二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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  永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ
日時: 2016/12/06 01:24
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: ZZuF3m5i)

【 目次 】 >>1
(11/17 更新)

【 他作品紹介 】 >>533


 ——その短い時の流れは、
 けれど確かに、そこに存在していたもの。
          トワ
 ——あの軌跡を、永遠の記憶に変えて。
        あの空に捧げる、これは一つの物語。



【 お知らせ 】
 ——というわけでこちらでは初めまして、『二次小説(紙ほか) (旧)』で活動しておりました元Chess、
現在 漆千音 の名で小説を書いています。
 (紙ほか)が『旧』になったことを境に、この小説を(映像)に移転いたしました。

 タイトル通り、これはドラクエⅨの二次小説です。
 オリジナルっ気満載です。ご注意をば。

 どこか王道で、どこか型破りで。不思議な設定の物語を目指しています。
 ——コメント大歓迎です。

 URL:Twitterアカウント。pixiv小説と兼用。
 更新速度は不定期。場合によっては月単位。

【 ヒストリー 】
  2010
8/30 更新開始
11/15 (旧)にて十露盤さん(当時MILKターボさん)、初コメありがとうございます((←
12/14 『  ドラゴンクエスト_Original_ 漆黒の姫騎士』更新開始

  2011
1/23 パソコン変更、一時的にトリップ変更
3/25 (旧)にてサイドストーリー【 聖騎士 】
5/23 トリップを元に戻す
5/25 調子に乗って『小説図書館』に登録する
12/8 改名 chess→漆千音

 2012
2/10 (旧)にてサイドストーリー【 夢 】
8/11 (旧)にてteximaさん初コメありがとうです((←
8/30 小説大会2012夏・二次小説銀賞・サイドストーリー【 記憶 】
9/26 (旧)にてフレアさん初コメありがとうなのです((←
9/29 (旧)にて参照10000突破に転がって喜びを表現する
9/30 呪文一覧編集
10/1 (旧)にてサイドストーリー【 僧侶 】
10/7 スペース&ドットが再び全角で表示されるようになったぜ!! いえい←
10/8 (旧)にてサブサブタイトル変更。字数制限の影響でサブタイトルは省きましたorz
12/8 十露盤さんのお父上HPB。改名してから一周年。
   「・・・」→「…」に変更。
12/9 (旧)にてレヴェリーさん初コメありがたや((←

 2013
1/14 (映像)への移転開始。
1/19 (旧)の参照20000突破に咳をしながら万歳する。サイストはのちに。
3/4  ようやく(映像)側で初コメントを頂けました((感無量
   スライム会長+さん、ありがとうございます!!
4/3  移転終了、長かった。
4/4  架月さん初コメに感謝です!
4/7  移転前からご覧くださいました詩さん、初コメありがとうございます!
4/21 Budgerigarさん、じじじ人生初コメああありがとととうござざざ((だから落ち着けbyセリアス
4/22 みちなり君って誰やねん。
9/4  何かの間違いじゃないのか。2013年夏小説大会金賞受賞!!
   皆さんゴメンナサイ((ぇ
   そして朝霧さん、ユウさん、初コメありがとうございます…!
11/16 イラスト投稿掲示板6号館にマルヴィナ&キルガのイメージ画像投稿。
11/17 続けてセリアス&シェナのイメージ画像投稿。
11/29 更にチェルス&マイレナのイメージ画像投稿。
12/6  別スレッドドラクエ小説更新開始。
12/8  特別版サイドストーリー【 記念日 】。
    あと参照10000突破ァァァァァ!!

 2014
5/26 参照20000こえていた。驚きすぎて飛んでった。帰ってきた。←

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Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.84 )
日時: 2013/01/22 15:13
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

     2.



