コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 青い春の音【完結】
- 日時: 2013/12/07 21:38
- 名前: 歌 (ID: VXkkD50w)
「青い春の音」の番外編、短編集
「青い春の心」もよろしくお願いします。
「青い春の音」の続編
「青い春の恋」始めました。
2013.6.14に始めて2012年冬・小説大会で
「青い春の音」がコメディライト小説部門で
金賞を取ったことを知りました。
投票してくださった方がいてくれたのに、
お礼も言わず本当にバカだと自分に呆れます。
改めて言わせてください。
本当に本当に、ありがとうございます!!!
まだまだ続くので、これからも
よろしくお願いしますm(__)m
出会うべくして出会えたこと。
かけがえのない“仲間”
性格も価値観も生き方も
全然違う私たちが出会えた。
そして、そこから始まるさまざまな音の物語。
それはキレイだけではないけど、
不協和音も聴こえるかもしれないけど、
私たちは間違いなく、自分たちそれぞれの
音を奏でていた。
純粋で自然な音を。
空と海と風と鳥に向かって、
ただ紡ぐだけで心が満たされる音楽。
さまざまな想いを抱えながらも、“仲間”
という絆から徐々に芽生える気持ちとけじめ。
淡い恋心さえもそこには含まれていた。
楽しい時だけが
仲間じゃないだろ?
オレ達は
共に悔しがり
共に励まし合い
生きてゆく
笑顔の日々を
—登場人物—
名前(年齢)性別-担当する楽器
(他にできる楽器)-アカペラで担当するパート
カンザキユウ
神崎悠(16)♀-ピアノ(バイオリン、
アルトサックス)-リードボーカル
サバサバで自由人。
好きなことを好きなだけやる。
キドウヤマト
鬼藤大和(17)♂-アルトサックス
(トランペット2nd)-コーラス
極度の負けず嫌い。
俺様なところが多少ある。照れ屋。
ツキナミクウガ
月次空雅(16)♂-トランペット1st
(ドラム)-ボイスパーカッション
空気が読めないポジティブバカ。
練習をあまり好まない。
タチバナツクモ
橘築茂(18)♂-バイオリン
(コントラバス)-コーラス
知的でクール。常に計算、
計画通りに進めたい。
オギハラヒュウガ
荻原日向(17)♂-テナーサックス
(アルトサックス)-コーラス
常に穏やかで優しい。
しかし、自分の意思はしっかり持ってる。
ヒムロレオ
氷室玲央(19)♂-コントラバス
(バイオリン)-ベース
常に眠たそうにしている。
一見無愛想だが、天然で真面目。
カスガイコウ
春日井煌(20)♂-バイオリン
(ピアノ)-リードボーカル
しっかり者で頼れる。
練習はスパルタで熱い。
後にしっかり説明します。
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- 第21音 ( No.203 )
- 日時: 2013/05/04 23:24
- 名前: 歌 (ID: EZ3wiCAd)
「こちらこそよろしくお願いします。
俺たちは……」
「はい。皆様のお名前は把握済みですので。
では、お部屋へご案内致しますね」
まぁ、あらかた玲央と日向を足して2で割ったような
人だから、2人に似ていると錯覚しているのかも。
踵を返したムウさんの後を、私たちは
見るものすべてが珍しいかのように、
首をきょろきょろしながら、着いて行った。
中に入れば、一番最初に飛び込んできた、
お食事会場。
親しみやすい木でできたイスとテーブルに、
オレンジ色の綺麗な、照明。
シーリングファンもいくつか着いていて、
初めて来た場所なのに、落ち着かせる雰囲気を
漂わせていた。
あ、シーリングファンってのは、ほら、あれ。
天井でくるくる回ってるやつだよ。
説明してあげてる私ってやっさし!
はい、すいません。
調子に乗りすぎました。
「悠ー?置いてくぞー?」
「あっ!?はいはーい!」
危ない危ない、自分の世界にまた飛んで
危うくらしくもない、迷子になるところだった。
「こちらは多目的ホールです。コンサートの自主練
などをしたい場合は、こちらをご利用下さい」
ムウさんは相変わらず素敵すぎる笑顔を
振りまきながら、丁寧に説明をしてくれる。
屋根はすべて三角になっていて、外から見たら
高級そうだけど、実際、中はそんなことはなかった。
だからと言って質素だとかそういうことじゃなく、
いい意味で過ごしやすそうだ。
「こちらがロビーです。コミックや大型テレビが
あります。コミックは日本のものも多少は
あると思いますが……テレビはご了承ください」
いや、そんなの当たり前だから。
こんなオシャレなフランスさんのテレビで
時代劇とかサスペンスとか、見たくない。
「お!銀魂があるー。よっしゃ、見まくろっ」
早速食らいついた空雅さん。
手を伸ばしたその後ろから、さらにコミックに
やけに反応したのが、玲央。
そりゃそうだ、玲央くんは漫画家だもの。
「ほら、そんなのは後でも見られるんだから、
先に行くよー」
と、相変わらずお母さん役の煌が促せば、
渋々といった表情で2人は着いてきた。
そして私が何よりも驚いたのが、大浴場。
「うわっ!何だこれ!?」
「すげー、おもしれぇな」
と、空雅と大和は面白いものを発見してしまった
子供のような、幼い表情を見せる。
私も中を覗いてみると、タイムマシーンのような、
カプセルのような、透明のガラスでできた
シャワー室がいくつかあった。
うわぁ、これはなんか、恥ずかしい。
いや、すでに『男湯』とフランス語で書かれた
プレートを見ながらも迷わず入ってきた私が
思うことじゃないのかも、しれないけど。
だって女、1人だけだし?
