二番手はエレキブル。相性は悪いが、物理技が中心の技構成なので、砂嵐の影響を受けずにボスゴドラを攻撃できる。
 ミキが繰り出すのはカブトプス。こちらは逆に相手に対して相性が良く、また岩タイプでもあるので砂嵐の恩恵を受けられる。
「カブトプス、ステルスロック!」
 真っ先に動いたのはカブトプスだ。しかし攻撃を繰り出さず、尖った岩を周囲にばら撒くだけだった。
「ストーンエッジ!」
 続いて鋭く尖った岩を、二体に向けて連続射出。しかし効果はいまひとつなので、ほとんどダメージが通らない。
「ハガネール、ジャイロボール!」
「ボスゴドラ、諸刃の頭突き!」
 ハガネールは回転しながら、ボスゴドラは凄まじい勢いでそれぞれ突撃してくる。どちらもまともに喰らえば大ダメージ必至だろう。
「ミキ、跳べ! エレキブル、地震!」
 ザキは叫ぶ。ミキも言われた通りカブトプスに飛ぶよう指示する。
 直後、エレキブルは地面を踏み揺らして大きな地震を引き起こす。地震は地を這う衝撃波となり、ハガネールとボスゴドラの二体を攻撃。ボスゴドラは吹っ飛ばされて戦闘不能となったが、ハガネールはまだなんとか持ちこたえている。
 しかし、
「カブトプス、スプラッシュ!」
 跳躍することで地震を回避したカブトプスが、鋭い鎌に水流を纏わせて落下する。鎌は水飛沫をあげながらハガネールに叩き込まれ、その一撃を受けてハガネールは地面に倒れ込む。戦闘不能だ。
「……戻れ、ハガネール」
「戻れ、ボスゴドラ……」
 ツユサとウズメは、共にポケモンをボールを戻し、同時に次のポケモンを繰り出した。
「出て来い、キリキザン!」
「バーネッコ、出て来い!」
 ツユサが繰り出したのは刀刃ポケモン、キリキザン。体の各所に銀色の鋭利な刃を備えた、怪人のような出で立ちのポケモンだ。刃のように鋭い表情をしている。
 ウズメが繰り出すのは、根っこポケモンのバーネッコ。分類通り根っこの如き体を持っているポケモンで、顔の近くに手が生えており、意地が悪そうな顔だ。
 二体のポケモンは場に出ると同時に、カブトプスの撒いた岩——ステルスロック——に襲われる。しかしあまりダメージは通っていないようだ。
「ケッ、あからさまにこっちに有利なポケモンを出してきやがったか」
 とは言うものの、ザキのポケモンのほとんどは地面や岩タイプに弱いので、砂嵐を軸としたパーティーに弱いのは必然である。
「エレキブル、グランボールダ!」
 エレキブルは地面から大小様々な岩石を浮かび上がらせ、それらを一斉にバーネッコへと叩き付ける。それによりバーネッコは、岩の中に閉じ込められてしまったが、
「砂嵐だ!」
 ピキ、ピキと岩の塊にヒビが入り、やがて砕け散る。同時に中からバーネッコと、激しい砂嵐が飛び出した。砂嵐で内側から圧力をかけ、無理やりこじ開けたようだ。
「バーネッコ、剣の舞!」
「キリキザン、剣の舞!」
 バーネッコとキリキザンは同時に剣のような鋭く激しく舞い、攻撃力を高める。
「キリキザン、辻斬り!」
「カブトプス、メタルニッパー!」
 キリキザンとカブトプスは、お互いに刃をぶつけ合い、白兵戦を繰り広げている。攻撃範囲はカブトプスの方が広いが、その分技が大味になってしまい、逆にキリキザンは刃が小さいものの小回りが利く。
 お互い相手の隙を突くような斬撃を何度も繰り出し、剣戟が鳴り響く。
「エレキブル、ウッドハンマー!」
「バーネッコ、かわしてウッドハンマー!」
 エレキブルが樹木の力を込めた拳を振るうが、砂嵐で視界不良の中、砂に隠れたバーネッコに当てることは出来ず、逆に背後から攻撃されてしまった。
「だったら、グランボールダ!」
 今度は無数の岩石を浮かべて一斉に放つが、これもすべて外れてしまう。
「ストーンエッジ!」
 直後、砂嵐の中から鋭く尖った岩が飛び出し、エレキブルに突き刺さる。
「キリキザン、不意打ち!」
 カブトプスとキリキザンが白兵戦を繰り広げている最中、突如キリキザンの姿が消えた。
「っ、後ろ——」
 カブトプスの背後に回ったキリキザンは、鋭い一撃をカブトプスに叩き込む。さらに、
「アイアンヘッド!」
 鋼鉄の頭で頭突きをかまし、カブトプスを吹っ飛ばす。
「カブトプス!」
 カブトプスの吹っ飛ばされた先は砂嵐が立ち込めているので何があるのかは分からない。しかし、うっすらとカブトプスに向かっている影は、辛うじて視認できた。それは、
「バーネッコ、ウッドハンマー!」
 バーネッコだ。
 バーネッコは拳を握り、カブトプスを地面に叩きつける。四倍の弱点を突かれたカブトプスは、その一撃で戦闘不能となった。
「あぅ……戻って、カブトプス」
 ミキはカブトプスをボールに戻し、次のボールを手に取る直前、キリキザンとバーネッコを一瞥する。
「……キリキザンとバーネッコ。なら、このポケモン。出て来て、フィニクス!」
 ミキの最後のポケモンは、不死鳥ポケモン、フィニクス。鋼と草の弱点を突け、なおかつ地面技は浮遊の特性で当たらない。
「兄さん」
「任せろ。エレキブル、地震!」
 二人は短く意思疎通をし、エレキブルが地震を引き起こす。
 視界が悪くても、地震は地を伝う攻撃。砂に隠れても無意味だ。
「フィニクス、ハリケーン!」
 そしてフィニクスも飛び上がり、翼を大きく羽ばたかせて嵐のような突風を放つ。突風は一時的だが、砂嵐ごと吹き飛ばして二体を攻撃する。
 地震を受けて倒れるキリキザン。地震は耐えたが、直後に襲い掛かってきたハリケーンに吹き飛ばされるバーネッコ。
 二体とも完全に目を回しており、戦闘不能だった。



