コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 青い春の音【完結】
- 日時: 2013/12/07 21:38
- 名前: 歌 (ID: VXkkD50w)
「青い春の音」の番外編、短編集
「青い春の心」もよろしくお願いします。
「青い春の音」の続編
「青い春の恋」始めました。
2013.6.14に始めて2012年冬・小説大会で
「青い春の音」がコメディライト小説部門で
金賞を取ったことを知りました。
投票してくださった方がいてくれたのに、
お礼も言わず本当にバカだと自分に呆れます。
改めて言わせてください。
本当に本当に、ありがとうございます!!!
まだまだ続くので、これからも
よろしくお願いしますm(__)m
出会うべくして出会えたこと。
かけがえのない“仲間”
性格も価値観も生き方も
全然違う私たちが出会えた。
そして、そこから始まるさまざまな音の物語。
それはキレイだけではないけど、
不協和音も聴こえるかもしれないけど、
私たちは間違いなく、自分たちそれぞれの
音を奏でていた。
純粋で自然な音を。
空と海と風と鳥に向かって、
ただ紡ぐだけで心が満たされる音楽。
さまざまな想いを抱えながらも、“仲間”
という絆から徐々に芽生える気持ちとけじめ。
淡い恋心さえもそこには含まれていた。
楽しい時だけが
仲間じゃないだろ?
オレ達は
共に悔しがり
共に励まし合い
生きてゆく
笑顔の日々を
—登場人物—
名前(年齢)性別-担当する楽器
(他にできる楽器)-アカペラで担当するパート
カンザキユウ
神崎悠(16)♀-ピアノ(バイオリン、
アルトサックス)-リードボーカル
サバサバで自由人。
好きなことを好きなだけやる。
キドウヤマト
鬼藤大和(17)♂-アルトサックス
(トランペット2nd)-コーラス
極度の負けず嫌い。
俺様なところが多少ある。照れ屋。
ツキナミクウガ
月次空雅(16)♂-トランペット1st
(ドラム)-ボイスパーカッション
空気が読めないポジティブバカ。
練習をあまり好まない。
タチバナツクモ
橘築茂(18)♂-バイオリン
(コントラバス)-コーラス
知的でクール。常に計算、
計画通りに進めたい。
オギハラヒュウガ
荻原日向(17)♂-テナーサックス
(アルトサックス)-コーラス
常に穏やかで優しい。
しかし、自分の意思はしっかり持ってる。
ヒムロレオ
氷室玲央(19)♂-コントラバス
(バイオリン)-ベース
常に眠たそうにしている。
一見無愛想だが、天然で真面目。
カスガイコウ
春日井煌(20)♂-バイオリン
(ピアノ)-リードボーカル
しっかり者で頼れる。
練習はスパルタで熱い。
後にしっかり説明します。
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- 第11音 ( No.115 )
- 日時: 2013/01/06 21:32
- 名前: 歌 (ID: 2DX70hz7)
悠の笑顔に日向も綺麗な笑顔を向ける。
「うん、やっぱり俺たちに似合ってる顔は
間違いなく笑顔だよなぁ」
ポロっと出た言葉に、みんなの視線が
一気に俺に集まる。
え、なになに?
俺、今何か変なこと言ったっけ?
「空雅!」
「はいっ…」
悠に名前を叫ばれて思わず反射的に
返事をしてしまった。
「お前、言いこというなぁ!確かにそうだよねぇ」
俺の頭をがしがしと撫でまわす悠。
こういう男勝りは悠も悪くない………
なんて思ってしまう俺って一体なんなんだ?
「悠、それぐらいにしてやれ。さ、
あとは飲むぞー」
大和は早速冷蔵庫からビールを取り出して
コップに注いでいる。
「大和、一応女の家の冷蔵庫だということを
分かっているのか?」
「あ?今更女とか言ってられるかよ。
しかもこの冷蔵庫、俺らが来るまで
役目を果たしてなくて可哀想だったろ」
「それもそうだな」
「ちょっと築茂。転換早すぎません?」
「俺は最初から冷蔵庫の心配しか
していなかったが、何か問題でも?」
「……そうですよねぇ。築茂が私を
庇うわけないですもんねぇ」
こうやってバカ言い合える仲間が
そばにいるって本当に楽しい!
