二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ
- 日時: 2016/12/06 01:24
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: ZZuF3m5i)
【 目次 】 >>1
(11/17 更新)
【 他作品紹介 】 >>533
——その短い時の流れは、
けれど確かに、そこに存在していたもの。
トワ
——あの軌跡を、永遠の記憶に変えて。
あの空に捧げる、これは一つの物語。
【 お知らせ 】
——というわけでこちらでは初めまして、『二次小説(紙ほか) (旧)』で活動しておりました元Chess、
現在 漆千音 の名で小説を書いています。
(紙ほか)が『旧』になったことを境に、この小説を(映像)に移転いたしました。
タイトル通り、これはドラクエⅨの二次小説です。
オリジナルっ気満載です。ご注意をば。
どこか王道で、どこか型破りで。不思議な設定の物語を目指しています。
——コメント大歓迎です。
URL:Twitterアカウント。pixiv小説と兼用。
更新速度は不定期。場合によっては月単位。
【 ヒストリー 】
2010
8/30 更新開始
11/15 (旧)にて十露盤さん(当時MILKターボさん)、初コメありがとうございます((←
12/14 『 ドラゴンクエスト_Original_ 漆黒の姫騎士』更新開始
2011
1/23 パソコン変更、一時的にトリップ変更
3/25 (旧)にてサイドストーリー【 聖騎士 】
5/23 トリップを元に戻す
5/25 調子に乗って『小説図書館』に登録する
12/8 改名 chess→漆千音
2012
2/10 (旧)にてサイドストーリー【 夢 】
8/11 (旧)にてteximaさん初コメありがとうです((←
8/30 小説大会2012夏・二次小説銀賞・サイドストーリー【 記憶 】
9/26 (旧)にてフレアさん初コメありがとうなのです((←
9/29 (旧)にて参照10000突破に転がって喜びを表現する
9/30 呪文一覧編集
10/1 (旧)にてサイドストーリー【 僧侶 】
10/7 スペース&ドットが再び全角で表示されるようになったぜ!! いえい←
10/8 (旧)にてサブサブタイトル変更。字数制限の影響でサブタイトルは省きましたorz
12/8 十露盤さんのお父上HPB。改名してから一周年。
「・・・」→「…」に変更。
12/9 (旧)にてレヴェリーさん初コメありがたや((←
2013
1/14 (映像)への移転開始。
1/19 (旧)の参照20000突破に咳をしながら万歳する。サイストはのちに。
3/4 ようやく(映像)側で初コメントを頂けました((感無量
スライム会長+さん、ありがとうございます!!
4/3 移転終了、長かった。
4/4 架月さん初コメに感謝です!
4/7 移転前からご覧くださいました詩さん、初コメありがとうございます!
4/21 Budgerigarさん、じじじ人生初コメああありがとととうござざざ((だから落ち着けbyセリアス
4/22 みちなり君って誰やねん。
9/4 何かの間違いじゃないのか。2013年夏小説大会金賞受賞!!
皆さんゴメンナサイ((ぇ
そして朝霧さん、ユウさん、初コメありがとうございます…!
11/16 イラスト投稿掲示板6号館にマルヴィナ&キルガのイメージ画像投稿。
11/17 続けてセリアス&シェナのイメージ画像投稿。
11/29 更にチェルス&マイレナのイメージ画像投稿。
12/6 別スレッドドラクエ小説更新開始。
12/8 特別版サイドストーリー【 記念日 】。
あと参照10000突破ァァァァァ!!
