BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ■卒業します、今までありがとうございました!
- 日時: 2015/12/26 23:44
- 名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: 7nl1k8P4)
■お知らせ >>801
いとしい君はもういない。眠りかけていた鯨の骨をひろい、どこまでも深い砂の底でそっと君をおもう。君のものじゃない骨に頬をすりよせ、その冷たさに酔いながらほろほろと雫をおとす。いつか君が死んだとき、君の骨が僕じゃない誰かに抱きしめられますように。そう願って今日もなく。/骨をうたい君になく
2014年も元気にチキンしていきますので宜しくお願いしまチキン! /2014年挨拶>>775
■ご挨拶
どうも、ささめ(元・箕遠)と申します。
当スレでは同性愛メインの短編を執筆しております。同性愛という言葉に嫌悪感、またはささめさんに中指を立てたい方はスレの閲覧はお控えして貰った方が宜しいかと。
大丈夫な人は、ゆっくりしていってね!!(アヘ顔)
基本的には雑食です。マイナーだったりメジャーだったり。あんまり嫌いなCPはないので、お気軽に話しかけていただけたら。百合百合しかったり、薔薇薔薇しかったり、普通の恋愛書いてたりと忙しいです。
*小説
■10月中盤〜の小説まとめ >>187
■2010年12月後半〜の更新分まとめ >>227
■2011年2月中盤〜の更新分まとめ >>270
■2011年3月中盤〜の更新分まとめ >>325
■2011年5月上旬〜の更新分まとめ >>360
■2011年7月中旬〜の更新分まとめ >>387
■2011年9月下旬〜の更新分まとめ >>425
■2012年3月中旬〜の更新分まとめ >>455
■2012年7月中旬〜の更新分まとめ >>506
■2012年8月下旬〜の更新分まとめ >>549
■2012年11月上旬〜の更新分まとめ >>579
■2013年1月上旬〜の更新分まとめ >>618
■2013年3月下旬〜の更新分まとめ >>672
■2013年5月下旬〜の更新分まとめ >>736
■2013年9月中旬〜の更新分まとめ >>769
■2013年12月下旬〜の更新分まとめ >>802 ←newでしてよお姉様
■夢用オリキャラ
竜咲 伊織 (りゅうざき いおり)>>141
伏見 潤 (ふしみ じゅん)>>159
■うわああああああリクエスト品貰っちゃったよ!
神文ばっかりだよ!
・リクエストしたら素敵な小説くださいました、感謝ですろくちゃん!
>>黒紅葉様より >>127-129
・お題です、頂きました。……神、降臨。
>>ひふみ。様より >>277>>307
・兄貴とオクラのこんな関係……身悶えするしかないじゃない(ビクンッビクン 参照2000突破祝いです!
>>華京様より>>318
・テスト明けに人魚姫って凄い癒し。
>>あゆ様より>>335
・誕生日プレゼンツです。もう愛してるとしか言えない
>>黒紅葉様より>>451-452
■贈り物(リク品)
>>親愛なる友人、唯無様へ!
慶毛/ほのぼの >>409
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スレ名変えました。
《さよならクレイジー》⇒《暗い、喰らい、Cry》5.2⇒《透明サイコロジー》12.11⇒《歪んだ傷跡にさよならを贈る》6.12⇒《憂鬱マゼンダ!》12.3.8⇒《そして卵は割れた》12.6.9⇒《世界でひとり、恋をしよう?》12.7.29 2012年挨拶>>580 ⇒《Hello,Microcosmos!》13.1.2⇒《トロイメライの墜落》4.29⇒《うつくしきまなこ》9.4⇒《骨をうたい君になく》2014.1.13
名前変えました。
《箕遠(みおん)》⇒《ささめ》8.13
- ■知ることもできない ( No.696 )
- 日時: 2013/07/16 23:54
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: vmYCeH12)
きっと君は知る由もない。あたしがどれだけあなたを好きか。どれだけ嫉妬して、何度胸を掻き毟ったかを。きっとあなたはこれからも知らない。あなたの中で私は「あなたを嫌った人間の一人」として生きていく。あなたは知らない。あたしが何も嫌っていないことを。嫌いなんて感情を原動力にして生きていけないことを。あたしの行動や言葉はすべて重苦しいほどの愛情を根幹としていることに、君はまた、気づかない。
そうして甘い水ばかりを望み、君はまた、やまなしをあたしの目の前で握りつぶす。君の細い十指からこぼれる華やかな香りがあたしの鼻をつく。あまりの甘さに零れ落ちた涙は果汁とともにじゅうと吸い込んだ。
- ■沙上の夢喰い少女1 ( No.697 )
- 日時: 2013/07/17 00:36
