BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ■卒業します、今までありがとうございました!
- 日時: 2015/12/26 23:44
- 名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: 7nl1k8P4)
■お知らせ >>801
いとしい君はもういない。眠りかけていた鯨の骨をひろい、どこまでも深い砂の底でそっと君をおもう。君のものじゃない骨に頬をすりよせ、その冷たさに酔いながらほろほろと雫をおとす。いつか君が死んだとき、君の骨が僕じゃない誰かに抱きしめられますように。そう願って今日もなく。/骨をうたい君になく
2014年も元気にチキンしていきますので宜しくお願いしまチキン! /2014年挨拶>>775
■ご挨拶
どうも、ささめ(元・箕遠)と申します。
当スレでは同性愛メインの短編を執筆しております。同性愛という言葉に嫌悪感、またはささめさんに中指を立てたい方はスレの閲覧はお控えして貰った方が宜しいかと。
大丈夫な人は、ゆっくりしていってね!!(アヘ顔)
基本的には雑食です。マイナーだったりメジャーだったり。あんまり嫌いなCPはないので、お気軽に話しかけていただけたら。百合百合しかったり、薔薇薔薇しかったり、普通の恋愛書いてたりと忙しいです。
*小説
■10月中盤〜の小説まとめ >>187
■2010年12月後半〜の更新分まとめ >>227
■2011年2月中盤〜の更新分まとめ >>270
■2011年3月中盤〜の更新分まとめ >>325
■2011年5月上旬〜の更新分まとめ >>360
■2011年7月中旬〜の更新分まとめ >>387
■2011年9月下旬〜の更新分まとめ >>425
■2012年3月中旬〜の更新分まとめ >>455
■2012年7月中旬〜の更新分まとめ >>506
■2012年8月下旬〜の更新分まとめ >>549
■2012年11月上旬〜の更新分まとめ >>579
■2013年1月上旬〜の更新分まとめ >>618
■2013年3月下旬〜の更新分まとめ >>672
■2013年5月下旬〜の更新分まとめ >>736
■2013年9月中旬〜の更新分まとめ >>769
■2013年12月下旬〜の更新分まとめ >>802 ←newでしてよお姉様
■夢用オリキャラ
竜咲 伊織 (りゅうざき いおり)>>141
伏見 潤 (ふしみ じゅん)>>159
■うわああああああリクエスト品貰っちゃったよ!
神文ばっかりだよ!
・リクエストしたら素敵な小説くださいました、感謝ですろくちゃん!
>>黒紅葉様より >>127-129
・お題です、頂きました。……神、降臨。
>>ひふみ。様より >>277>>307
・兄貴とオクラのこんな関係……身悶えするしかないじゃない(ビクンッビクン 参照2000突破祝いです!
>>華京様より>>318
・テスト明けに人魚姫って凄い癒し。
>>あゆ様より>>335
・誕生日プレゼンツです。もう愛してるとしか言えない
>>黒紅葉様より>>451-452
■贈り物(リク品)
>>親愛なる友人、唯無様へ!
慶毛/ほのぼの >>409
****
スレ名変えました。
《さよならクレイジー》⇒《暗い、喰らい、Cry》5.2⇒《透明サイコロジー》12.11⇒《歪んだ傷跡にさよならを贈る》6.12⇒《憂鬱マゼンダ!》12.3.8⇒《そして卵は割れた》12.6.9⇒《世界でひとり、恋をしよう?》12.7.29 2012年挨拶>>580 ⇒《Hello,Microcosmos!》13.1.2⇒《トロイメライの墜落》4.29⇒《うつくしきまなこ》9.4⇒《骨をうたい君になく》2014.1.13
名前変えました。
《箕遠(みおん)》⇒《ささめ》8.13
- ■かわいそうだと愛しておくれ ( No.795 )
- 日時: 2014/03/26 22:55
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: 35AN48Qe)
柔らかい、と素直に感嘆した。白く柔い肌に頬ずりをしながら、敦子のバストは何カップだったかなぁ、と思いを巡らせる。この前のクラブの後に「室ちーん、また大きくなっちゃったぁ」と肩を落としていたはずだ。F以上ということは、わかっているのに、そこから先はどうも記憶が曖昧で困る——心臓が壊れそうなぐらいの緊張感の中で、そんな下卑たことしか考えられないというのは、淑女として如何なものだろうか。淑女、と自分を形容することに苦笑が出てしまう。ひとつ年下のチームメイトを、同性の子を、無理やり押し倒しておいて何が淑女よ、まるで獣よ。そう叱咤する自分とは別に、指先はどんどん甘い世界を求めていく。
好き。すきすきすき好き。大好き。