 地下一階では、ロキとザンバがボールを片手に向かい合い、バトルが行われる。
「行きますよ、バンギラス!」
「おいで、マイハニー、アメリシア」
 ザンバが繰り出すのは、鎧ポケモンのバンギラス。対するロキは、雨乞いポケモンのアメリシアだ。
 まずアメリシアが場に出ることで、特性、雨降らしが発動。室内に雨雲が立ち込め、雨粒が落ち始めるが、
「……っ」
 直後、猛烈な砂嵐により雨雲がすべて吹き飛ばされる。
 バンギラスの特性、砂起こしだ。
「残念でしたね。天候を変える特性が同時に発動する時、遅いポケモンの特性で、先に発動した天候が上書きされます」
「それは知ってるけど……話が違うなぁ」
 ロキは少し困ったように頭を掻く。
「イリゼは、すばしっこいサナギラスだって言ってたのに、出て来たのは鈍足バンギラスかぁ」
「進化したのですよ。その際に素早さは落ちてしまいましたが、このような場面で役に立つとは」
 ロキはしばらく唸っていたが、やがてパッと頭を上げ、いつもの糸目に戻る。
「ま、いいか。ボクはイリゼと違って、そこまで天候に固執してるわけじゃないし。それにボクの愛しのポケモンたちは、雨に濡れなくとも十分強い」
 それを証明してあげるよ。と、ロキはうっすらと目を開くのだった。



