複雑・ファジー小説
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- もしも俺が・・・・。『フィーダと那拓。』
- 日時: 2014/01/03 18:25
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
作者の今叫びたい一言 『ツイッター、始めました。>>205』 (By 作者)
序章、あとがき+読者様へ一言!! >>114
土下座で頼む、簡単アンケート!! >>115
↑アンケート円滑化のために、登場人物のリストを作りました!! >>123
オリキャラ大募集中!!!(こちらをお読みください。) >>140
【第一回 アンケート回答者リスト!! スペシャルサンクス!!】
・月葵様 →>>117
・るるこ様 →>>125
・檜原武甲様 →>>133
・李々様 →>>134
・八重様 →>>138
・エストレア様 →>>145
【オリキャラリスト!! スペシャルサンクス!!】
・李々様 →>>141 『明蓮寺 美夜』 >>151 『古屋 朱李衣』
・95様 →>>142 『葉隠 空冴』 >>146 『鳳凰院 龍雅』
・エストレア様 →>>145 『キル・フロート』
・檜原武甲様 →>>147 『知名崎 宇検』
・月葵様 →>>148 『結風 遥』 >>156 『矛燕』 『ゼヘト』
・グレイ様 →>>152 『周邊 蓮華』
・八重様 →>>155 『雛姫 容子』
・るるこ様 →>>166 『王 莉紅』 『鳳広炎』
クリックどうもありがとうございます。
おはようございます、こんにちは、そしてこんばんわ。
どうも初めまして。ご存知の方はお久しぶりです。
私の名前はヒトデナシと申します。
“自己紹介が終わったところで、この小説の注意点です。”
1、荒らしの方々は回れ右して去ってください。
2、読んでいただけるとすごくありがたいです。
3、コメントをもらうと、作者は歓喜に満ち溢れます。
“では次に、この小説はどんなものなのかを紹介いたします。”
1、この小説の中心の視点は基本、主人公である俺(作者ではありません。)が中心です。
2、この小説は、主人公が『もしもの世界』を体験したとき、どのように思うのか、またはどのように動くのかを描いたものです。
3、基本、自由である。
————と言った感じでございます。
では早速書いていきたいと思います。
楽しんでいただけると幸いです。
・登場人物・・・主要人物 >>119
黒川陣営 >>120
リバース陣営 >>121
DDD教団陣営 >>122
・イラスト広場(心優しい絵師様、常時募集中)・・・>>62
・用語説明・・・>>63
コメントを下さった優しい読者様
・月葵様
・八重様
・秘密箱様
・エストレア様
・小枝様
・るるこ様
・春野花様
・陽様
・修道士。様
・檜原武甲様
・李々様
・ちぇりお様
・95様
・グレイ様
・H様
・007様
———— 『もしも俺が・・・・。』目次 ————
【序章、日常編】
表紙→>>12 (八重様)
挿絵→ 第1幕 >>20 (るるこ様)
第6幕 >>89 (るるこ様)
第15幕 >>125 (るるこ様)
第1幕 『もしも俺が自己紹介をしたのなら……。』 >>1 >>7 >>8
第2幕 『もしも俺が自分の世界を紹介するなら……。』 >>14 >>16 >>19
第3幕 『もしも俺が風紀委員会を紹介したなら……。』 >>23 >>24 >>25
第4幕 『もしも俺がドラえもんの世界に行ったなら……。』 >>31 >>32 >>35
第5幕 『もしも俺がドラえもんの世界に行ったなら……続編。』 >>36 >>37 >>43
第6幕 『もしも俺(様)が華麗に参上したなら……。』 >>46 >>50 >>51
第7幕 『もしも俺がアンドロイドの世界に行ったのなら……。』 >>56 >>60 >>61
第8幕 『もしも俺がアンドロイドの世界に行ったのなら……続編。』 >>64 >>65 >>66
第9幕 『もしも俺(様)が異次元を渡るなら……。』 >>69 >>70 >>71
第10幕 『もしも俺(様)がゾンビの世界に飛び込んだなら……。』 >>76 >>77 >>82
第11幕 『もしも俺(様)がゾンビの世界に飛び込んだなら……続編。』 >>83 >>84 >>85
第12幕 『もしも俺が休日を過ごすのならば……。』 >>88 >>93 >>96
第13幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……前編。』 >>101 >>102 >>103
第14幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……後編。』 >>106 >>107 >>108
第15幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……終編。』 >>111 >>112 >>113
あとがき、そしてコメントを下さった方々に感謝の言葉を!! >>114
【第2章、闇人(やみびと)と天使編】
プロローグ >>124
第16幕 『もしも俺が日常を過ごしたのなら……。』 >>128 >>131 >>132
第17幕 『もしも俺がこれまでの事をまとめたなら……。』 >>136 >>159 >>160
第18幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……。』 >>163 >>164 >>165
第19幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……2。』 >>170 >>171 >>176
第20幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……3。』 >>181 >>185 >>186
第21幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……4。』 >>189 >>190 >>194
第22幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……5。』 >>198 >>201 >>204
第23幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……。』 >>206 >>209 >>210
第24幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……2。』 >>211 >>215 >>216
第25幕 『もしも俺(様)がドラクエの世界に行ったのなら……3。』 >>217
------------ サブストーリー -------------
『交差する二人』・・・>>29 >>30
(300参照突破記念。黒川と水島の知られざる出会いの物語。)
『彼ら彼女らのクリスマス』・・・>>54 >>55
(600参照突破記念。元地山中学生の奇妙なクリスマスの物語。)
『物語崩壊、カオスなお祭り騒ぎ。』・・・>>72 >>73
(1000参照突破記念。あまりにもカオスすぎた。お祭り過ぎた。黒歴史とか言わないで。)
『たった一つのバレンタインチョコ。』・・・>>86 >>87
(1300参照突破記念。遅くなりましたがバレンタインネタ。元地山中学に甘い展開!?ww)
『風紀委員会の日常日記。』・・・>>104 >>105
(1500参照突破記念。風紀委員会で極秘に行われる秘密の日記が明らかに!?)
『The Time Start Of ティアナ。』・・・>>109 >>110
(1800参照突破記念。霧島とティアナ、そしてあのゼロの復活の物語……?)