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: vmYCeH12)
- プロフ: リヴァハン
きっと、誰かに救われることを望んでいた。
///
きらきらり。目蓋の裏に瞬いた星を、瞬きと共に噛み締める。言い訳をするように呟いたリヴァイの言葉を受け、ブーゲンビリアの花は静かに頭を垂れていた。血に濡れそぼった花びらは重力に逆らうことをしなかった。
一日前には給水塔だったはずの建物は巨人との戦闘によりすっかり崩壊してしまっていて、供給する場所を無くした水道管からは先ほどから水が止まらなかった。散々使った刃をその水で軽く洗い、肉片がとれたところで一度空を切り、滴を払いのける。改めて思うが、今回もひどい戦闘だった。血まみれのマントを見て、溜め息と共に夜空を見上げた。
エルヴィンが数分前にあげた、迷い星のような緑の煙。夜空をバックに、その緑色は勝利の勲章としてはやけに物悲しく瞳に映った。
(何が勝利だ、糞野郎)
掠れた喉の奥で誰に向けるでもなく舌打ちをする。無意識のうちに、リヴァイの負傷した左手には力がこもる。(俺たちは、勝ってすらいねェだろうが……これだけ被害を出しておいて、何が勝利だ、畜生)苦々しい面持ちで、苛立ちの捌け口を探すように、手元の刃を空へとさまよわせた。
住人たちの居場所も奪われて。赤ん坊が喜んで読んでいた、あんな小さい絵本すら巨人たちの胃の中に収められて。来年の春生まれてくるはずだった赤ん坊を宿した妊婦は、ぶちぶちと上半身と下半身を千切られながら、あの大きな口の中に放り込まれた。もうコウノトリなんて、この荒れ果てた土地にやってきてはくれないだろう——リヴァイはぼんやりとそんなことを考えていた。
その時だった。ガサガサ、と近くの木の葉が盛大に揺れた。
「……やあ、どうやら今回も私たちだけみたいだね」
ひょこん、と木の上から現れたのは、リヴァイのよく見知った顔だった。戦闘で乱れたぼさぼさの黒髪に、きゅるきゅるとよく動く大きな瞳。そしてその好奇心大盛な瞳を覆うように取り付けている、ごついゴーグル。同期であるハンジ・ゾエだった。
ハンジは返事もしないリヴァイに気を悪くする様子もなく、器用にも高い木の上から大きく跳躍し、膝を痛めないように飛び降りてみせた。大道芸師のような身軽さにリヴァイはわずかに濁った眼を見開いたが、すぐに興味を失い視線は血まみれの足元へと向かう。疲れた様子のリヴァイに「おや」とハンジは意外そうに言った。
「なんだいその顔、あなたらしくもない」
「……」
「悪い夢を見た後のような顔だ。どうしたの、もしかしてようやく人類最強も巨人との戦闘に怯えを感じるようになったの? それは進化というべきなのか退化というべきなのか、一体どちらなのかなあ。人間味のないあなたにとっては進化なんだろうけど、実際、あなたの両肩には全人類の希望が乗っかっちゃってるわけだし、そういう意味でいうならあなたは人類最強としては弱さを得てしまったわけで——」
「——ピーピーとうるせェ、ハンジ。どうでもいい、さっさと撤収するぞ」
「おやおや、せっかく面白い研究が始まりそうだったのに。あなたは何かとわたしの好奇心を殺してしまうところがあるよね、好奇心は猫を殺すけど、人間は殺さないのに」
「そうだな。好奇心はテメェを殺さねえ。殺すのは巨人共か、今お前の目の前にいる俺かだ、選べ」
「はは、究極の選択ってやつだね、そりゃあ!」
ハンジがけたけたと大笑いするのを無視し、リヴァイは指笛を使い馬を呼び寄せた。巨人との戦闘でどこかへ逃げていた二頭の馬たちは、震えながらもリヴァイたちの元へと戻ってきた。
馬は二頭とも怯えている様子はあるものの、どこかを怪我しているようではない。リヴァイは近くに転がっていた仲間の遺品や、千切れて落ちている腕などを丁寧に自身のマントで拾い集めた。馬たちは血の臭いにぴくりと体を震わせたが、小さく嘶くだけで終わった。
腕を拾い集めていくリヴァイを手伝いもせずに、ハンジは木に寄りかかって眺めていた。しかし、リヴァイはハンジも馬に乗るように指示したところで「ねえ」と気まぐれに声をあげた。
「リヴァイ。もしもあなたがずっと悪い夢を見てるっていうなら、私はその悪夢を全部食べてあげるよ」
突然過ぎる言葉にリヴァイは眉をしかめる。「別に夢なんて見てねェ」と、もっと別のことを言うはずだったくせに、それだけの反論しか出来なかった。
ハンジは「そうかい」とそれ以上深く話そうとはせずに、鼻歌混じりで馬に飛び乗った。そして馬の柔らかな毛を優しく撫でながら、愉快そうにひっそりと呟いた。
「痛いの痛いの飛んでいけ、ぐらいはしてあげるよ? もちろん、私の歌声付きでね」
「……テメェは巨人の口ン中で讃美歌でも歌ってる方がお似合いだ」
****
ミカエレよりエレミカ好きです
- Re: 【色々】 トロイメライの墜落 【短編】 ( No.698 )
- 日時: 2013/07/18 22:11
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: vmYCeH12)
- プロフ: キス表現ぽいぽい!!!!ぽい!!!