あ、そういえば俺、肝心なこと
まだ言ってなかったな。
「はいはーい!俺は提案したいと思いまーす」
「出たよー空雅の突然の叫び!」
「今度は何やる気ですかぁ?」
悠はきゃはは、と子供みたいに笑って
煌が野次を飛ばしてくる。
俺はソファの上に立ってつい最近、
思いついたことを叫んだ。
「バンドを組もう!!!」
てん、てん、てん。
あ、間違えました、・・・が
正解でしたね、はい。
さぁ、見事にシラケているこの空間を
どうやって水に流そうか?
もしかしたら俺は物凄いことを
口走ったのかもしれない。
もしかしたら日本の歴史に残るくらい、
物凄いことを思いついちゃったのかもしれない。
だってだってだって?
もしこれでバンドを組んで、俺たちが
デビューとかしちゃて、有名になっちゃって、
ヒットとかしちゃって史上初とか
何とかってなっちゃったらヤバくね!?
うわー、あり得なくもないかもかも!
「いや、あり得ないから」
「え」
あっさり悠に切られた俺の儚くもない
分厚い夢。
「空雅、バンドってどういうものか
分かってる?」
「当ったり前じゃーん!音楽をやる
チームのことだろ?」
「………バカが」
日向に聞かれたから自信満々に答えたら、
いつものように築茂からの棘が。
「空雅くん。一旦座ってお話しましょうか」
悪魔の笑顔を張り付けた悠に逆らわずに
大人しく、ソファに座った。
おぉ……恐ろしすぎる。
「空雅くん。いいですか?バンドというものは
ですねぇ。確かに幅広いですが、
7人で編成されているバンドは日本で
今のところ1つしか確認されていません」
「そ、そうなのか!?バンドって
何でもいいんじゃないのか!?」
悠先生に驚きのあまり叫んでしまった。
すると、あからさまに嫌そうな顔をして
耳を抑える素振りを見せる悠。
「具体的に言うと君の頭では理解できないと
思うから簡単に言いますと。私たちの
それぞれの楽器を用いてやるようなバンドは
たぶん、ないです」
「つまり、バイオリン、サックス、トランペット
ってことか?」
「そう。バンドっていうと主にロックバンドか
ジャズバンドが一般的だよね」
「ギター、ベース、ボーカル、ドラム。
たまにキーボードがあったりする4、5人が
一番多いんだ。つまり、俺たちには
全く適していない」
悠に続いて煌も分かりやすく説明をしてくれる。
「ジャズバンドはジャズコンボっていう少人数の
編成によるバンド、大人数のビッグバンド、
スウィングジャズバンドがある」
「築茂、最後のは空雅と大和と玲央には
さっぱりだからいいよ」
あ、俺だけじゃなくて大和と玲央も
仲間だったんだな!
よかったぁ。
安心した顔を2人に向けると大和はむすっと
して、玲央には目を逸らされた。
そんな俺たちには構わずに煌が話を続ける。
「ジャズバンドはテンポやリズムも独特で
難しいのが現実。もちろんロックバンドだって
それなりの実力がなきゃできない」
「ま、遊び感覚でやる分にはいいと思うけどね」
優しい日向は俺の考えを少しでも
分かってくれようとしている。
さすが王子様……!
「確かにそうかもね。別に本格的にやらなくても
好き勝手に吹いて楽しければそれでいーかも」
「俺は楽しそうだから全然いーけどな。
前だってそれぞれの楽器を持ち合わせて
セクションしたいとか言ってたじゃねーか」
悠と大和も頷き始めた。
お、お、まさかのまさかこの展開は
行けるんじゃね?
「俺、やりたい」
「ためしに今度やってみる?」
「まぁやるだけなら無駄ではない」
玲央、煌、築茂も首を縦に振ったー!
よっしゃ!これで俺の夢に
一歩近づいてきたぞ!
「言っとくけど空雅。変な夢を見るのは
やめておきなよ。そんなとこ
目指すより楽しむのが優先だから!」
あちゃー、やっぱりお見通しですか。
でも確かに楽しむのが一番の
財産だから楽しければ何でもいっか!