2014
5/26 参照20000こえていた。驚きすぎて飛んでった。帰ってきた。←
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- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.339 )
- 日時: 2013/04/03 23:52
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
いつからマリと行動を共にするようになったかは覚えていない。
だけど、大抵彼女とは一緒にいた。周りが能天気コンビと呼ぶたびに一緒にすんなと同時に言ったっけ。
ともかく、二千年も経てば天使もさすがに年をとる。
初めから天使界に住む者は同時に生み出されたから、大抵皆人間界で言えば30〜40代くらいだ。
創造神もどこにそんな余裕があるのか、新しい若い天使だけは創って律儀に送ってくれる。
だが、わたしら“騎士”は新しい生命じゃない。
普通に考えればわたしらだっていい年になっているはずなのに、殆ど皆若い姿のまま。
本当に妙な力をくれたもんだ。おかげで天使たちはうすうす、“騎士”の集団を訝しみ始めている——
“騎士”リーダーは無視しておけとか言っていたけれどね。
まぁそんなわけで、不審な眼を向けられるのも結構面倒くさいからって、
よくわたしたちは人間界に降り立っていた。やはりマリも隣にいる。
ここは、のちにアルカニア、マイやルィシアの出身地になる魔法都市のできあがる集落だった。
かといって、守護天使でもないわたしたちにできることなんて何もない。
ただぶらぶらと歩きまわるだけ。今でいう無職。暇。
「ねーチェノー」
さすがに生み出されて二千年も経てばマリもちゃんと偽名をさらりと呼ぶようになった。
まぁ、前に言った通り本名とあまりにもかけ離れているもんだから、時々本名なんだっけと
真面目な顔をして聞かれてその顔面に肘を叩き込んだりするんだけど(ちなみにそのあとは
決まってチョップがかえってくるんだけど)。
「今更だけどさぁ…あたしたちって、“騎士”なのよねぇ」
「オイわたしの本名以上に忘れるのマズイことだぞソレ」
ふみゅー、と謎の溜め息を漏らしてマリは身体を横に反らした。
「なーんかさぁ。結局あたしたち、いる意味あんの? って思って。
だってもう二千年よ二千年。オジンオバンの時代よ」
さりげなく失礼な発言だぞソレ。
「別にアンタは若いんだからいいじゃん」
「疑われてんじゃんあたしたち! てかチェノもでしょーが!」
わたしも成長は止めた。人間界で言う二十歳ちょいくらいだろうか。
天使は幼少期は成長が早く、歳を重ねるにつれて遅くなっていくから、二十歳とは
三百年程度しか生きていないのと同じだ。たしか四百年になる前で止めたから——まぁ、二十三、四くらいかな。
「さっさとセレシア様元に戻してあげてよ創造神様ー! って感じじゃん?
んでさっきも言ったけど“天使”からのすっごい疑ってる目。焦れてんだよねぇシャウルとか」
——シャウル、とは、本名をショウと言う“騎士”の一人にしてマリの恋人だ。
穏和な性格のはずだから、この言葉は少しだけ意外だった。
「へぇ…シャウルでも焦れるんだ?」
「そりゃそうよ。創造神様もちょっと勝手なんじゃないかって」
「——あぁ、そっちか。そりゃ同感」
でしょ、とマリが肩にもたれかかってくる。わたしは椅子か!