「お前なら、俺を殺してくれると思ったんだけどね。緑間」
「殺すなんてたいそうなこと俺に出来るはずもないのだよ」
「はは、よく言う。あの試合の最中のお前の目は、まるで獰猛な獣のように鋭かったぞ?
俺という動物を捕食しようと舌なめずりをしている、さながら腹を減らした獅子といえるだろう」
「……一応は元チームメイトで、同じチームの主将であるお前に、そんな真似できるか」
「おや? そこで“友達だから”なんてチープな言い訳は使わないんだね、そういうところが緑間らしい。
俺は、そんな堅苦しいお前が昔から好きだった」
「敗者への甘い言葉なぞ、慰めにもならんぞ赤司」
「慰め? いいや違うね、これは純粋なる好意さ。俺はお前が好きだよ緑間。昔も、今も」
「…………」
「おいおい黙るなよ。せっかくお前の大好きな赤司征十郎がこうして愛を囁いているんだ、少しぐらいその眉間の皺をどうにかしてみせろ」
「とんだ自己愛者だな、お前は。俺がお前を好き? 何を言っている赤司、ついに脳みそが腐り始めたか」
「腐り始めたのは一体どちらの方かな……なーんて言ってみたら、やっぱりお前はそうして渋い顔をするんだろうね」
「わかっているくせにあえて言うのは、お前の悪い癖だな」
「そう、これは俺の悪癖だ。
相手の気持ちを理解していて、さらに相手がどんな行動や言葉を求めているのかを理解しているのにあえて突き放し、全く予想外の言葉を与える——そうしたら相手はとてもうろたえるし、絶望するからね。
こんなことに楽しさを覚えているんだから、これは悪癖以外の何物でもない」
そこまで言うと、赤司はふいに立ち上がり、俺の横へとわずかに歩み寄った。
そうして何をするのかと俺が凝視していると、薄っすらと頬に笑みを称え、その色の薄い唇を俺のかさついた唇へと重ねた。
キスされたことを理解した時には、赤司はすでに自分の定位置へと戻り指先で盤上の駒を弄びながら、
「……で、俺の悪癖の味はどうだい、緑間?」
耳まで真っ赤になり俯いた俺へと、悦楽の滲んだ声を響かせるのだった。
■貴方の癖を食む
***
再うpですよ〜キス表現許されてるならちょっと置かせて貰います残量がやばいので
- Re: 【色々】 トロイメライの墜落 【短編】 ( No.699 )
- 日時: 2013/07/18 22:13
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: vmYCeH12)
- プロフ: キス表現ぽいぽい!!!!ぽい!!!
