複雑・ファジー小説
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- もしも俺が・・・・。『フィーダと那拓。』
- 日時: 2014/01/03 18:25
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
作者の今叫びたい一言 『ツイッター、始めました。>>205』 (By 作者)
序章、あとがき+読者様へ一言!! >>114
土下座で頼む、簡単アンケート!! >>115
↑アンケート円滑化のために、登場人物のリストを作りました!! >>123
オリキャラ大募集中!!!(こちらをお読みください。) >>140
【第一回 アンケート回答者リスト!! スペシャルサンクス!!】
・月葵様 →>>117
・るるこ様 →>>125
・檜原武甲様 →>>133
・李々様 →>>134
・八重様 →>>138
・エストレア様 →>>145
【オリキャラリスト!! スペシャルサンクス!!】
・李々様 →>>141 『明蓮寺 美夜』 >>151 『古屋 朱李衣』
・95様 →>>142 『葉隠 空冴』 >>146 『鳳凰院 龍雅』
・エストレア様 →>>145 『キル・フロート』
・檜原武甲様 →>>147 『知名崎 宇検』
・月葵様 →>>148 『結風 遥』 >>156 『矛燕』 『ゼヘト』
・グレイ様 →>>152 『周邊 蓮華』
・八重様 →>>155 『雛姫 容子』
・るるこ様 →>>166 『王 莉紅』 『鳳広炎』
クリックどうもありがとうございます。
おはようございます、こんにちは、そしてこんばんわ。
どうも初めまして。ご存知の方はお久しぶりです。
私の名前はヒトデナシと申します。
“自己紹介が終わったところで、この小説の注意点です。”
1、荒らしの方々は回れ右して去ってください。
2、読んでいただけるとすごくありがたいです。
3、コメントをもらうと、作者は歓喜に満ち溢れます。
“では次に、この小説はどんなものなのかを紹介いたします。”
1、この小説の中心の視点は基本、主人公である俺(作者ではありません。)が中心です。
2、この小説は、主人公が『もしもの世界』を体験したとき、どのように思うのか、またはどのように動くのかを描いたものです。
3、基本、自由である。
————と言った感じでございます。
では早速書いていきたいと思います。
楽しんでいただけると幸いです。
・登場人物・・・主要人物 >>119
黒川陣営 >>120
リバース陣営 >>121
DDD教団陣営 >>122
・イラスト広場(心優しい絵師様、常時募集中)・・・>>62
・用語説明・・・>>63
コメントを下さった優しい読者様
・月葵様
・八重様
・秘密箱様
・エストレア様
・小枝様
・るるこ様
・春野花様
・陽様
・修道士。様
・檜原武甲様
・李々様
・ちぇりお様
・95様
・グレイ様
・H様
・007様
———— 『もしも俺が・・・・。』目次 ————
【序章、日常編】
表紙→>>12 (八重様)
挿絵→ 第1幕 >>20 (るるこ様)
第6幕 >>89 (るるこ様)
第15幕 >>125 (るるこ様)
第1幕 『もしも俺が自己紹介をしたのなら……。』 >>1 >>7 >>8
第2幕 『もしも俺が自分の世界を紹介するなら……。』 >>14 >>16 >>19
第3幕 『もしも俺が風紀委員会を紹介したなら……。』 >>23 >>24 >>25
第4幕 『もしも俺がドラえもんの世界に行ったなら……。』 >>31 >>32 >>35
第5幕 『もしも俺がドラえもんの世界に行ったなら……続編。』 >>36 >>37 >>43
第6幕 『もしも俺(様)が華麗に参上したなら……。』 >>46 >>50 >>51
第7幕 『もしも俺がアンドロイドの世界に行ったのなら……。』 >>56 >>60 >>61
第8幕 『もしも俺がアンドロイドの世界に行ったのなら……続編。』 >>64 >>65 >>66
第9幕 『もしも俺(様)が異次元を渡るなら……。』 >>69 >>70 >>71
第10幕 『もしも俺(様)がゾンビの世界に飛び込んだなら……。』 >>76 >>77 >>82
第11幕 『もしも俺(様)がゾンビの世界に飛び込んだなら……続編。』 >>83 >>84 >>85
第12幕 『もしも俺が休日を過ごすのならば……。』 >>88 >>93 >>96
第13幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……前編。』 >>101 >>102 >>103
第14幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……後編。』 >>106 >>107 >>108
第15幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……終編。』 >>111 >>112 >>113
あとがき、そしてコメントを下さった方々に感謝の言葉を!! >>114
【第2章、闇人(やみびと)と天使編】
プロローグ >>124
第16幕 『もしも俺が日常を過ごしたのなら……。』 >>128 >>131 >>132
第17幕 『もしも俺がこれまでの事をまとめたなら……。』 >>136 >>159 >>160
第18幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……。』 >>163 >>164 >>165
第19幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……2。』 >>170 >>171 >>176
第20幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……3。』 >>181 >>185 >>186
第21幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……4。』 >>189 >>190 >>194
第22幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……5。』 >>198 >>201 >>204
第23幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……。』 >>206 >>209 >>210
第24幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……2。』 >>211 >>215 >>216
第25幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……3。』 >>217
------------ サブストーリー -------------
『交差する二人』・・・>>29 >>30
(300参照突破記念。黒川と水島の知られざる出会いの物語。)
『彼ら彼女らのクリスマス』・・・>>54 >>55
(600参照突破記念。元地山中学生の奇妙なクリスマスの物語。)
『物語崩壊、カオスなお祭り騒ぎ。』・・・>>72 >>73
(1000参照突破記念。あまりにもカオスすぎた。お祭り過ぎた。黒歴史とか言わないで。)
『たった一つのバレンタインチョコ。』・・・>>86 >>87
(1300参照突破記念。遅くなりましたがバレンタインネタ。元地山中学に甘い展開!?ww)
『風紀委員会の日常日記。』・・・>>104 >>105
(1500参照突破記念。風紀委員会で極秘に行われる秘密の日記が明らかに!?)
『The Time Start Of ティアナ。』・・・>>109 >>110
(1800参照突破記念。霧島とティアナ、そしてあのゼロの復活の物語……?)
『物語崩壊、カオスなお祭り騒ぎ2。』・・・>>127
(2000参照突破、日常編完結記念。もし俺メンバーのカオスな物語。
注意、この物語は18歳未満には刺激の強いちょっとした深夜族成分が含まれています。
お読みの際はにやけるお顔に気を付けて、一文一文丁寧にお読みください。By ヒトデナシ。)
『黒水SS By 火矢 八重様』・・・>>158
(トップレベルの作者様、火矢 八重様の執筆した黒水SS。
よく読んでくださる彼女でこそ書くことが出来る、レベルの高いSSですw
黒水SSは全ての読者様のモノ。皆様適当に妄想しちゃってくださいw
なお、もしも黒水SSを考えちゃった♪という神様がいるなら、
ぜひともこちらに投稿してくださればなと思いますw 私も読みたいですしねwww)
『花狩椿と銀色のいばら道』・・・>>168 >>169
(2500参照突破記念。花狩先生の少年時代の過去。
劣等感を胸に秘めた彼の前に現れた、ある人との出会いとは……?)
