二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ
- 日時: 2016/12/06 01:24
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: ZZuF3m5i)
【 目次 】 >>1
(11/17 更新)
【 他作品紹介 】 >>533
——その短い時の流れは、
けれど確かに、そこに存在していたもの。
トワ
——あの軌跡を、永遠の記憶に変えて。
あの空に捧げる、これは一つの物語。
【 お知らせ 】
——というわけでこちらでは初めまして、『二次小説(紙ほか) (旧)』で活動しておりました元Chess、
現在 漆千音 の名で小説を書いています。
(紙ほか)が『旧』になったことを境に、この小説を(映像)に移転いたしました。
タイトル通り、これはドラクエⅨの二次小説です。
オリジナルっ気満載です。ご注意をば。
どこか王道で、どこか型破りで。不思議な設定の物語を目指しています。
——コメント大歓迎です。
URL:Twitterアカウント。pixiv小説と兼用。
更新速度は不定期。場合によっては月単位。
【 ヒストリー 】
2010
8/30 更新開始
11/15 (旧)にて十露盤さん(当時MILKターボさん)、初コメありがとうございます((←
12/14 『 ドラゴンクエスト_Original_ 漆黒の姫騎士』更新開始
2011
1/23 パソコン変更、一時的にトリップ変更
3/25 (旧)にてサイドストーリー【 聖騎士 】
5/23 トリップを元に戻す
5/25 調子に乗って『小説図書館』に登録する
12/8 改名 chess→漆千音
2012
2/10 (旧)にてサイドストーリー【 夢 】
8/11 (旧)にてteximaさん初コメありがとうです((←
8/30 小説大会2012夏・二次小説銀賞・サイドストーリー【 記憶 】
9/26 (旧)にてフレアさん初コメありがとうなのです((←
9/29 (旧)にて参照10000突破に転がって喜びを表現する
9/30 呪文一覧編集
10/1 (旧)にてサイドストーリー【 僧侶 】
10/7 スペース&ドットが再び全角で表示されるようになったぜ!! いえい←
10/8 (旧)にてサブサブタイトル変更。字数制限の影響でサブタイトルは省きましたorz
12/8 十露盤さんのお父上HPB。改名してから一周年。
「・・・」→「…」に変更。
12/9 (旧)にてレヴェリーさん初コメありがたや((←
2013
1/14 (映像)への移転開始。
1/19 (旧)の参照20000突破に咳をしながら万歳する。サイストはのちに。
3/4 ようやく(映像)側で初コメントを頂けました((感無量
スライム会長+さん、ありがとうございます!!
4/3 移転終了、長かった。
4/4 架月さん初コメに感謝です!
4/7 移転前からご覧くださいました詩さん、初コメありがとうございます!
4/21 Budgerigarさん、じじじ人生初コメああありがとととうござざざ((だから落ち着けbyセリアス
4/22 みちなり君って誰やねん。
9/4 何かの間違いじゃないのか。2013年夏小説大会金賞受賞!!
皆さんゴメンナサイ((ぇ
そして朝霧さん、ユウさん、初コメありがとうございます…!
11/16 イラスト投稿掲示板6号館にマルヴィナ&キルガのイメージ画像投稿。
11/17 続けてセリアス&シェナのイメージ画像投稿。
11/29 更にチェルス&マイレナのイメージ画像投稿。
12/6 別スレッドドラクエ小説更新開始。
12/8 特別版サイドストーリー【 記念日 】。
あと参照10000突破ァァァァァ!!