 ——夜のこと。

 暗くなった空に、星が散らばり、月が孤独に輝いていた。
 漆黒の海にその月が浮かび、波に合わせてゆらゆらと揺れる。
 静かな村に、さざ波の音だけが広がる。

 マルヴィナは、目を閉じて、潮風にあたっていた。
 オリガの家を訪ねた四人だったが、その後彼女が村長の家に呼ばれたために、
彼女を待つ状態となっている。その時間を利用して、マルヴィナは一人、自分の世界に入り込み、
気持ちを落ち着かせていた。

 …月。

 今宵は、満月ではない。端の少し欠けた、未完成な円だ。

 それを、見ながら。彼女の記憶は、約280年前にさかのぼる…



「きるがー、せりあすー」
 天使界へ送られてきて間もない、人間界で言えば五歳程度の小さな見習い天使がいた。
 マルヴィナである。
 短い髪をばさばさに振り回して、ついでに手もぶんぶん振り回して、
名を呼んだ二人のチビ天使のもとに走る。
 真っ先に甲高い声で反応したのは、髪の毛もまだぺしゃんこのセリアスである。
隣のキルガはなぜかこの頃からすでに妙に可愛い可愛いと言われ女天使たちに人気であった。
「うーい。マルヴィナぁ、お師匠さまきまったー?」
 チビセリアス、いきなりチビマルヴィナに痛いところを突く。
「…う…きまってない」
「セリアスは決まってたっけ?」
 チビキルガ、すかさずツッコミ。
「きまったぞー、今日! テリガンさまだ! ようやくだ!」
 たちまちチビマルヴィナとチビキルガの頭上に疑問符が急増する。
「しらないのか」
「ぜんぜんしらないー」
 チビマルヴィナ、即答。
「でもこれで、きるがもせりあすもお師匠さまきまっちゃったね。あとはわたしだけかぁ」
 後から知ったのだが、彼ら三人は、異常な時期に天使界に送り込まれた。
もしかしたら、神が作り出した生命ではないのでは、とも言われている。
…それに、彼らは。異常時期に送られた以外にも、妙な力を秘めている。
何にせよ、準備ができていなかったので、師匠を決めるのにも、
あるいは天使が師匠になると名乗り上げるまでにも、一苦労をかけられていたのだった。
 が、そんな会話を、黙って聞き続ける上級天使もいた。
彼は、上位の優秀な天使でありながら、弟子をとったことがない。
そんな彼が、不満げに頬をふくらます小さなマルヴィナを、じっと観察するように見ていた——。



 天使界は、マルヴィナたち三人を巡って話し合いが度々あった。
 幼い天使のころは、成長が早い。あれから数十年、マルヴィナたちは人間界でなら十四歳程度となっていた。
 先に述べたように、彼らは、皆それぞれ不思議な能力を秘めていた。

 キルガは、知識の呑み込みが早い。天使界でも優秀であり、
またイザヤールと同じ時期に天使界へ送られたローシャと言う名の女天使が、彼の師匠に任命された。
 が、ローシャもキルガに物事を教えた後はたじたじの様子である。彼は優秀すぎた。
もう教えることがほとんど残っていない、と時々ローシャはラフェットに話している。

 セリアスもそうだ。もっとも彼の場合、物事を考える能力は浅いが、
守護天使に必要な戦闘能力は半端ない。彼は日々の鍛練で、剣から棍から槍から、
さらには徒手空拳まで、戦いの才能を発揮している。彼の師テリガンは
やや年老いたベテランの天使であり、様々な武器を教える立場にあった。
が、そんな彼もまた、セリアスの能力に舌を巻いていた。

 最も考えさせられるのは、マルヴィナである。彼女には未だ師匠がいなかった。
天使は送られてほぼ間もなしに、師匠が決まる。キルガやセリアスですら、遅かったのだ。
ここまで長の間、師匠が決まらないのならもう、彼女は一生師を持てぬのではないかとすら囁かれていた。
ここまで彼女が避けられているのは、当然理由がある。
それは、彼女が最も天使らしく、その一方で天使らしくないからであった。
マルヴィナは守護天使に異常なまでの憧憬を抱いていた。そのために、守護天使に必要な知識を
なかなか覚えられないながらも必死に勉学に励もうとしていた。
だが、それよりも、マルヴィナには異常な能力があったのである。邪悪に人一倍反応すること、
呪いの類を一切寄せ付けないこと、        ・・・・・・・
そして何より妙なのは——古の天使界の歴史を何故か覚えていることである。
最後のそれについては、無論すべての出来事を知っているわけではなかったのだが、
歴史書の保管される守護天使記録書物庫に入ったことすらない見習い天使が
何故数千年前の出来事を知っているのかが謎だった。
 また、彼女は、現在鍛錬の剣術で、年少で女ながら一番の実力を持っていた。
 神秘の能力を宿し、古の記憶を持ち、また剣の才能に優れた謎だらけの少女天使。
彼女の師匠になろうとする上級天使はいなかった。