- 第11音 ( No.116 )
- 日時: 2013/01/09 20:20
- 名前: 歌 (ID: rKVc2nvw)
と、いうわけで全員で演奏するべく、
昨日の今日でまた楽器を持って悠の
家に集合。
玲央はコントラバスで大きくていちいち
タクシーを使うのは大変。
だからこれからは、煌の車で来ることになった。
煌の車で築茂と玲央、俺と日向は
学校帰り、悠とそのまま行く。
大和は家が目の前だから問題なし。
そしてすでに全員がそれぞれ音だしをしている。
煌と築茂はバイオリン、日向はテナーサックス、
大和がアルトサックスで玲央がコントラバス。
そして俺はもちろんトランペット。
悠はバイオリンとピアノ、どっちでも
いいらしく今は一応バイオリンを弾いている。
だけど、まずは悠のピアノを鑑賞。
玲央、築茂、大和はまだ悠のピアノを
聞いたことがなかったらしい。
「みんな何が聞きたい?」
「悠、かなりうまいからなー。曲名適当に
言ったら即興できるでしょ」
「煌、言い過ぎだって。まぁ大体は耳コピとかで
やってるからね。で、何がいい?」
電子ピアノの前に座っている悠を俺たちは
その周りに適当に立ったり座ったりして
囲んでいる。
「俺、ショパンの幻想即興曲聞きたいな」
日向が言った曲名に悠はすぐに頷いた。
聞いたことあるようなないような曲名
だったけど、大人しく悠の指が
鍵盤に置かれるのを見ている、と。
力強い重低音が部屋内に響き渡った。
そしてすぐに左手の指が生き物のように
動き回ると、右手もとてつもない
速さで鍵盤の上を走る。
ちょ、ちょっと、悠ってこんなもんまで
さらっと弾けちゃうのかよ……。
あっという間に弾き終えて静まり返った部屋。
「……やっぱり悠のピアノは惹きこまれるね」
「ありがとう、日向」
何回か聞いたことのある日向と煌は
優しい笑みを浮かべている。
一方で、初めて聞いたであろう大和、築茂、
玲央の3人は、驚いて言葉が出ないようだ。
「悠、この3人びっくりして固まってるよ」
「えっ!?あの玲央まで?まっさかー」
煌の言葉を笑い飛ばしながら3人に
目を向けた悠の口角が、すとん、と下がった。
「……もしもし?生きてます?」
「……ん」
「玲央、なんか変なもんでも食った?」
「……ん」
はい、読者の皆様ー、今レオレオは同じような
ことを言っているようで、正反対の意思を
表したこと、伝わりましたかー?
1回目は首を縦に振り、2回目は首を横に
振っていたのをこの俺は確認しましたっ!
「空雅?あんたも大丈夫?」
「いつものことだから、気にしない気にしない」
「ちょっ!日向ひどくねっ?」
「それより大和と築茂!いい加減反応しなよ。
感想でも言ったらどう?」
完全に日向に無視された俺。
「な、なんか……うん、やっぱ悠ってすごいのな。
お前、もちろん音大にでも行くんだろ?」
「うちの大学か東京のM大学なんて
余裕に入れるレベルだと思うが」
大和、築茂の言葉に一瞬、場の空気が
重くなった、ような気がする。
「……ぶははっ!行くわけないでしょー。
行けるわけないでしょー」
よっぽどおかしかったのか、思い切り吹き出して
笑い声をあげる悠。
本気で言っているのか分からないけど、
悠につられて笑うことはできない。
だって、悠のレベルは相当なものだ。
普通、自惚れてもいいくらい本人も
気付くはずなのに、音大に行くことを真っ向から
否定するのは、おかしいとしか言えない。
「音大に行きたくない理由でもあるの?」
「だーかーらっ!行けるわけないってんの」
「本気で言ってるのか?」
「はい、この話は終わりー」
煌の質問におどけて、築茂の怪訝そうな
声もばっさり切られた。
また、悠の謎が増えた瞬間。
みんなで演奏しよー、とそそくさと
イスから立ち上がり、リビングに戻った悠の
後を、俺たちも黙ってついて行く。
「よし、何やってみる?楽譜とかないから
即興だけどみんな大丈夫だよね?」
バイオリンの弓を松脂に当てながら
いつものあどけない笑顔で聞いてくる。
もう、誰も、深入りできなくなってしまった。
「……そうだなー。じゃあさ、前に俺たちが
アンサンブルでやったカノンやってみる?」
「俺たちはどうすればいーの?」
「空雅はメロディぐらいなら聞いたことあるでしょ?」
煌はそう言うとメロディを軽く弾いてくれた。
俺も音を頼りに吹いてみると、何となく
それっぽくなっている。
「お、空雅うまいじゃん!」
「よっしゃ!」
大和に褒められてガッツポーズ。
「耳はいいみたいだからこの前、私が
弾いていたメロディを
思い出しながら吹いてみなよ」
「分かった!やってみる」
「俺は大和が吹いていたパートの対旋律
やってもいい?一応、やったこと
あるからさ」
「さっすがー。じゃあそれでいこっか!