たくさんの好きで占められた彼女の身体に触れていく。紫色の透き通るような髪の毛は、今は部室の中にあるベンチの上で花のように広がっている。長い睫毛は恐怖のためか、ふるふると震えながらも綺麗に上向きになっていた。もしかしたら寒いのかもしれない、なんて笑えちゃうほどの余所余所しい期待。同性の先輩に襲われて、身ぐるみを剥がされて、それで余裕でいられる女子なんているはずがない。ただただ怖くて、震えてる。指先でつん、とブラの中央にある小さなリボンをはじいた。びく、と極端なほど揺れる肢体。怯えている、のだ。やはり。そんなことに今さら動じるほど私にも余裕がないけれど。
はっ、はっ、と野良犬のような荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと、ブラウスの続きを捲っていく。脳内はうすぼんやりと桃色の膜が張っていて、それは車酔いのときみたいに、私の思考回路をふわふわにさせた。いつか敦子が綺麗だと褒めてくれた桃色の指先で、丁寧にていねいに最後のボタンをはずして、
「ごめ、ごめんね、室ちん」
そこで、彼女の嗚咽が、つう、と鼻の先で弾けた。はて、私は敦子に謝られるようなことをしたかしら。むしろ今は私が彼女に謝るべき行為をしてるはずなんだけれど。ふわふわとしていた脳内に、だんだんとはっきりした光が射してくる。気づけば私は額やら背筋やらにびっしょりと冷や汗をかいていた。キスするために塗っていたリップは、唇をかみしめ過ぎたせいか、ほとんど乾きかけている。
顔をあげた。潤んだ、アメジストみたいなきらきらとした瞳に視線が触れる。こわさと、あまさと、うつくしさが全部とろけた瞳。色づいた唇はふんわりとピンク色で、おいしそうだと思った。たとえ今、敦子がしている表情が泣き顔だったとしても。その美しさも、求めようとした甘さも変わらずにそこにあった。
「こんな……こんなふーに、なるまで、む、室ちんのこと、う……ううぅ」
その先はだんだんと嗚咽に飲まれていき、私の耳には届かなかった。言葉の続きは、知ろうと思えば知ることが出来た。私は自慢じゃないけど他の人よりも聡明だ、だから敦子の考えていることもとっくのとうに悟っている。そのきらきらとした瞳が訴える怯えの意味を、既に私は体全体で飲み下している。
でも私は揺るがない。にっこりと、それこそ悪魔みたいな微笑みを浮かべて、だいじょうぶだよなんて嘯いてみせる。もう一度ぎゅうと、彼女の熟れた身体を抱きしめる。冷たかった肌を慈しむように撫で、唇を押し当てた。
だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。私はあなたが大好きだから。私という存在をありったけをこめて、彼女に繰り返し囁く。だいじょうぶ、だいじょうぶ、私が愛するよ。私の今までも、これからも、全部捧げてあなたを愛するよ——泣いている赤ん坊をあやすように、だけど胸の奥に潜む肉欲の炎を消すこともなく、私は彼女の唇にキスをして、また同じように笑った。
「敦子のことが、すきだよ」
呪いのような、それを呟く。
****
氷紫でゆりゆりゆりーぬ
むっちゃんは「こんなになるまで悩ませてごめんね、でも応えられないんだ。こうすることで貴方が幸せになるならこうするよ」ってスタンス。氷は「ああこの子は私が求めてることもわかってるし振り向いてもくれないんだ、じゃあそのやさしさに嘘みたいに浸らせてもらおう」ってスタンス。
そろそろ卒業ですね
- Re: 【色々】 骨をうたい君になく 【短編】 ( No.796 )
- 日時: 2014/03/26 23:13
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: 35AN48Qe)
ぶちり、と足元から嫌な音がした。
おやと視線のみ足元へ向けてみると、案の定、草履の鼻緒が切れている。別に自分はあれこれと迷信に怯えるような人間ではないため「ああ、新しい草履を買わなくては」というため息交じりの感情しか抱かなかった。しかしちょうど現在進行形で共に観光案内をしている(というかさせられているのだが)ヨーロッパの淑女かつベルゼブブの妻であるレディ・リリスは違ったようだ。「まあ!」と数多の男を魅了する麗しい顔を盛大に歪めて驚いた。
「鬼灯様、いけないわ。二ホンではそれは不吉の象徴でなくって? 早く新しい履物を買わなくっちゃ!」
「ああ、いえ……確かに昔からそのような迷信はありますが、根拠は特にありません。それに鼻緒が切れただけですし、まだこの草履は使えます。とりあえずはビニール紐か何かで代用を……」
「そういえば私がさっき買った靴の中に良いものがあるわ! ちょっと待ってらして!」
「貴方の買った靴は女性用だと思うのですが」
「まぁまぁまぁまぁ! これよ、これ。さっ、履いてみて鬼灯様!)