------------名誉、歴史--------------
・11月25日、『もしも俺が・・・・。』投稿。
・11月29日、100参照突破!! (ありがとうございます!!)
・12月02日、200参照突破!! (皆様の応援に感謝しております!!)
・12月06日、300参照突破!! (3は私の好きな数字です。とにかく感謝です!!)
・12月13日、400参照突破!! (嬉しい限りでございます。執筆ファイト!!)
・12月21日、500参照突破!! (500ですか!! 1000まで半分を切りました!!)
・12月24日、600参照突破!! (メリークリスマス!!)
・12月31日、700参照突破!! (2012年最後の日!!)
・01月05日、800参照突破!! (2013年、始まりました!!)
・02月12日、900参照突破!! (復活しました!! 皆様のためにも頑張ります!!)
・02月13日、1000参照突破!! (明日はバレンタインですか。皆様の応援に感謝!!)
・02月15日、1100参照突破!! (1000という大台を突破できてうれしいです!!)
・02月17日、1200参照突破!! (本編も10幕を突破。これからもバンバン書いていきますw)
・02月18日、1300参照突破!! (スリラーナーイト!! ……申し訳ない、深夜の悪乗りですw)
・02月21日、1400参照突破!! (もうすぐ1500!! 大感謝です!!)
・02月25日、1500参照突破!! (きたあああ!!! 1500参照ついに突破!!)
・02月27日、1600参照突破!! (おおぉぉ!! 応援に大変感謝です!!)
・03月01日、1700参照突破!! (ついに3月ですね!!)
・03月03日、1800参照突破!! (ありがとうございます!! ありがとうございます!!)
・03月06日、1900参照突破!! (もうすぐ2000ですね!! 頑張ります!!)
・03月09日、2000参照突破!! (2000参照突破しました!! 歓喜です!! 最高です!!)
・03月11日、2100参照突破!! (3000目指して頑張ります!!)
・03月11日、序章完結!! (始めの物語、無事に書き終えることが出来ました!! サンクス!!)
・03月18日、第2章、始まり!! (実はというと、サブタイトルに結構悩みましたwww)
・03月18日、2200参照突破!! (第2章も頑張ります!!)
・03月20日、2300参照突破!! (第2章、本格的にスタートです!!)
・03月26日、2400参照突破!! (もうすぐ2500ですね!! 頑張りますね!!)
・03月28日、2500参照突破!! (2500参照突破しました!! 3000目指して頑張ります!!)
・03月30日、2600参照突破!! (たくさんのオリキャラをありがとうございます!!)
・03月31日、2700参照突破!! (なんという快挙!! ありがとうございます!!)
・04月02日、2800参照突破!! (4月になりましたね!!)
・04月06日、2900参照突破!! (もうすぐ3000かぁ……。行けるといいなぁ。)
・04月14日、3000参照突破!! (うわぁぁああ!! 3000です!! 3000なんです!!!)
・05月01日、3100参照突破!! (長期休暇を頂きました!! 本日からまた執筆頑張ります!!)
・09月02日、4600参照突破!! (久々の執筆なので腕が鈍りまくりですねw)
・09月04日、4700参照突破!! (5000までもうすぐですね。頑張ります。)
・09月06日、4800参照突破!! (9月と言えば作者はもうすぐ誕生日とやらを迎えるわけですか。)
・09月09日、4900参照突破!! (もうすぐ5000ですね。頑張りますね。)
・09月12日、5000参照突破!! (5000です!! ありがとうございます。)
・09月14日、5100参照突破!! (私の誕生日です。ありがとうございます。)
・09月23日、5200参照突破!! (最近私の家族にPCを占拠される事が多くなりました。)
・11月18日、5300、5400参照突破!! (ここを建設して約一年になります。)
- Re: もしも俺が・・・・。『開戦の合図。』 ( No.103 )
- 日時: 2013/03/03 15:34
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
黒川とミストの戦闘が始まったのと同時刻————
100m先の業火に囲まれて戦闘を行っていたのは、二人のスタンド使い。
お互いに自分の分身である『スタンド』というモノを使い、激しい攻防を繰り広げていた。
15分もの長い間、二人は戦い続け、そして今も継続している。
……この世界で最強と言われているスタンド使い、空条承太郎はかなり苦戦していた。
理由は様々なのだが、一つは実力が互角という点。
接近戦において無類の強さを誇る、承太郎のスタンド、『スタープラチナ』だが、
承太郎自身もこのスタンドと接近戦を互角に渡り合えるスタンドは数えるほどしかいない。
いくら両拳の連打を打ち込んでも、それをお返しと言わんばかりに返してくる。
しかもそれを15分も、だ。さすがに承太郎としても体力が削り取られつつあった。
向こうのスタンド使いもそれは同じなのだろう。
が、なぜかは知らないがそれを感じさせないほどの威圧感を今も放っている。
理由は分かっている。黒いローブを羽織った男が、この人間を何らかの形で洗脳している……。
————それはつい20分前の事。事件は突然起きた。
建物が崩れ落ちる破壊音と大勢の悲鳴に気づいた承太郎は、いち早く事件に気づいた。
町は瞬時に火の海と化し、業火に焼かれ、建物は崩壊していく。
その景色はまさに地獄で、一体何があったのかと目を疑った。
そしてそんな承太郎の前に現れたのが、この『セイン』という男と黒ローブだ。
『セイン』という男は、短い金髪で、赤い瞳をした外国人といった感じが第一印象だった。
黒ローブは『セイン』という男に「行け、セイン。」、と命令すると、その場から瞬時に姿を消した。
セインと呼ばれる、うつろな目をしてユラユラと近づいてくる男は、
最初は普通の人間なのだろうと予想していた。
いきなり現れた謎の黒ローブがこの事件に関係しているというのは、なんとなくわかった。
が、狙いが読めない。この町を火の海にした理由はなんなのか。そこは全く謎だ。
しかし、目の前に放った一人の人間の意図だけは分かった。
多分あの黒ローブは人を操るスタンド使いで、承太郎の事を知っている。
そして人間を操る事で、何も関係ない普通の人物を傷つけられないだろうという良心を狙って、
人間を操って、スタンドを使わせない。目的は分からないが、それが黒ローブの狙いだろうと推測した。
……が、結果は大きく外れた。むしろ逆と言ってもいい。
目の前の人物が咆哮をしたかと思うと、背中から大きな何かが現れた……。
————現れたのは……スタンドだ。
血のように赤く染まるスタンドは、まるで赤く燃え上がるこの町を引き起こした元凶のようにさえ見えた。
否、それは本当だった。答えはすぐに分かった……。
彼のスタンドの右手が赤色の闘気を纏ったかと思うと、
近くにあった建物をおもむろに殴る。すると、その建物はまるでガラスが割れる様にひびが入った。
そして派手な音と共に建物は崩壊し、爆発するように炎を吹きあげてバラバラになった。
残ったのは瓦礫と、そして燃え上がる業火。まるでこの現状と同じだった。
コイツは普通の人間じゃない。間違いなく、スタンド使いだった。
そしてこの破壊の能力、間違いなく奴のスタンド能力だと確信した。
一瞬赤く光った右手。あれが破壊を巻き起こす前の初期動作であり、
あれに当たると、対象物は粉々に破壊されるというものみたいだ。
ここまであくまで推測だが、承太郎は自信があった。長年のスタンド使いとの戦闘の経験と勘だ。
そしておそらくだが、あの一発を貰えば自分も粉々にされ、即死。
ゾッとする背筋。だが恐れている場合ではない。何とか注意をしつつ、倒さなければならない。
恐怖をそっと胸の奥深くに追いやり、承太郎は吐き出す様に息を吐いた————。
————その後15分間、承太郎とセインの長い戦いの幕が開いた。
何度も何度も拳と拳をぶつけ合ううちに、承太郎は何度ため息をついたことだろうか。
さすがに拳も痛くなる。人間とスタンドは一心同体。スタンドのダメージは主人のダメージ。
承太郎は自分が殴っているわけでもないのに、拳に染みわたる血を目にしてまたもため息をついた。
そしてようやく、目の前のセインに疲れが見え始めていた。
先ほどまでは拳のラッシュについていけていたが、今度はそうは行くまい。
「やれやれ……ここまで殴り合いで手こずったのはテメエが初めてだぜ。」
苦笑して、今も獣のように唸るセインに向けていった。それが耳に入っているのかは分からない。
「だが、次で終わりだぜ。テメエは。」
右手の人差し指でセインを指さして、承太郎は微笑した。
それを挑発と受け取ったのか、今までよりも大きい咆哮をあげると、セインは突進した……。
背中にスッと現れた赤いスタンド。奴のスタンドだ……!!