2014
5/26 参照20000こえていた。驚きすぎて飛んでった。帰ってきた。←
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- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.385 )
- 日時: 2013/06/06 21:19
- 名前: 詩 (ID: LU1dyaTr)
お久しぶりですー
何だかしばらく見ないうちに、チェルスが恋……あれ?恋だと!?((((;゜Д゜))))
昔のルィシア、しっかりと(天然)姉さんにツッコミ入れれてて微笑ましいですなぁー
性格も帝国に行く前の事だから柔らかいし、可愛いですね彼女!!(`・ω・´)
後、セリアス君落ち着いて(笑)
それでは(ノ`・ω・)ノ
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.386 )
- 日時: 2013/06/08 23:43
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 9ikOhcXm)
>>385
お久しぶりですー((*´ω`
まぁ、本当のことを言えば、恋…とまではいっていないんですがね、
何かしらのそれに類する感情があったわけなんですね((しみじみ((だからしみじみすんなbyマルヴィナ
ルィシアは本当は結構周りに気遣いのできる女の子だったわけですよ
帝国で生きていくためには本当に大変な思いをしたんだろうなぁ((しみj((殴byセリアス
セリアス章はぶっとびます。
普段はあんまりギャグ書かないからちょっと不安だけれど←
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.387 )
- 日時: 2013/06/09 22:19
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 9ikOhcXm)
…はい、そういうわけでして。
よーやくシェナが正常運転し始めたところで俺ら四人はそろって長老の間へ。
うっはぁ、俺あんまりここ来たことないんだよな。てか、上級天使か守護天使未満は
大抵天使界の一階で暮らすからなー。別に三階以上と違って来ちゃいけないわけじゃないんだけど、
行ったところで周りみんな上級天使どーん、って状況だ。
だから俺、ある意味ここに来ると、嬉しさ半分、緊張半分なんだよな。
「マルヴィナ、あの二人はどうしたんだ?」
「先に箱舟に乗っているって」
あ、そう。早いことで。
「うー…なんだか、私、すっごい場違いな気がするんだけど…」シェナが少しだけ肩をすくめて
顔をあんまり動かさずに辺りを見渡して言った。同感。
「…同感?」
「俺もあんまここに来たことないんだ」
「え? …天使なのに?」
ま、普通そう思うわな。簡単にさっきの内容をシェナに伝えた。…キルガが。
いや、俺が説明なんて真似できるはずがないだろ。笑。
とりあえず、オムイ様に会って、横にいる天使に挨拶して、果実を受け取って。ちなみに俺が三個、
マルヴィナとシェナが二個ずつ、キルガはオムイ様の支え役になっている…こういうことなんて言うんだっけ?
…まぁともかく、それから二階から外に出て。やっほうまた三階に上がれるー!
なんて言うか俺、冗談抜きで超幸せな奴なんじゃないか。
マルヴィナが天使界で剣の達人、キルガが史上最少年の守護天使承認者(ちょっと頭良さそうな
言い方してやった)、シェナが多分初めて天使界に来た人間(…あれ、竜族って人間だっけ?)、
そして俺、初めて三階以上に上った守護天使候補。
…何か俺大したことないな。よくよく考えると。
「さ、さすが神の創り給うた舟じゃ…!」
天の箱舟に入ろうとした瞬間にオムイ様が叫ぶもんだから驚いた。さっきまでの心配そうな様子はどこ行った!?
「女神の果実と同じ黄金の光に包まれておる!」
まぁ、元気になったのならよかった。マルヴィナがほっとしてるし、キルガも笑ってるし。
…あ、キルガ、ようやく笑えるようになったのか。こっちもよかった。
…なんか何とも言えない表情でマイレナがオムイ様をまじまじ見てる。
チェルス以外、始めから箱舟に乗っていた三人そろって『誰さん?』的表情。
「ね、ね、このおじーちゃんダレ?」サンディぃぃぃぃ!! おじーちゃんゆーなおじーちゃんて!!
「イヤ、ウチに言われても」当たり前だ。
「おお!!」オムイ様、ハデピンクを見るいなや「セリアスあとで吹っ飛ばすカラ」無理だろ。
…凄い勢いでそっちに走る…って、マジでさっきまでの様子どこ行った!!?
「あなたは天の箱舟のキャンペーンガールの方ですな!」イヤ企業か!
「はぁ!? キャンギャルじゃないし! …あ、でもそれもいーかも?」その言葉遣いやめろぉぉ!!
…やばい、心の中で叫びすぎて眩暈が…気分的な…。
「あの、おっちゃん誰さん?」マイレナぁぁぁ!! ——うがふ、心の眩暈が…。
「おっと、失礼致しました。儂は天使界の長老オムイ。以後、お見知りおきくださいませ」
あー長老さんか、あー…とおんなじことを繰り返してから固まるマイレナ。
「トップ!!?」
トップです。
「おじーちゃんなのに!?」おじーちゃんだからだよ!! ってかつられておじーちゃんって言っちまった!!