 が。そんな中でただ一人、ラフェットは気付いていた。
 自分の幼なじみが、かつてない雰囲気を漂わせていることに。
 その少女天使に、長年、惹かれるように、あるいは考え込むように観察し続けていたイザヤールの心情に。

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.85 )
日時: 2013/01/22 15:14
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

「…はぁっ!」
「ぬぅっ!」
 …天使界、鍛錬所。

 鍛錬の内容として剣術をとっている見習い天使、あるいは守護天使候補たちの視線の先には、
実力者であるマルヴィナとセリアスの一騎打ちがあった。
 またしてもマルヴィナの師匠を決めることについての議論に駆り出された上級天使に代わって
審判を務めさせられているのは、槍術からセリアスに強引に連れてこられたキルガである。
一応彼も暇だったので別によかったのだが、
「せぃっ!」
「だっ!」
 …さすがに見ていて飽きてきた。
 二人は表向きには互角である。が、息の乱れを見てみると、優位に立っているのはマルヴィナであった。
セリアスはだんだんと息が深くなってきているが、そもそもマルヴィナは汗ひとつかいていなかった。
いくら好きなことだからって、ここまでいくものなのかなぁ、と
若干呆れ気味に考えていたキルガの視線が、ふっと戦う二人から外れた。
まず初めに視界に入ったのは、自分の師匠ローシャである。
会議に参加していたはずじゃ、と思ったが、次いで現れたラフェットと、
さらにその横の生真面目な顔つきの坊主頭の上級天使を見て、
もしかして、マルヴィナに何か用があったのか、と考える。
「…あの人、イザヤールさんだっけ?」
 剣術をとっていた幼なじみフェスタの問いに、キルガは頷く。
「…一番の実力者だと言っていたな。マルヴィナに用事があるのかも」
「マルヴィナに? あぁ…あいつ、未だ師匠が——あ」
 と。

「っせぇやああぁぁっ!」

 フェスタが何かに気付いたのと、マルヴィナが気合いの声を発したのは、ほぼ同時であった。
はっとして視線を戻すと、見えた光景は、
練習用の細剣をひっくり返ったセリアスに突きつけたマルヴィナの姿であった。
「え」
「…? キルガ?」マルヴィナは視線を転じた。「もしかして、見ていなかったのか?」
「見ていなかった」包み隠さず、謝罪交じりに答えるキルガ。
「審判がそれでどうする…」
「いや同じ動きを半時眺め続ける身にもなってほしいんだが」
「半時? …あ、ほんとだ。結構闘ったんだな、わたしたち」
「…………疲れた」
 セリアス、話しかけるなと言わんばかりの返答。
「そう? わたしは別に平気だけど」
「マルヴィナ、剣術になると疲れ知らずだもんなぁ」
 周りの天使たちが頷く。
「でもさーマルヴィナ、強すぎっからさ。さすがに三対一くらいじゃないと無理だって、もう」
「三対一か」マルヴィナは苦笑して、細剣を持ち上げた。
「それもいいな。でも、やっぱわたしは一騎打ちの方が好きだな」
「——私が相手をしようか」
 別の声が返ってきて、マルヴィナがはっとし、天使たちがその声の主に焦点を合わせる。

 ——イザヤールである。

「ちょ、イザヤールっ…」
 ローシャがあわてて咎めようとするが、ラフェットがそれを手で遮った。
若干口の端を持ち上げて、楽しそうな目で彼らを見る。
 誰? と言わんばかりの視線をマルヴィナから受けたキルガは、素早く自分の知る情報を伝えた。
——って言うかなんで剣術とっているマルヴィナが知らないんだよ、とも言われたが。
セリアスがかなり心配げな足取りで部屋の端に避難し、イザヤールは先ほどセリアスのいた位置に立つ。
 マルヴィナは細剣を右手に持ったまま、相手を観察した。
力量がビシビシと伝わってくる。少しだけ緊張した。
「安心したまえ。“命令”は作動させない。が、私は相手の実力がどうであれ、決して手加減はしない。
…良いな」                   コトワリ
 天使は上位の天使に逆らえない。それは、天使界の理である。
上級天使が下位の天使に“命令”というものを発動させれば、それを受けた天使は、
上級天使の望まないことを行動に移すことはできなくなる。
つまり、イザヤールがマルヴィナに動かないよう“命令”を作動させた場合、
マルヴィナは動けなくなってしまうのだが、彼はそうする気は全くない、と言うことだ。
 マルヴィナは彼の実力を知らなかった、が、剣術は大好きだった。
たとえ知らない相手であったとしても、別の天使と戦えることが楽しみであった。
だから、言った。
「お願いします」——が、その勝負は、
マルヴィナが思いもよらない速さで、勝敗がついたのであった——。

