コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 青い春の音【完結】
- 日時： 2013/12/07 21:38
- 名前： 歌 （ID: VXkkD50w）
「青い春の音」の番外編、短編集
「青い春の心」もよろしくお願いします。
「青い春の音」の続編
「青い春の恋」始めました。
2013.6.14に始めて2012年冬・小説大会で
「青い春の音」がコメディライト小説部門で
金賞を取ったことを知りました。
投票してくださった方がいてくれたのに、
お礼も言わず本当にバカだと自分に呆れます。
改めて言わせてください。
本当に本当に、ありがとうございます！！！
まだまだ続くので、これからも
よろしくお願いしますm(__)m
出会うべくして出会えたこと。
かけがえのない“仲間”
性格も価値観も生き方も
全然違う私たちが出会えた。
そして、そこから始まるさまざまな音の物語。
それはキレイだけではないけど、
不協和音も聴こえるかもしれないけど、
私たちは間違いなく、自分たちそれぞれの
音を奏でていた。
純粋で自然な音を。
空と海と風と鳥に向かって、
ただ紡ぐだけで心が満たされる音楽。
さまざまな想いを抱えながらも、“仲間”
という絆から徐々に芽生える気持ちとけじめ。
淡い恋心さえもそこには含まれていた。
楽しい時だけが
仲間じゃないだろ？
オレ達は
共に悔しがり
共に励まし合い
生きてゆく
笑顔の日々を
—登場人物—
名前(年齢)性別-担当する楽器
(他にできる楽器)-アカペラで担当するパート
カンザキユウ
神崎悠(16)♀-ピアノ(バイオリン、
アルトサックス)-リードボーカル
サバサバで自由人。
好きなことを好きなだけやる。
キドウヤマト
鬼藤大和(17)♂-アルトサックス
(トランペット2nd)-コーラス
極度の負けず嫌い。
俺様なところが多少ある。照れ屋。
ツキナミクウガ
月次空雅(16)♂-トランペット1st
(ドラム)-ボイスパーカッション
空気が読めないポジティブバカ。
練習をあまり好まない。
タチバナツクモ
橘築茂(18)♂-バイオリン
(コントラバス)-コーラス
知的でクール。常に計算、
計画通りに進めたい。
オギハラヒュウガ
荻原日向(17)♂-テナーサックス
(アルトサックス)-コーラス
常に穏やかで優しい。
しかし、自分の意思はしっかり持ってる。
ヒムロレオ
氷室玲央(19)♂-コントラバス
(バイオリン)-ベース
常に眠たそうにしている。
一見無愛想だが、天然で真面目。
カスガイコウ
春日井煌(20)♂-バイオリン
(ピアノ)-リードボーカル
しっかり者で頼れる。
練習はスパルタで熱い。
後にしっかり説明します。
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- Re: 青い春の音 ( No.125 )
- 日時： 2013/01/21 18:42
- 名前： ハリーポッター ◆SVKZkFup7. （ID: geEvUTTv）
いい歌ですね！
バイオリンかあ・・・。
あの音、綺麗ですよね。
聴いてると、気持ちが良くなります。
テレビでなら見たことあるけど、生で、見たことないなあ。
歌さんは見たことあります？生で！
- 第１２音 ( No.126 )
- 日時： 2013/01/21 22:42
- 名前： 歌 （ID: YohzdPX5）
「……っ」
適当に思いついた言葉に音をつけて
飛ばしていた、ら。
誰もいるはずがないのに、ましてや、
こんなに聞き慣れた声の人物が
いるはずがない、のに。
動揺を隠し切れずに体を起こせば、
そこには聞き間違えることなど
あり得ない声の主。
神崎悠、がいた。