保留
支部に投稿しようと思ってかいてたけどりむーばるディスク不調でメモらせてクダサイ
- ■本日ミサイル飛行無し ( No.797 )
- 日時: 2014/04/02 01:46
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: 35AN48Qe)
- プロフ: ロス→アル
失恋した、と素直にアルバさんは俺に述べた。最低限かつ非常にわかりやすい説明だ。普段はどんくさくて遠回りな彼にしては賞賛すべき進歩だと思う。
傷心旅行についてきてよ。
嫌ですよ、春休みなのに。
お前ぐらいしか頼れる友達、いないんだよ。
……いいですよ。じゃあ、近場でいいなら。
そんな電話のやり取りの後に俺が案内したのは、彼と俺と家からちょうど2キロほど離れた山の麓の公園だった。勿論だが県内だし、電車やバスを使う必要もない。徒歩でのろのろと、日の落ちた遊歩道を2人で歩いてやってき来たのだった。
案の定アルバさんは「本当に近場だなオイ!」と華麗なツッコミをしていた。彼のツッコミはやはり脊髄の奥まで浸透している生まれつきのものなのだなと理解する。お互い金もないしちょうどいいでしょうと宥めて、子ども用の小さなブランコに腰かけた。アルバさんはそれもそうかいやでも……と何ともいえない顔をしながら、結局俺の隣のブランコに渋々座った。
桜も咲き始めた今日この頃だが、空気はしっとりと肌寒い。この寒さは花冷えというのだと、アルバさんが何気なしに呟いた。俺の心を見透かしたみたいな態度に不覚にも安堵してしまう。
「ミサイルが、落ちたらいいんだ」
街灯に光が点き始めた辺りで、アルバさんはそう口火を切った。ただでさえアホな面は泣きすぎてぐちゃぐちゃでみっともない。鼻は赤くまるで歌に出てくるトナカイみたいに膨れている。どれだけ泣いたんですか、と聞いてみるも返事はなく、俺はそれ以上追及する気も起きずに静かにブランコを揺らした。
「そしてそのミサイルが、幸せなあの子の頭上に落ちたら、なんて考えちゃうんだ。今の僕は」
「……ああ、その子彼氏が出来たんですね。アルバさんが告白する直前のタイミングで」
「何でわかったの!? ロスってやっぱり頭がいいんだね!」
ぱあ、と一瞬だけ嬉しそうに表情が和らぐ。別に喜ぶところでも感動するところでもないと思うのだが、少しでも彼の気持ちが明るくなったのなら万々歳だ。
そこから俺の頭がいいことについてのトークが始まると思いきや、すぐにアルバさんはしゅんと両肩を落としてしまった。畜生、このまま笑い話に持ち込んで有耶無耶にして帰るつもりだったのに。マフラーもコートも今日は持ち合わせていない俺は内心舌打ちをする。桜が咲いてるからって、春が来たからといって、浮かれて軽装するんじゃなかった。
ぐしゅぐしゅと花粉症交じり(と思っていたがそうなのだろう。、生憎いまのアルバさんは目も泣き腫らして真っ赤なので花粉症かどうかはわからない)に鼻を啜ると、彼は「それでね」と続けた。
「で、ミサイルが、落ちて」
「はい」
「全部ぜんぶ消えちゃえばいい、って思うよ」
「はあ、全部ですか?」
「……うん。僕があの子のこと好きだったことも、今のあの子の幸せも。全部ぜんぶぜーんぶ! ……でも世の中そんなに甘くないから、困ってる」
僕が祈ってもミサイルなんて落ちないんだ、と泣きべそアルバさんはぼやく。
はあまあそうですよね、とたいして興味もない俺は気の無い返しをする。