スンマセンオムイ様…てか、いやマジで、そろそろ疲れてきた…。
「セリアス、さっきから何そわそわしてんの?」…いや別に、そういうわけでは。
「えーと。はい。ウチはマイレナ。チェスのことは?」
「もう既に会った」と、チェルス。
「そっか、チェルスの戦友です。歳は秘密」訊いてない訊いてない。
「天の箱舟運転士アギロと申します。そこのマルヴィナとは同じクサイ飯を食った仲でしてね」
「どういう紹介文だ、それ…」マルヴィナが呆れて肩をすくめた。
「それはそれはご丁寧に」…丁寧か? 今の。「…さて、運転士殿。貴方にお願いがあります」
その言葉で、微妙な意味で和やかすぎた空気がちょっと変わった。
なんつーか、緊張感がでたっつーか。さすが長老!
「…かつて神はこのように命じられました」
女神の果実が戻ってきたこと、言い伝えに従い神の国へ連れて行ってほしいことをオムイ様が言ったら、
ちょっと黙ってからアギロが真面目な声を出した。
「女神の果実が実ったならば、この天の箱舟に天使を乗せ、神の国へ連れて来いと…
つまり今こそ神の国へ向かう時なのでしょう」
チェルスが顔を逸らしたところが見えた。…そっか、そういや、マルヴィナが言ってたな。
…ようは神さまは、女神の果実が実ったら人間は滅ぼさないけど、先に神さまが女神さまを元の姿に戻せたら、
人間を滅ぼそうとするって…その役目が、チェルスたちだったんだっけ。
…大丈夫かな? チェルス、このまま神さまのとこ行っても。
「…何だ」あ、気付かれた。…まぁ、隠すこともないか。
「大丈夫すか? …神の国へ行っても」
「…」チェルスはその意味を少しだけ考えてから、ふ、と表情を緩めた。
「…大丈夫だ」
…正直、びっくりした。まさかチェルスが少しでも笑うだなんて想像していなかったから。
いや、ほんとに、余計なお世話だ、って超仏頂面で言われることを予想してたからさ、
思わずこっちが固まっちまった。
「ようしそれじゃあひとっ走り行きますぜ!」
「やっほーい!」
…どこまでも陽気に。
神の国へ、出発進行!
「あ、アギロ、汽笛鳴らしてよ汽笛」
「サンセー! テンチョー、景気よく一発!」
「遠足じゃねえんだぞお前らァ!」
…根本的に似てるな、マイレナとハデピン「ふぎゃ」蹴られた。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.388 )
- 日時: 2013/06/18 23:42
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 9ikOhcXm)
一気にはしゃぎ過ぎたせいか、やっぱりオムイ様はしばらくして一両目の席に座って
外を見る格好のままうとうとして結局寝ちゃったみたいだ。やっぱ、大分ご高齢だもんな。
ゆっくり休んでもらおうって、俺たちは二両目に行くことにした。
アギロの話だと、神の国へは箱舟の速度を以てしてもかなりの時間がかかるらしい。
普通なら半日もかからないらしいんだが、やっぱ無茶な扱いを受けた(三年前の初めの襲撃と
最近の闇竜によるもの)影響でガタがきて、十分な速さが出せないんだとか。
一日、とまではいかないが、睡眠は一応とっとけ、って言われて、喜んで了解した。
眠くなるくらい静かなはずなのに、全然寝られない。
多分、今俺、めっちゃそわそわしてる。間違いなく。だって俺が寝られないんだぞ。
…まぁ、ちょいと前も、似たようなことがあった気がするけど。そういう意味じゃなくて。
もう、うずうずてかてか、さっきはシェナに遠足前の子供か、ってつっこまれたけど、
それはマイレナとハデ——サンディに言ってくれ。
…あ。マルヴィナが立った。…言い忘れてたけど、二両目の前の方にマルヴィナ、シェナが寝ている。
俺らは同じ車両の後ろの方だ。サンディが何故か三両目に入れてくれなかったからな。
いや、それにしても、何でマルヴィナ、こんな夜更けに——やっぱまだ寝られないのかなぁ。