『物語崩壊、カオスなお祭り騒ぎ2。』・・・>>127
(2000参照突破、日常編完結記念。もし俺メンバーのカオスな物語。
注意、この物語は18歳未満には刺激の強いちょっとした深夜族成分が含まれています。
お読みの際はにやけるお顔に気を付けて、一文一文丁寧にお読みください。By ヒトデナシ。)
『黒水SS By 火矢 八重様』・・・>>158
(トップレベルの作者様、火矢 八重様の執筆した黒水SS。
よく読んでくださる彼女でこそ書くことが出来る、レベルの高いSSですw
黒水SSは全ての読者様のモノ。皆様適当に妄想しちゃってくださいw
なお、もしも黒水SSを考えちゃった♪という神様がいるなら、
ぜひともこちらに投稿してくださればなと思いますw 私も読みたいですしねwww)
『花狩椿と銀色のいばら道』・・・>>168 >>169
(2500参照突破記念。花狩先生の少年時代の過去。
劣等感を胸に秘めた彼の前に現れた、ある人との出会いとは……?)
------------名誉、歴史--------------
・11月25日、『もしも俺が・・・・。』投稿。
・11月29日、100参照突破!! (ありがとうございます!!)
・12月02日、200参照突破!! (皆様の応援に感謝しております!!)
・12月06日、300参照突破!! (3は私の好きな数字です。とにかく感謝です!!)
・12月13日、400参照突破!! (嬉しい限りでございます。執筆ファイト!!)
・12月21日、500参照突破!! (500ですか!! 1000まで半分を切りました!!)
・12月24日、600参照突破!! (メリークリスマス!!)
・12月31日、700参照突破!! (2012年最後の日!!)
・01月05日、800参照突破!! (2013年、始まりました!!)
・02月12日、900参照突破!! (復活しました!! 皆様のためにも頑張ります!!)
・02月13日、1000参照突破!! (明日はバレンタインですか。皆様の応援に感謝!!)
・02月15日、1100参照突破!! (1000という大台を突破できてうれしいです!!)
・02月17日、1200参照突破!! (本編も10幕を突破。これからもバンバン書いていきますw)
・02月18日、1300参照突破!! (スリラーナーイト!! ……申し訳ない、深夜の悪乗りですw)
・02月21日、1400参照突破!! (もうすぐ1500!! 大感謝です!!)
・02月25日、1500参照突破!! (きたあああ!!! 1500参照ついに突破!!)
・02月27日、1600参照突破!! (おおぉぉ!! 応援に大変感謝です!!)
・03月01日、1700参照突破!! (ついに3月ですね!!)
・03月03日、1800参照突破!! (ありがとうございます!! ありがとうございます!!)
・03月06日、1900参照突破!! (もうすぐ2000ですね!! 頑張ります!!)
・03月09日、2000参照突破!! (2000参照突破しました!! 歓喜です!! 最高です!!)
・03月11日、2100参照突破!! (3000目指して頑張ります!!)
・03月11日、序章完結!! (始めの物語、無事に書き終えることが出来ました!! サンクス!!)
・03月18日、第2章、始まり!! (実はというと、サブタイトルに結構悩みましたwww)
・03月18日、2200参照突破!! (第2章も頑張ります!!)
・03月20日、2300参照突破!! (第2章、本格的にスタートです!!)
・03月26日、2400参照突破!! (もうすぐ2500ですね!! 頑張りますね!!)
・03月28日、2500参照突破!! (2500参照突破しました!! 3000目指して頑張ります!!)
・03月30日、2600参照突破!! (たくさんのオリキャラをありがとうございます!!)
・03月31日、2700参照突破!! (なんという快挙!! ありがとうございます!!)
・04月02日、2800参照突破!! (4月になりましたね!!)
・04月06日、2900参照突破!! (もうすぐ3000かぁ……。行けるといいなぁ。)
・04月14日、3000参照突破!! (うわぁぁああ!! 3000です!! 3000なんです!!!)
・05月01日、3100参照突破!! (長期休暇を頂きました!! 本日からまた執筆頑張ります!!)
・09月02日、4600参照突破!! (久々の執筆なので腕が鈍りまくりですねw)
・09月04日、4700参照突破!! (5000までもうすぐですね。頑張ります。)
・09月06日、4800参照突破!! (9月と言えば作者はもうすぐ誕生日とやらを迎えるわけですか。)
・09月09日、4900参照突破!! (もうすぐ5000ですね。頑張りますね。)
・09月12日、5000参照突破!! (5000です!! ありがとうございます。)
・09月14日、5100参照突破!! (私の誕生日です。ありがとうございます。)
・09月23日、5200参照突破!! (最近私の家族にPCを占拠される事が多くなりました。)
・11月18日、5300、5400参照突破!! (ここを建設して約一年になります。)
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.63 )
- 日時: 2013/01/06 00:45
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
こちらのコーナーは主な用語説明となっております。
作中に出てきた言葉や単語をこちらに乗せていきます。
後々追加していくこともありますので、よろしくお願いします。
------------------- 用語説明 -----------------------
“元地山中学校”・・・黒川達が入学している中学校。創立されて60年以上と古い歴史を持つ。
“能力”・・・人間の中に極たまにいる、特殊な力を持った人間。
例、黒川の『もしもの世界にいく力』。
“もしもの世界”・・・黒川がイメージする事により出現する実物の世界。
30分しか滞在できないが、思い描けばどこの世界にでも行ける。
“風紀委員会”・・・元地山中学の治安を守ると同時に、周囲の治安も管理している組織。
イエガー率いる実力者たちも多数所属している。
“エアブーツ”・・・黒川の発明品。一定時間宙に浮くことが出来る靴。
黒川は常時これを装備している。
“空気破壊(エアクラッシャー)”・・・超強力な空気を放出するバズーカ砲。
トラック程度なら粉々にする威力。
“DDD教団”・・・何かの目的ために動く謎の集団。化け物じみた者が多数いる。
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.64 )
- 日時: 2013/02/13 00:47
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
————第8幕 『もしも俺がアンドロイドの世界に行ったのなら……続編。』————
「パート1。」
黒川達がこの世界に来て15分が経とうとした頃————。
王宮では静かな時間が流れていた。門番のアンドロイドも機能を停止している。
侵入者の確認が出来た時だけ起動するように設定されているのだ。その数は約15機。
そんな静寂をぶち壊すかのごとく、少しずつ大きくなる車の轟音。
そしてその車は王宮の入口へと一直線に向かっていき、
「お目覚めの時間だぁぁッ!!!!」
轟音をまき散らす三人を乗せた車は王宮の扉を突き破り、ダイナミックな入場を成功させた……!!