全員男だし、気にしなーい。
そんでもってお風呂もめちゃくちゃ、でかい。
男湯がこのくらい大きいってことは、
もちろん女湯も同じ大きさだろう。
何、ってことは私、毎日1人でこんな大きい
お風呂を独占できちゃうんですね。
うひょー、贅沢!
「露天風呂もあるのか」
と、珍しく嬉しそうな声をあげた築茂に
つられて、ちょっと湿らせた足を外に
向けると。
何の石でできているのか分からないけど、
岩が中央にあり、お風呂の周りもすべて
石でできていた。
これもまた、大きいです。
「ここは1か月、あなた方がご自由にお使いに
なられて結構です。食事は毎日朝食が
7時、夕食が7時になります。練習日程では
多少変更もありますが、覚えておいてください」
ふむ、なるほど。
あのお食事会場ってところで7人、仲良く
食べろということですね。
あんな広くても使うテーブルは2つだけで
十分だと思うんだけど、そこは有難く
頷いておいた。
夕食の時間までごゆっくり、ということで
私は早速お風呂に直行。
あ、もちろん女湯に入ってますからそこは
問題ないです、はい。
「ふぇ〜」
あらやだ、とてつもなく変てこりんな
声が生理的に出てしまった。
だってこんな広いお風呂にたった1人で
入れて、しかもこのお湯最高に気持ちいいんだもん。
カプセル型のシャワー室も勝手に1人で
ドキドキしちゃったりしてさ。
何かスライムみたいなものとかも出てくる
のかなぁ、と待ってみたけど一向に
出てこなかったから諦めもしたよ。
とりあえず、フランスにいつんだな私。
今まで、海外には何度か言ったことあるし
飛行機なんてのは数えきれないほど乗ってる。
だから初めて飛行機に乗ったわけでもないのに、
空雅みたいにバカ騒ぎなんてのはしてません。
で、明日からいよいよコンサート準備に
取り掛かるということか。
何だか、全然実感わかなくてこの湯気みたいに
靄がかかっている。
あとずっと気になっているのが、ムウさん。
日本人なのかフランス人なのか、はたまた
火星人なのか、よく分からない。
どうしてもどこかで見たことがあるような
気がするんだけど、物覚えのいい私が
忘れるわけないからなぁ。
やっぱり、気がする、だけかな。
そしてしばらくお湯につかった後、露天風呂の
存在を思い出したけど、別に時間はゆっくり
あるんだから次にすることにして。
1人でいると、変なことばかり考えてしまう
私の悪い癖が始動する前に、脱衣所に向かった。
大きな鏡が3枚。
いやだなこれ、自分の顔を見たくなくても
見えちゃうじゃないか。
左の鏡を見ると、四角い顔の私。
右の鏡を見ると、丸い顔の私。
後ろの鏡を見ると、ひし形の顔の私。
どこを見ても、見慣れた私の
顔がたくさんある。
でも本当の生の私の顔を、私は見たことが
ないから、掴めたりしてないのかもしれない。
私を私が知っているつもりで、
私は私を一番知らないんだな。
ってくだらないこと考えているうちに
あるものを発見。
え、ここってフランスだよね?
嘘だ、フランスにまで浴衣があるのか!?