意外と神経細いのか? …言ったらぶっ飛ばされそうだな。
あー、一両目に行っちまった。凄い静かな足取りだったし、シェナはもう寝てんのか。ま、当たり前——
「…起きているだろ。セリアス」
あ、ここにもいたか寝つき悪し。
「…何でわかった?」
「いびきがない」待て、そんなかきまくってたか。俺。
「何だよ。寝ないのか?」
「こっちの言葉だ。…まぁ、想像はついているから何も言わないが」
「まな」頷いて鼻の下をこする。「で、どうかしたのか?」
「…」キルガは仰向けになったまま、一瞬黙った。…一瞬じゃなかった。大分黙った。
じらしちゃいけないんだよな、こういう時。じらすと、内容によっちゃ「やっぱりいい」とか言い出すから。
これはそういうパターンだろう。根拠? …長年の付き合いからの勘。
もうほんのちょっと待ってから、キルガはようやく声を出す。
「状況が落ち着いたら…ちゃんと、言おうと思う」
「…イヤ待て。今言うんじゃないのか」
「…え。…あぁ」キルガは少し困った感じの表情になる。え。そういう意味じゃないのか。ややこしいなお前。
またしても黙ってから、浅くはない呼吸を一つ、それからようやく言う。
「…マルヴィナ、に」
しばらく間をおいて——
「叫ぶなよ」大丈夫だ、ちゃんと抑え込んだ。寝た後のシェナを起こしておこることは
間違いなく俺へのチョップだからな、神の国へ行く前に死にたくはない。
「なんだよー、ようやく決意したのかよ。お前、意外と優柔不断だな」
「…せめて慎重と…一緒だよな」一回だけ俺を見てから、また天井を仰いで、多分形だけ笑って言った。
「大分、悩んだ…悩んで、進まなかった…そのうち、障害ばかりしか見えなくなっていった…だったら」
物事を考えきってから言葉を話すのが大抵のキルガが、言葉を選びながら喋ってる。こりゃ、今度こそ本物か。
「…動ける時に動かなきゃ、な」
…何か微妙に、不吉な言い回しだったような気がする。ちょっと気になって、
聞いた瞬間にふと思ったことを結局訊ねちまった。
「何だよ、死ぬみたいに」
「…」
…え、返事なし? ちょっと待て、洒落にならねぇ。
「お前さ、変な時に頭堅いよな」
「は?」
多分…多分だけど、今こいつの頭にあるのは、自分の『役割』だ。聖騎士としての。
前からそのことについてよく悩んでるのは知ってたけど、なんつーか、考え方は殆ど変ってないんだよな。
「何つーのかなぁ…『聖騎士』のことだろ?」
「…あぁ」
イヤ、分かるっての。何故そんな驚く。
「いろんなこと学んでるみたいだけど、やってること昔っからあんまり変わんないんだよ。何でだろ?
…なんかさ、ちょくちょく前とは違うなー、って思うことはあることはあるんだけど、根本…
そだ、根本的なところが変わってない」
「根本…?」
そ。根本。木の根っこ。
「うまくは言えないんだけどさ。…すげぇ、自己犠牲の聖騎士みたいな気がする。…悪い方向で」
言ってから、意外と上手い言い方したんじゃね俺、とさりげなく自画自賛してみたり。
…スンマセンそういう状況じゃないな今。
「自分が傷ついて仲間を守るのが聖騎士だとは思えないんだよな。むしろ…悪いやっぱわかんねぇや」
言いたいことはあるんだけど、うまくまとまんねぇ。阿呆は苦労する。俺。
「…覚えておく」短く言ってたけど、伝わったのかなぁ。…伝わってるといいんだがな。
「まぁ、お前なら大丈夫だろ。いいか、要は度胸だ。どうせなら当たって砕けて来い」
「…砕けるのは辛いな」
「弱気でどうする! ドンと行くんだよドンと」
「セリアス、声」
やべ。シェナさん寝てますか。大丈夫でした。ほっ。
「あー、でも、砕けた場合そのあとの戦闘に影響したらまずいな。うん」
「砕ける前提…?」
「可能性の話だよ」
「危険性の話だろ」
「一緒じゃないか? …まぁ、そうだな。区切りかぁ…区切りかぁ…うん。
いろんなこと、何もかも終わったら、だな。一番いいのは」
何もかも? って聞き返してきた。