私は適当にアドリブでいろいろ遊んでみるっ」
日向は大和の隣に立ってチューニングを
し始めた。
悠、煌、築茂もバイオリン同士で玲央の
低音の音程に合わせる。
日向と大和のチューニングが終わると
大和とチューニングをする。
なるべく、大和の音に近付くように。
そして最後にB♭の音を出してチューニング
するけど、すぐに終わるわけでもない。
「空雅、ちょっと高いかも」
「おう」
同じ音を吹いているつもりでも、音程が
高かったり低かったりすると綺麗に聞こえない。
それを耳がとてもいい人はすぐに
感知して指摘してくれるんだ。
悠は頷いて、OKのサインを送る。
そして、玲央が弓を構えると心地のいい
柔らかい音が俺たちを包んだ。
- Re: 青い春の音 ( No.117 )
- 日時: 2013/01/10 17:52
- 名前: ハリー・ポッター (ID: geEvUTTv)
私は、エリーゼのためにを聞きたい!
月光とかもいいですね・・・。
あと、運命とかも!
とにかく、ベートーヴェンさんの曲、好きです!
歌さんは、やっぱりショパンが好き何ですか?
ショパンさんも、軽やかなリズムでいいですよね〜♪
ちなみにクラシック、
ちょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー好きです。
- 第11音 ( No.118 )
- 日時: 2013/01/10 19:25
- 名前: 歌 (ID: 16oPA8.M)
そこからはもう、7つの音が7色の虹を
彩るかのように奏でる。
やばい、かなり気持ちいい!
悠はめっちゃ楽しそうにリズムをとっていて
俺もつられて弾みたくなる。
誰かが誰かの音を追いかけたり、ハモらしたり、
変わった音をいれてみたり。
好き勝手にやっているようで、きちんと
1つの音楽にまとまっている。
やっぱり、音楽は最高に楽しい!
「あぁ!やっばーい、楽しすぎた!きゃははっ」
曲が終わると同時に満面の笑顔を見せる悠。
……ちょっと、大和とか日向って結構
分かりやすいのな。
顔にもろ「可愛い……」って書いて
ありますけど、本人に気付かれても
知らねーぞ?
「やっぱ楽しくなきゃねー」
「ま、細かいところはいろいろ言いたいことが
あったけどな」
煌と築茂も気持ち悪いくらいに
顔が綻んでいる。
何か俺、めっちゃすごいことに
気付いてしまったかもしれない……。
いやいやいや、違う、決してそんなことは
ない……と思いたい。
大和と日向はきっとたらしで、女の子の
笑顔ならどれも可愛いって思うかも
しれないし。
煌と築茂は本当に楽しすぎてあんなに
ニタニタしているのかもしれないし。
「ん?玲央?」
頭の中である疑問と格闘していると、
いつの間にか玲央が楽器を置いて悠の後ろに。
何をするのかと全員黙っていると。
玲央の腕が……悠の首に絡みついた。
「は!?何やっちゃってんのレオレオ!」
俺は思わずその大胆な行動に思い切り
玲央に向かって叫んだ。
や、やばいって……!
玲央の行動もやばいけど、玲央の行動のせいで
今、この空気が一瞬にしてやばくなったんだって!
「玲央ー?どうしたのー?」
当の本人である悠は、平然として背中側にいる
玲央のほうに顔を向ける。
ちちち、近いってばっ!
ほらほらほら、大和とか明らかに怒りが
やばいって顔してるし!
日向と煌は一見微笑んでるようで、
引きつってるの、隠しきれてないから!
築茂なんて目を合わせたらぶち抜かれそうな
くらいの目つきで見てるし!
「レオレオ……なんて勇者なんだろうね、君」
もう驚きを通り越して、こんな勇敢な行動を
みんなの前でできてしまうレオレオが
素晴らしく思えてきちゃったよ。
「玲央、本当にどうしたの?」
「……悠が、可愛いから」
「ぶぇ!?」
「空雅、汚い」
か、可愛いとかよくそんな堂々と言えますね!