「え、何でそんなに驚くんですか。珍しい」
「当たり前だろ。なぜお前がここにいる」
「えー、ちょっと早めに用事が終わったから、
あそこから侵入してみましたっ。そしたらちょうど
築茂発見！みたいな？」
あまり使われていない裏門を指さして、にやっと
意味深な笑みを浮かべる悠に、呆れてものも言えない。
「はぁ……ばれるなよ」
「あれ、不法侵入とか言わないんだ？」
「追い出してほしい、と？」
「いえいえいえ。滅相もございません！それより、
さっきの歌、築茂が作ったんでしょ？」
「今、この場で思いついただけだ。
何の意味もない」
これ以上、俺の心に入り込ませない。
「へぇ。ま、別にいいけどさ。でもここが
S大かぁ。やっぱ広くて大きいねぇ。
ね、何でこの大学に入ったの？」
「お前に言う必要ないだろ。俺にはあまり
関わるな。よく考えろ」
「あまり？じゃあ少しは関わってもいいんだね！
ま、私が築茂に関わりたいだけだから、
気にしないで」
……どうも、調子が狂う。
冷たい言葉を発すれば今までの人間は自ら、
俺には近づかなくなった。
1人になることくらい、簡単なことだと
思っていたのに、この神崎悠は全く
怯むこともなく、堂々と俺の目を見据えてくる。
恐ろしいくらいに。
「ずーっと疑問に思ってたんだけどさぁ、
どうして初めて会ったあの日、バイオリンを
弾きながら悲しそうな目をしていたわけ？」
入ってきた。
「……入ってきてしまったな。俺は忠告
したはずだ。よく考えろって」
それでも、それでもお前は俺の心に
入ってくるのか？
「入るに決まってるでしょ。ついでに
ロックかけてくれていいよ」
自身満々の綺麗な笑み。
何の戸惑いもなく、後ろ手にオートロックの
ドアを閉めるつもりだろうか。
「本当は何を考えているか分からないけど、
優しいじゃん。表情は読めないけど
そこから奏でられる音色は時々素敵だけど、
大抵は不協和音だよね」
カチャ、とドアのロックが閉まる音が、
小さく聞こえたような気が、した。
もう、出すことなどできない。
「……俺は忠告したのにな」
本当に、神崎悠という人間はつかめないやつだ。
認めたくはないが、俺は観念して
バイオリンと父のことを思うがままに
話してみようと決心した。
「俺の存在価値は何点だと思う？」
頭の中に流れる映像は、幼き頃の俺。
どんよりとした雲から雫が落ち始めているのに、
傘もささず、身体が冷えてくことにも逆らわず、
まだ10歳の少年はその場に立ち尽くしていた。
雨の中、自分の存在価値を考える。
ボクは何点ですか？
100点なんて望まないよ、
1点だって涙こぼすほど嬉しいんだ。
待ってたってハナマルは貰えないけど、
傷つくのが怖くて動けずにいるんだ。
どんな勉強をすればいい？
範囲はどこからどこまで？
どんな練習をすればいい？
何時から何時まで？
任せてよ、頭も腕も悪くないから。
小学校のテストで100点をとっても、
バイオリンで出来るようになった曲を
披露しても、父に言われる言葉は。
『まだまだだな』
その時の俺は、褒めてくれることを
期待していたのかもしれない。
裏切られた、なんて思ったのだから。
最初から期待なんてしなければ
裏切られることもない。
この時から、そう、思うようになった。
しかし、年齢を重ねるにつれてその立場は
逆転することになる。
中学校に入れば、バイオリンの大きな
コンクールに出場させられた。
手前に置かれたバイオリンを前に、
父の期待の眼差しが俺の腕を切りつけた。
バイオリンにべっとりと赤い染みができ、
何もかもが赤く染まり、それに
埋もれて俺は息をなくす。
バイオリンは赤にとらわれて、
洗っても離れない。
逃げ出そうとしても、大量の楽譜に足を
すくわれて進むたびに食い込み、