「ガナン帝国から、天使たちみんな解放したら、ってことだよ」
あぁ…と、キルガは頷いた。頷いてから、また困ったように少しだけ笑う。
「…いつになるやら」
「近くに終わらせんだよ」肩をすくめて言ってみたが、確かにいつになるやら。
…てか、この後俺ら、人間界に戻ることあるんだろうか? そう言えば。
もしかして神さまが、帝国の天使たちみんな解放してくれたら、俺らは晴れてお役御免…
何かアレだけど、まぁ、天使のことを考えたら、そっちの方がありがたいし…むん。
「…そう、だな」
さっきの答えをキルガが呟く。「…その時が、勝負だ」
「おし。勝負だな。勝ってこい。勝って砕けろ」
「それ負けたときなんじゃ」
「え。…当たって砕けろっていい意味なんじゃないのか?」
「…まぁ、潔く負けてさっぱりしろという意味まではいかないが」
…えと。まぁ要するに、頑張れってことだ。俺は応援してるからな。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.389 )
- 日時: 2013/06/21 00:08
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 9ikOhcXm)
ことん…ことん…ことん…
一定のリズムで、耳に心地よく聞こえてくる、箱舟が静かに揺れる音。
ことん…ことん………ス。
…あと、なんか別の音も聞こえた。
ことん…ことん…ことん…セリアス。
…あれ、俺の名前——
「セリアスさっさと起きなさいっての!!」
朝っぱらからシェナチョップ炸裂ーーー!! イヤ痛ぇぇぇ!!!
「何をどうこうしてそうしたら二十四回も起きろの言葉を連発しなきゃ起きないわけ!?
そんなに起きろの言葉と親睦深めたくないわよ!」
「ちょ待てシェナおま怖ッ!!」二度ビックリだ。めちゃくちゃ大声出してた割に例のホラーな姿のまま、
つまり起きたて状態だったからドン引いた。まぁ、この状態であそこまでちゃんとした言葉が言えれば
ちょっとはマシか…いや、思えばそんなにちゃんとした言葉じゃあ…何だ起きろの言葉との親睦って。
しまいにゃ結局変わらない様子のキルガに声が大きい、と注意される始末。俺のせいか。これ。
でっかいあくび一発かましてから、目をこする。別に今は外じゃないし、擦っても目は傷まないだろ。
「…そろそろ着くらしい」
その一言で、エンジン全開、目ぇパッチリ。叫びたくなったが、シェナに睨まれて
チョップされたくないので黙る——なんか最近叫ぶのを堪えるのが増えた気がするんだが、気のせいか?
遠目からもその国が見えるようになってきた。
声にならない声で感動して、ずっと見続けていたから、
完全に到着するまでそんなに時間が経ったようには思えなかった。
箱舟が止まって、俺もマルヴィナもがっちがちになって踏み出した。キルガもかなり緊張している。
なんとなくチェルスでさえ動きが微妙に堅いように見える。オムイ様もちょっと顔が強張ってる。
やっぱ天使は結構、この世界を歩くのは心臓バックバクになるんだろうな。
変わんないのはシェナとかマイレナくらいだ。あ、まぁ、アギロもサンディもだが。…アギロはともかく、
他三人は神さまの国の重要性をいまいち理解してないっぽいし…追い出されたらどーすんだよ!
って俺の考えは、箱舟の外に出た瞬間にぶっ飛んで跳ねてった。
いやもう、言葉が出ないのよ。はーっ、とか、おーっ、とか、もうそんなのすら出てこない。
まず空。空の色。青、じゃない。水色、じゃない。
そう、言うならば。
…空色ですね「当たり前でしょ空なんだから」…ゴメンナサイそういう意味じゃなくてハイ。
ちくしょう! 俺に文章力をくれ!! どう表現すればいいんだよ、この俺が今見てるこのすんばらしいこの景色を!
「優しい色ね」シェナが呟いた。「空。…不思議ね…青の類のはずなのに、小麦色みたいで」
…イヤ、元から頭の良さでシェナに勝てるとは思ってませんよ? 思ってませんよ?