いや違う、どう考えても風峰さんが
私たちのために用意してくれたんだな。
同じ洋服に着替えるのより、こっちの方がずっと
楽だからこれでいいや。
浴衣の装備が終われば、ちょっと喉が渇いたから
どっかに自動販売機があったはずだから、飲もう。
販売機、じゃなくてボタンを押せば勝手に
出てくるシステムに変えられてたけど。
ってか今さらながら、こんなによくしてもらって
悪いんだけど、どうして風峰さんはまだ
2回しか会ったことのない私たちにこんなに
よくしてくれるんだろう。
普通、自分のコンサートのためだと言っても、
私たちよりも素敵な演奏をする人はたくさん
いるだろうし、困らないはずだよな。
音楽祭にいたこともちょっと引っかかる。
まぁ、今がよければいいんだから深くは
考えずに大人しくレールに乗っかっておこう。
- 第21音 ( No.204 )
- 日時: 2013/05/05 22:49
- 名前: 歌 (ID: GbhM/jTP)
浴衣はあるのにドライヤーはないのか、と
沈んでいたけどそういえばドライヤーは
部屋にあるって言ってたことを思い出した。
ロングのせいでなかなか渇きが遅いため、
まだ全然水を含んだ髪を軽くわしゃわしゃと
拭いて。
肩にタオルをかけて、まずは自動販売機。
私は方向音痴でもないし、1度来たところの通路は
1度で覚えられるから迷ったりせずに到着。
あれ、先約発見。
「築茂ー、何のジュースがある?」
「っ……あぁ、何か珍しいものもあるぞ」
まだ私服の築茂は、私の姿を見るなり
眉間にしわを寄せやがって、失礼極まりないよ全く。
「へぇ、これがフランスの自動販売機なんだ。
お菓子もついてるんだね」
「フランスでは大体そうみたいだぞ。でもお金を
入れでも品物が出なかったりおつりが出ないことが
よくあるそうだ。その後に買うと2個もらえたり、な」
「マジですかそれ。詐欺じゃん。でもこれは
お金を入れなくてもいいんだから大丈夫でしょ」
とりあえずミネラルウォーターのボタンを
ポチ、押したんですけど。
「………ほら、言っただろ」
そう言って築茂が後ろから手を伸ばして
コーラのボタンを押すと。
ガタンガタン。
「ラッキーだな、2つゲットしたからこれは
明日にでも飲もう」
うわ、鬼畜野郎。
眼鏡男子は普通コーヒーでコーラってのは
空雅が買うようなものなんだよ!
ってか私のミネラルウォーターを浚うな!
「……欲しいか?」
「もちろん」
「本当に、欲しいか?」
「当たり前です」
「ただでは、あげられないな」
「あなたはただで2つゲットしたのに?」
なんだか怪しげな笑みを浮かべている築茂は
よからぬことを考えてる。
たまにMのくせにこういうときだけSのスイッチが
オフになっちゃったり。
しばらく、2人のにらみ合いなんだか見つめ合いが
続きましたとさ。
ってそんな軽い空気ではなくなってきたような、
気がしなくも……ない。
じわりじわり、と私の方に少しずつ顔を
近付けてくる築茂。
それでも私は、絶対に視線を逸らさずに、
その場から動くこともしなかった。
「………キス、したら…やるよ」
「はい?」
う、嘘だ………あの築茂が爆弾どころか地球を
滅亡させそうな隕石を降らそうとしている!
左手でジュースを2つ抱え、右手で私の
唇にそっと、触れる。
「あの夜……煌に送ってもらいながら、何か
あっただろ。見てれば、分かる」
180㎝を余裕に越している築茂は私のことを
思ってなのか、腰を屈んで目線を下げてくれている。
ぐ、と眉を寄せて触れている唇を少しだけ、
強く押した。
「何か、言われたか?それとも何か、されたか?」
「……別に何も。ってか冗談はここまでにして
早くジュースを……っ…」
ちょっと。
いきなり、キスとか。
築茂は何をそんなに、焦ってるの。
「……んっ…んんー!!」
ドン、と築茂が持っていたはずの飲み物が
床に散らばる音が響く。
そのせいで築茂の左手は私の頭を、自分の
唇に強く押さえつけるように、右手は
私の背中に回されていた。
舌が入ってきたことに気付いた私は、築茂の
胸を力いっぱい叩いて反抗してみるが、無効化。
好き、と言われたことはない。
いや、気付いてはいたけれど、突然こんな
行動を起こすなんて、築茂らしくない。
しかも、フランスに来てこれからだって
いう時に。
「…築茂…っ!!」
思いっきり顎を引いて、築茂の胸を押したら、
何とか唇を離すことができた。
うわ、どうしよ、腰抜けそう。
その場で崩れないように、必死に築茂の服を
掴んで息を整える。
その間、全くと言っていいほど静かだった
築茂を見上げると。
睨みつけるような瞳に、捕まった。
「………築茂?どうしたの、何か…変、だよ?」
「そうさせているのはお前だバカ。大和にも
煌にもキスさせて、俺になしってのは
公平じゃないだろ?そのうち、俺だけの
ものにするがな」
ねぇねぇねぇ。
全校の女子高生のみなさん、こういうのを
一般的には『告白』って言うんですかね?