「————『スーパークラッシャー』ッ!!」
セインが吼える様に叫ぶと、背中のスタンドがなお大きくその姿を露わにした。
奴がスタンドを動かすたびに、『スーパークラッシャー』と叫ぶ。
つまりこの赤いスタンドは、『スーパークラッシャー』と名のついたスタンドなのだろう。
承太郎の持つ、『スタープラチナ』と同じように。そして、
「————『スタープラチナ』ァッ!!」
承太郎もお返しと言わんばかりに叫び、そしてスタンドを露わにさせる……。
青を基調にした『スタープラチナ』。そして赤を基調とした『スーパークラッシャー』。
それぞれ違う色をした二つのスタンドが、睨むように相手を見つめる、そして、
「スーパーァァ、クラッシャアアア!!!」
先手を打ったのは、『スーパークラッシャー』を操るセインだった……!!
先ほどと一緒で、右手に赤く燃えるような闘気を纏い、その拳を振り下ろすッ……!!
————承太郎は、すでにそれを読んでいた。
これまでの15分間を通して、承太郎が得た情報は多大なモノだった。
まず一つ、この『スーパークラッシャー』は確かにパンチの速度も速く、
両拳から繰り出すラッシュも『スタープラチナ』に並ぶほど強くて速い。
が、このラッシュには、どうやら『破壊能力』が伴っていない様だった。
つまりどういう事かというと、ラッシュに関してはスタンド能力ではなく、
あくまでも殴るための攻撃手段でしかないのだ。よって、これは触れても即死することはない。
ちなみに、承太郎はこれを確認するために、わざとラッシュ中に建物を破壊させたのだが、
最初に見た時のように崩壊したり、業火に焼かれることはなかった。
つまり本当にやばいのは、あの赤い闘気を纏った時のみなのだ。
そして重要な事がもう一つ。この赤い闘気を纏った攻撃の最中は、ラッシュが出来ない。
ゆえに連発でこの赤い闘気の攻撃だけを連打することは出来ない。
だからこそ、承太郎は今まで生き残ってこれたと言えた。
もしもラッシュ中にもこれが出来ると言うのならば、最初のラッシュの時点で承太郎は死んでいる。
そこまで掴んでいた承太郎は、一つの切り札、そして策を用意していた……。
「————読めてるぜ。テメエの動きはなッ!!」
振り下ろした赤い闘気を纏う右手の攻撃をガードではなく横のステップで躱す。
そしてセインの懐に飛び込み、『スタープラチナ』がゆらりと両拳を構える……。
セインも躱されて揺らいだ身体を即座に立て直し、『スーパークラッシャー』も両拳を構える……。
これが最後だ。この殴り合いを制した方が勝者だ————!!
「オオォォォオオぉぉ————」
「アアアァァァぁぁぁ————」
二人のスタンドが咆哮して一瞬ピタリと止まる……。
瞬時、二人のスタンドがパンチの嵐を巻き起こす————!!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!!」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィッッ!!!」
二つのスタンドの間に、幾つもの分身したかに見える拳が、躍るように火花をまき散らしたッ……!!
風を切り、空気を裂き、そして辺りが舞い踊るように風圧が吹き荒れる。
拳と拳との衝突によって起こる振動は周りの建物に伝わり、さらに町を崩壊させた。
ドンドンッというハンマーで殴っているかのような大きな音が辺りを響かせ、
その中心にいる承太郎とセインにはまるで他の音が聞こえない。
ただ聞こえるのは、拳がぶつかる音のみ……。
このラッシュのやり取りはこれが8回目だ。これが最後だ。
そう息込んでいたせいか、承太郎にはこれが一番拳に響くラッシュのようにも思えた。
それは気のせいじゃない。確かに裂ける様に血が噴き出す両拳。
“ここで……負けてたまるかッ!!”
「オオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
承太郎はさらに咆哮をあげ、魂をスタープラチナに込める。
それが意志として伝わり、スタープラチナのラッシュ速度はさらに加速した……!!
それがついに互角だった均衡を破り、すり抜ける様に『スーパークラッシャー』に拳が突き刺さる!!