「そっちかって…どっちだと思ってたのよ」
「んあ? いや、てっきり焦れて無差別に人間絶滅を計ろうとしたのかと」
「しゃ」
いきなりマリが体勢を元に戻したかと思いきや、
「シャウルが簡単に掟を破るわけないでしょーーーーー!!」
いきなりチョップを叩きこんできやがった。45のダメージ。
「ちょっおまっいきなり何すんだー!」
「いきなりなんてこと言い出すんだ返し!」
「意味分からん!」
後から考えれば超絶くだらんやり取りをしたのちに、マリはくるんとまわってため息を吐いた。
「…でもねぇ」
退屈そうに空を見上げていたのを覚えている。
「いるっちゃあいるんだよね」
「何が?」
「焦れてる奴。リーダーとか、もうすっごい」
リーダー・ルフィンのことだ。その名の通り、“騎士”の代表。
本名は——なんだっけ? 「ルフウ」そう、ルフウ。
とんでもない。流石に二千年も経てば、“騎士”の名を持つ者がよく集まっているということは
天使たちに知られている。その会議の中心にいるのがルフィンだということも含めて。
だから、もしルフィンが人間を滅ぼそうって暴挙に出た場合、間違いなくわたしら“騎士”全員疑われる。
お前ら実はそういう集団なんじゃないのか!? ってな具合に。冗談じゃない。
シャウルだとか他の奴らだとかがそういう問題引き起こしても多分何とかできるだろうけれど、
仮にも代表のあいつにそんなことを起こされちゃあ関係ないわたしらまで
とばっちり受けることになっちまうんだから。
「…いや頼むよ間違っても早まんなよリーダー。あたしそんなので死にたくない」
「同感だ。これだけは切実に」
「どうしたのチェノ。何か今日弱気じゃない?」
「誰に向かって言ってんだシャウル命」
「ほにゃー!?」
またしても謎の抗議っぽい声をあげて、マリーナチョップ体勢。負けじとこっちも肘鉄体勢。
ようし決着をつけるか——と、やはり後から考えてみれば阿呆なやりとりをしていた——はずが、
「忘れてたぁぁぁ! シャウルに呼ばれてたんだったー!」
「イヤ待ておま今さっきあいつの話していただろ! 気づけよ!!」
期待(?)させておいて何だこのオチは。
「真面目にごめんシャウルあたしのこと嫌いにならないでぇぇぇぇ」
「…まさか今から戻るとか言わないだろな? 一応こんなナリでも見回りは見回りなんだぞ」
「…あぁぁぁあ非情な親友を持ったばかりにあたしは大好きな恋人に見捨てられるかもしれないのね…」
「あぁ分かった分かった戻れ! 後のことはわたしがやっておくから!」
けろっと表情を元通りにさせるマリ。畜生この常習犯!
「さんきうチェノぉう。今度埋め合わせするからー」
「……………期待しないで待っておく」
はーい、って、聞いていたのか聞いていなかったのかわからない反応をして、マリ帰宅。…帰界?
まったくあいつは、って大きくため息を吐いて、わたしは翼を畳んだまま東へ歩いた。
——何に使うか分からない妙な力なんていらなかったから。
ただ、その代わりに、未来を少しでもいいから見られる力が欲しかった。
嫌な予感を察知できるような、そんな力。
——この後に起こったあの出来事を思い出す度——わたしはいつだって、そう思ったものだ。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.340 )
- 日時: 2013/06/11 22:47
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 9ikOhcXm)
——それは突然のことだった。
「っう、あ!!?」
気が抜けるほど平和な集落の外、変わらないいつもの光景——
いきなり巻き起こった、普通では起こりえない爆風。
一斉に響き渡った悲鳴が、風の音にかき消されてゆく。誰かが吹き飛ばされて、動かなくなった。
思わず目を見張った。直感が働いた。同じ者の気配。同じ者の能力——
・・・・・
何の冗談だよ。知らずうちに、そう思っていた。あんな話を——つい先ほど別れたばかりの
マリと交わした会話の通りになっていた。 ・・・・・・
——そう、これは明らかに、自然の爆風ではない。人間界で言う、人為的なもの——
“騎士”の誰かの仕業だ。
誰かが、焦れていた誰かが、本当に人間を攻撃したのだ。
理由が分からない。今まで耐え続けて、何故今更こんなことを起こした?
そしてそれは、一体、誰なのか——!?