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.86 )
日時: 2013/01/21 19:49
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 ———っぱぁん!!


 鍛錬所に、鋭い音が響いた。
 イザヤールは、正眼の構えを元に戻し、相手を改めて観察した。
 目を見開き、何もない自分の右手と、床に落ちた彼女の細剣を呆然と見比べる——マルヴィナ。
「……え…………しょ、勝負ありっ」
 キルガでさえ慌てて、試合終了の合図をした。——ちょっと待て。まだ、始まったばかりじゃないか!
「はっ…はえぇっ…」
 避難し、ボーっとしていたはずのセリアスが、冷や汗を流し呟いた。
自分が『早い』と『速い』、どちらの意味でそう言ったのかはわからなかった。
そしてそれが合図のように、周りからどよめきが起こる。
あのマルヴィナが、あんな短時間で、あっさりと負けた。
相手が優秀な上級天使であったとはいえ、彼らには信じがたいことであった。
 が、当然、一番焦りを隠せていないのはマルヴィナである。
剣術を初めて行った時から、負けなしの実力を持っていた。
闘うごとに、鍛えるたびに、強くなっていった。それは誇りでもあった。
が——今、ここで、負けなしの女剣士は、その称号を変えることになってしまった。
——それが、悔しかった。
「——————————っ…ありがとう、ございましたっ…」
 確かに、勝てるかもしれない、などとは考えてはいなかった。
そこまで自惚れではなかった。何が悔しいのか。
それは、ここまで早く、こちらの攻撃が決まらぬままに、勝負が終わってしまったことだった。
 頭を下げたまま、なかなか上げないその少女に——イザヤールは、話しかける。
「これは“勝負”だと…侮っていたな」
「え」
 いきなり何を言い出すのかと、一瞬思った。つい、顔を上げる。
「これはただの“鍛錬”だと——どこかで、そう思っている。それが、今回の敗北の理由だ」
 マルヴィナはきょとん、とした。その通りだ。鍛錬なのだから。
——だが、何故? それが、敗北の理由?
「物を習うのに、手加減は不要。鍛錬だ、練習だと思えば、自然と手を抜いてしまう。それが心情だ。
…常に、次はないと考える。そうすれば、その才能はさらに開花するだろう」
「開、花」
 マルヴィナは、復唱した。きっ、と、イザヤールの視線を真正面から受ける。
「…“常に本気であれ”——ということですね」
「その通りだ」
 マルヴィナは視線を落としかけ、無理やり上げた。イザヤールの目を見たまま、しっかりと頷く。
 ローシャが目をしばたたかせ、ラフェットが、へぇ、と感嘆の声をあげている。
(たしかに…あの子、イザヤールが僅かに見込むほどの何かがある)
「それから」イザヤールはマルヴィナの細剣を拾い上げた。
「これは、もう少し重いものに変えた方がいい。いささか君には軽すぎるようだ」
「これですか? これより重いものか…わたしに使えるかな…」自問して、はっと顔を上げる。
「いや、やれるか、じゃなくて…やるのですね!」
「尤も、ある程度の実績がつけば、その軽さでも十分な戦闘が期待できようが——今は、な」
(あ〜らら、イザヤールの奴)
 普段寡黙な彼が、珍しく饒舌となっていた。彼にすればこれは饒舌範囲である。
ラフェットは、くすりと笑う。
(こりゃ、すっかりあの子気に入ったみたいだね。多分、これならあの子の師匠には——)
 それから、イザヤールがマルヴィナをめぐる会議中に自分が彼女の師匠になることを申し出たのは、
数日後のことであった。


