BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

■卒業します、今までありがとうございました!
日時: 2015/12/26 23:44
名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: 7nl1k8P4)

■お知らせ >>801




    

 いとしい君はもういない。眠りかけていた鯨の骨をひろい、どこまでも深い砂の底でそっと君をおもう。君のものじゃない骨に頬をすりよせ、その冷たさに酔いながらほろほろと雫をおとす。いつか君が死んだとき、君の骨が僕じゃない誰かに抱きしめられますように。そう願って今日もなく。/骨をうたい君になく







 2014年も元気にチキンしていきますので宜しくお願いしまチキン! /2014年挨拶>>775



 ■ご挨拶
 どうも、ささめ(元・箕遠)と申します。
 当スレでは同性愛メインの短編を執筆しております。同性愛という言葉に嫌悪感、またはささめさんに中指を立てたい方はスレの閲覧はお控えして貰った方が宜しいかと。
 大丈夫な人は、ゆっくりしていってね!!(アヘ顔)
 基本的には雑食です。マイナーだったりメジャーだったり。あんまり嫌いなCPはないので、お気軽に話しかけていただけたら。百合百合しかったり、薔薇薔薇しかったり、普通の恋愛書いてたりと忙しいです。






*小説
 ■10月中盤〜の小説まとめ >>187
 ■2010年12月後半〜の更新分まとめ >>227
 ■2011年2月中盤〜の更新分まとめ >>270
 ■2011年3月中盤〜の更新分まとめ >>325
 ■2011年5月上旬〜の更新分まとめ >>360
 ■2011年7月中旬〜の更新分まとめ  >>387 
 ■2011年9月下旬〜の更新分まとめ >>425
 ■2012年3月中旬〜の更新分まとめ >>455
 ■2012年7月中旬〜の更新分まとめ >>506
 ■2012年8月下旬〜の更新分まとめ >>549
 ■2012年11月上旬〜の更新分まとめ >>579
 ■2013年1月上旬〜の更新分まとめ >>618
 ■2013年3月下旬〜の更新分まとめ >>672
 ■2013年5月下旬〜の更新分まとめ >>736
 ■2013年9月中旬〜の更新分まとめ >>769
 ■2013年12月下旬〜の更新分まとめ >>802 ←newでしてよお姉様


 ■夢用オリキャラ
 竜咲 伊織 (りゅうざき いおり)>>141
 伏見 潤 (ふしみ じゅん)>>159


■うわああああああリクエスト品貰っちゃったよ!
 神文ばっかりだよ!
・リクエストしたら素敵な小説くださいました、感謝ですろくちゃん!
 >>黒紅葉様より >>127-129
・お題です、頂きました。……神、降臨。
 >>ひふみ。様より >>277>>307
・兄貴とオクラのこんな関係……身悶えするしかないじゃない(ビクンッビクン 参照2000突破祝いです!
 >>華京様より>>318
・テスト明けに人魚姫って凄い癒し。
 >>あゆ様より>>335
・誕生日プレゼンツです。もう愛してるとしか言えない
 >>黒紅葉様より>>451-452

■贈り物(リク品)
 >>親愛なる友人、唯無様へ!
    慶毛/ほのぼの   >>409
****

スレ名変えました。
《さよならクレイジー》⇒《暗い、喰らい、Cry》5.2⇒《透明サイコロジー》12.11⇒《歪んだ傷跡にさよならを贈る》6.12⇒《憂鬱マゼンダ!》12.3.8⇒《そして卵は割れた》12.6.9⇒《世界でひとり、恋をしよう?》12.7.29 2012年挨拶>>580 ⇒《Hello,Microcosmos!》13.1.2⇒《トロイメライの墜落》4.29⇒《うつくしきまなこ》9.4⇒《骨をうたい君になく》2014.1.13


名前変えました。
《箕遠(みおん)》⇒《ささめ》8.13



Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.651 )
日時: 2013/04/27 00:57
名前: り@ ◆N4FULXO5wE (ID: CwTdFiZy)



ふふふ、春休みの課題が終わったと思ったところでGWの課題とか昇天しそうだ……が皆の総意だと思ってます。。。。。。



そうなんですか!!
赤いの……! わぁ、、楽しみだぁ。。。
アンナちゃん……!! 無口でとっても可愛らしかったけど可愛いかわいらしかったけど、次はもっとおしゃべりしたらいいななんてうふふ