「いや〜爽快爽快。ティアナちゃん、良い腕してんじゃないか。」
「えへへ〜。キリちゃん褒めて褒めて!!」
「よぉし!! よぉしよぉし、良い子だぞ〜ティアナちゃん。」
「……いや、褒められることではないがな。」
霧島がティアナの頭を撫でている姿を見て、黒川は苦笑してツッコミを入れる。
車の前方は少し凹み、扉は豪快に壊れてその辺に散らばっている。これはまた派手にやったな。
そして王宮の内部はと言うと、これまた眩しいの一言に尽きる。
全てが金で出来ているようだ。天井を見ると豪華なシャンデリアが吊り下がっている。
今いる場所は結構広く、ここで大勢でパーティが開けるほどだ。
所々に扉が見えるが、中央から前方に一直線に伸びる廊下がある。その向こう側が何やら怪しい。
一通り辺りを見渡したところで、黒川は未だに頭を撫でている霧島に視線を移す。
「霧島、どうやらこの廊下の先に何かありそうな————」
と、黒川が言葉を言いきる前に、辺りに警報が鳴り響く……。
そして外からも中からもガチャガチャという機械音が響き始まる。
どうやら、お目覚めのようだ……!!
「……おっ、やっと戦闘か? よっしゃ、やんぜッ!!」
「バカを言うな。ちょっと待て。」
手をポキポキと慣らし、意気込む霧島の首根っこを掴む。
「ええ!? なんでよ!? どしたのよ?」
霧島は不機嫌そうな顔をして黒川は見る。黒川は首を左右に振って、やれやれと言葉を漏らす。
「雑魚を相手にしている時間がない。後15分でケリをつけなければ私達の負けだ。
だから雑魚はここで退ける。ということで来い、霧島、ティアナ。」
黒川は霧島から手を放し、先ほどから気になっている一本道の廊下へと二人を誘導する。
霧島とティアナも黒川について行き、そして黒川は懐から『何か』を取り出す。
「どうやら、この廊下に繋がる道はここ一本のようだ。
————つまりここさえ塞げば、後ろからのアンドロイドの追走を防ぐことが出来るという事だ。」
黒川はその『何か』を自分の足元に置く。そしてカチッとスイッチを入れる。
するとその『何か』は緑の光を発し、そして、辺りに透明の結界を張り巡らせた。
ちなみに、今結界の外からは黒川の姿は見えておらず、目の前に見えない壁があるような感じのはずだ。
これでアンドロイドが出てきても、ここを通ることは出来ない。
強度もそう簡単に壊れるようには出来ていない。車が正面衝突しても難なく防ぐようにはしてある。
「わぁ〜。クロぽんすごぉい。何したのぉ?」
「……おい黒川、なんだこれ? またお前の不気味な発明品?」
「不気味は余計だ。……そうだ。」
霧島は苦笑して聞くと、黒川は澄ました顔で頷く。
この発明品の名は、『フェロンフィールド』。日本語風に言うならば、『人外の結界』。
人以外の物体を完全に遮断するという、黒川自信の一品。
つまり相手が人間であるならば全く使えないのだが、アンドロイドならば別だ。
さっきも言った通り、強度は相当固くしてある。簡単には潰せまい。
「さて、では奥に行くとしよう。急ぐぞ。」
「……なぁ、もしも俺達の標的が遮断したあの中にいたとしたらどうすんだ?」
「…………その時はその時だ。心配するな。ボスは最深部と昔から決まっている。」
黒川はとりあえず余計な事は考えず、駆け足で奥へと向かう。
それを追いかける様にティアナと、「そうだな。」と無理やり納得した霧島が後を追う。
2分ほど一本道の廊下を走ると、また広い場所に出た。
長い廊下で目がおかしくなったせいか、異常に部屋が広く感じる。まぁ確かに広いのだが。
そしてそれ以上の道はなく、どうやらここが最深部という事みたいだ。
「ふむ……思っていた以上に静かだな。」
黒川は辺りを見渡すが、アンドロイドは一体もいない。
黒川達の声と足音が響くだけで、それ以上の音はなかった。
“まさか……ここじゃない? しまった。時間ロスだったか。”
————そう思った黒川達であったが、
「あんれぇ? ティアナ・ホワイト以外にもお客さん?」
その少女の声に、ピタッと動きが止まる……。
その声の方向に視線を移すと、黒くどす黒いオーラの中から吐き出されるように出てきた『誰か』。
黒いローブを羽織り、何やらおぞましい雰囲気を漂わせている。とても少女の声とは思えない。
黒川と霧島は咄嗟にティアナの前に立ち、ティアナを守るようにする。
「……何者だ? 否、人間か?」
「あひゃひゃ、はじめましての一言も無し? 礼儀がなってなーい。」
「……もしかしたら会ったことがあるかもしれないだろう?」
質問を流されてもあくまで澄ました顔で、そして少し冗談交じりで会話を試みる黒川。
そんな黒川の対応に少女はクスッと笑い、「おもしろーい!!」と一言。そして、
「仕方ないなぁ。じゃあ自己紹介しちゃお。あたしは『ミスト・ランジェ』。
可愛くて美少女で男の子が皆虜になっちゃうような女の子だよぉ〜♪」
そう言いながら、黒いローブを自ら取り払った……。
現れたのは身長150cmほどの小柄な少女だった。
髪はピンクの短めの落ち着いた髪型をしており、白いドレスを着ている。
瞳の色は紫、顔つきも自称するだけあってかなり可愛らしい。
……それにしても、やけに正直だな。自らの名を簡単に名乗るなんて。
「さて、自己紹介の掴みはこれでバッチリかなぁ? では、お二人さんのお名前は?」
「俺は霧島勇————」
「バカか。正直に名乗る必要も無かろう。こいつが首謀者である可能性があるのだから。」
黒川は霧島の声を塞ぐように言う。99%の確率で彼女が首謀者であるのだから。
そう、彼女がティアナの友人である『ゼロ』を誘拐した可能性が高い。
ティアナの証言によれば、誘拐した謎の人物は黒いローブを着ていたらしい。
ほぼ犯人は彼女と言ってもいいだろう————。
「ええぇー、残念。ま、いっか。確認程度に聞きたかっただけだしねぇ。
ね? そうだよね? 黒川君と、霧島勇気君、だよね————?」
ミストの口から発せられた衝撃の真実が、私達を驚かせた。耳を疑う程に。
今確かに私達の名前を言い当てた。なぜだ……? なぜ私達の事を……?