引き裂け、肉がはじけた。
俺が死んで妄想の世界は過ぎ去った。
また、バイオリンが目の前に
置かれている。
そしてまた同じことの繰り返し。
こんな夢をよくみるようになった俺は、
全てを完璧にこなさなければいけない、
そのプレッシャーを跳ね返すために。
心を2秒で捨てた。
- Re: 青い春の音 ( No.127 )
- 日時： 2013/01/22 20:52
- 名前： ハリーポッター ◆SVKZkFup7. （ID: geEvUTTv）
なんか、一言でかわいそう・・・。
お父さんも褒めてあげればいいのに。
- 第１２音 ( No.128 )
- 日時： 2013/01/23 22:04
- 名前： 歌 （ID: HBvApUx3）
そんな昔話をしている間、悠は一言も
喋らずに相槌を打ちながら、静かにそこに
いるだけだった。
でも、とても、懐かしい感じがした
理由は、分からない。
「どうだ、つまらない無駄話だったろ」
「ははっ！いやぁ築茂の淡々と話す声が
心地よくてずっと聞いていたかったわ」
「……ふっ。そんなことを言われたのは
生まれてこのかた初めてだな」
「そりゃあ、生まれてこのかた、私みたいな
人間に出会うのは一度きりだから」
「それもそうだな。お前みたいな人間には
二度と出会えないだろう」
「じゃあ私はずっと築茂の傍にいないとね」
誰からも言われたことがない、誰も
言わないような言葉をさらっと俺の心に
落としてくる。
感情がないはずの俺に、こんな気持ちを
何と呼ぶのかなんて、知るときが来るのだろうか。
「築茂」
悠に名前を呼ばれて、地面に落としていた
視線を持ち上げる。
一度、俺の瞳を真っ直ぐ見てから、目を細めた。
「真っ白な部屋に親たちは願いを込めて色を塗る。
たとえそれがエゴだったとしても、大切な
息子のことを思ってやっているのかもしれない」
「聞いたことはないな」
「だとしても、いつしか自分で部屋を飾らなきゃ。
もらった物や、拾った物でさ」
悠の言いたいことはすぐに理解できる。
確かに俺は今まで自分の意思で何かを
やることなんてしてこなかった。
自分の部屋なのに、親の言葉通りに、
望み通りに、部屋を作ってきた。
「私はさ、人を招いてそして訪れて、
好きな部屋にしたいからいつも模様替え。
たまに汚されることもある。とても
綺麗に出来ないくらいに」
驚い、た。
正直、悠から自分のことを話すなど、
今までに起こりえなかったこと。
あの噂のことだって、笑って誤魔化して
いたものの、事実の可能性だって
まだ捨てきれない。
その悠が表情は変わらないように見えるが、
少しでも言葉にしたことにとても
大きな意味があるのかもしれない。
「もしかしたら、築茂の心の部屋も、
開けたら私みたいなのが入ってきてたくさん
汚されるかもしれない。でも、1人で
片付けようとしないで。築茂には築茂の部屋が
大好きな人たちがいるからさ！」
「……誰のことだ？」
「えー！私や煌、大和に空雅だって！日向や玲央も
いるでしょ。当たり前じゃん」
この、感情は一体何なんだ？
どく、どく、と心臓がやけにうるさく
脈を打っている。
俺は知らない、こんな心がかき乱されそうに
なる感情なんて。
「だからさ、素敵な部屋にしていこうよ。
笑いながら、みんなで」
“みんなで”
今なら、ずっと誰にも心から言ったことの
なかった言葉を、言えるような気がする。
俺は悠の黒く、澄んだ瞳をしっかり
この目に刻みながら、
「ありがとう」
たった5文字だけを言葉にした。
すると、大袈裟に目を見開いて、綺麗に
グロスが塗られている唇も僅かに隙間ができる。
「ぷはっ！」
その悠の顔があまりにもおもしろくて、
笑いを堪えきれずに吹きだしてしまった。
そして今世紀最大の発見をしたかのような