周りで、次々と人間が動かなくなっていった。二人分、青年の焦燥の声が響き渡る。
救助にあたっているらしい。わたしは爆風の発生地をさがした。風の奥へ。
煙が邪魔くさい。天使は俗に言う幽霊とは違うから、人間界の自然のものには触れられる。
それは時々、こうやってわたしらの邪魔をする。
——いた。天使が一人——放心したように、信じられないように立ち尽くしていた。
そして同時に、自分の目なのに、それ自体を疑いたくなった者を見た。
二番目に、そこにいてほしくなかった者———
“騎士”リーダー・ルフィンが、そこにいた。
わたしらしくもなく。つい、同じように立ち尽くしてしまった。
と、相手がこちらに気付いた。慌てたような表情。
お前、何勝手なことをしてんだよ。何で早まった——叫ぼうとする前に、
相手はいきなり—おそらくその動きから、咄嗟に—もう一度、爆風を起こした。
間違いなく、狙いはわたしだった。
動きが咄嗟っぽかった割に、運悪くもそれはわたしに直撃した。こちらも受傷をおさえるために
壁を張ろうとしたが、集中しなかったために完全じゃなかった。目の前が訳分からないくらい揺れて。
——それから、目を覚ました時には、薄れた煙の中で、感情豊富なはずの人間とは思えぬほど
憔悴しきって無表情になったその種族が、何をすることもなくただその場に座りきっていた。
そう、これは、アルカニアに二つの魔法機関ができたきっかけとなったあの事件。
原因不明の大爆発——
皮肉にも、マイと出会う理由の一つになった、出来事だった。
——この時天使界で何が起きていたのかは知らない。だけど、後から知った。
…知りたくなかった。この時初めて知った。自分がいかに幸せな考えを持っていたのかということに。
天使だって、創造神が忌み嫌う人間と変わらぬ存在。感情を持つ生物なのだと——
マリは“星の扉”の前で苛立っていた。
天使たちはざわめいていた。殆ど皆、バルコニーへ行って下界の様子を心配げに確認しようとしていた。
集落の付近を守護する天使の数名が先ほど、扉を通って人間界へ降りている。
だが、マリが待っているのは守護天使たちではない。
——いやな予感がした。わたしと交わした先程の会話を思い出していたらしい。わたしと同じだ。
予兆だったとでもいうのか。あの会話は。起こってほしくないことを話していた傍からそれが起こるなんて。
本当にこれはただの偶然だというのか。
——今ここにいない“騎士”はふたり。わたしと——ルフィンだ。
マリの後ろに、“騎士”たちがいた。正確に言えば、“騎士”の前に、マリが進み出たのだが。
膠着状態が続いた。“騎士”はわたしを疑い始めていた。——否。
そう言うよりかは、ルフィンがことを起こしたのかもしれないということを信じたくないがために、
別のものに押し付けたがっていたのだ。
…もしルフィンがその罪を犯した者ならば、先程話した通り、自分たちの存在が危ぶまれるから。
…そうならぬように、マリはわたしが先に戻ってくることを祈っていた。だが——その頃のわたしは。
期待とはいつだって、大抵裏切られることにかけられるものだ。
先に戻ってきたのは、間違えようもない。ルフィンだった。
「リーダー!」
「ルフィン! どうだったんだ、人間界は…!」
マリはギッと、鋭い眸で“騎士”たちを睨み付けた。ルフィンは爆発の起きた人間界を
確認しに行った者であって、爆発を起こしたわけじゃない。そう思い込みたい者たちに対して。
「…何、言ってんの…!?」
明るく笑う天使だった。よくボケて、よくツッコんで。笑いを誘う天使だった。
そんな彼女が、感情の奥底から、怒っていた。
“星の扉”の前に立つ、“騎士”。
虚ろになった眼。異様に早い息遣い。震える腕。止まらない、歯と歯がぶつかる音。
誰が見ても一目瞭然だった。
“騎士”リーダーが、何らかの理由で、人間を大勢攻撃したというのは。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.341 )
- 日時: 2013/04/03 23:55