「それはそうとぉー、ティアナちゃん、もしかしてこの子を取り返しにきたのー?」
そう言って指をパチンと鳴らすと、またもや闇から吐き出されるように何かが現れた。
闇が次第に晴れ、姿が現れると対照的に、ティアナの顔は次第に曇っていく……。
目の前に現れたのは、間違いない。彼女の大切な友達である、
「ゼロッ!!」
そう、『ゼロ』と呼ばれる大切な存在。ティアナは思わず名を叫んだ。
そのゼロは名前を呼ばれたにもかかわらず、何も応答せず、ただただ私達を見る。
その表情は、無感情の人形の様で、思わずティアナは手を胸に当て、後ずさりした。
「クロぽん、これってもしかしてぇ……。」
「ああ、十中八九操られていると見て良い。これで決まったな。
————首謀者は彼女だ。まさか女の子に手を出さなければならなくなるとはな。」
黒川は人差し指でミストを指さし、表情も真剣なものへと変わる。
霧島は後ろを振り返り、ティアナの近くに行く。胸を抑え、放心状態である彼女の肩を掴む。
それにハッとしたティアナは心配そうな目で霧島を見つめる。それに応える様にニコッと笑い、
「心配すんな。すぐ取り返して、ティアナちゃんの元に返してやるからよ。」
頭を撫でて、心配を取り除いてやる。そして、
「————行ってきます。」
静かにそう言い残し、霧島はティアナから離れ、ミストの元へ走っていく・・・!!
途中、大きく跳躍し、ミストの上空に飛び上がり、回転で勢いをつけていく。そして、
「————俺の惚れた女を……泣かせてんじゃねぇぞコラァ!!!」
少女相手にも容赦なく、霧島は渾身の回し蹴りを放とうとする……。
たとえ相手が少女と言えど、それ以上に霧島はティアナが傷つけられたことに憤怒していた。
ゆえに、手を抜く気は毛頭ない。全力で叩き潰す事には変わりない。が————
「クス……男の子って獣ねー。かっこいいけどぉ、ちょっとこわーい。」
ミストは一ミリも動くつもりはない。そんなことはお構いなしに回し蹴りをかます霧島。
しかし、霧島は回し蹴りを振り切る事もなく、その場から吹き飛ばされてしまう。
正確に言えば、さっきまでノロノロと動いていただけだったゼロが急に動き出し、
霧島をタックルで吹き飛ばし、ミストを守ったのであった……!!
「ちッ!! やっぱそうなんのかよッ!!」
霧島は吹き飛ばされた後、瞬時に態勢を整えて受け身を取り、予想通りと言った感じで話す。
ゼロはおぞましい雰囲気をかもし出し、敵と判断した霧島に一歩一歩ゆっくりと近づいていく。
操られてると分かった時点で、この『ゼロ』は敵だと感付いていた。
だから俺の相手はこいつで————
「————私の相手はお前と言うわけだ……!!」
ゼロが霧島に気を取られている間に、黒川は瞬時に接近する。
とりあえずミストを倒せば、ゼロは元に戻るはず。確証はないが。
黒川は右手を強く握り、拳を後ろにグッと引き、
「悪いが……寝てもらう!!」
思いっきり右ストレートを振りぬくッ!! が、
「クス……あたしがただのか弱い美少女かと思った? ざーんねん。
————今の時代はねぇ、肉食系女子の方がモテるんだよー?」
ミストはグッと身体を後ろに逸らし、黒川の拳は彼女の身体の上すれすれを通り過ぎる。
まるでリンボーダンスをしているかの様な反り具合。そしてそのまま地面に手を付き、
「えいッ!!」
逆立ち状態のまま、鋭い蹴りを瞬時に放つッ!!
黒川はそれを咄嗟に左に躱すが、攻撃の猛攻は止まらない……!!
「それそれそれそれぇーーーー!!!」
身体を柔軟に動かし、両足両手を上手く使って蹴りを連続に放つ……。
黒川は逆立ちのミストに戸惑いつつ、一つ一つを慎重に防御する。が、
“……ッ!! なんという重い攻撃……。これが少女の蹴りなのか……!?”
まるで一回一回ハンマーで殴られるかのように次々と黒川に重い蹴りを放つミスト。
その姿はまるで戦闘を楽しんでいるようだ。そして逆立ちしていることもあり、
白いワンピースはめくれ、彼女のはくピンクのパンツが堂々と見え、男の精神を揺さぶる。
全く、年頃の少女としてそれはどうなのか……。相手は年頃の男の子だと言うのに……。
そんなくだらない事を考えている暇はなく、ただ防戦一方に陥る黒川。
少女の蹴りは上からだけの攻撃ではなく、足を狙った攻撃も放つため、一瞬も気が抜けない。
とくに相手が逆立ちだという点も考えようだ。視線的にも相手しづらいのなんのその————。
“————!! ふむ、もったいないが、こういう時は————!!”
黒川はミストの蹴りの攻撃の隙を見計らって、身体を反らし、半回転させる。
手は地面につき、先ほどと顔と足の位置が逆になる。つまり、
「これでいつも通りだ。逆立ち以外はな————。」
そう、逆立ちの相手が戦いづらいなら、自らも逆立ちし、目線と戦い方を同じにすればいい。
常人ならまず無理な戦い方だが、黒川はもはや常人ではない。超人だ。
「ふざけてると骨折っちゃうよぉー!!」
ミストの蹴りが飛んでくるが、黒川はそれを同じく蹴りで上手く流し、そして、
「ふざけているかどうかは、これからわかるさ。」
黒川も負けじと身体を柔軟に動かして蹴りを放つッ!!
先ほどまでの防戦一方とは変わって、両者譲らない蹴りの応戦が繰り広げられる。
お互いの蹴りが交わるたびに鉄と鉄とが衝突するような激しい音が鳴り響く……!!
「あひゃ、うーん、いいッ!! 凄くいいよ黒川くーんッ!!! 素敵!!」
「そう褒めてくれるな。残念ながら私はもう好きな人がいるものでなッ!!」
そんな冗談交じりな事を言いつつ、二人は戦闘を楽しむように蹴りを放ち続ける————!!