第五節その二ですが……書くことないですね。文字数もギリギリなんで、今回はこれで終わりにしますか。では次回、ロキとザンバのバトルです。お楽しみに。

Re: 503章 液化 ( No.744 )
日時: 2013/03/10 15:23
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「アメリシア、潮吹きだ」
 アメリシアは大量の潮水を噴射し、バンギラスを攻撃。雨で強化されなくとも、体力がほぼ満タンでタイプ一致の潮吹きなら十分な火力が期待できる、加えてバンギラスには効果抜群だ。普通ならこの一撃で致命傷を与えられる。のだが、
「バンギラス、復讐です!」
 潮吹きを耐え切ったバンギラスは、報復の念が込められた拳を振るい、アメリシアを吹っ飛ばした。
 それを見てロキは、
「ごめん、前言撤回。これは雨降ってないときつい……」
 たった一撃喰らっただけで、そんなことを言い出す。
 しかし、雨が降っていなくとも、砂嵐というこの状況がロキにとってはきついのだ。砂嵐の中では、岩タイプのポケモンの特防が上昇する。ゆえにバンギラスは、アメリシアの潮吹きも余裕を持って耐え、反撃できたのだ。
「とりあえず、自己再生だ」
 アメリシアは傷ついた体を修復していくが、復讐のダメージが思ったほどに大きく、全快には至らない。
「バンギラス、馬鹿力!」
「アメリシア、守るだ」
 バンギラスは凄まじい覇気を発しながら拳を振るうが、アメリシアの展開した結界によって阻まれる。
「自己再生」
 そして直後、アメリシアは再び自己再生。これでやっと体力が全快した。
「潮吹きだ」
「突き破りましょう。馬鹿力!」
 アメリシアが噴射する潮水を、バンギラスは拳を振るって強引に散らす。
「うーん、イリゼはもっとトリッキーなサナギラスだって言ってたけど、どうやら随分なパワータイプに変貌したみたいだね。アメリシア、雷」
 アメリシアは轟く稲妻をバンギラスへと落とすが、狙いが微妙に逸れてしまい、直撃するには至らなかった。雨天状態なら確実に相手を貫く稲妻だが、今の命中率は大して高くない。現状のアメリシアは、技も満足に当てられない状況なのだ。
「地震です!」
 雷を余裕で耐えたバンギラスは、地震を引き起こしてアメリシアを攻撃。アメリシアは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「ストーンエッジ!」
 さらに鋭く尖った岩を射出。アメリシアを壁に磔にしてしまった。
「これはまずいな……アメリシア、自己再生」
「させませんよ。バンギラス、ストーンエッジ!」
 アメリシアはとりあえず傷ついた体を修復しようとするが、そこにバンギラスの放った岩が連続で突き刺さり、四発ほど喰らうとアメリシアは動かなくなった。戦闘不能だ。
「ふぅ……ありがとう、アメリシア。君は十分よくやってくれたよ」
 息を吐き、ロキはアメリシアをボールに戻す。
「それじゃあ、次は君だ。頼むよ、マイプリンセス、シャワーズ」
 ロキの二番手は、泡吐きポケモン、シャワーズ。
 魚類と哺乳類が合わさったような姿で、尻尾は尾ビレ、耳は胸ビレのようになっている。
「ふふ、ボクのメンバーの眠り姫が遂にご登場だよ。シャワーズ、ハイドロポンプ」
 シャワーズは息を吸い、大量の水を一気に噴射。バンギラスに直撃させる。
 しかし砂嵐で特防の上がったバンギラスには、いまいち決定打にならない。
「反撃です、バンギラス。復讐!」
 ハイドロポンプを耐え切ったバンギラスは、復讐心に駆られながら拳を突き出すが、
「当たらないよ。溶けるだ」
 シャワーズ体を液状化し、瞬く間に水へと変貌する。バンギラスはシャワーズが溶けた水溜りを殴るが、手応えはなく、ダメージが通っているようにも思えない。
「ハイドロポンプ」
 瞬時に元の姿へと戻ったシャワーズは、大量の水を噴射し、バンギラスを攻撃。
「復讐です!」
 バンギラスも先と同じように、復讐の拳を振りかざすが、
「当たらないと言っているだろう。溶ける」
 液状化したシャワーズに、バンギラスの拳は通じない。バンギラスの攻撃は、ことごとく透かされるだけだ。
「ばらしちゃうけど、実はボクの手持ちに物理攻撃をメインとするポケモンはいないんだ。だから特防を上げられると戦いにくくてね。今のうちに攻め落とさせてもらうよ。シャワーズ、ハイドロポンプ」
 瞬く間に元の姿へと戻ったシャワーズは、またしても水流を噴射。バンギラスを直撃する。
 いくら砂嵐で特防が上がっているとはいえ、効果は抜群だ。そろそろバンギラスの体力も少なくなってきただろう。
「ストーンエッジ!」
「溶ける」
 今度は復讐ではなくストーンエッジを放つバンギラス。しかしシャワーズの溶けるの前では、その攻撃も意味をなさない。
「ふむ、やはり溶けるが厄介ですね……でしたら、バンギラス、地震!」
 バンギラスは勢いよく地面を踏みつけ、地揺れを引き起こす。振動と共に地面に衝撃波が走り、シャワーズが溶けた水溜りを吹き飛ばす。
「んん……」
 吹き飛ばされ、元に戻ったシャワーズは少し痛そうに顔を歪めている。溶けるで防御が上がっているが、それでもそれなりのダメージは通っているようだ。
「地震なら通るようですね。ならばバンギラス、もう一度地震です!」
 バンギラスは再び地面を踏み揺らし、地震を引き起こした。
「んー……じゃ、そろそろかな。シャワーズ」
 ロキの声に応えるようにシャワーズは鳴き、そして、