寂れた公園にある古いブランコだ。塗装を怠り茶色の錆びが剥き出しのブランコにはあまり長時間いたくない。ならベンチにでも座れという話なのだが、アルバさんはここから動くつもりはないようだし、2人で来ているのにそれぞれ別の場所にいるなんて何か変な話だろう。
「ミサイルが落ちてきてくれたらいいのに」
「はあ」
「全部全部消えて、明日も明後日もしあさってもこれからずっとずっと無くなって、現在この瞬間も消えちゃって、そしたらこの苦しい気持ちも消えるのにって」
「はあ」
「…………そうやって、ミサイルのことばっかり考えて、苦しいよ」
「ミサイルマニアみたいな発言になってますけど大丈夫ですかアンタ」
「誰がミサイルマニアだ! 今まで生返事しかしなかったくせにそこだけ拾うなよ!」
ひどいよ、僕は真面目に話してるのに——口ぶりは怒った様子のアルバさんだが、自らの汚い感情を吐露してみて多少は気が変わったらしい。先ほどより目の赤みはとれ、口元に笑みが浮かんでいる。この人の思考回路は単純だからなぁ、と一人ため息。
勝手に元気になられてしまい、こちらとしてはこの寒い中歩いてきた甲斐もない。意趣返しのつもりでアルバさんのマフラーをぐいと引っ張り、首を軽く絞める。「げほぉ!? 何だよ突然痛い痛い痛い!」舌を出して驚く様は非常に滑稽である。
「アンタのくそつまらない童貞臭い失恋話およびミサイルハァハァ話に付き合うために2キロ強徒歩で付き合わされた俺の思いを暴力で表してみました!」
「暴力って認めた! この人暴力って認めた!?」
「あっいけない! 口と手と足が滑った!」
「いや絶対わざとだろ————げふっまさかのローキックッ!?」
苛立ちついでに俺の長い脚を利用して、彼の無防備な腹にローキックを決めさせてもらった。ローキックとは言い過ぎた、ただのブランコの勢いに任せた回し蹴りだ。
しかし遠心力も加わった俺のキックは相当なものだったようで、アルバさんはげほげほとえずきながらその場に転がった。四肢をついてうずくまる姿はなんというか嗜虐心をくすぐられる。
「どうですー? 俺のキックでミサイルが落ちてくる夢からやっと覚めきれましたー?」
「ごほ、げほ…………ロスお前……僕じゃなかったら死んでたぞ……」
「嫌ですね人聞きの悪い。俺はアルバさんを殺すつもりなんて毛頭ないですよ? 勿論、アルバさんみたくミサイルが落ちてみんな死ねと念じたこともないです!」
「その話を掘り返すな! ……うええ、気持ち悪い」
「吐きますか? ねえ吐きますか!? 待ってください今スマホを」
「撮るなわくわくしてカメラモードを一番いいのにするな! ……てか、ロスだってさあ」
涙目のアルバさんは、そこでいじけた表情になった。四つん這いの姿勢でそんな顔されてもという気持ちになったが、その言葉の続きが気になった。アルバさんのくせに俺を惑わせるなんて身の程を弁えてほしい。なんですか、と大人しくその続きを待った。
俺が何もしないのを確認し、彼は、ロスだって、と唇を尖らせた。
「……お前だって、そういう時ぐらいあるだろ。ミサイルが落ちて全て消えちゃえ、とか。もう一度生まれ変わりたい、とか。そんな時ぐらい、」
「ないですね!」
「即答!?」
「はい、ええ、そりゃもう全くないです!」
ミサイルを俺たちに撃ち込むつもり満々だった目の前の犯罪者(未遂)は、あわあわと露骨に慌てはじめる。えええ、僕だけなの、こんなこと考えちゃうのって。狼狽する様子は可愛らしくも思えたが、やはり四つん這いだと、なあ。ダンゴムシみたいに蠢かないでください、と手を踏ませてもらった。