変な叫び声とつばが飛んでしまったせいで
悠に汚いとか言われちゃったし……。
「玲央、いい加減、悠も困っているから
離してあげたら?」
あくまで表向きは爽やかスマイルで大人の
対応を取る煌だけど、後ろにはどす黒い
オーラを身にまとっている。
「え、別に私は困ってないけど。っていうか、
玲央にだったら何されても嬉しいかも!
猫みたいでペットにしたくなるっ」
……あちゃー、今の悠の一言は強烈パンチだよ。
しかも本当に嬉しそうに、玲央の腕を掴んで
笑ってる。
え、なに、悠って天然とかじゃなかったよね?
人の感情とかにすごい敏感で空気も
めっちゃ読む人だよね?
「でも玲央、これじゃあバイオリン弾けないから
また後でにしよ?」
あ、やっぱり、悠はきちんと考えて
言葉を発していたんだ。
玲央の機嫌をなるべく損ねないように、最初に
褒めてその後に腕を離してほしい理由を述べる。
きちんと、周りの空気にも、気付いてる。
だったら。
俺が気付いてしまったことにも、悠は
気付いているのか?
もし気付いているんだとして、こんなふうに
平然としていられる悠ってどんな
精神力してるんだろ。
俺には考えられない。
「ってか空雅ー。何であんなに慌ててたわけ?
空雅なんてこれよりも大胆なこと、この前
してきたじゃーん!」
「ええっ!?」
突然、悠に言われたことに一瞬、
意味が分からずにもう何度目かの叫び声。
俺、今日叫んでばっかなんですけど。
明日にでも声が出なくなってそのまま一生
出なくなったらどうしてくれるんだ!
愛花に告白すらできなくなるじゃん!
「ちょっと空雅さん。自分の世界に行かないでよ」
「悠、さっきのはどういう意味だ?」
悠に呼び戻されてすぐに、大和から睨まれた。
そ、そんなに睨まなくても……別に俺、
大したことしてないよな?
「えっとねー壁に体押さえつけられて
キスされそうになった、くらいかなー」
「ゆ、悠!?」
「へー、お前、玲央にはあんだけ言っといて
お前は変態ぶりを俺たちの見えないところで
発揮してたんだなぁ」
「頭もバカのくせにやることもバカだな」
大和と築茂に迫られて冷や汗だらだらの俺。
煌、日向、玲央はあんときのこと全部
知ってるくせに笑って見てるし!
目が全員、「ざまあみろ」って言ってるの
バカな俺にも分かるからね!?
た、助けろし!
「す、ストップ!何で俺だけ!?しかも誤解だって!
悠!違うって言ってくれよー」
「えー、だって本当のことだし?」
あ、悪魔だ……。
その後、俺の悲痛な叫び声が響きわたったことは、
誰もが想像していたことだろう。
- 第11音 ( No.119 )
- 日時: 2013/01/12 14:05
- 名前: 歌 (ID: VXkkD50w)
「はあっ!スッキリしたな、築茂」
「ああ。無駄な体力を使わせられたがこれも
悪くはないだろう」
「ねぇねぇ、今度はさ、私が作った曲を
みんなでやってみたい!今度までにそれぞれ
楽譜書いとくからやってくれる?」
「悠の頼みだもん!やるに決まってるでしょ」
「煌、ありがとうっ」
……い、痛かったぁ。
大和と築茂にあんなことやこんなことをされた
体が悲鳴をあげています。
「空雅、いつまで寝てるのー?」
「起こしてくれよ、日向」
「へぇ?仮にも先輩の俺に命令するんだ?」
え、ええ?
日向が、日向の後ろが黒く染まって見えるのは
気のせいじゃないよな?
……やっぱり、いつだったか大和が話してた
日向腹黒伝説は事実だったんだ。
「ほらー、いい加減起きろバカ空雅!
もう一回カノンやるよー。私は次、ピアノで
やってみよっかな」
「お、いいんじゃね?そうだ空雅。お前、
ドラムやれよ」
「何でカノンでドラム?」
「ロックバージョンとかあるじゃん!あれ、
めっちゃかっけーんだぜ?」
大和の突然の提案に首を傾げる。
「あ!じゃあバイオリンもエレキにする?