「誕生日おめでとう俺!! ってことで一発やろうぜ真ちゃん!!」
ついに脳みそが壊れましたか、と完全に鷹の目から外れているであろう僕はその言葉には沈黙で返し、ずずっと最愛のバニラシェーキをストロー伝いに吸い込んだ。
シェーキと同じぐらい最愛の相棒である火神君は、今朝から氷室さんに
「タイガ……日本は案外怖いところだな……キメラのようなマスクを被った男たちが部屋に無理矢理入ってきて子供を襲うんだから……あんまり恐ろしいから、つい俺も昔のようにちょっとやんちゃしちゃったよ」
なんていう電話をもらったので、
「タツヤそれ違う!! それはNAMAHAGEだタツヤ!! そいついい奴だから、な!!」
……と慌てて東北の方へと旅立ってしまった。あのエレガントヤンキー。
おかげさまで今日は一日暇な僕でしたが、何とまぁそんな僕の元に一通のメールが。
差出人はなんとあのツンデレ眼鏡で有名な緑間君で、内容は「高尾の誕生日プレゼントを選ぶのに付き合って欲しいのだよ……(´・ω・`)」というものだっ————って、え? アンタまだプレゼント渡してなかったんですか? 誕生日過ぎましたよ、ねえ?————そう思ったのは僕だけではないだろう。
兎にも角にも、そんな理由で僕は緑間君とマジバの窓寄りの席でほのぼのと高尾君へのプレゼントを選んでいたのですが(ちなみに緑間君は初めから今この瞬間まで耳まで真っ赤でした)、そんな状況の中に話題の中心人物であった高尾君がやってきてしまいました。
そうとう急いで来たのか、はぁはぁと息が荒く、額には薄っすらと汗をかいています。
けして緑間君に欲情しているからという理由でないと願いたいのですが、先ほどの言葉から察するに緑間君に欲情パターンしか想像できません。
「……た、高尾……どうしてここに?」
「俺の真ちゃんセンサーが反応したから!(ソッ」
「そう言いながらさりげなく自分の股間に手を添えるのはやめてもらえますか高尾君、シェーキがまずくなります」
「あれ、黒子じゃーん! どしたの、こんなとこで」
「それはこっちの台詞ですよ……」
呆れたように、むしろ軽蔑の意味を込めて軽く睨む。
すると、高尾君は人懐こい笑みを浮かべたまま「あぁ、そういやそうだったな」と僕へと自分の携帯電話を差し出した。
「ほら、黄瀬からメールもらっちゃってさー。俺もちょっと気になって、エース様の為に休日出勤? みたいな?」
「べ、別に俺はお前に出勤して欲しいなんて思ってないのだよ!」
「緑間君そこ論点ずれてます」
突然の恋人の登場に混乱している緑間君にさりげなくツッコミを入れながらも、目だけは携帯に向けておく。
へぇ。
『緑間っちと黒子っちが二人で歩いてたっス><もしかしたら浮気されてるかもしれない……俺のお腹の子供のこと……黒子っち……忘れちゃったのかな(;ω;`』——ですか。
何根も葉もないこと言ってるんでしょうかねあのモデル。何故突っ込む側の君に赤ちゃんが出来ることになってるんだまじアイツしばき倒(以下略)。
……とまぁ、僕が明日黄瀬君に何をしようかと思案しているところに、緑間君がおずおずと声をかけてきた。
「……あのだな、黒子……」
「ん? あ、そうですね。愛しの高尾君がせっかく来てくれたんですし、早く帰りたいですよね。それじゃ、僕はこの辺で」
「ごめんな黒子ー、じゃーなー!」
「だ、誰もそういうことを言ってるわけじゃないのだよ!! おい黒子、逃げるな話を聞け!」
——いや、逃げますけどね?