表情で、俺を見る悠。
俺のキャラではないことくらい、自覚しているが、
どうもツボに入ってしまったようで、
中々笑いが治まらない。
「つ、築茂が……あの冷徹男の築茂が！
声を上げて笑ってるよ!?」
と、本人の目の前で堂々と失礼なことを言えば、
あたふたした様子でポケットから携帯を取り出した。
どうやら、今日の俺は頭のねじが1本、
緩んでいるようだ。
悠が次に何をするのか、先読みをする
どころではなく、治まりどころを知らない
笑いを吐き出すのに忙しい。
ピコ、という変な音も俺の笑い声で
かき消されていた。
「築茂くーん！どうしてそんなに
笑っているんですかー？」
「くくくっ……あ、あぁ、お前の顔がっ…ふふ」
「私の顔、そんなにおもしろかったー？」
「くはははっ！思い…出させないで、くれっ…！」
笑いで思うように息が吸えず、言葉も
途切れ途切れになる。
「えーみなさん、ご覧の通り、私はただいま人類の
新種を目の当たりにしております」
………ん？
悠の口調に違和感を感じて、息を整えながら
悠のほうを見てみると。
携帯をこちらにしっかり向けていた。
「ばっ!?お前、何してる！」
「わわわ！築茂が焦ってます！あの冷静すぎる
築茂さんが大慌てしています！！」
と、レポーターのように喋る悠と携帯に
すべてを察知した俺は、勢いよく
悠の持っている携帯を奪おうと手を伸ばした。
「よこせ！動画撮っているんだろ？
今すぐ削除してやる」
「無理無理無理！空雅がテストで50点取る
よりも珍しくてすごいことなんだから！」
「あんなやつと俺を比べるな！よこせ！」
「おぉー！！こんな築茂はもう二度と
見られないかもしれないっ。永久保存だ！」
意味の分からないことばかり言っている
悠よりも、俺の頭の中は、まだ回っている
動画を止めて削除することにいっぱいだった。
ここが、大学内だということも、忘れて。
- 第１２音 ( No.129 )
- 日時： 2013/01/24 21:35
- 名前： 歌 （ID: JbG8aaI6）
逃げ回る悠の手の中にある携帯にようやく
手が届き、悠の手ごと、ぐっと強く握った。
そしてそのまま取り返そう、としたが。
抵抗されて思わず、重心が偏り、
バランスを崩してしまった。
「わっ！」
「……っ」
気付いた時には。
目の前には至近距離で映る悠の顔で、
身体は悠を覆いかぶさるような体勢に
なってしまった。
近すぎる悠の顔に、思わず心臓が、
大きく跳ねる。
手は携帯を握ったままの悠の手を
しっかり掴んでいて。
この状況がどういうことか、なんて
瞬時に理解できてしまった。
「つ、築茂さーん？ちょっと、背中が
痛いのでどいて頂けます？」
「……あ、あぁ。悪い」
悠に言われて慌てて、身体をお越し、
距離を作った。
俺の心臓がこんなにもうるさいのに
悠は何ら変わらない様子で、
「あー、痛かったぁ」
と、呑気に腰をさすっていた。
その仕草にも変な想像と重なってしまって、
すぐに頭の中から排除する。
今日の俺は、やっぱり、変だ。
体を起こしてすぐに、携帯の心配を
する悠にとことん、振り回されている俺は。
悔しいにもほどがあるから、
普段通りに平静を装うのに精一杯。
「……ねぇ、築茂」
「……なんだ」
「さっきっから、大勢の人がこっちを見て
いるんだけど。知り合い？」
は？
勢いよく後ろを振り返ると、中庭に続く
廊下から、気持ち悪いほどの顔が
ずらりと並んでこっちを見ていた。
その光景に思わず、顔が引きつる。
おそらく、さっきの一部始終をすべて
見られていたのかもしれない。
俺としたことが……大学内で素を出して
しまうなんて。
「築茂？大丈夫？」
額に手をやり、ズキズキしてきた頭に
目をぎゅっと瞑る。
悠の顔は、大学内でも有名なはずだから