時計を見ると午後8時を回ったところだった。そろそろ帰らなければ、親のいない俺はともかく、過保護な母親を持つアルバさんは叱られてしまうだろう。おおよそこの人のことだ、携帯なんて持って来てないだろう。どうせ失恋旅行に機械類は不要だなんてよくわからない理由だ。
「……ほら、立ってください。もう暗いですし、アンタも傷ついた心を癒せたでしょう。帰りますよ」
「最後に手をぐりぐり踏みにじられて何を癒されたっていうの僕は!」
「うっさいですね。ミサイル撃ち込みますよ」
「さっきの発言と180度逆のこと言ってるこの人!」
「俺はアンタみたいに、ミサイルなんかですべてを終わらせようとはしませんよ。勘違いしないでください」
俺の言葉にまた泣き出してしまったアルバさんの手を、不本意にも握る。俺が踏んだせいで土がついたのか、やけにかさついた手だった。しかし子どものせいか妙に温かい。俺の手が冷たすぎるのか、この人が元々温かいのかなんて、どうでもいいことだった。
ほら、と導くように手をひいてやれば、ふええと泣きべそをかきながら着いてくる。その頼りない姿になぜか安堵した。ミサイルが落ちてこないこの状況に、ミサイルを撃ち込もうとしなかったこの人自身に。
だって、ミサイルなんかに奪われたくない感情が、俺の胸にはあるのだから。
「……さて、ちゃっちゃと帰りますよクソ失恋ヘタレ野郎さん!」
「何で癒えてきた傷に塩塗ったの今!?」
****
卒業すか あーしますよ はいしますします(しゃくれ顔)
- 日猿 血をなめる猿 ( No.798 )
- 日時: 2014/04/02 02:40
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: 35AN48Qe)
伏見さんのほそっこい手首とカッターの鋭い刃先の間には障害物など空気しかなくっていうか空気って障害にもなんねえよ的な状況でありましてそれはつまり伏見さんの持つ100均で返そうなちゃちなカッターナイフが自らの白い手首を掻き切ろうとしているわけでありまして、というところで俺はようやく叫び声をあげ行動に移せた。
「ちょ、まてええええええええええええ!?」
「ゲッ」
一瞬、伏見さんが、あの綺麗な女みたいな顔が、驚きと気まずさに染まる。しかし手首を切る意志までは、俺の叫びは止められない。やむを得ず馬鹿みたいに手のひらで遮ってしまった。
何を遮ったかって? カッターの刃を。生の手のひらで。
俺は確かに体育会系馬鹿キャラとしてセプター4の中で位置づけられているが、まさかこんな土壇場ですらそのキャラが立つだなんて思いもしなかった数コンマ前。
「ぎ、え、い゛い゛!?」
みっともなく4文字だけ、断末魔をあげた。
思ったよりもカッターは鋭い。ぎゅり、と包丁みたいに丁寧に俺と親指と人差し指の間を断ち切ってくださる。ぐいぐいと力任せに押されているような感覚は、逆に手から刃を生んでいるような奇妙な錯覚を作り出している。痛いという圧迫感はどう足掻いても苦しみしかなく、血が吹き出る感触は久々だった。
気の済んだのか、やがてその圧迫も止む。あまりの痛さに呼吸を忘れていた。は、は、と走り終わった犬みたいな呼吸を繰り返す。額辺りの毛穴からはびっしりと冷や汗が滲んでいる。背中や脇からも、これ程かいたことがあろうかというぐらい、嫌なじめっと感。
「……アンタ、マゾですか?」
「ふ、ふじみざん……リスカずぐったあいでにそれはない……それはねえっスよ……! いでえよお゛……!」
「アンタが勝手に入り込んできたんだろ。てか俺の行動まじまじ見てんじゃねェよ邪魔すんな」
「ふぬぬ……!」
人に血を流させておいて、よくもまあつらつらと!