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.65 )
- 日時: 2013/02/12 23:10
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート2。」
黒川とミストが戦闘を始めたと同時に、霧島とゼロも戦闘を始めた————。
目の前に立ちふさがるアンドロイドはティアナのお友達であり、大切な存在。
けれど今の奴はとてもそのような雰囲気には見えず、
ティアナであろうと襲い掛かってくるといった感じだ……。
ジャキンという音をたて、両手からキラリと光る鋭利な長剣を出す。
そしてゆっくりと、不気味に敵とみなした霧島に近づいていく。表情は相変わらず無表情だ。
「ゼロ、だったな。声が聞こえるか————?」
霧島のその言葉をかき消すように、ゼロは咆哮する……。
ピリピリと空気が震え、そして大きな咆哮と共にゼロは全速力で向かってくる。
両手の剣を頭上に振り上げ、霧島に向かって振り落す……!!
霧島はそれをサイドステップで右に躱す。振り下ろした剣は地面を割り、えぐる。
その隙の一瞬に、霧島は右手に力を込め、右ストレートを放つ……!!
ゼロはそれを後ろに身を引いて空を切らせ、身体を回転させて長身の剣を横に振り回す。
霧島は咄嗟に右足を後ろに蹴ってバックステップをして剣の範囲内から離れようとするが、
予想以上に剣のリーチが長く、腹部の部分にかすった程度の切り傷がついた。
一歩遅ければ、致命傷は免れなかっただろう……。
“……ッ!! 相性が悪いな……。圧倒的にリーチが足らねぇ……!!”
霧島の拳とゼロの長身の双剣。そのリーチは圧倒的というほど霧島が不利な状況下にあった。
霧島の勝ち筋としては、まずは相手の懐に飛び込む。
あの二つの長剣の攻撃を掻い潜り、そして肉弾戦に持ち込む。簡単な話だが難しい。
いくら剣といっても、戦いやすい間合いというものが存在する。
霧島が懐にさえ入ってしまえば、自慢の剣もその攻撃力が半減する。
————そしてありったけの攻撃をぶち込むッ!! 一瞬で勝負を決める!!
「わりぃが……手加減はできねぇ!! 壊しちまったらすまねぇなぁ!!」
霧島はゼロに一直線に向かっていく。ゼロはそれを迎え撃つように片手の剣を振り下ろす!!
霧島はそれをギリギリの間合いのところで急ストップして空を切らせ、空を切ったと同時に飛び込む。
ゼロはもう片手の長身の剣を今度は右から左に薙ぎ払う……!!
それも霧島は態勢を低くして、頭上スレスレを剣が通り過ぎていく。そして、懐に飛び込んだ。
“貰った……!! このまま勝負を————”
そう思ったのも束の間、なんとゼロは強引に身体をひねり、回転させる。
さっきと同じ、横に薙ぎ払う双剣を左右に広げた回転切りだ……!!
“あの態勢から……なんて奴だ!! これはッ……。”
まずいな、ただ純粋にそう思った。
今の霧島は完璧にゼロの間合いに踏み込んでおり、今さら引く事も叶わない。
完璧にこれは致命傷のダメージを受けることは間違いない状況だった……。
霧島は目を見開く。覚悟を決めた……。
————目の前の敵を……『本気で潰す』覚悟を……!!
“ヒートアップ……レベル————”
瞬間、霧島の中で何かが弾けた……。そして同時に、
ガキン、という金属が無理やり折られた様な音が鳴り響く……。
上空に二つの何かが舞い上がる。それはキラリと光る綺麗な刃。
破片は辺りに散らばり、刃は地上に突き刺さる。そして、
ゼロの剣を見てみると、どちらも刃を折られており、使い物にならないものになっていた……!!
「……わりぃな。自慢の剣、強引に折らせてもらったぜ。」
ゼロは自らの折られた剣を見ても、無表情。何も感じていない様子だった。
対する霧島は両拳からポタポタと血を流し、少し痛々しい表情であった。そして、
「————このまま終わらせてもらうぜ……。」
攻撃手段を失ったゼロには何もすることは出来ず、ただ霧島を見つめた。
その表情に何も感じず、何も感じ取れない。
霧島はまず、腹部に一発強力なパンチを浴びせる……!!
メキメキと鳴り響き、霧島の拳がゼロの腹部に深々とめり込んでいく。
「……ッ!!」
「もう一度聞くぞ。声が聞こえるかぁ、ああぁ!?」
霧島は片膝をついたゼロに今度は思いっきり上から拳骨をかます。
ゼロの頭は勢いよく地面に叩きつけられ、思わず苦痛の声を漏らす。
どうやら、痛覚はちゃんとあるらしい。だがな————
「耳ちゃんと働いてんのかよッ、てめぇは!!」
霧島は思いっきりゼロの顔面を踏みつける。メリメリと地面に埋もれる音が聞こえる。
“この男は……さっきから何を言っているのだろう?”
肯定。ゼロはさっきから聞こえている。この男の声が……。
耳がちゃんと機能しているかどうか尋ねてきた。肯定。問題なく機能している。
だが、否定。残念ながら、我はこの男の応答をすることが出来ない。
システムに何かの不都合があり、この応答をすることも、戦闘を止めることも叶わない。
……否定、我はなぜ戦闘を『止める』必要があるのだ?
今の我にはここでこの男を倒すことが命令。……のはずだ。
疑問。なぜ我は躊躇している? なぜ我はそんな感情を働かせている?
何が我をここまでにし、何が我を————
「もう一度だけ聞いてやるッ、ゼロ!!」
男は声を荒げて言う。我に何を問おうというのだ……?
「てめぇは、ティアナの声が聞こえないのかッ!!!!」
そこで、一瞬思考が停止した……。
ティアナ様の……声————?
ゼロは顔を上げる。先ほどまでよりも聴覚に働きを強くする。
……誰かが、我を呼んでいる。
何度も何度も。我の名を呼ぶ声がする。懐かしい声。温かい声。
我は顔を挙げて、今度は視力に働きかける。……見えた。
————涙を流し、一心に我の名を呼ぶティアナ様の姿が……。
……肯定。そうだ、我の使える主はティアナ様ではないか。
この命令は……一体誰の命令だ?
肯定。これは我が、否定、ティアナ様が望む命令ではない……。
我はティアナ様に仕える者ではないか……!!