私、こんな告白は初めてされたからよく
分からなくなっちゃった。
ってかどうして大和と煌のこと、知っているんだろう。
「どうして、っていう顔をしているな。ただ、
あっちから宣戦布告をしてきたからそれに
乗っただけの話だ。全員、知っているぞ」
「……どうしてフランスに来たって言うのに
そんなことになってるんですか」
「ここで1か月、暮らすんだぞ?お前、かなり
危機感ないがフランスでの戦いがこれから
繰り広げられる。覚悟しとけよ」
………冗談、でしょ。
そんなの笑えないんですけど。
は、え、なに、とゆこと!?
いや、分かってるよ本当は。
だって私、鋭いもん。
たぶん私は、このフランスにいる間に、5人
全員から強気のアプローチを受けるのだろう。
玲央と日向からはまだ何もされていないから
これから警戒しておかないと。
あぁ、空雅がいてくれてよかった。
愛花に事情を説明して、何かあったときには
空雅の部屋に逃げ込むことを許可してもらおう。
さっきまでの眉間にあったしわは姿を消し、
いつの間にか怪しげな笑みに変わっていた。
「これからは遠慮なんてしない。お前に触れれば、
それだけで音楽の力にもなるからな」
「はい!?なんですか、それ」
「お前がいればそれだけでも音楽は気持ちよく
できるが、触れればさらにいい演奏を
できる気がするだけだ。これから迷わず、
触れてくからな」
「……へへへ」
もはや苦笑しか出ないですよね。
そしてまた、唇を塞がれたり、耳を甘噛み
されたり、と。
なすがままになってしまった。
やっと解放されたのは、空雅の鼻歌と足音が
近付いて来たとき。
築茂は、落ちた飲み物を拾い上げて私の
胸にミネラルウォーターを押し付け、そのまま
空雅とすれ違うようにしてどこかへ行った。
「ん?悠、何やってんだこんなところで」
ミネラルウォーターを抱えたまま、動かない
私を空雅が怪訝な表情で覗き込む。
「……空雅がいてくれて、本当によかったと
心から思っていたところです」
「え、えぇ!?いやいや!お、おお俺には
愛花がいるから…っ…ごめん!!」
「ちっげーわアホ!ま、そういうところも
好きだけどさ」
「すっ!?」
「あははっ!何でもないよ、ほらお風呂
行くんでしょ?行ってらっしゃい」
まだお風呂にも入っていないのに、顔を真っ赤に
する空雅がおもしろすぎる。
手を振って、私もロビーに行こうとしたら。
「悠!!」
空雅の手が、私の左腕を、掴んだ。
「ん?」
「……その、そんな格好で、あいつらのところに
行ったら…まずいと、思う」
「はい?この浴衣がダメなの?なぜ?」
「いや、だかそそのぉ……」
視線を泳がせながら口ごもる空雅に、
痛いほどの視線を送りつけてやる。
「何?これ、脱衣所にあったから男湯にも
あると思うけど」
「べ、別に浴衣がダメとかじゃなくて…いや、
ダメっちゃダメなんだけど……」
「はぁ?もう、何が言いたいのか
分からないんですけど。はっきり言って!」
ちょっと口調を強くすれば、空雅は
意を決したように、口を開いた。
「エロすぎる!!」
…………。
ふっ。
「な、何で笑うんだよ!!」
「いやぁ、相変わらず単純バカだなと思って」
「めっちゃ勇気出して言ったんだけど!!
髪の毛は湿ってるし、シャンプーのいい香りが
めっちゃするし、浴衣って脱がせやすいし!!」
うわぁ、こんの浮気者。
ドン引きした目で責め立てるように静かに
睨むと、逃げるように、男湯へと入って行った。
やっぱり空雅っていじめがいがあると言うか、
見ていて飽きないよねぇ。
そんなことを考えながら、ロビーへと足を向けた。
- 第21音 ( No.205 )
- 日時: 2013/05/06 22:01
- 名前: 歌 (ID: 96KXzMoT)
ロビーは誰もおらず、ひっそりとしていて
私は迷わずにテレビのリモコンを手に取る。
まぁ、つけたところで何言ってるかよく
分からないし、つまらないかもしれないんだけど。
それでも興味は、あるんだよね。
適当につけるとニュース、違うチャンネルに
変えるとまたニュース、またまたニュース。
……何、フランスってニュースしか映らないの?