ぎゃんぎゃんと喚く緑間君を尻目に、僕は手を振り僕の退場を願っていたであろう高尾君をちらりと見やった。高尾君はいつもの笑顔だったけど、内心は穏やかじゃないんでしょうね。右手、握りすぎて震えてましたよ鷹の目さん。
席を立ち、空になったシェーキの容器を持つ。さて退場しようとした瞬間「あっ」と僕は今さら思い出したような演技をしてみせた。
「そういえば緑間君」
「……何なのだよ」
「僕、今日君に付き合わされた分の報酬……というか御褒美、まだ貰ってません」
「!? シェーキを二つも奢ってやったのだよ!」
「君と高尾君の惚気話に、それだけで足りるとでも?」
溜め息をつきつつ言ってやれば、緑間君は再び「うっ」と言葉に詰まりぽぽぽと頬に朱がさし始める。やれやれ、これだからバカップルは。頭痛がしてきそうですよ、火神君。今頃氷室さんに正座をさせ説教をしているだろう相棒に心中で呟く。
高尾君はやっぱり、にこにこ営業スマイルで僕と緑間君のやり取りを静観している。その肌一枚の向こうには、ぐつぐつと煮えたぎるほどの嫉妬が隠されているんでしょうに、嗚呼、なんて気丈に振舞う人。尊敬の念さえ感じますが、今はそれで少しだけ遊ばせてもらいましょうか。
「……で、何が望みなのだよ。シェーキが後何本欲しい?」
「いえ。シェーキはもう結構です。あまり飲みすぎるとカントクに怒られてしまいますし————ですので、こっちを頂きますね」
「こっち?」
純粋な緑間君は、僕の言葉に首を傾げた。その隙を見逃さずに、すいっと腰を屈め、緑間君と丁度同じぐらいの高さになる。
同じ目線になったところで、キスをした。
「……という訳で失礼しますね、二人とも」
「えっ、ちょっ、黒子お前なに平然とキスして平然と帰ろうとしてんのお前」
「はぁ。すみません、あんまり感情が表に出ないものですから」
「そういうことを言ってるんじゃないんだけど!?」
「さて、それでは本当に帰らせてもらいますね。実は僕、まだ課題終わってないんですよ」
「話聞いてる!?」
今にも掴みかかられそうだったので、高尾君の叫びを華麗にスルーし僕は出口へと足早に向かった。緑間君はといえば未だフリーズしているようで、ぽかーんと形のよい唇が半開きになっていた。
はぁ、こんな変人のどこがいいんでしょうか、高尾君は。本人たちに聞かれたら八つ裂きにされそうな感想を抱いた。
「……あ、最後に一つだけ、緑間君」
くるり、余裕たっぷりというようにと振り返る。僕は出来る限り優しい声色で、さらに(高尾君のようには出来ないが)柔らかい笑顔を作ると、言葉の置き土産を残した。
「君は二十一日に、たった百二十円のおしるこしか高尾君にプレゼントできなかったのを悔しく思って本日きちんとした贈り物をしようとしたみたいですが……高尾君は君のことが大好きなので、まぁ、何ですか……別にそんな風にたくさん悩んで新しいものを買わなくても、十分幸せだったと思いますよ」
——じゃあ、失礼しますね。
言葉を続けすぎたせいで、多少息が辛い。ふわふわとした足取りでマジバから出て行くと、背後から「黒子ォォォォ!!」という羞恥心に溢れた緑間君の叫びが聞こえてきた。はは、面白い。
■十一月二十一日の君へ。
あのバカップルに、どうか幸あれ。
珍しく鼻歌でも歌いたい気分になりながら、僕は「誕生日おめでとうございました」と小さく笑った。
***
高尾誕生日のときのあれっスわ〜←黄瀬語
- Re: 【色々】 トロイメライの墜落 【短編】 ( No.700 )
- 日時: 2013/07/18 22:13
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: vmYCeH12)
- プロフ: キス表現ぽいぽい!!!!ぽい!!!
伸ばしかけた僕の指先に触れないように、黄瀬君はそっと自身の両手を前へと突き出して牽制をした。これ以上近づくな、という意味を孕んだ挙動に僕は停止する。いつもなら「君はいつも僕が近づくなと言っても近づくでしょう」と上手く言いくるめて近づくのだけれど、今日は違った。
彼が珍しく淡い唇をぎゅっと噛み締めて、もう耐え切れないというように苦しげに視線を逸らしていたから。さすがの僕もその場で一度立ち止まるしかなくなった。「どうしてですか」と小さく問いかけてみるも、彼は真っ赤な顔のまま黙り込んでいる。向こうは話すつもりがないようだし、埒があかない。溜め息をつきたいのを堪え、「どうしてですか」と先ほどより強めの口調で問いかけた。
「どうして、僕を拒むんですか。君はいつも僕に好きだの愛してるだのと飛びついてくるでしょう、なのにどうして僕が近づくと君は逃げてしまうんですか。そういう態度だと、僕も少しは傷つきます」