「グアアアアアァァァッッ!!!」
顔面、腹部、そしてその他もろもろの計9発のパンチを貰ったセインは、血を吹きだしてのけぞった。
スタンドのダメージは主人のダメージ。『スーパークラッシャー』のダメージが伝わったのだ。
ついにスタープラチナがラッシュの応戦に勝利した。かに見えた————
「————アアアアアアアァリィィィィーーー!!!!!!」
まだだと言わんばかりに咆哮したセインは、グルンと態勢を無理やり持ち直した。
スタープラチナの攻撃を食らってすでに瀕死に近いはずなのに、その威圧感は変わらない。
その威圧感を肌に感じた承太郎は、今度こそという意思を込めて拳を握る。
スタープラチナは右手に力を入れ、その拳を振り上げようとした時、
「スーパーァァァクラッシャアァァァ!!!」
セインが叫ぶと同時に、『スーパークラッシャー』の右拳が赤い光を放つ……。
まずい、と承太郎は思った。スタープラチナはすでに攻撃モーションに入っている。
しかも懐に潜っているために回避の暇もない。引くことは出来ない。
万事休す。まさしくその言葉だ……。
「アアアアアアアアァリィィィ!!!」
スーパークラッシャーの赤い闘気を纏った拳が振り下ろされる……。
その拳は一直線に伸び、ついに、スタープラチナの顔面を捉え————
「————スタープラチナ、『ザ、ワールド』。時は止まる……。」
————ることはなかった。瞬間、世界は『ありえない光景』を目のあたりにする。
承太郎以外の全ての生物、否、全ての物質が全てピタリと止まり、動かなくなった。
空中を飛んでいた鳥も静止し、今まさに崩れ落ちようとしている建物も浮くような形で止まっている。
目の前にいるセインも同様で、瞬き一つ行う気配はない。
そんな世界で動けるのは、唯一承太郎のみだった。
————これが、承太郎のスタンドである『スタープラチナ』の本当の能力。
それは至極単純。『時を止める能力』、だ。
時間制限はあるものの、その時間内ならあらゆるものを制止させることが出来る。
そして唯一動ける自分が一方的に攻撃することも、やろうと思えば可能。
だが、それは難しい。なぜなら、今の承太郎が止めることが可能な時間は、『約2秒』。
つまり2秒間だけ時を止められる。とてもじゃないが、懐に入っていなければ攻撃するのは無理だ。
そして何より、最近承太郎はこの能力を使うのにためらいつつある。
理由は、時期によって止められる時間が不定期なのだ。それゆえ、最低で一秒未満という時もある。
無論それでも十分すぎるのだが、大事な場面ではとても重宝しないし、信用ならない。
あくまでも緊急の場合のみ、この能力を使う様にしているのだ……。
「やれやれ、使いたくなかったぜ。奥の手の切り札は、な。」
フッと笑うと、承太郎は静かにスタープラチナを構え、
「オラオララオラオラァ!!!!」
と、両拳で繰り出すパンチを7発ほど浴びせる……!!
セインは時を止められているため、現段階では自分が『殴られている事さえ分からない』。
承太郎はその場でクルリと背を向けると、愛用の帽子を深くかぶる。
そしてダメージは、時が始まるとともに訪れる……!!
「そして時は動き出す……————。」
瞬間、全ての存在が動き出した……。
空を駆けていた鳥は大空高くに飛び、崩れかけていた建物は音をたてて崩壊した。
そしてセインもまた動き始め、赤い闘気を纏った拳を振り下ろす————事は出来なかった。
突如としてあふれ出た7発の重い攻撃が、セインをさらにのけぞらせた……!!
「アアアアアアァァァッ!!!!!!!」
何が起こったか分からないまま、セインはさらに血を吹きだし、身体に走る痛みに耐えかねて悲鳴を上げた。
そして『スーパークラッシャー』もまた、その動きを止めた。主人の意識がプッツリと途切れたからだ。
『スーパークラッシャー』がうっすらと消えていくのと同時に、意識を失ったセインが、
糸が切れた人形のように、バタンと背中を地面につけて倒れた……。
全身打撲、大量出血であったが、心臓はまだ動いて生きている。
このままだと間違いなく死ぬが、承太郎は心配していなかった。
この世界には何よりも優秀な『医者』がいる。そいつが到着すれば、間違いなく治る。
後はそいつが来るのを待つだけ————
と思ったが、承太郎は、それは無理そうだと判断した。……体力の限界だった。
承太郎もスタープラチナを引っ込め、そして一度大きくため息をついた。そして————
「————やれやれだぜ。……老いたな、俺も。」
そう言い残し、承太郎は前のめりにバタリと倒れた。
最後に見えたのは、こんな業火の中でも凛と咲くタンポポだった。
それを最後に、承太郎の視界は深い闇へと落ちていった————。
————————第13幕 完————————
- Re: もしも俺が・・・・。『承太郎VSセイン。』 ( No.104 )
- 日時: 2013/03/04 22:06
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
“サブストーリー 『風紀委員会の日常日記。』”
「前編」
————元地山中学には、風紀委員会という組織が存在している。
その名の通り、学校の風紀を取り締まる組織であり、それは学校内だけでは留まらない。
その周辺の地方さえも取り締まる強い権限を持っているのだった。
そんな風紀委員会でのある日、一人の少女は風紀委員室でノートに何やら書いていた……。
ソファにもたれかかり、一心不乱に書く様子は真剣であった。
何かの書類……ではなくて、それは一冊の日記だった————。
一年前、元地山中学風紀委員会に、ある日とある人物が入隊してきた……。
————名前は『光 白九 (ひかり しろく)』。新一年生である。
後、この風紀委員会の副リーダーを務める事になる少女である。
どこか不思議な感じの持つ、仕事に真面目な少女であった。
入隊した次の日から、彼女の日常は多忙のものへと変化した。
日々外に出向き、犯罪、治安を取り締まる毎日。
少女は自分の能力である『テレポート』があったため、他の人達より移動は面倒ではなかった。
が、それをアリにしても大変忙しかった。自分の同級生が、毎日辞めていくのを目にした。
だが白九は折れなかった。どれだけ多忙でも、自分の貫く正義を信じた。
毎日毎日、愛用のライフルを討ち続ける日々が続いた。平和な日が来るまで……。
そして二年生になった始め、白九はその仕事ぶりを評価された。
白九が一年生の時からリーダーに就いていた、イエガ—に任命されたのだった。
白九は二年生にも関わらず副リーダーに任命されたことに困惑したが、
一つ上の先輩である、『伊月 蓮 (いづき れん)』に背中を押されて、有難く受け取った。
本来なら蓮先輩がなるはずだったのに、それを横から取った事に罪悪感を感じたが、
蓮先輩はそれほど気にしていない様だった。むしろ喜んでいたのかもしれない……。
そして副リーダーに任命されたと同時に、一つイエガ—から頼まれたことがあった。
それは……日記の記載だ。
日々の行動、感想、思い当たる点を何でもいいから書いてほしいと言われた。
前任の副リーダーもやっていたらしく、それが少女にも回ってきたというわけだ。
まぁ任されたものは仕方ないので、白九はその日から日記を書くことにしたのだった……。
- Re: もしも俺が・・・・。『承太郎VSセイン。』 ( No.105 )
- 日時: 2013/03/04 22:12
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「後編」
○月○日……
『今日から副リーダーに任命されることになった。リーダーや蓮先輩にご迷惑を掛けぬよう、自分のやれる仕事を精一杯やっていきたい。これから宜しくお願いします。』
コメント……
『よろしくなのデース、シロク。』By イエガ—
『よろ。』By 蓮
○月×日……
『私が副リーダーになって数日経った。私は気づけば『影の断罪者』などと呼ばれる様になっていた。私は言った覚えはないのだが、誰が名付けたのだろう。もうちょっと可愛い通り名がよかった……。』