「ティ…………あ……ナサ……マ……!!」
渾身の声を振り絞って、ゼロは主人の声を叫ぶ。
ボロボロになり、フルフルと身体を震わせ、身体を起こそうとする。
その声を聞いて、霧島はフッと笑い、ティアナの顔も笑顔に変わる。
「や……やった……んだよね? キリちゃん?」
「……ああ。手間取らせやがって、全く。」
ティアナの言葉に応えつつ、霧島はため息をついて「やれやれ。」という。
どっかの誰かさんの真似事だという事は秘密である。
「あんれー? 自力で元に戻っちゃったのぉ? つまんなーい。」
そんな落ち着いた雰囲気をぶち壊すように、黒川と戦っていたはずのミストが高い位置から見下ろす。
その黒川は、どうやら高い位置に移動したミストに困った表情を浮かべている。
「すまねぇな黒川。今からそっちに加入するわ。」
「いいのぉ? 男の子二人で美少女を虐めるなんて、大神さんみたいー。」
「……ふざけたことを言っていないで降りてくるがいい。」
黒川が靴に手をかける。どうやらエアブーツにスイッチを入れたようだ。
そんな黒川に目もくれず、ミストは近くにあった鋭く尖った大きな槍のような鉄棒を握る。
「それにしても、いいのぉ?」
ワザとらしく聞いてくるミスト。霧島は首をかしげるが、
黒川は咄嗟に気が付く……。嫌な予感しかしない事に……!!
「霧島ぁぁ!! ティアナを————」
「ティアナ、がら空きなんだけど♪」
黒川の叫びよりも先に、ミストは思いっきりその鉄棒をブン投げた……。
軌道は一直線に標的、ティアナの元へ……!!
「……!! しま————」
霧島は走り出す。全力で、ただひたすらに。
だが非情にも、鉄棒の方が早い!! 間に合わない!!
ティアナはただ茫然と向かってくる鉄棒を見ている。一歩も動かない。否、恐怖で動けない。
ティアナはふと目を閉じた……。ティアナの目から涙が零れ落ちた気がした————。
「ティアナぁぁぁッッーーーーー!!!!!!」
霧島は手を伸ばす。遥か届かぬ距離から、自分が何も出来ない事に無力さを感じながら……。
自分のせいだ、霧島は後悔した。もっとティアナちゃんの傍にいれば————
————すまねぇ、ティアナちゃん……。
そして、直撃した。鈍い音と共に、血が飛び散った。
しばしの静寂。時間が止まったようだった……。
ティアナに狙いを定めた鉄棒は、身体をいとも簡単に貫いて見せた。
貫いたのは…………ティアナではなかったが……。
「…………あ……。」
ティアナが目を開けると、そこには影が出来ていた。
ティアナの前に誰かが立ちふさがるように立っていた。そして、
鉄棒は、ティアナの目の前で止まっていた。ゼロの身体をクッションにして……。
「ゼ…………ロ……?」
ティアナは自分の眼前の前に立ち、血を流すその者の名を呼ぶ。
先ほどまで霧島の近くにいたはずのゼロが、そこに確かにいた。
霧島よりも早く、ゼロは動き、全速力でティアナの盾になったのだった……。
「うッ…………ティアナ様……ご無事で何よりでございます……。」
ゼロはカクカクとゆっくり動き、顔だけをティアナの方に向ける。
ティアナは首を振る、小さく「いや……。」という言葉が漏れる。
ゼロはニコッと笑う。さっきまで無表情であったのが嘘であったように……。
「————ティアナ様…………どうか……生き……て……下さい……。」
ティアナ様、我は少し、昔の事を思い出しました。
小さな頃のティアナ様や、研究している時のティアナ様、
喜んでいるティアナ様、遊んでいる時のティアナ様、そして……
貴方と初めて会った頃の事を————
“我は、貴方に仕えられたことを……幸せに思います…………。”
言葉にできたかどうかは分からない。伝えられたかどうかは分からない。けれど、
けれど……我は……ゼロは悔いがないのでございます————。
「いやああぁぁぁぁぁッッーーーーーーー!!!!!」
頭を抱え、泣き叫ぶように少女は泣いた。たった一人の友達を失い、別れ。
その声は響き渡り、広場に縦横無尽に飛び交う。悲しみと一緒に。
そして彼女は、主人を守り、やり遂げた様に笑顔のゼロを抱きしめ泣き続けた……。
「……うーん、良い悲鳴。これだけでオカズになりそうぉ。あひゃひゃ。」
ミストは高らかに笑う。誰かの死なんてものを気にせず、一人だけ陽気に……。
霧島はゆっくりと黒川に近づいていく。その表情は、言わずもがな憤怒している。
「……おい、黒川。俺はアイツを殴るだけじゃあ収まらねぇ。ボコボコにしない事には————」
「霧島」
瞬間、霧島は身体を震わせる。ただ名前を呼ばれただけなのに、まるで殺気を向けられたようだった。
霧島は言葉を止め、黒川は霧島の前を手で塞ぎ、そして、
「……貴様は彼女を守れ。」
それだけを言って、黒川は一歩一歩、ミストの方へと歩き出す……。
その姿は……さっきまでの黒川じゃない。
声に力がこもっており、雰囲気も冷静なモノとは正反対。
“何年ぶりだ……? アイツの言動が変わるぐらいブチギレたのは……。”
霧島は知っている。黒川が『貴様』と使うときは、決まってキレた時だ。
そしてもう一つ、ブチギレた時の黒川程、邪魔をしない事に越したことはない。
今の奴は……本気だ。あの状態に入ってしまえば————
平気で『殺す事』さえ躊躇しない……————!!
「ねぇー黒川くーん。お仲間に頼らなくていいのぉ? あたしは構わないけど?」
ミストが高い位置から見下ろすように語りかけてくるが、黒川は一向に口を開かない。
ただスタスタとミストに近づき、そしてある程度近づくと歩みを止めた。
「あんれー? 無視? あたしの事無視するなんて————」
「ミスト・ランジェ。貴様に一つだけ問う。」
ミストの声を遮り、黒川は懐から一つ、バトンのようなものを取り出す。
リレーの時に使うような大きさで、手にちょうど収まるほどの大きさだった……。
それをグッと握りしめ、黒川は強く、その場が凍りつくような声で言い放つ……!!
「————俺はこれから貴様を『殺す』事になるが……遺言はないな?」
そして閃光の如くまばゆい光がバトンから放たれ、それが綺麗な剣へと姿を変えた————!!