「……だ、だって、死んじゃうっスよ」
「死にゃしませんよ」
「いやいやいや! 絶対死ぬって!」
ぶんぶんと首を大げさに振り明らかな拒絶を示す黄瀬君。久方ぶり(といってもほんの数分だけれど)に視線が合い、僕も少々安堵する。嫌われたかと思っていた、なんて本人にはとてもいえない。
黄瀬君は相当に動揺しているみたいで、額に汗が浮かんでいた。片手をぎゅっと胸の前で握り締めて、苦しげに肩で息をしている。大丈夫ですか、なんて触れることも今の僕には叶わない。
——だって。僕が触れたら、彼は。
「俺、死んじゃうんスよぉ。言ったでしょ。俺は昔から、そういう純粋な恋心って奴が無理だって! 触れてもない今ですらこんなに心臓がばくばくして痛いのに、キ、キスなんてしたら……きっと死んじゃうス! 心臓が耐え切れなくなるっ」
「それは君の考えすぎです。……僕は君にとって、軽い気持ちで『好き』や『愛してる』を言える人間なんでしょう? じゃあ、良いじゃないですか。どうでも良い人間にキスされても、死ぬなんてことないでしょうに」
「だっ、だから……! 黒子っちのことがほんとに好きだから、俺は死んじゃうって言ってんのに……」
少し意地悪な問い方をしてみれば、それだけで彼の双眸はぎゅっと窄まった。そしてうるうると鮮やかな金の瞳の表面は濡れ、蜂蜜のような雫が溢れてしまいそうになる。泣き顔も美しいのだから、困った人だ。
僕は呆れたような素振りを見せるために、あえて小さく肩を竦めた。
「じゃあ、こうしましょう」
「————、えッ」
さっ、と素早い動きで僕は黄瀬君の片腕をぎゅっと握り、ぐいっと力任せにこちらへと引っ張った。唐突な僕の行動に対処出来なかった黄瀬君は、呆気なく僕の方へと身体を倒れこませる。
ひ弱な僕でも君をこうして抱きとめることは出来るんですよ、黄瀬君。そんなことを伝えたくて、わざと顔を近づけてやった。
数秒で黄瀬君は現在の状況を把握すると、さらに顔が茹ダコのようになった。紅の乗った頬にそろりと指先を這わせる。熱い。どれだけ緊張しているんだ、と感心すると同時に、これなら死ぬという話も本当かもしれないと納得しかけた。
(……まぁ、納得しかけた、だけですけど)
どきん、どきん。黄瀬君の頬から僕の指先へと、どちらのものか分からない鼓動が伝わってくる。どこか心地よいその拍動は僕の脳裏を熱く焼いた。火傷のようにじくじくと熱く、熱過ぎる故に痛い。
お互いの吐息がかかるほどの至近距離。動揺して何も言えずにいる黄瀬君に、僕は淡々と呟いた。
「君と僕がこれからキスをするとして、君がそれで死んでしまうなら。キスした瞬間、僕の酸素を思い切り奪ってください」
「え、あの、くろこっ」
「そうしたら、一緒に死ねるでしょう。寂しくも、ない」
言い切った瞬間、僕は軽く目を閉じて黄瀬君の頭を思い切り引き寄せた。黄瀬君はまだもごもごと何か反論しようとしたみたいだけど、唇が合わさると黙らざるを得なくなったようで、静かになった。
ふにゅ、と柔らかい感触はきっと彼のものだった。だって僕はリップクリームなんてしないから。かさついたそれを彼はどう感じたのだろうか。唇の温度は思ったよりずっと生温く、ぬるさのおかげでようやく僕は沸騰しそうだった脳内を落ち着けることが出来た。
(……あ、死んでない)
薄っすらと目を開けてみると、顔はやはり真っ赤なままの黄瀬君が、ぎゅっと目を瞑っているのがわかった。
キスなんて女の子と何度もしたことがあるだろうに、初心な人。いっぱいいっぱいな表情がたまらなく可笑しくて、つい笑ってしまいそうになった。
どうやら彼は僕とのキスで死んでいないようだし、僕も彼に酸素を奪われずにいるらしい。こうして黄瀬君と唇を重ねているのがその証拠だ。
「くろこ、っち」
先に離れたのは黄瀬君の方だった。何か危険を察知したみたいに、後ろに急に飛び退いた。僕は彼の頭を抱え込むようにしたので、両手が弾き飛ばされるような感覚を味わう。
ちょっと、痛いじゃないですか。不満を呟くつもりで彼に視線を向けてみたのだけれど、僕は何もいえなかった。
なぜなら黄瀬君が——先ほどのキスの余韻を確かめるように、そのベビーピンクの唇を指で触りながら。僕が言うより早く、言葉を零してしまったから。
「……俺、今度は幸せで死んじゃうかもしれない……」
■君とのキスは、いのちがけ。
それは僕も一緒ですよ——なんて言えるほど、僕もポーカーフェイスを保っていられないわけでして。
***
あっまい!!!!!(爆笑)
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