コメント……
『ホワッツ!! そうデシタカ。せっかく良い通り名だと思ったのデスガ。』By イエガ—
『↑隊長だったのか……。あの、もしかして『鬼コーチ蓮』と名付けたのも隊長?』By 蓮
『↑イエス。アイラブ。』 By イエガ—
○月△日……
『今日、何か良くない噂が耳に飛び込んだ。私の通り名が、『影の断罪者』から、『夜の女』へと変貌していた。割と『影の断罪者』になれつつあったのに、一体何があったのだろう。』
コメント……
『シロク、夜の女ほど魅力的なものはないのデース。』By イエガ—
『↑いや、噂広めたの隊長ですよね?』By 蓮
『↑イエス。アイラブ。』By イエガ—
×月○日……
『今日は雨だったので、一日中重要書類に目を通す日になった。今日は凄く疲れました。』
コメント……
『お疲れ様なのデース。』By イエガ—
『乙。』By 蓮
×月○日……
『今日も雨でした。一日中書類と戦闘するのは疲れます。そういえば、リーダー。今日は珍しく風紀委員室に来なかったですが、どちらにいられました?』
コメント……
『ひ・み・つ、なのデース。』By イエガ—
『↑隊長、書類選別がめんどいからって、ネットカフェに逃げ込まないでください。』By 蓮
『↑お……オウフ……。』By イエガ—
×月△日……
『最近雨続きですね。リーダー、今日もいなかったので捜索したのですが、最後まで見つかりませんでした。負けました。完敗です。リーダーさすがです。……ところで、今日はどちらで時間つぶしを?』
コメント……
『ふむ、シロクは分かっているのデース。その潔さは好きデスよ?』By イエガ—
『↑参りました隊長。貴方は偉大です。ところで今日はどちらへ?』By 蓮
『↑まっすぐおウチに帰ったのデース。』By イエガ—
『↑いや、それもうサボりとか通り越したレベルですよね? 無断帰宅じゃないですか。』By 蓮
『↑リーダー、最近サボりすぎではないかと思われます。』By 白九
△月○日……
『最近、黒川という男性が学校のイジメ問題に積極的に介入してきている。一年生の時からこの調子であったが、最近はさらに頻度が多い。その度に私が……。なんで私が……。』
コメント……
『オヤオヤ、これはもしや恋フラグでは……?』By イエガ—
『↑フラグですね、隊長。』By 蓮
△月×日……
『今日も黒川が……。あの人、なんであんなに積極的なんでしょうか。風紀委員会でもないのに。いっそ入隊すればいいのに……。そうすれば……』
コメント……
『恋焦がれてマスねぇ。さすがは彼、学校一の一級フラグ建築士デスネェ。』By イエガ—
『↑そうすれば……の後も気になりますね。何が言いたいんでしょうか?』By 蓮
『↑『そうすれば、いつでもイチャイチャ出来るのに。』、デスよ、』By イエガ—
『↑リーダー、妄想は大概にしてください。』By 白九
△月△日……
『今日も黒川がこちらに来た。そして、リーダーが風紀委員会への入隊を進めたが、黒川は拒否した。どうやら風紀委員会では自分のやりたいことが出来ないらしい。少し……残念だった。リーダーの言うとおり、彼が喧嘩に介入した時は、一緒に鎮圧しなければならないのだろうか。そう思うと、ほんの少しだけ心が痛かった。』
コメント……
『……切り替えナサイ。これからは、彼も一緒に断罪しなサイ。』By イエガ—
『↑はい、隊長。』By 蓮
『↑……はい。』By 白九
『↑ヨロシイ。失恋も経験のうちデース。』By イエガ—
『↑……いや、シリアスな感じが台無しなんですが……。』By 蓮
『↑というか、私恋してるなんて一文字も書いてないんですが……。』By 白九
『↑ツンデレごちそう様。焼き肉が食べたくなってキタ。終わったら行きマショウ。』By イエガ—
『↑あの……でしたら隊長、ちゃんと仕事してくれません?』By 蓮
———————— Fin ————————
- Re: もしも俺が・・・・。『風紀委員会の日常日記。』 ( No.106 )
- 日時: 2013/03/05 17:21
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
————第14幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……後編。』————
「パート1。」
「おおぉぉぉぉおおおッッ!!!!!」
「ああぁぁぁああああッッ!!!!!」
二人は同時に咆哮し、相手に殺気を向けて突撃する————。
空中を蹴りあげ、空気の放出によって加速した黒川は、グングンとミストとの距離を縮めていく。
対するミストもその場をグッと踏み込み、地面を蹴りあげた。あまりの蹴りあげに地面がひび割れた。
二人が接触すると同時に、挨拶代わりだと言わんばかりに、黒川が容赦なく斬りかかった……!!
黒川の持つシャイニングブレイドは、触れればたちまち身体を焼き斬り、蒸発させる。
体術を得意とするミストには分が悪い武器であり、それは本人も分かっている。
にもかかわらず、あえて得意な足技を使いづらい空中に身を乗り出したのかと疑問に思った。
しかも回避も難しい空中で、だ。これなら黒川にとっては格好の餌である。
だが瞬間、予想だにしていなかった光景を目のあたりにした……。
黒川の振り下ろすシャイニングブレイドは、確かにミストを捉えた。
ミストはクルンと宙返りをすると、振り下ろすシャイニングブレイドを得意の蹴り技で直に受け止めた。
ジュッ、という熱に触れた音が辺りに響いた。この後、ミストの身体は切り裂かれる……事はなかった。
むしろシャイニングブレイドは対象を焼け斬ることなく、その動きを完全に停止させた。
今シャイニングブレイドが触れているのは、ミストの履いている靴だ。
奴は得意の足蹴りを駆使して、靴でシャイニングブレイドを受け止めたのだが……、
それは不可能というもの。無理難題なのだ。
たかが革靴に鉄を問答無用で焼き斬るシャイニングブレイドを止めることなど出来はしない。
むしろ直に触れることさえ不可能だ。その瞬間、靴は溶けてなくなるのだから。
しかし、確かにシャイニングブレイドの刃に直接触れている靴は、その原型を留めている。
「————なッ!?」
思わず驚きの声が出てしまった。今までこのように直接受け止められたことがないからだ。
そんな驚愕の表情を浮かべる黒川に、ミストはクスッと笑った。
「耐熱特化の超合金を使った新しい靴はどぉ? 可愛いでしょ?」
ミストの言葉に、黒川はハッとした。
このミストの履くピンク色の靴、パッと見は普通の靴に見えるが、よく目を凝らすと金属だ。
この世界には、『完璧に焼く事が出来ない金属』が数少なく存在する。
それを世界では『耐熱合金』、またの名を『ヒート・レジスタンス・メタル』という。
触れると同時に、温度をある一定のところまで強制的に『冷やす』。
まるで金属自体が熱に抗うかのように出来ており、意志を持っているかのようだった。
つまり、このシャイニングブレイドの熱を強制的に冷やし、焼き切られるのを防いだということだ。
しかし、黒川は可笑しな話だと思った。
どれだけの温度の熱も通さない、正確には熱では姿形を自在に変化させることが出来ない金属を、
どのようにしてその靴の形に仕上げたというのであろうか……。
世界でもそれが一番騒がれている問題でもあり、何人もの科学者が寝る間も惜しんで解析している。
それが実用化すらされていないというのに、なぜ今目の前にそれが存在しているというのか……。
「……貴様が作ったのか? どうやって作った?」
黒川の質問に、ミストは「あたしじゃないよぉ。」と首を左右に振った。
「そこの真っ黒ローブさんに作ってもらったのぉ。作り方は分かんないー。あひゃ。」
「……何者だ、奴は。科学者として殺すには惜しい人材だ。」
「あー、無視しないでよぉ。せっかく目の前に美少女がいるというのにぃー!!」
瞬間、ミストはグルリと身体を縦回転させて、かかと落としの要領で黒川の頭上に振り下ろすッ!!