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.66 )
- 日時: 2013/02/12 23:13
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
黒川は今まで、彼自身の知る限りでここまで感情的になったことは数えるほどしかないだろう。
黒川は元々冷静な男であったし、感情のコントロールも得意な方であった。
ゆえに簡単な事では怒らないし、大抵の事は何もなく流す。
頭が回る事もあり、常に余裕があるかの如く冷静であった。
彼の言動や行動はいつでも心に余裕があるように感じる。言動は特に、だ。
普通の人間でもあまりすることがない、あのような固い喋り方は、
別にキャラ付けとか、作っているわけではないのだ。
ただ、彼は気づけばこのような話し方に慣れていて、いつの間にかこうなった。
自分に嘘を重ねれば、それが気づけば自分になるように、
別に嘘を重ねているつもりはないのに、黒川はこのような男になった。
そんな彼、否、人間という生物は、本当に感情が解き放たれた時だけ、本当の自分が現れる。
それが別人だとしても……だ————。
「————さっきも聞いたが、もう一度だけ聞こう。貴様は人間か?」
黒川はバトンから伸びる光が集束された剣を片手に、吐き捨てる様に睨んで言った。
ミストは目の前の黒川の氷のような表情を見て、クスッと笑った。
「はいはーい。あたしはねぇー、人間といいたいところだけどぉ、
……ちょっと違うかなぁ? 人間を超越した存在、って奴? あひゃ。」
ウインクするように微笑みかけるミストを無視して、黒川は「そうか。」とだけポツリと言った。
そして黒川の靴から吹き荒れる様に空気が漏れ出る。次第に黒川の足が地面から離れる。
バトンを握りしめ、黒川は冷たい眼差しでミストを睨み付け、口を開く……。
「————だったら安心だ。貴様を容赦なく切り捨てられるからなッ……!!」
黒川は右足で地面を蹴りあげる。それと同時に空気が強く放出され、空中へと高く跳躍する。
空中を蹴り、空気が吹き出すような音を何度も鳴らし、自在に飛び回りながら、
高い位置にいるミストへと光を放つバトンを片手に近づいていく……。
このバトン、これも黒川の発明品の一つだ。
名前は、『シャイニングブレイド』。対人外兵器として作られた、いわば『対バケモノ』用の武器。
バトンの中で溜めている光エネルギーを凝縮させ、固体化させた武器。
あの『レーザー』と呼ばれるものを固体化したと思うのが簡単だろう。
多大な熱を帯びており、切れ味は鉄であろうお構いなしに真っ二つ。
焼き切るというのが正しい表現で、人間もチーズの如く簡単に溶かす。
つまり、本当の意味で『バケモノ』用の剣であるのだ……!!
使用可能時間は、たった5分。多大なエネルギーを使うため、長くはもたない。だが、
「5分あれば、消し炭にするのは容易だッ……!!!」
そう言いながら、黒川はシャイニングブレイドを振り上げ、ミストにめがけて振り下ろす。
ミストは咄嗟にその場を離れ、ジジジという熱が発散する音と共に、
光の残像を生み出したその剣は、ミストを捉えることは出来ずに空を切った。
その代わりに近くにあった鉄の柱はシャイニングブレイドに触れて、
触れた部分だけが跡形もなく消え去っていた……。
「ひゃあー、なにあれ怖—い。」
ミストは身体をクルリと回転させ、片膝をついて地上に綺麗に着地する。
黒川はエアブーツで空中を蹴り、今度は地上に降りたミストに向けて急降下する。
ミストは黒川の振り下ろす剣を横に飛んで躱し、
流れるような動きで黒川の後頭部に向けて左足で回し蹴りを放つ……!!
黒川はそれを見ることなく態勢を低くし、ミストの蹴りは頭上を過ぎていく。
その隙を逃さず、黒川は横に薙ぎ払う様に剣を振るう。
ミストは身体を捻り、柔軟に身体を動かし、もう片方の右足で黒川の剣を持つ腕を蹴りで止める。
シャイニングブレイドはミストの首元でピタッと止まる。蹴りを入れて止めなければ斬られていただろう。
少しでもシャイニングブレイドの刃に触れれば焼切られる。何よりも……
“怖いなぁ。迷いが全くないし、さっきより動きが格段に良くなってるしー……。”
ミストは直感で感じていた。たったこれだけであったが、ミストが感じるのには充分であった。
純粋な殺気。溢れる怒り。目の前の黒川は獣同然の如く……。
そして何より、ミスト自身にとっては相性が悪い。触れるとそれだけで致命傷を与える剣。
格闘を得意とするミストにとっては分が悪すぎる相手というわけだ。
「おい、そんな蹴りで止めたつもりか?」
ふと黒川がそんなことを言った瞬間、ミストの蹴りが徐々に押し戻されていく。
黒川の腕の力がどんどん強くなり、ミストの首元に熱を帯びた剣が近づいていく。
「あひゃ、どうやら引き時かなぁ? 分も悪いしー……。」
ミストは純粋に感想を述べた。そして、
押し戻されつつある蹴りを咄嗟に引き、黒川の薙ぎ払いを後ろに飛んで瞬時に躱す。
距離を置き、そしてミストはクスッと微笑を浮かべ、
「今日のところは帰るねぇー。まったねぇ、黒川君、霧島君っ。」
「……逃がすとでも?」
低い声で、威圧感を感じさせる声でミストに近づきつつ話す。
一心に向かって来る黒川に目もくれず、ミストはパチンと指を鳴らすと、
闇があふれ出る様に地上から闇が取り巻くミストよりも二回り大きい『ねじれ』が姿を現す……。
まるでブラックホールのようで、触れれば吸い込まれそうな勢いだ。
そして一度だけこちらを見てクスッと笑うと、ミストは闇のねじれの中に飛び込んでいった。
黒川はその闇のねじれごと、シャイニングブレイドを振り下ろし、斬りこむ。
が、それはミストの身体は煙のように消え、残っていたのは気分の悪い黒い闇の煙だけであった。
しだいにそれも晴れていき、結局跡形もなくミストはどこかへと消えていった……。
「…………逃がしたか。」
黒川はふとため息をついた。そしてゆっくりとシャイニングブレイドの機能を停止させる。
停止したシャイニングブレイドはゆっくりと光を失い、ただのバトンへと戻る。
どんな手品を使ったかは知らないが、ミストはもうこの周辺にはいないようだった。
取り逃がしたことに対して、黒川は少しの苛立ちを覚える。
“…………といっても、もう終わった事だがな。”
今いない相手の事に腹を立てても仕方がないことは黒川も知っている。
