コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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青い春の音【完結】
日時: 2013/12/07 21:38
名前: 歌 (ID: VXkkD50w)



「青い春の音」の番外編、短編集
「青い春の心」もよろしくお願いします。

「青い春の音」の続編
「青い春の恋」始めました。


2013.6.14に始めて2012年冬・小説大会で
「青い春の音」がコメディライト小説部門で
金賞を取ったことを知りました。

投票してくださった方がいてくれたのに、
お礼も言わず本当にバカだと自分に呆れます。

改めて言わせてください。


本当に本当に、ありがとうございます!!!


まだまだ続くので、これからも
よろしくお願いしますm(__)m






出会うべくして出会えたこと。
かけがえのない“仲間”




性格も価値観も生き方も
全然違う私たちが出会えた。


そして、そこから始まるさまざまな音の物語。

それはキレイだけではないけど、
不協和音も聴こえるかもしれないけど、

私たちは間違いなく、自分たちそれぞれの
音を奏でていた。


純粋で自然な音を。


空と海と風と鳥に向かって、
ただ紡ぐだけで心が満たされる音楽。


さまざまな想いを抱えながらも、“仲間”
という絆から徐々に芽生える気持ちとけじめ。

淡い恋心さえもそこには含まれていた。



楽しい時だけが
仲間じゃないだろ?
オレ達は
共に悔しがり
共に励まし合い
生きてゆく
笑顔の日々を






—登場人物—



名前(年齢)性別-担当する楽器
(他にできる楽器)-アカペラで担当するパート


カンザキユウ
神崎悠(16)♀-ピアノ(バイオリン、
アルトサックス)-リードボーカル
サバサバで自由人。
好きなことを好きなだけやる。


キドウヤマト
鬼藤大和(17)♂-アルトサックス
(トランペット2nd)-コーラス
極度の負けず嫌い。
俺様なところが多少ある。照れ屋。


ツキナミクウガ
月次空雅(16)♂-トランペット1st
(ドラム)-ボイスパーカッション
空気が読めないポジティブバカ。
練習をあまり好まない。


タチバナツクモ
橘築茂(18)♂-バイオリン
(コントラバス)-コーラス
知的でクール。常に計算、
計画通りに進めたい。


オギハラヒュウガ
荻原日向(17)♂-テナーサックス
(アルトサックス)-コーラス
常に穏やかで優しい。
しかし、自分の意思はしっかり持ってる。


ヒムロレオ
氷室玲央(19)♂-コントラバス
(バイオリン)-ベース
常に眠たそうにしている。
一見無愛想だが、天然で真面目。


カスガイコウ
春日井煌(20)♂-バイオリン
(ピアノ)-リードボーカル
しっかり者で頼れる。
練習はスパルタで熱い。


後にしっかり説明します。



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第21音 ( No.208 )
日時: 2013/05/09 22:02
名前: 歌 (ID: Oh9/3OA.)



夜明けがいつも心の中にいるとしたら、
ドアノブをゆっくり回さずとも、
扉はいつか自然に開いてくれるのだろう。


朝が優しく、来るように。




「おはよ〜」

「はよ」

「おっす!」


まだ誰も起きている気配のなかった時間に
1人起きて、静かにピアノを奏でてから。


支度を済ませてお食事会場に向かうと、
空雅と大和はすでにご飯を口の中に
詰め込んでいた。


「悠、おはよう」

「ハロー日向。築茂も。あれ、煌と玲央は?」

「煌は朝風呂。玲央はまだ部屋で寝てるみたい」

「うん、だと思った」


バイキング形式になっているため、食事を
取っていた日向と築茂。


玲央のことを起こしに行こうかとも思ったけど、
煌が風呂の帰りにしてくるから大丈夫、と
日向ににっこり微笑まれ。


その真意が分かってしまったので、大人しく
頷いておいた。



本日も晴天なり。


私も小さいお皿にフルーツと野菜、白米と
水を持って席に着いた。



「ちょっと空雅!食べ散らかしてるし!汚いから
 そんながっつかないでよ〜」

「ふぇ?だってめちゃくちゃうめーんだもん!
 悠もせっかくだから少しはまともなもの
 食べろよ。おいしいぜマジで」

「はいはい。バイキングなんだしいっぱい
 あるんだから、おかわりもしなよ」

「お、そうだな!」


軽く話をスルーすることに、成功。


目の前に座っている大和は苦笑いで
私を見ていたけど。


だっていくらおいしくても、やっぱり食欲ないし
吐きたくないからね。



しばらくして、玲央を引きずるようにして現れた
煌も、バイキングの前に玲央を突き出すと、
玲央は飛び起きたように、皿を掴んだ。


はは、分かりやすすぎておもしろ!