そう思ったけど、今はフランスでも夕方の
時間だからニュースが多いのかもしれない。
ってかまだ17時過ぎなんだなぁ。
ミネラルウォーターのキャップを開けて、
まだ火照った身体に水を流し込む。
何か、本当に旅行に来た気分でこれからの
ことが全く想像つかない。
ガラにもなく、ちょっとドキドキしている
自分もいたりして。
もちろん、音楽にね。
あいつらには、しないですよ……多分。
それにしてもあの、ムウさん。
あれれ、もう考えても仕方ないって思ったのに
まーた考えてしまっている。
それくらい、何か心に引っ掛かる雰囲気を
持っているんだよなぁ。
一体、何者なんだろう。
しばらく、テレビをぼーっと見ながら考えて
みるけどやっぱりよく分からない。
まぁまだ始まったばかりだし、これから
ゆっくり考えていけばいいんだけど。
あ、そういえば髪の毛乾かさなくちゃ。
空雅が言った通り、これであいつらの前に
出るのは危ない気がするし。
築茂には見られたけど、このせいでたぶん
あんなことをされたんだろうな。
だとしたら、これからは気を付けよう。
テレビを消して、案内されていた自分の部屋は
どこだっけ、と頭で考えながら通路を歩く。
荷物はお風呂に入る前に少しだけ片付けたけど、
まだ残っていたっけ。
夕食まで時間もあることだから、残りも
やっちゃおうかな。
2階にある部屋を目指して、階段を上る。
半分の階段を上り終えたところで、上から
1つの足音が聞こえてきた。
顔を上げると、そこには、ムウさん。
「……あ、どうも」
「神崎様、お風呂はいかがでしたか?」
「とても気持ちよかったです。ありがとう
ございます」
「それはよかったです。ごゆっくりしてください」
ふわり、と優しく微笑む彼。
もう、話すことはないし、足を上げて横を
通り過ぎればいいだけの話、なんだけど。
どうしてか、お互い、その場を動かなかった。
微笑みを崩さないムウさんは、私を通さない
と言わんばかりの立ち方と、空気。
穏やかな雰囲気のはずなのに、居心地の
悪さを感じた。
「……えっと、失礼します」
私はちょっと強引にムウさんの横を通りすぎ
ようとした、とき。
「綺麗に、なったね」
小さな声が、聴こえたような気が、した。
止めずにはいられなかった、足。
まるで、昔の私を知っているのかのような
言葉が頭の中を走り回る。
慌てて振り返った時には、すでにムウさんの
姿はそこになく、ひっそりと階段だけが
私を見ていた。
………何、だったんだろう。
ムウさんと昔、どこかで会ったことが
あるんだとうか。
いや、記憶上にあんな目立つ容姿の人と
出会っていたなら忘れるわけがない。
確かに私は忘れやすい頭かもしれないけど。
それにしたってあんな綺麗な人を忘れる
わけがないと思う。
ダメだ……いくら考えてもさっぱり分からないから
考えるだけ無駄だな。
私は深く考えず、そのまま階段を一気に
駆け上がった。
部屋に戻り髪を乾かして後ろで1つにまとめ、
それほど大きくないスーツケースの中身を
適当に出して片付けていく。
部屋は1人では広すぎるくらい有り余っていて、
ベッドもふかふかだ。
全ての荷物を出し終えてスーツケースを
片付けてこれから何をしようか考えていると、
机の上に置いてあった携帯が、震えた。
画面を見れば、煌からの着信ですぐに
通話ボタンを押すと。
『悠?お食事会場に全員集まってるから
ちょっと来れない?』
「え、でもまだ夕食の時間じゃないでしょ?」
『うん、そうなんだけどさ。空雅が何か
トランプとか持ってきたからみんなで
やりたいなーって』
「トランプ?いいねぇ!やるやる!今すぐ
行くから!」
すぐに電話を切って、携帯を手に持って
部屋を飛び出した。
トランプとか、まさに修学旅行みたいで
めちゃくちゃテンション上がる!!