今季は進撃、すごい、面白いですよね……!!
オープニング、とか。。
東方のなんかすごい人が作ってるとかお友達が言ってて私全然知らなかったんだけど、スピード感はんぱないなって。もうあのワイヤーでびゅんってやってるとこみるだけで満足です。。
エレリ……!
楽しみにしちゃって良いかな……!
うちの地方はまだリヴァイさん??でてきてないので来週楽しみに待機。。
命関わってきちゃう切ないとことか趣味すぎて!!
カーニヴァル漫画ツクモちゃんがさらに可愛いので古本屋に行ったときにでもちらっとどうぞ!!
すいせいの、ガンガルディア(?)とかも面白かったです……!
あとゆゆ式とかRDGとか悪魔召喚して戦うやつとかはたらく魔王さまとかうたプリとかみてます。。


一週間ためたアニメ全部見た直後でノリのままに書いちゃってるかなわお。






あー、そうなんですか(゜ω゜)??
余計に18歳未満の子たちが18歳以上って偽ってやらしいBLとかを書きそうだなーとかいちいち掲示板増やさなくてもええんやないかなーとかピクシブでも何でも逃げ口見つけろYO!!とか思うような思わないような……ぬーんぬーん
やっぱカキコに必要なのはシステムの改革とかじゃなくて住民の自立なんだなって思い知らされますねとか思ってない、思ってないですヒギィ



コメント有難う御座いました(`・ω・´)

Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.652 )
日時: 2013/04/28 19:36
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)
プロフ: 所用で返事短いですごめんなさい

>>652
■り@様



 GW明けに期末テストがあるように毎年決められてる高校に通うささめさんからはGWなんてただのテストのための勉強期間にしか思えなくて泣きたいですウッウワァアアアアアア


アンナちゃんは二期のキーパーソンっぽいですよね! 二期予告のためのビジュアル?みたいなので、夏鎌本とアンナちゃんが何かから逃げてる様子が公開されてましたし……アンナちゃんには是非とも幸せになって欲しいです



進撃はほんとやばいです、何がやばいってオープニングもやばいし本編の植物とか自然の描き方もやばいし巨人のリアルさもやばいです(語彙貧困)
ワイヤー……立体軌道装置のことですねヽ(ω・ヽ)戦闘のスピード感も細かさも好きなんですが、早すぎて一時停止が欠かせないとかささめさんは呟いてみたりしてですね!!!
進撃は純粋な気持ちで読めるかなって思ってたんですけど見事ユミクリとかエレリにやられました……兵長可愛いよ兵長……命のやり取りしてるからこその切なさや悲しみがまた……
4話の兵長をささめも楽しみにしてます。全裸待機です。


カーニヴァルのツクモちゃんはほんとかわいいですよね……ゆゆ式とはたらく魔王様は女の子かわいい……アザゼルさんとむろみさんも楽しかった……ささめはみるアニメ多すぎて嬉しいやら忙しいやらです_(:3」∠)_



コメント有難う御座いました(`・ω・´)

Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.653 )
日時: 2013/04/29 01:35
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)
プロフ: みーまー






「みーくん」

 どうしたの、と振り返る前に、まーちゃんはすでに背後へと迫っていた。迫っていたと表現してみたけど実際はそんなホラーな雰囲気ではなく、むしろ貞子のように布団の中まで僕を追いかけてきてくれても構わないのだけれどとそこまで言うと話の本筋から外れてしまうようで真に恐縮なんだけれど。とにかくまーちゃんは僕の偽名を呼びながらぎゅう、と柔らかい腕(別に最近まーちゃんの体重が増えたからこういう表現をしてるんじゃないぜ!と補足しておく)で僕へと抱きついてきた。
 僕と同じシャンプーを使っているというのに、まーちゃんの頭からは甘く魅惑的な香りがする。やっぱりシャンプーも人を選ぶんだよなぁ、と数学の教科書を片手にぼんやりと思った。「みーいーきゅーん」「どうしたんだい、まーちゃん」「みっきゅん」「おぉう短縮形」かすかに驚いた様子を見せると、まーちゃんはにへにへと笑った。

「みーくんはまーちゃんといちゃらぶするのが義務なのです」
「ごめんね、後もうちょっと読んだらまーちゃん国の国民として義務を全うするから」
「にぎゃー! 駄目なのー! まーちゃんは一瞬なの、賞味期限が今日なのー! 早くしないと賞味期限切れになっちゃうのー! だからそんなの見ないでまーちゃんとちゅーぎゅーちゅーするのー! すーるーのー!」