私持ってるよー」
「マジで!?」
「マジでマジで。ちょっと待っててー」
なんだか知らないけど大和のテンションが
かなり上がっている。
「なぁ、エレキってどういうことだ?」
「エレキバイオリンだよ。ほら、ギターも
エレキギターとかあるでしょ?」
いまいち日向の説明に理解できずに
ハテナマークを頭の上に咲かせる。
「つまり、普通はバイオリンってクラシック
楽器だけど、エレキバイオリンはバイオリンの
ロックバージョンってこと」
「ロック!?バイオリンにロックなんかあんの!?」
「それがあるんだなー。まぁ普通のバイオリンで
ロックやってる人もいるし。エレキバイオリンは
初めて見るとちょっとビックリするかも」
煌が俺の反応を面白がって話すから、さらに
エレキバイオリンに興味がわく。
ワクワクしているとすぐに、悠が
リビングに戻ってきた。
悠の手にしているものを見てぎょっとする。
「な、なんだそれ?」
「あれ見たことない?これがエレキバイオリン。
普通のバイオリンみたいに共鳴するボディが
なくて、電気的に音を増幅することができるんだ」
悠の言った通り、木箱でできているはずの
ボディがなくて今までのバイオリンのイメージを
ひっくり返されて思わず、声もひっくり返った。
「普通のバイオリンは弦を弾いた後、僅かな時間差があり
ボディが共鳴して振動が弦や弓に跳ね返ってくる。
だがエレキバイオリンはそういった響きの時間差や
振動感はない」
「うわ、築茂さっすがー。エレキバイオリンのことに
ついても詳しいんだね」
「常識だ。演奏方法は普通のバイオリンと変わらないが
初心者や練習用にとても有効に活用できる楽器だな」
「へ、へぇ……」
煌も築茂の知識に驚いているが、俺は築茂の言った
言葉を理解するのが精一杯で驚くどころじゃない。
でもとにかく、おもしろそうな楽器だ。
「なぁ!ちょっと弾いてみてくれよ」
「あ、俺も聞きたい。ってかさ、よく動画サイトに
このバイオリンでカノンロックとかやってるの
あるじゃん?あれ、ちょー好きなんだよなぁ」
「あーこれのこと?」
悠に迫ると、珍しく大和も目を輝かせて
エレキバイオリンに目をやる。
すると悠はさらっと、大和が言っていた
カノンロックを弾きこなす。
「す、すげぇ……バイオリンなのにロックだ」
「やっぱかっけぇなぁ!これに空雅のドラムに
普通のバイオリン、玲央のコントラバス、
俺らのサックス入れてみたら最高にヤバくね?」
「……大和、お前」
初めて聞く音にめちゃめちゃ感動。
かなりテンションが上がっている大和の言葉に
悠は一瞬、きょとん、として。
「それ、最高!!やってみよやってみよ!
絶対楽しいじゃん!ね、みんなもそう思うでしょ?」
と、満面の笑みを咲かせた。
「確かに、これだけの楽器があればいろんな
ジャンルの音楽を楽しめるね。俺はやりたいな」
「日向の言うとおりだな。ロックとか全然
分からないけど、斬新かも」
「ま、やるだけ無駄ではないだろう」
「やる」
日向、煌、築茂、玲央もこの話に乗り気のようだ。
「空雅は?」
大和に聞かれて、言葉にする必要もなく、
口角をあげて親指を立てて見せた。
「よしっ決まり!あ、エレキバイオリンね、
もう1つあるけど煌と築茂どっちか弾かない?」
「もう1つあったんだ。じゃあ築茂、どうする?」
「俺はこいつでいい。煌、お前エレキやりたいだろ」
「あれ、ばれちゃってた?じゃあお言葉に甘えて
俺がやらせて頂きます。演奏方法一緒だよね?」
「あぁ。すぐに弾ける」
エレキバイオリンをもう1つ持ってきた悠。
煌はそれを受け取り、音を出して
少し遊んでいる。
「空雅!ドラム、できるよね?」
「おう!任せておけ!1回その動画サイトで
やってるやつ見せてくんね?感覚で
耳コピしてみるわ」
悠に自信満々に頷いて見せる。
大和は携帯をいじってすぐにその動画を
見せてくれた。
「おおー!すげぇ。これ、絶対楽しいじゃん」
「やばいねぇ。俺らはこれの丸々同じなんてのは
嫌だから俺ららしくやってみよ」
携帯の周りにみんなで集まって鑑賞。
弾いている人たちはみんな楽しそうだし、できたら
絶対に楽しいだろうな。
煌の言葉通り、いろいろアレンジしちまうか!
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