そんなことを思いながら煌と玲央に、おはようの
挨拶をして、全員がそろった。



「皆様、おはようございます。お食事をされた
 ままでよろしいのでお聞きください」



どこから現れたのか、ムウさんが開いた手帳を
片手に、私たちの目の前に立っていた。



今日、午前10時に風峰さんが来てこれからの
ことを説明すること。

それまでに自分たちがやってきた曲名や
レパートリーを書き出しておくこと。

説明の後にいくつか曲を披露すること。


と言った内容をムウさんはテキパキと
話し、私たちは食事が終わってからすぐに
多目的ホールへと楽器を持って向かった。



「8時30分からチューニングと基礎練習やる
 からそれまで各自でいつものように」



必ず練習する前に聞く煌の言葉に、誰も
返事はすることなく楽器と向き合う。


私は先にピアノでいつも自分がやっている
基礎的なものをしてから、バイオリンでも
ロングトーンをやった。


これが私たちの音楽をする上での、基本。


チューナーでしっかりチューニングを
済ませてから、煌と築茂とバイオリン同士
だけのチューニングをする。


大和と日向と空雅は3人で音程を合わせて、
全員の準備が整えば、玲央の深い音に
合わせていく。



この時間は、私たちに用意された時間。



満足いくまでしっかり音程を合わせ、
ちょっとずれていればネックを回したり
マッピを動かして音程を調整する。


音程を合わせるためには、心がぴったり
合わさっていないと合うものも合わなくなる。


だから何よりも心は大切にしてきたんだ。



「よし、じゃぁいつものようにやるよ」



それから私たちは普段やっているものを
さらによくするために、いろいろ
意見を出し合いながら練習を進める。


曲を奏でているときも好きだけど、私は
こういう基礎の練習も好き。

どんどんいい方向に向かっているって
思うことができるから。


ただ、空雅だけが集中を切らしてたまに
ぐれることがあるんだけど。


今日は風峰さんが来ると分かっているからか、
真面目にトランペットを構えていた。



それからはもう、私たちの音楽が時間を
忘れるほどに流れていく。


慌てて楽器を一応ケースに戻し、食事会場に
駆け足で向かったのは、時計が10時数分を
差していたことに、日向が気付いた時。


あまりにも夢中でやっていたから、風峰
さんとの約束の時間である10時を忘れていた。


会場に入れば、何か大事そうな書類を、
眼鏡をかけながら見ていた風峰さんが
顔を上げた。


「お待たせしてしまってすいませんでした!」

「あっはっは!全然構わないよ。私もさっき
 きたばかりだし、沖縄の人は本当に時間に
 ルーズなのかも興味深かったからね」


頭を勢いよく下げた煌を見ながら、
楽しそうに微笑む風峰さん。

確かに沖縄の人はほぼ全員と言っていいほど、
約束の時間に来る人はいない。

予定時刻よりも1時間遅れなんてよく
ある話だし、ね。


いや、私は、沖縄の人間じゃないから
違う………はず。



「さぁ、それでは説明をしようか」



それぞれ空いている席に適当に座り、
風峰さんからホッチキスで留めてある
紙を1人1つずつ渡された。


そこにはコンサートの内容や時間、
どのように構成されているのかなど
事細かく書かれていて。

真剣な表情で説明をしてくれる風峰さんの
姿を目の当たりにし、ようやく事の
重大さを認識した。


いや、フランスにいるだけですごい話だと
思わなきゃいけないんだけど。


1時間ほどミーティングを終え、分からない
ことがあれば連絡するように、と
シンプルな名刺ももらえた。

私たちが動画サイトでアップしている曲や、
していないものも含めた曲数を書き出した
紙を渡してから。


多目的ホールで、さっきまで練習していたものを
披露すると。



「素晴らしい!細かいことはこれから指摘
 していくが、全体のバランスとしては最高だ。
 これからコンサートへ向けて、さらに
 よくしていこう」



有難すぎる言葉を、もらった。




とりあえず、明日から本格的な練習と講師を
紹介すると言われた。


だから今日は、好きにフランス内を観光
してきなさい、とユーロの入った分厚い
茶封筒を煌の手に、乗せた。


その言葉に一番飛びついたのは、やっぱり
好奇心旺盛な空雅。

そして以外にも、築茂が眼鏡の奥の瞳を
嬉しそうに、細めた。


煌と日向も早速どこに行こうか、計画を
始めていて、大和は腹減ったーとぼやいている。


眠気が一気に冷めたのか、それとも漫画を
描かなくてもいいから昨夜はしっかり
寝れたからなのか。


目をぱっちりと開け、窓の外にいる鳥を、
優しい眼差しで、眺めていた。



「よし、それじゃ、やっぱ最初は無難に
 エッフェル塔に行きますか!」

「私がお供させて頂きます」


それまで私たちの座っていた席からちょっと
離れた扉の前で、姿勢を崩さずに立っていた
ムウさん。


「車はすでに外に用意してありますので、
 どうぞお乗りください」


そう、甘い笑顔を零すムウさんに、ありがとう
ございます、と笑顔で返すと。



「恐縮です。神崎様、フランス街に出るのですから、
 ちょっと失礼いたしますね」



……え、何々?