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
「マリーナっ!」
自分の名を呼ぶ“騎士”たちを無視して、マリはルフィンの胸倉を掴んだ。
「…一体何をしたの。何勝手なことしてんのよ。あんたの勝手な事情であたしたちまで巻き込まないでよ!」
「…何がっ…」
ルフィンは乱暴にそれをはねのけた。バランスを崩して、マリは背中から倒れ込む。
シャウルが驚いて一歩進み出かけたが、結局それ以来足は動かなかった。
「何が分かってそんなことを言う? 仕方なかったんだ! 今回ばかりは…!」
「何があった、と訊きたいところだが」マリの後ろから、唯一成長を止めなかった“騎士”が
諌めるように進み出た。ギル。本名ギン。“騎士”サブリーダーだった。
「時間がない。マリーナの言うとおりだ。このままでは我々の正体が知られるのも遠くない」
「知られるのも、って——もし知られたら」他の“騎士”たちがざわめきだす。
「——処刑、だろうな。俺たちは“天使”とは対の存在…代表が人間を攻撃したと気づかれれば、
間違いなく俺たちまで罰を受ける」
「罰で済むかよ。どうにかしないと…!」
「……………………………っ」マリは唇を噛んでいた。何故わたしが戻ってこないのか。
何故こんなに遅いのか。それを知らずに、ずっとわたしを待っていた。
「…チェノはどうした」
ギルが低く呟いた。「こんな時だというのに、どこをほっつき歩いている」
「——あ」
ルフィンが上げた声は、小さかったのに、その場によく響いた。全員の目が、一斉に奴に向いた。
「まさか、あいつ…」
やはり気づいていなかったらしい。煙の中に見えた天使の陰。
ばれないようにと咄嗟に放ったもうひとたびの爆発。その、天使とは。
「チェノだったって、いうの…!?」
マリの声は、恐ろしく底冷えしていた。
聞いたことのない彼女の声色の連続に、殆どの“騎士”たちが息を呑んだ。
と、マリがルフィンの腕を強く掴んだ—本当はもう一度胸倉を掴んでやろうと思ったらしいが、
先に察知されて腕になってしまったらしい—。
「——っざけ、ないでよ…そんなことする奴なんだもの、何するか分からないわ!」
「マリーナ、やめろ!」
「どうせ人間を攻撃したのだって、あたしたちの立場なんて気にしない、自分のわがままが原因なんでしょう!?」
「マリーナっ!!」
シャウルがようやく動いて、マリを引き離した。だが、マリは止まらない。
「だって、だって、どうすんのよ。チェノがそれで死んじゃってたらどうすんのよ!?
もしかしたら、全部チェノのせいだって、誤解されちゃうかもしれないじゃない!
こいつが原因なのに! そんなの嫌よっ!!」
——空気が、変わった。マリはシャウルの前で顔を伏せていて、気付かなかった。
ギルは目を細めていた。それを見たシャウルが、はっと目を見張った。ルフィンが驚いてギルを見た。
マリを除く全員が、ギルの考えをほぼ察知した。
ギルがルフィンに何かを素早く話した。ルフィンが小さく、頷く。
「…痛み入る」
その言葉を聞いたシャウルは、ぐっと奥歯を噛みしめると、マリを抱えてその場を離れようとした。
「…シャウルっ?」困惑したマリがシャウルを見る。そこにあった表情は、とても辛そうだったらしい——
わたしが戻ってきたのは、その時だった。
守護天使たちに抱えられながら。
わたしの意識は朦朧としていた。むしろ、あの爆発に耐えられただけよかったものだ。
悔しいが、わたしよりずっと強い力を持っているから、ルフィンはリーダーなんだ。
そんなコイツの力を喰らって何とか無事だったのは認めてもらいたい。
——なんて言っているけど。実際、本気で力が抜けきってどうしようもなかった。
顔も上げられない。耳に聞こえてくる音場も、途切れ途切れだった。
「…ご…労。チェ…いた…当……な?」
「…。我…つけ…に…意識……て…」
「…ふむ…間違…ない…だな……」
少しずつ、意識が戻ってくる。顔は上げない。無駄な労力だ。
話だけ聞いておく。現状を、確認しなければ——…。
…違う。
こんな言葉を聞くために、意識を取り戻したのではない。