今の俺が万全な状態ならここで拳を振り上げ人の命がいかに大切であるかをそれこそ某金色な八な先生のように説いてやるところだけれど、悲しいことに、今の俺はカッターにやられた痛みでまともに立てすらしない。膝から崩れ落ちてしまった。しかも、目の前の伏見さんという深窓の令嬢風少年は年下ながらに俺の上司であり、口答えすら危ない相手なのだ。
だらだらと、俺の右手からは惜しみなく赤色が流れていく。伏見さんが大好きな赤色だ。伏見さんは眼鏡の奥のたれ目をわずかに喜色に染めながら、はあ、と呆れたように俺に言った。
「…………でもまあ、次、室長に書類出さなきゃならなかったから」
「う゛え?」
「また怪我してたら、伏見君どうかしたんですかだの、お茶でも飲んでいきなさいだのうるせェだろうし。……俺の行動を見てたことはキモイし許容できないけど、止めたことは、時間的に許してやる」
「はあ…………あ、ありがとうございます……?」
「次止めたら、二度と女抱けないようにしてやるから」
女の子を抱けない身体にされるということは、二通りの意味があって。それは率直に俺の息子をそのサーベルで切り取ってもいで鍋にしてやるという意味なのか、はたまた伏見さんの貧弱な身体(そこがそそるのだが)にしか欲情出来ないようになってしまうという意味なのか。俺としては断然後者がまだアリなのだが。
とかなんとか考えているうちに、俺の右手に、伏見さんの冷たい指が触れた。
普段伏見さんは人の体温を嫌がるタイプの人なので、その行動に驚いていると、なんと伏見さんはそのまま俺の右手、いや、血が流れている箇所に口を寄せた。
「え゛」
思わず声を発してしまう。
その間にも、じゅう、と伏見さんの薄い唇が、あの終わりかけの桜みたいに色のない唇が、口紅を塗ったみたいに真っ赤に濡れて、俺の傷を食む。ちょっと待って俺がなんか病気持ちだったらどうするんすか、と突っ込みたい気持ちもあったが、その光景があまりにも壮絶過ぎて言葉にならない。
カッターで切られたため傷は深いらしく、縦に綺麗に入っていた。伏見さんはその傷を慈しむように、丁寧に舌で上下を舐める。その度に涙が出るほどの激痛が俺には走るのだが、伏見さんの横顔が、その行為によってアドレナリンが放出されているのでたいして気にならない。ちゅ、ちゅ、とキスのように見えるその行為は、正直そそった。
何気なく、血の味を楽しんでいる伏見さんの双眸に目をやる。長い睫毛を伴う伏見さんの濃紺の瞳は、これまでに見たことのない情欲に満ち溢れている。何かを求めようとするその色気は、なぜか血のみに注がれていた。俺なんて見ちゃいねえこの人。
「あ……あの、ふしみさん?」
深夜の勤務室で、しかも二人きりでそんなことをするのは何だかいたたまれなくなって(いつもはもっとすごいことをしているのにも関わらず、だ)、恐る恐る声をかける。だが伏見さんはちゅうちゅうと唇を伝わせるばかりで、言葉はくれない。
指がもげそうなほどの痛みとは別に、じりじりとした熱のような何かが、触れた唇から伝わってくる。傷口から染みこんできているようだ、なんて、妄想をしてしまう。伏見さんの唇から分泌された媚薬が、俺の傷口を潤している、なんて。
(やば……い! これはやばい、いやマジで!)
心臓がばくばくと音をたてはじめる。ぬめりを帯びた伏見さんの舌が、剥き出しの俺の肉を丁寧になぞる。その度にぞくぞくと背筋に走るのは、快感にも似た何かだ。カンカンカンカン。脳内で警鐘が鳴り響く。
ぴちゃぴちゃと音をたてて傷を噛む伏見さんに、肌伝いに感じる整った歯列に、動悸が早まっていく。
「あの、伏見さん! ちょっとこれは、」
情けない程に、切羽詰まった声をあげると。
黒縁眼鏡のフレームの、向こう岸。濡れた伏見さんの瞳と、初めて視線が交わった。
さっきまでのギラギラした目は錯覚だったのだろうか、と疑いたくなるほど、いつもの表情だった。しかし唇は俺の血によって真紅に色づき、まるでドラマに出てくる殺人鬼のような風貌だ。
にい、と、その赤い唇で微笑まれる。仏頂面ばかりで、いつも不機嫌そうに舌打ちばかり奏でるその唇が、愉悦に浸る。
嬉しそうに楽しそうに、俺と視線を合わせたまま、ちろ、とその舌を動かしてみせた。
(……ああ、なんだよ、そういうことか)
伏見さんの、全部骨みたいな薄い身体を組み敷きながら、はたと足元に転がっているそれを眺めた。布石であるカッターナイフの刃先には、乾いて赤黒くなり始めた俺の血が、べっとりとこびりついている。
伏見さんが舐めていたはずのそれは、成分的には同じもののはずなのに、やけに汚らわしいもののように思えた。