突然、私の肩を掴んでちょっと強引に席に
もう一度座らせ、ムウさんの手が私の髪に触れた。


第21音 ( No.209 )
日時: 2013/05/10 20:58
名前: 歌 (ID: Z/MkaSMy)



どく、ん。


何だろう、と思いながらも大人しく
座っていたら。



「はい、もうできましたよ。服装やメイクは
 神崎様のセンスが抜群なので、髪型だけ
 いじらせて頂きました」



そう言って差し出された手鏡の中に映る
私の髪は、右耳の下当たりで整えられていた。



ピンクの生地に黒猫がプリントされている
シュシュがついていて、スッキリして
いるのに、ふんわり、しっとり、上品に見える。


どく、どく。




「……ありがとう、ございます!」

「いいえ。とてもお似合いです」

「ゆ、悠!?」

「あはっムウさんにやってもらっちゃった」


私が遅いことを気にして呼びに来た日向と
目が合った瞬間、日向の顔は真っ赤。


「に、似合ってるね!」

「へへ、ありがとう」

「では、参りましょう」





嬉しそうに私を見下ろすムウさんに、
もう一度ありがとうございました!と
笑顔で言って。


車に、乗りこんだ。






私が車に乗った瞬間、先に乗っていた
人は目を丸くして驚いたり、ちょっと
頬を染めたりしていたけど。

すぐに、それぞれの褒め言葉を、くれた。






ムウさんが運転してくれるリムジンは、
ここからさほど遠くないエッフェル塔へと
向かう。





車の中でもエッフェル塔の知識を築茂が
ペラペラと話してくれたり、この後はどこに
行こうか、など会話は途切れることが
なかったおかげで。








さっきっから、不審な動きをしている
私の心臓に。









見て見ぬフリが、できた。












車の中から見るエッフェル塔と実際に
目の前で見るのとでは、迫力が全然違う。


「すっげぇー!でけぇな。東京タワーと
 どっちのが高けぇんだ?」

「エッフェル塔は320m、東京タワーは
 332.6mだからまだ東京タワーの方が高い」

「へぇ。でもエッフェル塔のほうが
 大きく見えるねぇ」


腰に手を当ててエッフェル塔に向かって
思いっきり指を差して叫んだ空雅に、築茂は
ベシッとその指を叩き落とす。

築茂の説明に頷きながら、日向は目を
細めて感嘆の息を漏らした。


本当に、大きいなぁ。


頂上から見える景色もまた最高なんだろうけど、
そこまで登る体力がないからやめておこう。


「写メ撮ろうぜー」


と、以外にも以外、大和が携帯を取り出して
全員を集める。


「こんなことならデジカメでも持って来れば
 よかったね」

「別にいいんじゃね?楽しければ」


苦笑した煌に、大和は笑って答える。



「では、私が撮りましょう」


ムウさんが大和から携帯を受け取り、
私たちは無意識にいつもの順番に
並んでいた。


真ん中が私、両隣に大和と空雅、大和の隣に
築茂、空雅の隣に日向、両端が玲央と煌。


何がどうなってこうなったのかよく分からないけど、
たぶん身長の順になっていると、思う。



「では行きます。はい、チーズ」



カシャ、としっかりシャッター音が鳴って
写真が撮れたことを確認すれば。


それからはもう、変顔をしたり隠し撮りをしたり、
好き勝手にそれぞれの携帯で撮り始める。


この時期は観光客がまだ少ないほうなのか、
それほど人は多くはなかったから、丁度いい。



玲央とツーショットを撮っていると、