 ——そんなことを思い出したマルヴィナは、ふっと目を開けた。意識の中に、
相変わらず鳴り続ける波の音が飛び込んでくる。
 …なぜ、こんなことを思い出したのだろう。…あぁ、そうだ。月だ。
あっさりと細剣をはじいた彼の背には、黄金に輝く月が見えた。まだ、夜になりたての空だった。
 あれが、印象的だったのだ。


 …当てもないところへ視線をさまよわせたまま、マルヴィナは溜め息をついた。
何処かへ行っていたキルガが戻ってくる。情報収集していたらしい。
その後、オリガも小走りで戻ってきた。マルヴィナはもう一度、無意識に目を閉じた。

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.87 )
日時: 2013/01/21 19:54
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

    あぁもうわたしの馬鹿また忘れていた人物紹介





         【 Ⅵ 】   登場人物紹介。

 __マルヴィナ__
   人間界では19歳の元天使。
   『職』は魔法戦士で、称号は“天性の剣姫”。
   称号の通り、剣術においてずば抜けた実力を持つ。
   自分の中に眠る謎の能力と記憶にとまどいを見せ始める。

 __キルガ__
   元天使でマルヴィナの幼なじみ。
   『職』は聖騎士、称号は“静寂の守手”。
   冷静で知識豊富でついでに容姿がいい。
   マルヴィナに好意を寄せるが気付いてもらえない。

 __セリアス__
   元天使、マルヴィナの幼なじみ。
   『職』はバトルマスター、称号は“豪傑の正義”。
   記憶力は抜群。戦いに関しては誰にも負けない。
   仲間に近づく不埒な男共を毎回悉く追っ払っている←

 __シェナ__
   セントシュタインで出会った、銀髪と金色の眸を持つ娘。
   『職』は賢者、称号は“聖邪の司者”。
   元天使の一人らしいが、その話題には触れたがらない。
   のんびりとした性格だが、よく火に油を注ぐ発言をする。



 __サンディ__
   自称『謎のギャル』の超お派手な妖精(?)。
   やや強引な性格。人間には姿が見えない。

 __オリガ__
   ツォの浜の十三歳の少女。
   海のヌシを呼び出す力を持っているという。

 __ツォ村長__
   ツォの浜の村長。人々の評判はあまりよくない。
   富に忠実な性格。

__トト__
   ツォの浜、村長の息子。十三才。オリガの友達。
   親がいない、一人暮らしのオリガを心配する。

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.88 )
日時: 2013/01/21 19:58
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

       3.




 日付が変わり、日が昇る少し前の時間帯となった。

 マルヴィナたち四人は、珍しく全員がぐっすりと眠った。
大抵、マルヴィナやキルガあたりが寝られない、とか言ってずっと起きていたりする。
野宿する場合、明らかにこの二人が不寝番をすることが多かった。
多分寝られた原因は、オリガとの夜遅くまでの会話と、耳に届く優しい波の音と、
シェナがこっそりお茶にいれた睡眠薬が原因だろうが——当然、最後の事実は本人以外知らないのだが。

 が、当然村娘であるオリガは、この明朝にしっかりと目を覚ましている。
 オリガは、隣で規則正しい寝息を立てるマルヴィナとシェナを見て、考え込む。
 自分が海のヌシを呼ぶことについて。
 マルヴィナは、海のヌシに頼るのはよくないと言っていた。が、シェナは、それもそうだが、
村が滅びるのを防ぐために、時には何かに頼ることも必要だと言っていた。
 二人の意見はどっちも正しい。
が、それでもオリガは、どうしても今の生活が間違っているようにしか思えなかった。
 オリガは、これ以上ヌシを呼ぶのが嫌なのである。昨日の夜、村長に呼ばれた時、
そのことを言ってみたりもした。が、当然の如く、彼はそれを許してはくれなかった。
 確かに、貧しくなったわけじゃない。不幸になったわけじゃない。
むしろ、周りの人々の笑顔は増え、豊かにもなった。けれど、納得いかない。
間違ってる、そう思った。あの海の、巨大なぬしさまに頼って、漁をやめる。漁が滅びていく。
それだけは、耐えられない。