咄嗟に反応してシャイニングブレイドで防いだ黒川だったが、あまりの蹴りの威力に吹き飛ばされた。
エアブーツではとても態勢を立て直せず、流星の様に黒川の身体は勢いよく地面に叩きつけられた。
背中から受け身も取れずに落下したため、思わずうぐッ、という悲鳴と、身体に走る痛みに顔をゆがめる。
まだ前回のミストとの戦闘の傷が癒えていない。思ったように身体が動かないのだ。
「……ちッ!!」
思わず舌打ちをした。ストンと地面に降り立ち、近づいてくるミストにやけに恐怖を感じてきた。
今までシャイニングブレイドの恩恵でミストとのアドバンテージ、つまり有利に立ってきたと言っていい。
しかし、このシャイニングブレイドを防ぐあの靴がある限り、あれを掻い潜らなければダメージは通らない。
だがミストの足技はかなり強力だ。そしてタイマン特化だと言っていい。
そして素早い動き。読めない、応戦しづらい蹴り技。
普通の剣と化したシャイニングブレイドではとても5分5分には持ち込めない。
しかも前回の疲労が身体の荷物と化している。これでは勝機は2割といったところか。
まさかシャイニングブレイドの対策を催してくるとは誤算だった。
否、それはまだ無いと思っていたのだ。だからこその奥の手の武器なのだ。
見上げる位置にいる黒ローブを恨めしく思いながらも、科学者としてほんの少しだが尊敬した。
まともな人であるならば、良い友達に慣れたというのに。あれは間違いなくマッドサイエンティストだ。
そんなフラフラな黒川を見て、ミストはクスッと笑ってみせると、白いワンピースをひらひらさせる。
「あひゃひゃ、大丈夫ぅ? 手を抜いてあげよっかぁー?」
「……心配するな。これから死ぬ貴様が心配するほどじゃない。」
後ろ向きな考えを捨て、黒川はグッとシャイニングブレイドを両手で構える。
殺気は以前として劣らず、その目はまだ獣と同じ目をしている。
「そうそう、そうじゃなきゃ————さ!!!」
ミストが思いっきり地面を蹴ると、ドンッ、と地面が割れる音が辺りを響かせる。
そしてロケットの様に黒川に向けて突進し、瞬時に黒川との距離を詰めた。
黒川との距離が1mほどになった直後、ミストはもう一度地面を蹴り、飛び蹴りを放つ。
回避は不可能と瞬時に判断した黒川は、シャイニングブレイドを突き出し、その飛び蹴りの勢いを殺す。
が、予想以上に威力が強く、2・3歩後退しつつもなんとか受け止める。
そう言えば、と黒川は一つ疑問に思った。
このシャイニングブレイドはあくまでも熱が刃であり、いわばレーザーの塊。
だから実体など存在せず、本来ならミストの攻撃をガードする事なんて不可能のはずだ。
すり抜けて、それこそ蹴られ放題。一方的に黒川が不利になるはず。
だが、この靴はどうやらシャイニングブレイドの刃を『実体』として捉えている。
だからこそ、この強力な飛び蹴りをガードできたと言える。それは有難い話だ。
しかしなぜ? なぜこの靴は熱を実体として捉えることが出来る?
答えは簡単に出てきた。きっと熱を急激に冷やすことで、レーザーを一時的に『固体化』させているのだ。
空気中の水蒸気には触れることが出来ない。しかし凍らせて固体化すれば、氷として触れられる。
あれと同じ要領なのだろうと黒川は推測を立てた。おそらくは間違いあるまい。
まぁなんにせよ。実体として捉えてくれるのはこちらとしては有難いという事だ。
ホッとする間もなく、即座に地面に手をついて逆立ちになったミストがさらに追い打ちをかける。
上下逆になったミストの足蹴りは黒川にとっては防ぎづらい攻撃だ。
上に意識しすぎれば足を狙われ、足を意識しすぎれば今度は顔面を蹴りあげられる。
以前はこれを自分も逆立ちになって蹴りで応戦することでアドバンテージを崩したが、
今回は正直足技で応戦できるという自信はない。体力的にも、だ。
それに前回とは違い、金属の靴も纏っているため、攻撃力も増していると見て良い。
現に以前よりか蹴りの威力は増しており、さらに化物と化していたのは間違いじゃない。
「ていっ、やぁあああッ!!!!」
ミストは左右両足を交互に突出し、黒川の顔面目掛けて連撃する。
まるで分身でもしているかのように速く、一つ一つ見極めて防ぐので手一杯だった。
シャイニングブレイドとミストの靴が交わるたびにキュインという音が鳴る。
連続で鳴り響く音に鼓膜が破れるかと思う程だ。黒板をひっかく、あの音に似ている嫌な音だ。
黒川はこのままではやばいと判断し、一度バックステップをはさみ、距離を置く。
そして態勢を立て直し、咆哮と共に再び斬りかかる……!!
右下から左上に振り上げる様に切り払う。ミストはそれを咄嗟に飛び退いて躱す。
逆立ちの状態ではどうしても下からの攻撃に弱くなる。そして足で防御するのも遅れる。
そして距離を置こうとすることも予想していた黒川は、瞬時に接近する。
さらに追撃する様に下から切り上げる形で、8の字を描くようにシャイニングブレイドを振るうッ!!
それを不利と受け取ってか、ミストは支えている手にグッと力を入れると、そこから一気に飛び跳ねた。
黒川の攻撃を掻い潜り、上空3mのところまでジャンプしたミストは、身体の向きを直し、
重力に引かれる様に地上へと徐々に落下。落下地点はちょうど黒川の真上だ。
黒川は不敵にもニヤリと笑った。これは好機だ。
ミストの落下の勢いに任せて繰り出されるであろう足技をを剣で防御し、
それを防ぎ切った後で、攻撃にすぐに転じれば、ミストが地上に降り立つ前に切り込むことが出来る。
たとえそれを足で防御してきたとしても、大きく態勢を崩すに違いない。
その時を狙えばかならず斬れる……!!