優しく微笑んでいるのに、どこか。


悲しそうな、切なそうな瞳が、向けられて
いることに気付いて。



「ムウさん!一緒に撮りません?」



慌てて、携帯片手に、ムウさんに笑顔で駆け寄った。



「私と、ですか?」

「はい!さぁ、撮りましょ撮りましょ」


強引にぐいぐいと腕を引っ張って、絶妙な
ポジションに2人で肩を寄せて並んだ。


内カメラにして私が携帯を上に上げる。


「ここがカメラなので、ここを見て下さいね」

「……はい」



ど、くん。



にっこりとほほ笑んだムウさんに、また
さっきと同じ心臓が動き出した。


慌てて私も笑顔を見せて、カメラに目線を
移して、そのままカシャ、と。


ちょっと震えた指で、撮った。



「ありがとうございます!たくさん、
 写真撮れてすっごく嬉しいし、楽しい!」


思っていた以上に、テンションが上がっていて
心からの笑顔でムウさんにお礼を言った。


相変わらずムウさんは、甘い笑みを
零しているだけ。



「悠!ムウさん!ジュース売ってるけど、
 何がいい?」


と、煌の声が聞こえて振り返ると、物売りを
しているところに寄ってたかっていた。


「飲む飲む!何があるの〜?ムウさん、
 行きましょう?」


無意識にムウさんの手を取って手を引くと、
「はい」とまた甘い笑顔。


どく、どく、どく。


さっきっからおかしな私の心臓には、
相変わらず見て見ぬフリを決め込んだ。



それから有名な観光地をあちらこちら
行っては写真をバカみたいに撮って。


昼食はさすがはフランス、オシャレな街並みに
オシャレなカフェなんて、いくらでもあった。


私は相変わらず、飲み物とちょっとした
野菜だけを口にして、むしゃむしゃと食べる
猛獣たちの姿を微笑ましく、見ていた。


うわ、微笑ましいとかそんな表現、絶対
私に似合わない。


心の中で激しく自分の気持ち悪さが可笑しくて、
ふふ、と笑ってしまった。


「……神崎様?」

「え、あ、はい」

「どうされました?」

「いや、なんだか自分が気持ち悪い人間だなって
 改めて思ったらつい笑いが」


私の隣のイスに浅く腰を掛けて、ピンと
背筋を伸ばしているムウさんが、
私の顔を覗き込んできた。


私の答えに何か不満があったのか、ぐっと
眉を寄せたムウさんのそんな顔は、
初めて見るもので。


なぜか、ぐ、と胸が締め付けられる。



「神崎様が気持ち悪いなんて聞き捨てなりません。
 あなたはとても魅力的な方、美しいです」



は、はぁ………あのね、ムウさん。


そんな甘ったるい言葉を私なんかに上げちゃ
ダメですって。

いや、普通の女の子なら顔を赤くしてキャーとか
乙女チックな反応をするんだけろうけど。

残念ながら私はそんな心は持ち合わせていないので、
私とムウさんの雰囲気を察知して痛い視線が
注がれていることにため息を吐くしかないんです。


と、言うわけにもいかず、曖昧な笑みを
見せてお礼だけは言っておいた。




「……悠!これ、やる」


と、目の前の席に座っていた大和がフォークを
突き刺して私の口の中に無理やり押し込んだのは。


「ん、うま」

「だろ?」


甘酸っぱい、私の大好きな、キウイフルーツ。


昔から野菜とフルーツは大好きで、その中でも
キウイは格別に好き。

大和は満足したのか、にやりと口角を上げて
また自分の食事に専念し始めた。


第21音 ( No.210 )
日時: 2013/05/11 21:06
名前: 歌 (ID: .niDELNN)