 そうよ。こんなの、間違ってる。あたしのお父さんは、村一番の漁師だった。
あたしも、女で、幼いけど、絶対父さんの仕事を受け継いでみせるって、決めたんだ。
なのに…今は、こんな状態。
絶対に、こんなの、よくない。なのに、どうして村長様は聞いてくれないんだろう。

 確かに、村長はいい人物である。
評判は良くはないが、村人の心配はしてくれるし、一人暮らしのオリガを
村長宅に来ないかとまで誘ってくれた。
しかし、富に目がくらみすぎる、あの性格は、どうしても好きになれなかった。
それがなければいい人なのになぁ、と思う。
 オリガは急に、ばっ、と顔を上げ、立ち上がった。
 ようし。もう一度、言おう。これ以上、お祈りはできないと。
 少女は、くすんだ顔と対象の、きらきらと強く光を話す瞳を瞬かせた。

 オリガのいなくなった部屋に、マルヴィナの呻き声が聞こえる。
何か夢にうなされているのか——いやそもそも天使って夢なんか見んのかな? とかなんとか考えつつ、
サンディはパタパタとメイクし、髪をセットしていた。
 が、彼女にとって、マルヴィナがどんな夢を見ているのかは気にする対象にあたっていない。
思うことは、
(うるさいなーもう)
 なんてことである。
(あ〜も〜、寝てるときくらい静かにしなさいっての!)
 しかしマルヴィナがそこではい分かりましたと言って寝言をなくすわけでもなく。
サンディは呆れたが、その後何を思ったか、にやっ、と笑う。
「起こしてやりマスか」
 ぱんぱん、と手を払い、少し下がる。狙いをマルヴィナに定め。
「せ—————————のっ!!」
 激突!
 ——どかっ、という、まるで木箱にでもぶつかった時のような凄い音がした。
「……………………ぃぃぃぃいいいたぁぁぁぁあああっ!!!?」
「んはっ?」
 マルヴィナ、サンディの悲鳴で起床。次いでシェナも。
「んあー? なにー?」
 と呟いたシェナは、長いぼっさぼさの銀髪を振り乱し、
左目を隠し一方の右目を半眼にしていた。凄く怖い。
「………………………………………」
サンディは、後頭部をおさえ、マルヴィナを睨む。もはや自業自得であったことは関係ない。
「あ———〜…おはよ、サンディ。今日も派手だね」
 サンディが口をパクパクさせる。恨めしげな視線に、マルヴィナ無視、というか気づいていない。
「あぁ…よく寝たな…あれ、オリガは?」
「知らん」
 外だと素直に答えてやる気にもなれず、返答する。
「んー、お祈りのぉ時間なんじゃなぁい?」
 シェナが寝ぼけ眼で言う。起きたての彼女はいつもこんな感じである。
戦闘中や物事を考えるときの凛々しさとはどう見ても程遠い。
「いや、それにしては早いん…シェナ、怖い怖い怖い!!」
 シェナの辛うじてさらしてあった右目までもが銀髪に隠れる。
どよーん、と無造作に垂らした髪が頼りなげにふらふらしていた。
というか暗闇で見たら間違いなくシェナを知らない一般民は気絶するだろう。
「そーぉ? …ふぁぁぁあ」
 祈りの時間云々の返答か、怖い×3の答えか、いずれにせよそう答え、あくびをし、
ようやく、起きるか、と布団から這い出てきたその時、ドアが激しく乱打された。
「ん?」
 マルヴィナが、ややはっきりした目でドアに向く。
「おいっ! いるんだろ旅人! お前らオリガに何を吹き込んだ! 出て来い!」
「着替え中よ。変態」
 シェナが寝ぼけ眼にしては正当な意見を述べる。少々不機嫌だ—寝起きだから仕方ないが—。
「あぁ? 何だって? 出てこないなら、ぶち破るぞっ」
「えぇ? ちょっ、今はちょっと」
 シェナの焦燥虚しく、ドアが開く。声の主と思しき男が部屋の中を睨んで、
しばらくして呆然と動きを止めた旅人の女二人と目が合い、内一人が下着姿ということに気付き。
「っ変態———————————っ!!」
 シェナに叫ばれ、マルヴィナに剣の柄で尻をブッ叩かれたという散々な目にあった。


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