「やああああぁぁぁッッ!!!」
ミストが咆哮しながら自分の真上に落下してくる。両足で、踏みつける様に体重をかける。
幸い、女性であるミスト自体の体重は大したことはないが、
落下と同時に押し出された足蹴りが充分に黒川の身体を沈ませた。
両足に力を入れ、必死に上からのミストの攻撃の圧力に耐える。歯を食いしばり、耐える。
そしてミストの攻撃が完璧に止まったのを見計らい、剣を即座に引く。
ミストの足元には黒川の剣がなくなった事によって、足の支える場所がなくなる。
ミストはそのまま地面へと足が吸い寄せられていく。今ミストは逆立ち状態じゃない。
つまり、今ならミストの顔面はミスト自身が防御不可能な完全な『隙』であるのだ。
まだ地面に足が付くまで一秒はある。この間に逆立ち状態に持っていくことは不可能。
足で防御することも、不可能————。
「オオオオォォォアアアアァッ!!!!」
黒川はこの好機を逃すまいと、後ろに引いたシャイニングブレイドを即座に前へ付きだすッ!!
突き出されたシャイニングブレイドの刃の剣先は、無論がら空きのミストの顔面へ……!!
瞬間、黒川はあまりにも突発過ぎた行動に背筋を凍らせた……。
目の前のミストの身体がギュルリと高速回転する。
分かりやすい言葉で言うならば、空中で高速でバク天をしていると思ってくれていい。
何回転もし、目が回るぐらい回転数を上げていく。ここまで、1秒もかかっていない。
そして黒川が突きだしたところにすでにミストの顔はなく、そこは空洞と化していた。
ミストの顔は約0.5秒の間に即座に黒川の足元あたりへと移動しており、
そしてその直後、回転数を上げた恐ろしい程速い蹴り上げが、黒川の顎に直撃した……!!
「がッ……!!」
思わず言葉にならない程の悲鳴を上げ、黒川の意識はガクッと揺れる。
人間は顎に強烈な衝撃を受けると、脳にそれが振動して、脳震盪というものを引き起こす。
まさしくそれであった。今の黒川は、景色が歪んで見えた。
さらにと言わんばかりに、ミストは身体の軸を捻ると、今度は地面と水平に横に薙ぎ払い、
黒川の首に水平チョップならぬ、水平蹴りをお見舞いするッ!!
息が一瞬止まり、首が消し飛ぶかと思う程だった。肺から一気に空気を吐き出す。その時に血反吐も吐いた。
ガクンと身体が完璧に動きを止め、両膝をついて前のめりに倒れようとしたところを、
とどめの一発を高速の前蹴りで黒川の顔面にお見舞いし、黒川を5mほど前方に蹴り飛ばした……!!
地面に放り投げられるように転がり、黒川はゴホゴホと血反吐を吐いて、酸素を吸い上げる。
息が荒くなっているのが自分でもわかり、さっき首を蹴られたせいか酸素の通りが悪い。
首も……逝ったなこれは。
黒川は冷静に身体を分析し、自分の身体の至る所の負傷を確認する。
首は折れ、脳はいつも程機能しない。顎は外れた……と思いきや、さっきの前蹴りで戻った。
とはいえ、とても身体を動かせる状態ではないというのが結論だ。……正直、勝てる気がしない。
「あひゃひゃ、もうおしまいー? 早いなぁ黒川君。女の子を満足させないまま逝っちゃうのぉー?」
妙に下品に聞こえてしまうのは何故だろうかと考えたが、すぐにやめた。ツッコむ気にもなれない。
もう、目蓋も重い。身体は動かない。完全にチェックメイトだ。
「まぁー、大好きな黒川君に惨めな思いさせるわけにもいかないしぃー。すぐに殺してあげるね?」
ミストがゆっくりと近づいてくるのが分かる。コツコツと金属の音を響かせて。
ああ、自分はついに死ぬか。呆気ないものだ。
水島や先生には悪いが、先に逝かせてもらうことにしようと腹をくくった。
私が死ねば、水島達は必ず助かる。その確証はあった。
なぜなら、私の力によってこの世界に来たのだ。
ゆえに発言者である私が死ねば、能力の効果はなくなり、時間に関係なく強制的に戻される。
つまり水島達が死ぬことはまずない。それだけでも、十分だ……。
「最後に言いたいことあるぅー?」
ミストが覗き込むようにして黒川の顔を見る。が、黒川はピクリとも動く様子がなかったため、
「じゃあぁー、バイバイ、私の王子様。顔だけ残して私の部屋に飾ってあげるね♪」
それだけ言って、ミストは片足を振り上げ、黒川の心臓部分に狙いをつける。
もう、足掻く気はなかった。むしろこのまま殺された方が楽だ。
守れなかったのは、悔しい。けれど水島さえ生き残ればそれでいい。
“…………幸せに生きてくれ。水島。”
最後は笑って死のうと思い、表情を穏やかにしたその時————
「————止めてぇッ!!!」
辺りに響く声に圧倒されて、ミストはピタッと動きを止めた。
先ほどまで五月蠅く騒いでいた業火が一気に静かになったようだった。
女性の声……だった。しかも、この声は————
「水……し……ま……?」
黒川は動かない身体をやっとの思いで動かし、声の方へと目線だけを向けた————。
- Re: もしも俺が・・・・。『VSミスト(二回目)。』 ( No.107 )
- 日時: 2013/03/06 18:03
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート2。」
————脳が正常に機能しなくて距離感を正確には図れないが、約50m先には確かにその姿があった。
水島が息を荒げて、胸に手を添えて立っていた。黒川の背筋がゾッとし、凍りつく。
最悪な状況が、起きてしまった……。
この展開はまずい。さっさと私を殺せば、最悪は免れるというのに。
「んー? なぁに、知り合い? しかも女ぁ?」
ミストはムッとして水島を睨む。水島は一瞬ビクッと肩を震わせたが、すぐに真剣な表情に戻す。
「……彼から、黒川君から離れて下さい。」
水島は震える手を必死に抑え込み、声を絞り出す。
怖いに決まっている。水島はただの女の子だ。
それでもなお、おぞましい威圧感を発する彼女に噛みつくのは、水島の意地だ。
“私が少しでも時間を稼げば……黒川君が逃げる時間ぐらいは……。”
無論、それは到底叶う事ではない事は知っている。
すぐに追いつかれ、殺されるだろうなと思う。無力だ、自分は。
けれど、もう黙って見てるだけなんて出来ない。
たとえ足手まといでも、無駄死にしたって、
目の前の黒川君の死を見す見す見逃すなんて出来ない……!!