「…ならば、チェノ…奥の部屋…繋いでお…もらおうか」
「え…何故…です…?」
…わたしと、マリを含めて。
“騎士”以外の者は驚愕に目を見張った。
「——チェノが、爆破を起こした張本人だからだ」
「「……………………………な………………」」
わたしとマリがようやくそれだけ声をあげたのは、ほぼ同時だった。
わたしは情けないことに、そのまま再び意識を失っちまった。
マリはシャウルの取った行動の意味を、ようやく理解した——
「卑怯者!!」マリは叫んだ。悔しい、という言葉だけではおさまらない感情が流れて、
溢れてきそうなのに、言葉にならない。何を言えばいいのかが分からない。最早言葉では表現できないのだ。
シャウルの足が速くなる。
ギルは動じなかった。むしろ反応しなかったことで、
マリの言葉はわたしに向けられたものだと、“天使”たちは勝手に誤解した。
「——卑怯でなければ救われない時もある」ギルが呟いたその同情の欠片もない言葉は、
ルフィンにしか聞こえなかった。
「…シャウル! なんでっ…何で何も言わないの!? 何で、ねぇ、どうして!」
「………………っ…」シャウルは顔を伏せたまま、奥歯を噛みしめたまま、その足を止めない。
「シャウルっ!!」
マリの叫びに。
悔しげなその表情で。
ようやく出したその言葉は——…。
「——仕方ないんだ」
その時マリの中で、何かが消える音がしたという。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.342 )
- 日時: 2013/04/04 00:05
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
【 お知らせ 】
えー、(紙ほか)からの移転を始めて早三ヶ月——
ようやくすべての話の移転が終了しましたー!!(((わーぱちぱちぱちぱちぱち…
マルヴィナ「ひとりでやっていなさい」
ちょっとそれ酷くないすか。
マルヴィナ「だって未だおひとりからしかコメント貰ってないし。人気ないだろこの小説」
(多分)そんなことはない(はず)! これでも『紙ほか』にいた頃はもう
凄くたくさんの方々に見ていただけてめちゃくちゃ嬉しくて——
マルヴィナ「過去だ」
……………………。ずーーーーーーーーー…ん。
…そんなわけですので、今後はこちらで更新を続けていきます。
(紙ほか)にはもう現れません。…あ、でもあちらでコメントいただけたらそれにはお返しします。
でもなるべくこちらに書いていただきたいな((チラッ
では、今後ともよろしくお願いいたします。
漆千音でした。
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.343 )
- 日時: 2013/04/04 01:27
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
…正直、この時のことは、もう殆ど覚えていない。
おそらく“騎士”も“天使”も、わたしの意識は完全に失われていると思っていたのだろう。
だが、少々の後、何とか耳だけは機能し始めていた。
確か、手に枷をつけられたまま、長老の前に引きずり出されていたような気がする。
わたしの意識がないうちに事を運ぼうとしたのだろう。そうすれば、わたしに反論される虞がないから。
状況報告をするように、初代長老エルーファが守護天使たちに命じる—ちなみに彼も当然
わたしたちと同じ年に送られたのだが、その性格と実力を認められて長となり、
この時に天使の代表は長老と呼ぶことが決定したため、同い年でも長老と呼んだ—。
被害を受けた土地、人間の数——他にも何か述べていたが、それが何だったかということすら覚えていない。
「…上級天使ルフィン」
長老の声と、忌々しい声。
「…爆発当時、この付近に降り立っていた者はチェノのみ。間違いなく、この者の仕業です」
天使たちがざわめいていた。やはり怪しいと思っていたんだ。
あの集団——本当はそういう企みを持った天使の集まりだったんじゃないのか?