そして一度目を閉じ、心を落ち着かせ、いつもの冷静な自分を取り戻していく。
「おい、無事か黒川?」
後ろから霧島が肩に手を置いて聞いてくる。
霧島が先ほどの戦闘で手から流していた赤い液体はすでに固まっていた。
対する黒川は怪我こそ負っていないが、精神的にきたものはあったのは確かだが……。
「……私は無事だ。それよりも————」
と言って、黒川はティアナの方に視線を向ける。
ティアナは今も、涙を流していた。ゼロを抱えたまま、抱きしめたまま。
ゼロの表情は柔らかいものであった。まるで任務を果たして後悔がない、といった表情だ。
彼女の唯一の支えだった存在。それを破壊した張本人を捕まえられなかったのは失態だったが……。
「行ってやれ、霧島。もう時間もないからな。」
黒川はその場に座り込んで言った。その言葉の意味はよく分かっていた。
タイムリミット。つまり別れが近いという事だ……。
黒川なりの配慮のつもりだったのだろう。いつ会う事が出来るのかも分からないのだから。
霧島はそっと黒川の傍を離れ、ティアナの方へと歩み寄る。
何を声かけていいのかは分からない。今のティアナちゃんには何も言わない方がいいかもしれない。
けれど、霧島はたった一言だけでも言いたかった。
ティアナのために、自分のために……。
「————ティアナちゃん」
霧島は優しく声をかけた。ティアナの背中から見下ろすようにして。
彼女の背中が、小さく見えた。あれだけ大人びていた彼女が。
彼女は霧島に視線を向ける。その目に溜まる涙は痛々しかった。
「ここで立ち止まってちゃダメだ。前に進むんだ。」
霧島はティアナに語りかける。彼女は驚いた表情を浮かべていたが、構わず霧島は言葉を紡いでいく。
「ゼロは命をかけてティアナちゃんを守って傷を負った。それを無駄にしちゃダメだ。
ゼロは最後まで君を心配していた。生きろって言ったんだ。
ゼロだって願っているはずだ。君が元気に、今まで通りに生きてくれる事をさ。それに————」
そこまで言って、霧島はふとしゃがみ込む。そしてティアナと目線を同じにし、手を差し伸べる。
ティアナの瞳が見開く。その目に映るのは優しい霧島の表情。
そして霧島の指先がそっとティアナに触れる。流れ出る涙を拭きとった。
「————俺だって、ティアナちゃんの泣き顔を見たくないからさ。」
霧島は笑顔で言った。その場を和ますような温かい笑顔。
後ろから黒川が鼻で笑ったのが聞こえた。そちらを見ることはなかったが。
そしてティアナにとって、それは救いの言葉。心が少しずつ安らいでいく。
ゼロに対する感謝を、忘れてはいけない。
ちゃんと前を見て、行かなきゃ————。
「……わりぃ。時間のようだ。」
ティアナが言葉を紡ぐ前に、目の前にいた霧島はふとそんなことを呟いた。
少しずつ光を放ち、消えていく身体。足から上半身にかけて少しずつ消えていく……。
「また……会えるかな?」
ティアナはふと聞いてみた。その顔はさっきとは違って明るいものになっていた。
消える霧島に戸惑いを隠せないのも事実だが、今はそれよりも聞きたかった事……。
「そんなこと聞くか?」
霧島は悪戯っぽい表情で言った。その後の返事は……聞かなくても分かる。
「————会えるさ。絶対な。」
光は霧島と黒川を包み、そして飛び散るように消えていく。
ティアナの眼前には、光り輝く雪のように降り注ぐ王宮。
「……会えるよね。きっと。」
ティアナは微笑んで、独り言を呟いた————。
黒川が帰ってきた時、霧島は何も言わずに体育座りをしていた。
きっと相当ショックだったのだろう。ああは言っても、いつ会えるのかは分からないのだから。
霧島があそこまで惚れ込んだ女性。いづれはまた連れて行ってやりたいと思うが……
「なぁー黒川ぁ。もう一回行こうぜ!! な、な?」
霧島は黒川の肩をがっしり掴んで揺らす。無理難題を言うんじゃない。
もうしばらくは行けない。少なくとも24時間は。
だから、黒川は苦笑するしかなかったわけだが————
「あのなぁ霧島、幾らなんでもそれは————」
そして、思考が止まる。同時に言葉も止まる。
黒川はある一点を見つめる。霧島はその表情を見て首を傾げ、振り返る。
光の扉。それが開かれ、そして人影が現れる……。
まるで光を纏ったようにして現れたのは————
「……えへへ、また会えたねキリちゃん、クロぽん!!」
そう、ティアナの姿が確かにそこにあった……。
向こうの世界で生きるはずの彼女がここにいる。一体なぜだろうか?
そもそもどうやって来たのか? なぜ来れたのか?
……そんな黒川の疑問など知る由もなく、霧島はティアナに飛びつく。
「ティアナちゃぁぁーーーん!!!!」
「キリちゃん…………苦しいぃよう……。」
ギュッと抱きしめられて、パタパタと手を振って苦しいのをアピールする。
そんな姿を見ていると、なんだか真剣に考察している自分が馬鹿らしくなる。
“今は……再会を喜ぶとするか————。”
黒川は微笑して、幸せそうな二人のその様子を見守った————。
“キリちゃん、ティアナ、もう一度ゼロを治す様に努力する。そしていつか治してみせるよ。”
“そうかぁ。……よし、俺も応援するぜ!!”
“うん!! ……あのねキリちゃん、あの時に言えなかった事を言わせて?”
“…………? なんだい、ティアナちゃん————?”
“————ありがとう。キリちゃん……。”
————————第8幕 完————————
- Re: もしも俺が・・・・。『アンドロイド編 終局』 ( No.67 )
- 日時: 2013/01/14 18:28
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: qgJatE7N)
エンダァァァァァァァァァ!!
ティアナ編完結ぅぅぅぅぅぅぅ!! おめでとう!!
黒川君がぶちきれて、なおかつシャイなんとか持ってたらそりゃ迫力あるよなあ……と思ってみたり(←そこなのか
ティアナちゃんのけなげさや、ゼロの底を尽きない忠誠心と親愛が深く掘り下げられたリメイク版は、凄く感動しました。あとティアナを守るために瞬殺されたゼロは切ない……(涙
ティアナちゃんとゼロが、ラブホ(ゴホンゴホン ……について語るシーン(?)が待ち遠しいです。
続きを楽しみにしてます! 更新、お疲れの出ませぬようw
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