それ以上、何も食べずにただひたすら飲み物
だけを口にする私に、ムウさんから心配の
言葉をもらったけど。


大丈夫です、と強くはっきりと返して
笑って見せた。



それからも贅沢すぎる観光は続いて、新たな
発見が次々と。


あの築茂が凱旋門を目の前にした時には、
それはもう子供の用にあっちこっち1人で
歩き回って嬉しそうな顔をするし。


何に対しても興味をあまり持たない玲央が、
ルーブル美術館の中に入った瞬間、
目を輝かせて絵画に霧中になってたり。


いっつもうっさい空雅なのにフランスの
凄さに圧倒されたのか、静かに観光していた。


写真を撮るときの日向と煌の変顔は、いつもの
大人びた表情と穏やかな笑顔とは全くの
別人なんじゃないかと思ったくらい。


ぶっきらぼうで俺様な大和なんか、段差が
あったりすると紳士的に手を差し伸べてたりさ。


怖いくらいに、人が違ってるような……。


でもそれだけ、みんながいつもと違う景色を
心から楽しんでいるってこと。


何よりも新しい彼らの一面を見れたことが、
無性に嬉しくなった。



やっぱりムウさんはフランス人なのか、流暢な
フランス語でお店や店員さんと会話をして
くれたおかげで会話の壁もなかったし。


フランス語で書かれた説明も、難なく
通訳してくれた。



一体何者なのかは、分からないけど。




そんなこんなで、19時前にペンションへと
帰宅……って言っていいのかな。


大切なことはひょいひょいと耳を通り過ぎる
空雅のくせに、夕食の時間だけははっきり
記憶していたせい。


確かにペンションのご飯はごちそうだし、
私も食べれることなら食べたいけど、
まだそんな気にはなれないから。


それでもちょっとずと、野菜の量を増やし
つつあった。





夕食を済ませたらそれぞれお風呂に入って、
20時30分に多目的ホールで夜の練習をしようと
いうことになった。





これまでの練習量で良いわけもなく、
築茂や煌は毎日楽器に長時間触れている。




でも日本を出てから今の今まで、毎日
触れていた半分の時間にも満たない。





少しでも長く楽器に触れて、コンサートへの
準備をしっかりしないとね。







タオルも浴衣も脱衣場にあるし、洗面用具も
昨日のうちに定位置を確保しといたから
持ち物は携帯だけ。





脱衣場の中に入り、ふと鏡に映る自分の姿を
見つけて、はた、と。






黒髪に、触れた。




右耳の下でゆるくお団子にされている、
ムウさんがしてくれた、髪型。





シュシュを返さないと、とか。

崩すのもったいないな、とか。





鏡に映る私の表情は、もう長い間忘れかけて
いた表情をしているような気がして。







慌てて髪を、ほどいた。




シャワーで身体と髪の毛を洗って高い位置で
まとめ、ちゃぷ、と広すぎる浴槽に入る。





灯りのせいなのか、私の色がもともとなのか、
底に沈んだ私の両脚は、真っ白。





うわ、大根みたいで気持ち悪っ。






そういえばムウさんも色白だったなぁ。

柚夢も白かったっけ。





大和はちょっと焼けてて、空雅は初めて
出会った時の小麦色はさらに色を
増したような気がする。



煌と築茂は普通、かな。



ロシアで育って家の中で漫画を描いている
玲央はもちろん白いし、日向も透き通ってるよね。





今日は本当に楽しかったなぁ………。





彼らとの思い出が確実に増えて来ていて、
それを思い返すのも楽しい。





ちょっと前までは、過去を振り返るのなんて
嫌ですぐに忘れていたのに。





それがいつの間にか、もっとたくさんの
思い出を作りたい、と無意識に思っていた。






目を閉じれば、今日見た風景や澄んだ景色、
彼らの笑顔が次々と展開される。





ふと、頭に浮かんだ、音。








………あ、曲、作れる。








そう思いながらももう少しだけ瞼を閉じたまま、
頭の中で曲を作っていく。





知らないうちに鼻歌を歌っていたりして、
身体がリズムを刻んでいた。







最後の音を決めたとき、思い浮かんだ笑顔が。




あまりにも甘くて綺麗な、ムウさんの笑顔だった
ことに、驚いて弾かれたように目が見開いた。






早くしないと音を忘れてしまう、そんな
ありきたりな理由を誰に言うわけでもなく。










ザバッと、湯船から出た。













着替えをして時計を見ると、まだ20時30分まで
には時間があったからムウさんにシュシュと
ピンを返しに行こう。





まだ湿ったままの髪の毛を乾かすことを
考えられなくなるほど、その時の私は
どうしてか、心が焦っていた。








「あ、いた」





「………神崎、様?」



食事会場を覗いてみたけどいなくて、適当に
廊下を歩いていると、ロビーの外にある
ベランダらしきところにムウさんの後ろ姿を発見。





空いていた窓からひょこ、と顔を出して
声を漏らすと、ムウさんは驚いた表情で振り返った。







「これ、返そうと思って」







外に出ようと足を踏み出したけれど、その空気が
思っていた以上にひんやりとしていて。





手の上にのせたシュシュとピンだけを突き出した
まま、身体は室内で留まった。







「……いえ、こちらは差し上げます」




「え?いいんですか?」




「もちろんです。他にもシュシュ、たくさん
 ありますが、神崎様に差し上げます。
 カチュームなどもありますよ?」






また、甘い笑顔。

それなのに、どこか。









儚げにも、見えた。











突き出している手を私のほうに押し返して、
寒いですね、と室内へと入るムウさん。







「いや、でも私そんなにもらっても………
 自分でやらないので」




「それなら、私が毎日させて頂いても
 よろしいですか?」




「へ?」






おいこらー!!



へ?ってなんだよへ?って!!!

もっとマシな返しがあったでしょうが!!