そういえば6人と一緒にいるわりには全員で
遊んだりしたことはあまりない。
いつも音楽か同じ空間にいてもそれぞれ
好きなことをやったりしてたからな。
「ふふっ」
あまりにも楽しすぎて笑みが零れれば、
あっという間にお食事会場に着いた。
「悠!こっち!」
私たち7人じゃ広すぎる会場をきょろきょろ
していると、奥のほうにある机に6人が
座っていて、煌が手を上げた。
満面の笑みを隠すこともせずに、ガラにでも
なく駆け寄ると。
「どうしたの悠、そんな楽しそうな顔して」
「だってみんなとトランプやるんだって
考えたらすんごいワクワクしてきちゃった!」
私の表情を見てすぐに、日向がふわりと
微笑んで分かっているだろうことをわざと
聞いてきた。
正直にニカッと笑って答えると、分かりやすい
反応を示す彼ら。
………何か、可愛い。
「よし、全員集まったことだし、トランプ
でもやりますか!」
「何やるー!?やっぱ最初はババ抜きとか!」
「この人数でババ抜きとか中々終わらなさそー」
煌がトランプを器用にシャッフルすれば、
空雅は目をキラキラさせるけど、大和は
苦笑い。
「ババ抜きでいいんじゃないか?俺の頭脳なら
間違いなく俺は先に上がれるからな」
「……築茂、恐い…」
「本当だよねー!築茂が相手なら何やっても
頭脳で負けるって」
玲央に激しく同意して見せると、玲央は
楽しそうに頷く。
こんな顔も、惜しみなく出してくれるように
なったんだなぁ。
最初に出会ったばかりのころは何を考えて
いるのか分からない瞳と、無表情だったし。
今、目の前ではしゃいでいる彼らと出逢ってから、
彼らも変わったけれど、私も変わったような気がする。
前よりもずっと、音楽が好きになれた。
前よりもずっと、いろんなことに積極的に
なれた。
前よりもずっと、生きることを楽しいと、
好きだと感じるようになれた。
自分を遠くから振り返るといろんなことに
気付いていく。
大事なものは見えそうで見えにくくて、でも
目を凝らせばよく見えるもの。
急いでいるときは見えないものも、気持ちに
余裕のあるときはちゃんと見える。
暮らしの中にはそんなものがたくさんあるね。
だから毎日を大切に、丁寧に歩いて行く、
ささやかな愛おしい日々で花束をつくるように。
そう思えるようになったのも、目の前に
いる6人のおかげだな。
煌が手際よくトランプを分けてくれて、
それぞれが手札を確認する。
同じ数字同士を捨てるために探すけれど
……なぜだ、1組しかない。
私の手元に残った枚数は、6枚。
6人をちらっと見て見ると、余裕そうな顔を
しているのが築茂と玲央。
いや、玲央に関しては枚数が少なくても
多くても関係ないんだろうな。
だって7枚も、残ってるし。
それに比べて築茂はどうしてだろうね、たった
2枚しかないってどうなのよ。
もう終わっちゃうじゃん。
空雅はトランプとにらめっこ、大和は
真剣な顔つきで5枚のトランプを見つめる。
日向と煌はそれぞれ4枚持っているけど、
楽しそうに周りを眺めていた。
- 第21音 ( No.206 )
- 日時: 2013/05/07 20:13
- 名前: 歌 (ID: 6Bgu9cRk)
「もう捨てるカードない?じゃぁ始めるけど
ジャンケンで順番決めよう。あ、あとビリの
人にはもちろん罰ゲームがあるからね」
出たよ、腹黒日向様。
「罰ゲーム!?お、俺ぜってーに負けたくねぇ!」
「ちなみに罰ゲームって何やんの?」
空雅の素っ頓狂な声は誰一人相手にせず、
大和が聞けば、日向は何がいい?と
意味深な笑みを零した。
その隣で煌もニヤニヤしていて、なんだか
このお2人さん、よからぬことを考えてる。
「もし、俺たち6人の中で誰かが負ければ、
そいつは好きな奴の前で一発ギャグをする。
悠が負けた場合は……」
ちょっと待って。
にこにこ、ニヤニヤしている2人よりも
よからぬことを考えてる眼鏡の誰かさんが
ここにいました。
「何で私だけ例外なのさ?しかも好きな奴って
空雅が負けたら愛花の前で一発ギャグ
やるなんて日常茶飯事で罰ゲームじゃないし」
「空雅はビリにはならない」
「はぁ!?何でそんなの言い切れるわけ?」
「俺の計算に狂いはないからな。それよりも、
悠が負けた場合は……一番最初に上がったやつに、
キスをする」
えぇー。
「うっわ、めっちゃ嫌そうな顔してるし」
大和さん、その通りですよ。
「どうするんだ、悠?この勝負に挑むか、
それとも逃げるか。お前次第だぞ」
「……私がビリになるわけないし!やるっつーの!」
ムキになってそう言えば、築茂は満足そうに
口角を上げた。
それまで笑っていた煌と日向の目には
メラメラと闘争心が生まれ、玲央は
分かりやすすぎるほど、背筋が伸びている。
大和は築茂を、こんの鬼畜変態眼鏡野郎と言わん
ばかりの視線を送っていた。
唯一、空雅だけがそんな光景をはらはらと
した様子で見ていて。
絶対に勝とう、とトランプを持つ手に力を入れた。
結果。
思い通りに行ったと顔に書いてある築茂の
目が、私を見下ろしていた。
「……どうしてだ…どうして私がビリなの!?」
「だから言っただろ。俺の計算に狂いはないんだよ」
「めっちゃ悔しいー!もう1回やろっ」
「それはいいが、まずやることをやってからな」
そう言って席を立った築茂は、私に
じわじわと近づいてくる。
「さぁ、罰ゲームだ。悠が負けたら一番最初に
上がった奴にキスをするんだったよなぁ?」
「……え、あぁそうでしたっけ?」
「忘れたとは言わせないぞ?」
「いや、ほら、みんないるし」
「これは勝負だから全員文句はないよなぁ?」
ギロ、と効果音が聞こえたけど今。
その視線に捕まった5人は、めちゃくちゃ不機嫌な
表情をしているのが1名。
平静を装っているのが1名、微笑んでいるけど
どす黒いオーラを出しているのが1名。
無言の圧力をかけているのが1名に、あわあわと
視線を泳がせているのが1名います。
もちろん誰が誰だか、分かりますよね?