■唇に毒
(即効性がありますので、相手には十分お気を付けください)
****
日猿大好きですね
すが*しかおさんの19才をイメージしてます
- 有頂天 三→弁 ( No.799 )
- 日時: 2014/04/03 00:03
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: 35AN48Qe)
弁天様の藤色の髪の毛がふんわりと風に揺れた。彼女が人間だったころは、その髪はまるで絹の糸のようにさらさらと空に溶けていたものだった。しかし天狗となった今では、長いと空を飛びづらいのだろうか、肩辺りで前下がりに切ってしまわれている。言い方は悪いが、顔が整っていることには変わりはないので、髪型の違いなど彼女にとっては些細なことなのだろうと思われる。
だが、しかし。いや、しかし。
「弁天様は、もう御髪を伸ばされることはないのですか」
「あらあら矢三郎……貴方は今の私がお嫌いなのかしら」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ、このように気温が低い日が続きますと、首元が心もとないのでは、と」
「そうねえ。確かに少し冷えるかもしれない。そうだ矢三郎、貴方が毛玉に変身してくれたら全て解決するのではないかしら? もしくは、あの可愛い女学生姿になって、思い切り私に飛びついてきてくださったら、多少は温かな心持になるかもしれないわ」
くすくすとおかしそうに口元を綻ばせる弁天様。艶のある唇が弧を描く度に、どうしてか狸の心はぐらぐらと揺れまどってしまう。月夜の力のせいだ、と自らを鼓舞し「論点がずれています弁天様、」と素知らぬ顔をした。
「どうしてかはこの阿呆には見当はつきませぬが、弁天様は、あまり御髪を伸ばさないようにしているようにお見受けしています。先月も、雪の降るようなとても寒い日になぜか切ってらしてじゃないですか」
「女性の美的感覚に従ったまでよ」
「そうです。その通りだと、最初は思っておりました。女性特有の考えあってのことと思っておりましたが……しかし、私は、それが何か別の意味を孕んでいるのではないかというように探ってしまいます」
「へえ。例えば?」
「例えば、弁天様は、昔のような自分に戻りたくない——とか」
「貴方にしては面白い発想ね」
少しでも揺らいでくれるかと期待していたが、そうはうまくいかないようだ。
弁天様は夜空を背景に微笑を浮かべるのみ。私のような毛玉風情の言葉など意にも介さない様子で、手元のグラスを弄んでいる。彼女の否定も肯定も、グラスの中でちゃぷちゃぷと揺れるばかりで、その味も香りも私には教えてなどくれない。
「貴方の推測はでたらめよ、矢三郎。これはただの好みよ。私はね。短い髪の方が好きなのよ」
「……やはり、そうおっしゃるのですね」
「ええ。だって事実だもの」
事実は事実以外の何物でもないのよ、矢三郎——弁天様は空々しい程のありふれた言葉を、呟いた。
うつくしい人だ。とても。私の問いに応えたその横顔はあまりにも綺麗で、そして胸を締め付けるほどにさみしい。あの頃のような子どもらしい無邪気な笑顔は未だに私の瞼の裏に残っていて、よりこの虚しさを増大させる。
「でも、でも私は——昔の貴方の方が、ずっと、何倍も」
す、と。思わず言いかけた言葉を、慌てて飲み込む。続きはたったの二文字なのだが、その二文字こそ私のような毛玉には重要でありそして深い思慕を含んでいるものなのであった。
胸をじりじりと焼くような熱を感じながら、ちらり、と気まずさついでに弁天様の顔色を窺う。
弁天様は突然大声を発した私を物珍しそうに眺めていたが、やはり、表情は笑っていた。紫の双眸が月光によりきらきらとガラス玉のように輝いている。肌の白さが夜闇にくっきりと際立ち、指先から手首までの細さがやけに生々しく感ぜられた。
ああ、と、その耽美さに吐息を穿つ。
月を背負い優雅に笑むその人があまりに美しくて、私はきゅうきゅうと胸が痛むのを感じた。
■色は匂へど、散りぬるを
私は、昔の貴方を愛していたのに。
****
矢三郎と弁天様の関係がすきです
弁天様が悩む気持ちも、天狗じゃないけどわかるようなわかりたいような気持になります
好きだから食べて全て自分のものにしちゃいたいけど、そんなことしたらなくなっちゃうっていう喪失感は得たくなくて、右往左往、右往左往。
げへ
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152