その囁き声に、ルフィンと、何故か後ろに着いてきていたギルの二人が顔をしかめた。
特にギルが睨み付けたとき、天使たちは居心地悪そうに視線を逸らしたり、渋々口を閉じたりした。
「チェノは我らと行動を良く共にした者。問いたいことも多くございます。
この者の処置、我らに任せていただけませぬか」
言うだけ言って、反応をほぼ待たずに去ろうとする二人を、長老はちゃんと止めた。
「待て」たった一言だったが、十分だった。ギルの睨みよりよっぽど強い、天使の上に立つ者の風格。
「…妙な噂も流れておるが」エルーファは続ける。「ここで問うても、真実は見出すことはできぬだろう」
その通りだ。馬鹿正直に「お前たち本当は人間を良く思っていない連中なのではないか」なんて言われて、
はいそうですなんて答えるはずがない。そうする気のない者だからこそ、
わたしに濡れ衣をかぶせてきたのだから。
「故に、お前たちの言葉をすぐに信じることができぬというのもまた事実」
「…爆発を起こしたのが、チェノではないと仰りたいのですか」
心なしか、表情を強張らせたような声に変わった。緊張か。軽い焦りか。
もし意識があったら、ざまぁみろ、の一言でも言ってやりたかった。
「…納得いかぬだけだ」長老は答えた。「…私は直接、チェノの言葉を聞きたい」
「な」ルフィンが焦りを短い間表情に出した。それに対してギルが心中で舌打ちする。
「そ」「分かりました」ルフィンが何かを言う前に、ギルが遮る。
「では一度ここを外しましょう。…ですが最終的には、我々に」
「——」
答えはない。ギルが踵を返した。ルフィンがその後ろに着く。
ある程度離れたところで、周りを気にしたのちにルフィンは非難の口調でギルに問う。
「…どういうつもりだ。チェノが本当のことを話したらどうする!
…もしあいつに、おれの姿が見られていたら…!」
「関係ない」ギルは視線を転じず、変わらぬ口調で言った。
「い、いや、それ以前に、あいつの口から“騎士”のことがばらされたら、終わりだ!」
「少しは落ち着いたらどうだ、ルフィン」今度は呆れたような声が返ってきた。
確か“騎士”の中で一番怖い呆れ声を出すのはコイツだった。立場は上のはずのルフィンでさえ背筋を伸ばすほど。
「…チェノは決して“騎士”のことは話さん。そこまで馬鹿ではない」
褒め言葉としてとっていいんだろうかね。これ。
「話しても話さなくても自分の処刑は決まっておるのだ。処刑される数が違うだけ——
だが、ルフィンが爆発を起こしたといえば、自分だけではなくマリーナも処刑されることになるだろう。
…チェノにそんなことはできんさ」
わたしはずっと黙っていた。
「——答える気はないのか」長老エルーファの声色は先ほどから一定だった。
「本当に、あの集落の人間を滅ぼそうとしたのか?」
この質問は三度目だった。それでもわたしは、何も答えなかった。
自分の立場を、正しく理解していなかったんだと思う。当たり前だ。
人間に危害を加える者は、天使にとっては敵同然。わたしはやっていない、と言わなければ、
『処刑』——まぁ間違いなく、天使界追放…人間界で言う死罪となるわけだから。
…だけど、さ。言ったところで、次はどうなる? じゃあ誰がやったんだ、って話になるに決まっている。
…もう、道は残されていなかったから。だからもう、全て成行きに任せた。
自分がこれからどうなるかなんて、全く考えていなかった。
「…頑固なことだ」エルーファは聞こえぬほど小さく、溜め息を吐いた。
微妙な間が空く。でもわたしは、動かなかった。
「…ならば、これだけは答えてもらいたい」
…大分声の調子が変わったことを覚えている。…この時のことを、今でも時々思い出すくらいだから。
黙って顔をそらし続けていたわたしの前で。長老は、一言——重く言った。
「お前たちは、何者なのだ?」
と。
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