余計に人が集まったのだろう。
「築茂っ……と悠!?本当にいたのか」
その叫び声に嫌々顔を上げると。
息を切らして、俺たちのもとに
駆け寄ってくる煌。
「煌！やっほー」
「やっほー、じゃないでしょうが。何で
悠がここにいるんだ？」
「ちょっと遊びにきちゃったー」
「はぁ……。大学内でかなり騒ぎになってるぞ。
とりあえず、教師が来る前に場所を変えよう」
能天気な悠に半ば呆れながら、煌の
言うとおり、頭痛を我慢しながら
人影のない校舎裏へと急いで回った。
ようやく人の目から逃れることができ、
一安心、したと思ったが。
いつの間にか、煌の手が悠の手をしっかり
握っているのを視界に捉えた瞬間。
無意識に眉間にしわを寄せていた。
「何かすっごい見られてたけど、あれ何で？」
「あのなぁ……。悠は有名だっていっただろ？
その悠が大学内で恐れられている築茂に
襲われている、なんて噂が流れたらどうするんだよ」
「はぁ？なわけないない！ねぇ、築茂？」
「……あぁ。不愉快極まりない」
早く、その手を離せ。
「でももう、それに近い話を生徒たちが話しているの
聞いちゃったから、俺は慌てて来たんだけど」
「へぇーそうだったんだぁ。ま、大丈夫だって」
「悠は大丈夫でも築茂が大変だろ？こいつ、
大学内ではまともに喋るの、俺くらいだし」
「マジで!?そんなのダメじゃん！築茂、もっと
人と関わらないと」
なぜ、嫌がらない。
もう握っている必要なんて、ないはずなのに、
どうしてまだ2人の手は合わさっているんだ？
「ほーら、悠！築茂がかなり機嫌
悪くなっちゃってるじゃん！」
「あぁ、俺の不快指数は上昇中だ」
「あ、あははー……築茂、ごめんね？」
どの、ごめんね、なのだろうか。
というか、俺はどうしてこんなにイラついて
いるんだろうか。
別に大学内で噂が立ったとしても、俺には
関係ないことだし、無視すればいいこと。
それについてイラついているわけじゃない。
「つ、築茂？そんなに嫌だった？でも、
きっと大丈夫だからさ」
「手」
「え？」
「いつまで、繋いでるつもりだ？目障りだ」
おどおどし始めた煌に、冷たく言い放つと。
「ご、ごめんっ悠！」
「あ？全然！ってか繋いでたんだね」
おそらく、俺は普段以上に殺気の交えた
瞳で煌を睨んでいたのかもしれない。
慌ててすぐに手を離したのを確認すると、
少し、苛立ちが治まったような気がした。
当の悠はいつものようにへらへらとしている。
煌に手を繋がれていたことなんて、
空気だったかのように、気にもしていない。
それに少し、安心している自分がいた。
「ってか2人とも！次の講義！大丈夫なの？」
「一応ね。って言ってもあと5分で
始まるからそろそろ行かないとまずいけど」
「わっ！何か、ごめん。じゃあ私は近く
ぶらぶらしているから、講義終わったら
連絡ちょうだい」
「1人で大丈夫？」
「全然！お散歩とか大好きだし。築茂、
本当にごめんね？あ、あと動画はばっちり
保存したので」
……っ!?
すっかり、忘れていた。
「お前！」
悠の腕を掴もうとしたときには、もう
既に距離が取られていて。
「じゃ、また後でねー！」
悪戯っ子の笑みを浮かべながら
去って行った悠に、とことん、
振り回されている自分がバカらしくなった。
「動画ってなんのこと？」
「……こっちの話だ。それより、
急がないとまずいんじゃないのか？」
「あ！そうだった。じゃあ築茂、さっきのこと、
もしかしたら教師から呼び出されるかも
しれないけど、大丈夫か？」
「問題ない。急ぐぞ」
この俺が、羽目を外すわけがないのだから。
小さなため息をついた煌とともに、
校舎内へと、戻るために足を向けた。
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