「神崎様がよろしければの話ですが……
 ぜひ、やらせて頂きたいのです」







どく、どく。






あぁ……また、あの不審な動きをする
心臓が出てきちゃったよ。







「あ、えーっと……よろしく、お願いします」







そう、ぎこちなくだけどはっきり言った私に、
ムウさんはこの世のものとは思えないほどの。







誰かに似ている微笑みを、私だけに向けた。








第21音 ( No.211 )
日時: 2013/05/12 19:25
名前: 歌 (ID: SqYHSRj5)


どくどく、どくどく。






あー……もう、私の心臓やかましいったら
ありゃしない。





いい加減、正常に戻りなさい。








「……それより、神崎様」




「はい?」







一度静まりかけてた心臓は一転、次のムウさんの
言葉でさらに煩くなる。










「そのような色っぽいお姿を、夜に見せるのは……
 誘っているようなものですよ?」











と、妖艶な笑みを浮かべた。








少しずつ私との距離を縮めてくるムウさんを、
その度に私は顔の角度を上げていく。





恐らく、煌と同じくらいの身長のムウさんから見たら、
私は小さいものなのかもしれない。



す、と差し出された指は、まだ水分を十分に含んだ
黒髪を一束、掬って。






ちゅ、と1つのキスが、落とされた。









「……早くお部屋で、乾かされないと
 風邪、ひきます…」









絡み合った、視線。

コバルトブルーの、美しい瞳。





その中に映っている私は、どんな色に
見えているんだろう。







だってその瞳が、あまりにも。











切なげに。

悲しげに。

苦しげに。















…………揺れていた。


















見てはいけないものを見てしまったような、
気がする。






気付いてはいけないような、気がする。








「そ、そうですね!シュシュ、ありがとうございます!
 ではまた明日。おやすみなさい」







半歩、左足を後ろに下げれば必然的に
身体も少し後ろに傾く。





そのまま、ムウさんと距離を作った私は、
笑顔でお辞儀をして、その場を去った。









どくどくどくどく。





……うるさい。







どくどくどくどく。





…うるさい。







どくどくどくどく。





うるさいってば!!!!











「……っ………」











階段を駆け上がれば、すぐに着いた
私の部屋のドアを、思いっきり閉めた。





誰ともすれ違わずに済んだことが
何よりもの救いだと思う。







だって今の私は、おかしい。









ぎゅ、と胸の前で握りしめていた指は青白く、
指先は紫にも見える。





窓越しに映る私の顔は自分でも驚くほど、
血の気がなくて。







身体全身が、震えていた。









その場に崩れるようにして座り込み、
ぎゅっと自分の身体を抱きしめる。






違う。

絶対に、違う。








そう、何度でも頭の中で繰り返す言葉は
まるで自分のためだけの呪文。






そうであってほしいと、何度も
願ったことなのに、いざ目の前にすると、
恐くて堪らない。







……大丈夫、すぐに元通り。






ほら、私の目はしっかり時計に向けられていて
20時30分になろうとしているのを見たら、
自然に多目的ホールに足を向けている。





髪の毛は乾かすのを忘れていて、そこを誰かに
突っ込まれたけど、適当に笑って流せている。






そして、ほら。

私はいつもの音楽を、している。








何も怖がることなんて、ない。



「……今日の練習は、もうやめよう」

「えっ?」



開始15分、突然の煌の言葉に思考が
やっと覚醒した。

顔を上げると、なぜか全員が私へと
視線を集中させている。



「悠、何があった」

「そんな顔されてたら練習どころじゃ
 ないよ、ね」

「作り笑顔すら全く作れていなかったぞ」


意表を突く大和に、心配する日向、無愛想
ながらも優しさを含む築茂。



「音楽は心、って言ってるのは悠だろ?
 今の悠の心じゃ意味ないんじゃね!?」

「……悠」


バカのくせにこういうときだけ正論を言う
空雅と、掠れた玲央の声。



私はゆっくりと構えていたバイオリンを
下げて、視線を落とした。


……最悪、音楽をしているときに私情を
はさむなんて。


こんな、大切な時に。



「…あはっ、ごめん!実は野菜の量を増やし
 過ぎたみたいで、ちょっと吐いちゃったの」




ごめん。



「……そう、か。無理しすぎもよくないから、
 悠はもう休んだほうがいい。明日から
 本格的な練習だしさ」

「うん、そうする。本当にごめんね、ありがとう」



嘘を吐いて、ごめん。



ちょっと動揺して見せた煌の言葉に甘えて、
そのまま楽器を片付けて自分の部屋へと戻った。


吐いたことを口実にすれば絶対に彼らは
何も言えなくなる、と思って。


私は卑怯な言葉を、発した。



本当のことを言うわけにはいかないし、
私があの場にいても迷惑だったと思うから。



部屋に帰ってもそのまま休む気になんて
到底なれずに、ベランダへと、出た。



……うげ、寒っ!