「誰も何も言わない、と言うわけだ。さ、
罰ゲームをとっとと終わらせてまた
やろうじゃないか。もちろん、また罰ゲーム
付きで、な」
「……悪魔、変態、MのくせにSのフリ」
「それ以上言うと俺からキスするぞ?」
「はい、すいません。すぐにします。
もちろん頬にだよね?」
「そうだな、明確に言えば口にすべきだが、
人前だからそれで許してやろう」
何なのこの人、何かフランスに来てから
態度が明らかにおかしいんですけど。
さっき自分から無理やりなキスしたくせに、
まだ足りないっていうのか。
たぶんこれも、煌から何か言われたか
聞いたからなんだろうな。
全く、めんどくさい。
「はいはい、しますよ。……みんな、見たく
なかったら目瞑っててね」
一言だけそう、言って。
私も席を立ち、築茂に向かって。
少し、背伸び。
ちゅ。
頬に軽く、触れるだけのキスを、落とした。
ぱっとすぐに顔を離してそのまま
何事もなかったかのように、席に戻った。
……痛いよ、痛いほど視線が投げられてくるよ。
ちらっと視線を上げてから、上げなければ
よかったと心底後悔した。
視線の先には、唇を噛みしめて悔しそうに
顔を歪ませている、大和。
「……もう、やめようぜ。罰ゲームとかあっと
楽しくできやしねぇ」
「なんだ大和、怖気づいたか?」
「っつにそんなんじゃねぇよ!こんなのおかしいし、
トランプするだけなんだし、普通にやろうぜ」
「俺も、大和に賛成。ってか築茂、ちょームカつく」
うわぁ、煌が怒ってる!!
やめてやめて、これからみんなで音楽やって
いくんだから深刻な空気にしないで!
「はい、ストーップ!築茂、もうこういうのは
なしね!ってか私がマジで嫌!せっかく
みんなで来たんだから楽しい思い出もたくさん
作りたいじゃん!」
「そ、そうだそうだ!あ、写メとか撮ろうぜ!?
そういえば愛花に送ってって頼まれてたんだった!」
「それいいねぇ。あまり俺たちって写真とか
撮ったことなかったし、こういうときくらい
形に残さないと」
さっすが空雅、こういうときにこいつの
存在はかなり救われる。
日向もそれに便乗してくれて、何とかさっきの
緊迫した空気は薄れた。
築茂も大人しくイスの背もたれに身体を預け、
大和は築茂を睨むのをやめる。
ふぅ、よかった。
「じゃぁムウさんに撮ってもらおう!
トランプしてるところをさ」
さっきまでの嫌な感情を流すためか、煌は
笑顔で席を立ってムウさんを捜しに行った。
……本当にこの人たち、分かりやすい。
「煌が帰ってくる前に何やるか決めようか。
何かやりたいものある人ー」
「はいはいはい!私、ダウトやりたい!」
「ダウト?なんだそれ?」
日向がトランプをシャッフルし始めて、私は
勢いよく手を上げた。
ダウトを知らないのか、大和が首を傾げる。
ダウトっていうのは番号順にカードを裏返しで
番号を言いながら置いて行くゲーム。
言った番号と実際に出したカードが一致してない、
つまり出した人が嘘をついていると思ったら、
他の人が『ダウト!』って言う。
そしたら出したカードを全員に見せてもし、
本当に嘘をついていたら嘘をついた人が
置いてあるカードを全部もらう。
嘘じゃなかったら『ダウト!』って言った人が
カードを全部もらう。
手札がすべて無くなった人から抜けられる
っていうゲーム。
- 第21音 ( No.207 )
- 日時: 2013/05/08 21:06
- 名前: 歌 (ID: 7hcYnd26)
簡単に説明をすると。
「へぇ、おもしろそうだな。でもかなりの
頭脳戦ってことかよ?俺、苦手かもー」
「確かにね。しかも中々終わらなさそ」
「それが面白いんだって!自分のカードに
もし4が4枚あったら必ず4を言う人は嘘を
ついているんだから。でもジョーカーは
何にでもなるから注意だけど」
頭を掻きながら言った大和に、日向も
苦笑いするけど、私はどうしてもやりたい。
だってこれなら、絶対勝てる自信がある。
「ふ、俺には余裕だな。一度に同じ数字なら
2枚以上出しても構わないんだろ?」
「うん、そう。もし慣れないうちはダウトって
言わなければいいし、嘘を吐かないように
すればいいのさ!」
なーんて、手札にその時自分が出す数字が
なかったら嘘を吐かざるを得ないけどね。
「まぁ煌が帰ってきたらやってみようか。
玲央は意味、分かった?」
「……なんと、なく。分からなくなったら、
悠に…助けてもらう」