…何なんだこの敗北感は。誰か答えて。…やっぱいいです。ゴメンナサイ。
「感情の忙しい奴だな…」最終的にキルガに呆れられたというオチでありました。
小麦色の空がどこまでも続く。遠目に見える、白亜の神殿の数々、
それらを繋ぐのは神秘の七色の架け橋、安定しない足もとのはずなのに、
何かに守られているような安心感がある。
…と、シェナが言っていました。
「神の国、ねー」マルヴィナのフードから顔をのぞかせたサンディが呟いた。「キレーだけど、哀しいトコよネ」
「お前でもそういうこと言うんだ?」
「何ヨ、ソレしつれーじゃネ?」
「イヤお前のいつもの言葉遣いの方がヒヤッとするんだが!?」
「は? 何のコト?」自覚しろー!!
いくつもの島が周りに浮いてて、なんだか見慣れない世界だ。でも確かに、
なんだか生きているものがいる、って感じじゃない。悲しいっちゃ悲しいとこだ。
「おかしいな…」マルヴィナが呟いただけの声ですらちゃんと聞こえた。それくらいここは静かなんだ。
「どうかしたのか?」キルガが訊く。
「ここ、落ちたりしないよね?」とマイレナ。
「多分」いやヤメロ!
オムイ様とアギロは黙ったままだ。
「…見たことがある」マルヴィナが続けた。
見たことあるって…何で?
「チェルスの影響か?」
「アギロはともかく、わたしはここは初めてだが」
…ん? つまりチェルスも来たことがない、と。…んむむ? じゃあなんでだ?
「あぁ…そうだ、思い出した」神殿がもうちょっとはっきり見えてくる頃に、もう一回マルヴィナが言った。
どうやら話によると。前回天使界に戻った時…更に世界樹に祈った時、
加えてマルヴィナが倒れた時。あの時「セリアス『時』使いすぎ」…何かを見たとは言っていたけど、
どうやらその景色がここに似てるらしい。よくそんな昔のこと覚えてるな。
それだけ印象的だったってわけか…まぁ、納得するけど。
「でも…」言った後に、もう一回呟いた。何かちょっとだけ、気になることがあるみたいだ。
でも、珍しいことに、それを言わなかった。いまいち確信を持てない、とか言ってたけど、なんのこっちゃ?
…神殿に向かって歩くことちょっと、やがて中間地点っぽいところに着く。
神さまの国って言っても歩くことにはかわりないっぽくて、オムイ様を気遣って
一回休憩することにした。…それにしても広いところだな。何か左右に見える…あっちには石碑か。
あっちには…石像? …あ、マルヴィナが見てる。ちょいと興味があって、みんなしてまじまじとそれを眺めた。
石像…とはいうけど、何か石じゃないみたいだ。もっと白っぽくて、何をしても壊れなさそうなくらい。
静かで強い色だと思った。背に翼、どういう仕組みか、頭上に浮いた光輪。
両手は組んでいて、ちょっと俯いてる。目は閉じている。性別は、判断できない。
「…守護天使像そっくりだ」キルガが呟いた。え、そうなの?
「あの全然似ていないの。…確かに似ているな…」マルヴィナも同意。…守護天使しかわからない会話め。
像の名前が足もとに書いてある「刻まれている」…刻まれているらしい。で、全員に沈黙が落ちた。
「…キルガ」
「いや、…悪い」
シェナとキルガがぼそぼそと会話。マルヴィナも首をひねっている。どうやら読めないらしい。
…いや俺に訊くなよ?
「チェルスならわかるんじゃないかな…?」そういうとことから見ると、見覚えはあるらしい。
「——何だ。先にそっちを見たのか」
呼ぶ必要はなく、自分から来た。マルヴィナがその言葉に訊き返したが、先に今の疑問をチェルスに届ける。
チェルスは一度黙った。像の足元は見ない。
後から気づいたんだけど、読むまでもなかった、ってことだ。
「それは、世界で最も知られていないもので、世界で最も高位の称号だ」
意味深な言葉に、俺たちは黙り込んだ。
「そして、天使にとっても、最上級の名——」
思わず、緊張に鳥肌が立った。
「——“星空の守り人”」
その名を、聞いた瞬間は。
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