慌てて浴衣の上から上着を羽織って、
夜空を見上げた。


さっき、お風呂で作っていた曲はいつの間にか、
埋もれて消えかけている。


今日、みんなとフランスを観光して新しい
みんなを見れたことが嬉しくて、勝手に
出来上がっていた曲、なのに。


それが消えてしまったら、今日の想い出も
一緒に消えちゃうんじゃないかな、って
不安になった。


だから、私は冷めた空気を吸って、
思いつく限りに。



音を、つなげた。





心臓を弾き鳴らすわ
強く 荒々しい原始を奏でるの
白鳥の羽を弾き鳴らすわ
空を飛ぶ 自由を奏でるの

熱く 燃え滾る心を弾き鳴らすわ
天に昇る龍の鼓動を奏でるの
寄せては返す波を弾き鳴らすわ
優しい愛撫を奏でるの

流れる血を弾き鳴らすわ
生きている感覚を 喜びを奏でるの
つやつや光る石を弾き鳴らすわ
心の平安を奏でるの

溢れる涙を弾き鳴らすわ
地球の音楽を奏でるの
湧き上がる喜びを弾き鳴らすわ
天使の翼の白さを奏でるの

死ぬまで 死ぬまで
弾き鳴らすわ

肉体を 空を 宇宙を
妖精を 悪を この世界を

鳴り止まない音楽を
愛しているから






空には、沖縄で見る星空とはまた違う
美しさが広がっている。



星をぎゅっと絞って、私の心に垂らそう。


きっと明日は星ビタミンのおかげで、
元気になれると思うから。


明日のため息は、ミント色。
風は、ローズマリーの香り。


私はそんな素敵な明日をかじりに
いきたいから。


今見上げている星が、明日の夜は欠けて
いてもいいよね。


夜空を見上げる私の瞳が、輝いているなら。




さっきの曲はきっと、彼らにはまだ
届いていない。


だから明日にでも、すぐに届けたいな。



………ってか、ちょっとめちゃくちゃ
寒いんですけど!!


どうしてこんなに寒いんだろうと考えて
みたら、まだ髪の毛…乾かしてなかった。


そりゃあ、寒いわけだ。



自分で自分に呆れた笑いが込み上げてきて、
部屋の中に戻った。


危うく冷気を抱きしめて眠るところだったよ。



体調管理はこれからとっても大切になって
くるんだから、しっかりしないと。


髪の毛を乾かしながらそんなことを考えて
いると、携帯のランプが光っていることに
気付いて確認すると。


新着メールが、6件。
中を開いてあらま、ビックリ。



6人から、だった。


第21音 ( No.212 )
日時: 2013/05/14 00:02
名前: 歌 (ID: jtELVqQb)