「バトンタッチ」

 シャワーズはボールの中へと戻っていった。
「っ、バトンタッチ……」
「うん。この技がどういうものか、君なら分かるよね」
 言ってロキは、シャワーズと交代で、次なるポケモンを繰り出す。
「ボクらに勝利を、マイヴァルキリー、ロズレイド」
 ロキが繰り出したのは、ブーケポケモン、ロズレイド。
 人型だが、白薔薇のような頭部、両手には赤と青の花束がある。肩からはマントのような長い葉っぱがあり、目元もマスクで覆われ、どことなく優雅な佇まいだ。
「次は草タイプですか。バンギラス、ストーンエッジ!」
 バンギラスは鋭く尖った岩を連射する。しかしロズレイドは避けようともせず、ただまっすぐに岩を見つめるだけだった。そして、

 岩がロズレイドを透過した。

「っ……!」
「ロズレイド、危険な毒素」
 何食わぬ顔でロズレイドはバンギラスに接近。そして両手の花束から、如何にも毒々しい半液状の物質を発射し、バンギラスに直撃させる。
「今のは……」
 流石のザンバも驚きを隠せなかったが、少しずつ平静を取り戻していく。それと同時に、さきほど起こった現象のメカニズムも解いていく。
「溶けるに、バトンタッチ……ですか」
「まあね」
 バトンタッチは、発動したポケモンの能力変化を受け継いで次のポケモンと交代する技。ゆえにシャワーズの溶けるの状態を受け継いだロズレイドも、体を液状化させることができるのだ。
「それに、厄介なことにもなりました」
 バンギラスが毒素を受けた箇所は、毒々しい色に変色していた。それを見てザンバは、顔をしかめる。
「それを狙ったんだ、当然だよ。ロズレイド、ウェザーボール」
 ロズレイドは砂嵐を吸収し、焦げ茶色の球体を生成。そのままバンギラスへと発射する。
「バンギラス、ストーンエッジです!」
 ウェザーボールを受け、バンギラスは鋭い岩を発射して反撃に出るが、
「神通力だ。送り返して」
 発射された岩はすべて止められ、どころかそのままバンギラスへと逆戻りする。
「決めるよ、ロズレイド。リーフストーム」
 さらにロズレイドは、大量の渦巻く葉っぱを集め、嵐の如き勢いでバンギラスへと放つ。
 葉っぱの渦に飲み込まれたバンギラスは、全身をズタズタに切り刻まれた。渦が晴れると、バンギラスは鈍い音を立てて倒れ込む。
「ここまでですか……戻りなさい、バンギラス」
 ザンバはバンギラスをボールに戻す。
「では次、行きましょう。ルナトーン!」
 ザンバの二番手は、隕石ポケモン、ルナトーン。岩石のような三日月型の体をしている。
「砂嵐で特防上昇に、エスパータイプか。今のロズレイドには打ってつけってわけだ」
「そういうことです。ルナトーン、瞑想」
 ルナトーンはすぐには攻撃せず、まずは精神を集中し、特殊能力を高める。
「サイコバーン!」
 そして精神統一が終わると、念力を込めた衝撃波を放つ。
「かわしてリーフストームだ」
 特殊技では溶けるの効果が適用されないので、ロズレイドは舞うように衝撃波を回避。葉っぱの嵐をルナトーンにぶつける。
 しかし砂嵐、瞑想に加えてロズレイドの特攻は初撃のリーフストームで二段階落ちている。そのためルナトーンは余裕で耐え切り、

「催眠術です!」

 ロズレイドに催眠術をかけた。
 するとロズレイドは瞬く間に崩れ落ち、その場で眠りに落ちてしまう。
「眠り状態とは、ポケモンにとって最も無防備な状態。今のうちに下準備を整えておきましょう。ルナトーン、瞑想」
 ロズレイドが深き眠りにつく中、ルナトーンはひたすら精神を集中させる。



第五節その三。ロキ対ザンバです。こうしてみると、ロキとイリゼはバトルスタイルが似通ってますね。晴れパのイリゼに対して雨パのロキにしたのですが、日照りカンカーンと雨降らしアメリシア、バトンタッチ使いのリーフィアに対して同じくバトンタッチ使いのシャワーズ、ウェザーボールを使うオニゴーリにロズレイド。ここまでは特に狙ったわけでもないのですが、自然とこうなりました。今回は砂嵐が発動しているので、ロキは若干不利ですけどね。というわけで次回、双子のバトルか、ロキ対ザンバか、どちらかです。次回もお楽しみに。


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