黒川君はいつも、他人の安全を第一に考えてくれている。
たとえ自分がその分犠牲になろうとも、他人を守れるならそれでいいと判断する危なっかしい人。
頼もしいけど、私はそれがたまらなく怖い。そして今、目の前でそれが起きようとしている。
助けたい、でも助けられない。だけど見ているだけは絶対にしたくない。
それならやるだけやって、自分も尽き果てる方がずっと楽だ……。
「に……げ……」
黒川は必死に言葉を絞り出すが、声がカラカラで言葉にならない。
しかもごく小さくて、とても水島には届かない。
黒川は心で願った。頼むから水島には手を出すな、と。
そして自分を殺せ。先に自分の息の根を止めてくれと心底願った。しかし、
「あひゃ、せっかく黒川君といちゃいちゃしてたのにさぁ————」
ミストの威圧感がさらに増した。そして殺気、憎悪……!!
「————邪魔だから、君から先に殺すね。」
ミストの言葉に、黒川と水島は恐怖で身体の体温が一気に冷えた。
悪寒が身体を駆け巡る。業火の中だというのに不思議なぐらいだ。
瞬間、ミストが地面を蹴った音が聞こえた……。ミストの姿が黒川から遠ざかるのが肌で分かる。
ミストが片手の手のひらを鋭くし、後ろにグッと引く。心臓を手刀で一突きにして、即死させる気だ。
水島は覚悟を決めていた。瞳を閉じて、死を受け入れようとしている。
……これでいい、これでいいと水島は自分に言い聞かせる。
だって最後に、私は黒川君の死をほんの少しだけ伸ばせた。
怖い。死ぬのは怖い。けど、大切な人を守れるなら……それで構わない。
いつも守ってくれていた黒川君を、今度は私が————
ミストと水島の距離が5mを切った時、黒川は確かに見た。
彼女がこちらを見つめ、ニコッと微笑んだ。最後のお別れと言わんばかりに……。
冗談だろう? 嘘だろう? 私はそんな事は予期していない……。
嘘だ。嘘だ。こんなの何かの間違いだ。
俺が死ぬ前に……水島が死ぬのか?
俺から庇って……水島が死ぬのか?
俺の目の前で……水島が死ぬのか?
止めろ……やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ……ッ!!
俺を殺せよ。殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せッ!!
どんな殺し方でもいい。どんな死に方でも構わないから……。
だから水島だけは……愛する彼女だけは……殺すな。殺さないでくれ……。
彼女の笑顔だけは……俺から奪わないでくれ……!!
彼女の存在だけは……彼女の存在だけは……。
俺のたった一つの……希望だけは…………————
「ウガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!!!」
————瞬間、獣の咆哮と共に、黒川の身体はドクンと大きな脈を打った……!!
ミストが水島に手刀を突き刺そうとした直後、ミストの横から遥かに速い速度で何かが追い抜いた。
それは確かに人間だった。黒い学ランを着た、今のさっきまで死にかけだった黒川だ。
あの場所から50mもあったはず、しかも死にかけだったのにも関わらず、だ。
ミストが驚いて目を見開いた瞬間、きらめく様に何かが飛んでくる。
その見たことがない程の速度でミストの首元に迫った何かを、ミストは咄嗟に後ろに飛び退いて躱した。
間一髪、そして直後に悪寒がミストの身体を駆け巡った。
その正体は、横に薙ぎ払う様に放たれた手刀だ……。
もしも今のを回避していなかったら、首が飛んだのは間違いなく私だった、とミストは思った。
無論、放ったのは黒川だ。いや、先ほどまでの黒川とはまるで違う。
姿形は同じだが、殺気、そして獣の様に壊れたその表情は、とても冷静な彼には見えない。
今まで怒った黒川を見たことのあるミストだったが、これはもうそんなレベルじゃない。
化物であるミストが背筋を凍らすほどの威圧感。そして一番驚いたのは、黒川の右目だ。
先ほどまで青かった彼の瞳が、いつの間にか輝きを放つ金色へと変化している。
それを見た瞬間、ミストはゾッとした。そして思わず呟いた……。
「か……『覚醒種』の力……ッ!!!!」
ミストは驚きを隠せないまま、一旦距離を置いた。
そして黒川は瞬時に水島の目の前に移動し、その金色の目でギロリとミストを睨んだ。
水島は何事だろうかと死ぬ覚悟をして閉じていた目を開けると、そこには背中姿があった。
間違いなく黒川のものだとすぐに分かった。でもなぜ……?
「……誰がッ……俺の水島にィッ…………手を出していいと言ったァァッ!!!!!」
ビリッと空気が痺れるほどの黒川の声量が、大地を一瞬揺らした。
ミストは腕で顔を覆い、その表情から笑みが消える。
水島も困惑し、黒川君と名前を呼ぼうとしたその瞬間————
————誰が見ても分かるほどに、黒川の身体はガクンと力が抜け落ちた。
まるで筋肉を一気に抜かれたようで、立っていられない程であった。
今度こそ、身体はピクリとも動かなくなった。立っているのでやっとの様だ。
そして気づけば右目の金色は消えており、元の青色へと戻っている。
「……黒川君、やっぱり君から殺すねッ!!」
妙に焦った表情を浮かべたミストが、地面を蹴り上げ、ギュンともう一度急接近してくる。
何に焦っているのかは分からないが、俺を殺してくれるというのは有難い。
……やっと、安心した————。
「黒川君ッッ!! ダメだよッ!! やめてぇぇッ!!」
背後から水島の泣いて叫ぶ声が聞こえる。ああ、俺は幸せ者だ……。
彼女を守り抜いて、俺は死ねる。これだけで、俺は十分だ。
黒川はわずかに動く顔だけを水島の方に向けて、そっと微笑んだ。
その時の黒川はいつもの黒川で、殺気に満ちた表情ではなく、穏やかなものだった。
彼女の顔はクシャクシャに崩れていた。綺麗な涙が頬を伝っていて、とても美しかった。
ありがとう、俺のために来てくれて————。
さようなら、俺の愛する大切な人————。
「————水島……君だけは……俺が必ず守ってみせるからな。」
最後に残した言葉と共に、途切れる様に意識はプツンと切れた。
グシャッと嫌な感触が自分の左胸に走る。何かが貫かれた感触だ。
かすかに見える目で胸を見ると、ミストの手刀が黒川の心臓部分を突き刺していた。
ミストの顔がほんの少し見えた。殺気に満ちた、怖い顔だった。
それと対象に、自分はどんな顔をしていたんだろう……?
それはすぐに分かった。ミストの顔が、見開いて驚いているのを見て確信した。
————きっと俺は、幸せに微笑んで、笑顔で死んでいったんだ。
後ろから悲鳴が聞こえる。誰かが泣き叫んでくれている。
誰かが名前を呼んでくれている。誰かが俺を大切に思ってくれている。
そんな自分が嬉しくて、誇らしくて、
黒川は最後にフッと微笑して、綺麗な空を最後に眠るように目蓋を閉じた————。
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