「うん、任せといて!」
さっきまでの腹黒日向はいつの間にか天使に
化けて、玲央に優しく微笑みかけている。
そんなことを思いながらも、玲央に親指を
立てて見せた。
日向がトランプを配り終えたころに、煌と
ムウさんが登場。
「ムウさん、お願いします」
「はい、かしこまりました。何のゲームを
やられるんですか?」
「ダウトです!知ってますか、これ。めっちゃ
面白いんですよ〜」
煌がムウさんに携帯を預ければ、ムウさんは
にこやかにそれを受け取る。
私がちょっと自慢げに言うと、一瞬、
ムウさんは。
驚いた表情を、見せた。
「ムウさん?何か驚くことがありましたか?」
「あ、いえ……日本でもあるんですね。もちろん
知ってますよ。でもどうして…それを、やりたいと
思われたんですか?」
どうしてそんなことを聞くのかとも思ったけど、
別に答えない理由もないから。
「昔、ある人とよくやっていて、叩き込まれたんで
一番得意なんですよ。これならこいつらに余裕で
勝てるかなぁと思って。でもその人に勝てたことは
一度もないんですけどね」
そう、笑って、答えた。
一瞬、瞳を揺らしたようにも見えたムウさんは、
すぐにふわりと甘い笑顔に変わり。
「……そう、ですか。楽しんでくださいね」
「じゃぁシャッターお願いしますね。カメラマークの
ボタンを押せば撮れるので」
煌に言われた通り、ムウさんはカメラを
構えて頷いた。
「あ、それ何枚か撮ったらムウさんも一緒に
やりません?人数多いほうがややこしくなるし」
「え!?い、いや……私は遠慮させて頂きます」
「えー、絶対楽しいのに!今だけお仕事なんて
忘れて、一緒にやるましょうよー」
「そうですよムウさん。これからたくさんお世話に
なるので、こんな時くらい遊びましょう」
私が提案すると、ムウさんは困ったように笑ったけど、
ちょっと強引に言えば日向も口を出してくれた。
大和たちも頷いて席をしっかり、空けている。
そんな私たちにムウさんは、困っていた笑顔が
ちょっと嬉しそうなものに変わり。
「では……お言葉に甘えて」
と、はにかんでくれた。
最初に私たちだけで手札を持った状態のまま、
ムウさんに写真を何枚か撮ってもらい、
ムウさんが入った後も何かあるたびに撮ってくれた。
こんなに楽しかったっけ?と思うくらい、
それはもう、大はしゃぎして。
今まで柚夢以外の人に、ダウトでは負けた
ことがなかった、のに。
私が上がったのは2番、で。
1番、最初に上がったのは。
ムウさん、だった。
トランプが終わったころにはあっという間に
食事の時間で、気付けば会場中にいい匂いが
広がっている。
私はフルーツと野菜を少しだけ食べて、
薬を、飲んだ。
「神崎様?それだけで、ですか?」
「はい。ダイエット中、なので」
そんな私の姿を見て不思議そうな表情をした
ムウさんに、曖昧に笑って見せる。
6人の視線が少し落とされたような気が
したから、すぐに話題を変えて。
私は、先に、部屋に戻った。
電気をつけて中に入れば、ちょっとひんやりと
した空気が、す、と心の中に入ってくる。
冬の足音が、聞こえてきそう。
ここは沖縄と全然違って、しっかり寒さも
あるし冬にもなる。
冬、って聞くと思い出すのは、柚夢がいなくなって
初めて1人で過ごした、中3の冬のこと。
私の心はいつの間にか、空っぽで、冬空模様に
なっていた。
どんよりとした空のような、どこか
泣きそうな心だけを抱えていたっけ。
柚夢のいない、冬。
どうやって生きたらいいのか分からなくなり、
ふと柚夢を想い出すことがあって。
柚夢はいつも、云っていたね。
大事なのはどうして生きているのかではなく、
どうして死なないのか、であると。
そう考えると自然、僕たちは自然に生きる意味に
たどり着くものだと。
そう云った柚夢は私の前から、姿を
消したけれども。
冬は凍てつき、風は優しく、暖炉は非情で、
キスは苦い。
そういう当たり前を教ええくれた。
柚夢がいない世界で私は、どうして生きたいの?
柚夢は、どうして?
愛が痛いって神様、あなたも云いますか、
それとも。
断罪、下さい。
空、青いから。
涙が、冷たい。
冬が過ぎてゆく街がある。
きっと、この街で、私は柚夢を少しずつ
忘れていくのかもしれない。
さよならなんて言葉はいらない、きっと。
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