『無理はするな』

『何があったか言わなくてもいいけど、
 1人で抱え込むなよ』

『今日の観光、楽しかったね。ゆっくり休んで
 明日また、悠の笑顔を見たいです』

『大丈夫か!?悠らしくなかったから
 心配したんだけどー。愛花に怒られるから
 楽しくやろうぜ!』

『寒いから風邪ひかないようにして寝なよ。
 何もできないけど、話すことで少しでも
 心が軽くなるならちょっとでも、話して
 ほしい』

『ゆう、だいすき』



メールが来ていた順とは逆に、上からメールを
開封していくと、名前を見なくても誰からの
ものか、すぐに分かる。


……めちゃくちゃ心配、かけてるんだな。



そう思うとそんな自分が情けなくて、だけど
そう思ってくれる人が身近にいることが
ちょっとくすぐったくて。


ふふ、と頬が緩んだ。




1人1人にしっかり『大丈夫だよ、ありがとう』
と返信をしてから、部屋の灯りを消した。



さっきまで凍えていた心は、彼らの
メール、たったそれだけですぐに
温められていく。


単純だな、と思った。
それ以上に、幸せだな、と思った。



考えても仕方のないことだし、コンサートも
全て終わったら確かめればいい。


今はまだ、タイミングが違う。


だから今日しっかり寝て、明日からまた
音楽と真正面から向き合おう。



羽の生えた、枕。
羽の生えた、夢。


羽のある心で、夜をかけて行こう。


おやすみ、また明日へ。
おやすみ、新しい明日まで。




そのまま私は、ゆっくりと夢の中へと
堕ちて行った。




第22音



朝5時、起床。


顔を洗って朝風呂に入って着替えてナチュラル
メイクをして髪の毛を乾かしたら。


別に約束をしているわけでもないのに、
お食事会場にはやっぱり、ムウさんの
姿があった。



「おはようございます、神崎様。お待ちして
 おりました」

「おはようです。お願いします」



変な日本語を使いながらも、ムウさんは
気にすることなく、イスを引いて
エスコートしてくれる。

無駄な動きを1つせず、最初から机の上に用意
されていたコテとピン、シュシュを
ムウさんは器用に使いこなしていた。



目の前に鏡があるわけでもないから、どんな
ふうにされているのか全く分からないけど。


人の手で、髪の毛を施してもらえるのが
こんなにも気持ちいいんだ、と
窓の外に映る鮮やかな色をした美しい
花々を見ながら、思った。


朝日に照らされてさらに綺麗に輝いている。



………何ていう名前の花なのか、全く
分からないんだけどね。




「あちらにある花は、アマランサス、レッドポピー、
 アグロステンマ、コスモス、ヴィオラですよ」




え、ムウさんってエスパーどころか、花の
名前を九九のようにすらすらと言えるんですか。


聞き取れたの、コスモスくらいでしたよはい。



「それぞれの花言葉をご存知ですか?」

「……ご存知でないです」


というか、存じるわけがございません。


花にはあまり興味がないというか、花の
名前すら覚えようと思ったこともないくらいだし。



そんな私にはお構いなく、ムウさんは
相変わらず穏やか声音で言葉を紡ぐ。



「アマランサスは不老不死、レッドポピーは
 慰め、アグロステンマは育ちのよさ、
 ヴィオラは誠実。コスモスは何だと思いますか?」

「ええぇー……何だろう」


コスモスなんて名前はよく聞くのに、まともに
見たのはもしかしたら今日が初めてかもしれない。


見てすぐにコスモスだ、なんて全く
気付かなかったしなぁ。



そんな私を見て、ムウさんはくすっと小さく
笑いながらコスモスに目を向けた。



「コスモスは乙女の愛情です。でも花の色で
 また変わってくるんですよ。あそこに
 咲いているのは白。白は………美麗、優美と
 言った花言葉があります」



うっわ、私とは縁のない言葉だなこりゃ。



「まさにあの花は、神崎様のようです」


「は、はい!?」



驚きすぎてムウさんを見上げると、動かないで
下さい、と無理やり前を向かされた。


いやいや、だって今日初めて聞いたような単語が
どうして私のようだなんて思うのか、不思議で
たまらないんだもん。


絶対私とは正反対どころか、次元が違いすぎる
言葉だと思います。



「私のようなわけ、ないじゃないですか!」

「いいえ、私から見たら、神崎様はあの
 白いコスモスのように美しく、麗しく、
 お優しい方です」

「………」



何なんですか、この人。


そんな甘〜いセリフをよくもまぁ、こんな
えげつない人間に言えたものだ。


しかもそんな甘い、微笑みを向けて。



「そんなキザなセリフでも、ムウさんなら
 かなりフィットしますね〜。彼女さんに
 怒られちゃいますよ」

「……きっと、相手にしてもらえてないですから」

「あ、ってことは彼女いるんですね!
 どんな人なんですか?」



ギリ、と変な痛みが疼いたのは私の
心じゃないと、信じたい。



「………笑顔が似合う、空のような人です」

「へぇー…とっても大切なんですね、その人の
 こと。ってかムウさんっておいくつですか?」

「………24、ですかね」

「ですかね、ってムウさんらしくない言葉!」



そう言って笑い飛ばさなければ、何が
こんなに心を重くしているのか分からなくて。



泣きそうに、なった。





冗談じゃない。


私の心はゴミ箱ではないんだから、クズみたいな
役に立たないモノ。


悲しみや苦しみ、傲慢や不安なんて心の
中に入れたくなんかない。


私の心は宝箱にしないといけないんだ。


笑うこと、希望を持つこと、楽しむこと、
キラキラの価値あるモノでいっぱいに
していたい。


冗談じゃない。


私の心はゴミ箱ではないのだから、自分の
中に入れるべきモノを間違えてはいけない。


宝箱になりたいのだから。






そう呪文のように何度も何度も心の中で呟いて、
私は平静を装いながら沈黙が訪れないように
会話を投げかける。


常に自分の心を隠し続けてきた私には
容易いことで、私の心の変化をムウさんは
見逃した。



これで、いい。



「そういえば、ムウさんってフランス人ですか?」

「……あ、はいそうですよ」

「えぇ!?本当ですか?」

「そうは、見えませんか?」

「いえ、あまりにも日本語が上手なので、
 ちょっと日本人の血も混ざっているのかと」

「……必死に、勉強しましたから」



それでも私は、ムウさんの心の変化を
見落とすことはなかった。




「はい、できましたよ」



喋っていたから少し時間のかかった髪型は、
鏡の中の自分を見て一瞬、言葉に詰まった。


全体のベースはゆる巻きにされていて、
サイドで綺麗な編み込みがされている。


ちょっとトップがふわりとしていて、そこには
まるで私のイメージとはかけ離れた雰囲気の
私が、いた。



「うっそ……これ、私ですか?」

「当たり前です」


ふふ、と満足そうに笑うムウさん。


もう、昨日まで感じていた不審な心臓の動きは
感じていない。


感じないように、したから。




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