 ぷくぅ、と膨らむまーちゃんは相変わらず可愛いので、僕は「そうだね、後もうちょっとね」と簡単に返事をしてあえて教科書を読みふけっている振りをする。するとまーちゃんは「がじがじ」とわざわざ擬音付きで僕のうなじに歯を立ててきた。「ぎゃー」と棒読みで反応しておく。まーちゃんの口内は存外熱くて、噛まれた痛みよりもそっちにびっくりした。
 今日も二人ぼっちの室内は春の陽気にあてられ暖かい。別にまーちゃんに抱きつかれてるから温かいなんてそんなのろけは僕らバカップルには通常運転すぎて言及する必要すらない。嘘だけど。まーちゃんの重み(けしてまーちゃんの体重が増えたから以下略)を背中で受け止めつつ、教科書のページを捲った。

「まーちゃんより本の方が大切とはなにごとですかー! みーくんはまーちゃんと本どっちが大事なのー! まーちゃんでしょー! まーちゃんらぶでしょー!」
「さっすがまーちゃん、選択の余地すら与えない! そこに痺れる憧れ」
「なにを言ってるだー! むきゃー! みーくんのどけちー!」
「あれっ一体どこからケチ臭さが出てるのかなってどぐふぁ」

 ぐにゃりと視界が歪んだかと思えば、まーちゃんに押しつぶされていた。まーちゃんは下敷きになっている僕を「んもー! みーくんのドミノ野郎!」と(多分)罵倒しながらぽかぽかと背骨を殴る。その度にただでさえ薄い僕の身体はぎしぎしと軋んで痛む。
 まるでドミノ倒しみたいだなぁ、とドミノ役は物思う。物思うドミノ、ふむ、哲学的だ。どうにかしてドミノ野郎の汚名を返上しようと立ち上がりかけ、当然だが僕は身体を起こせず、溜め息と共に再び寝転がった。

「むふぅ、まーちゃんとみーくんは二人でいちゃいちゃしてるのが幸せなのだ!」

 僕からは見えないけれど、どうやらまーちゃんはご満悦なようだ。先ほどとは違い、ごろごろと僕の背中の上で寝返りを打っている。まーちゃんが転がるごとに僕のあばら骨のHPが下がっていくとかそんなこと思ってない。さすがにドミノ野郎に貧弱モヤシがついてきたら笑えない。そんなお徳用セットは必要ない。
 まーちゃんが鼻歌を歌いながら、ふいに僕の唇へと指を伝わせた。ぬるい温度が灯ったまーちゃんの人差し指は、昨晩僕が磨いた爪がきらきらと光っている。

「まーちゃんの爪、綺麗だね」
「にゃふ?」
「まーちゃんの爪が綺麗だなー、って」
「にゃふにゃふ!」

 きゅるんと音が聞こえそうなぐらい可愛らしく首を傾げるまーちゃんはやっぱり可愛い。かわいい。僕のボギャブラリーがまるで国語辞典のように豊富だったらまーちゃんの可愛さを余すことなく日本中いや世界中にまで届かせることが可能なのに、なんて少しだけ自身の阿呆さにむせび泣いた。嘘だけど。
 まーちゃんは僕の言葉に機嫌を良くしたのだろう、豊かな胸部を盛大に揺らしてぎゅむぎゅむと僕の背中で暴れまわり始める。もはや幸せと感じるべきかあばら骨の危機ととらえるべきか僕には判断がつかない。だがまーちゃんマスターである僕としてはこれは幸せととらえるべきなんだろう……え、嘘じゃないよ?

「もー、みーくんったら、まーちゃん上手なんだから。おかげでまーちゃん、みーくんのこと怒れなくなっちゃった!」
「……それは、嬉しい限りかな」

 ふわり、とまた甘い香りが漂った。やっぱりまーちゃんと僕でシャンプーの効果は違うらしい、とようやく結論に至る。この香りを胸いっぱいに抱きしめたらどうなるんだろう。少女漫画みたいなことを考えてるふりをしながら、まーちゃんの頭を撫でた。「うにゃー」「よしよし」猫っぽいまーちゃんも素敵。
 頭を撫でていると、まーちゃんの身体を堪能したくなってきた(やらしい意味とかエロい意味じゃなくてだね)。でも、このまままーちゃんを抱きしめるには、背骨の一本や二本いかれちゃいそうだ。背後のまーちゃんは退いてくれる様子もないし。

「……でもまぁ、まーちゃんとみーくんとの幸せには代えられないよなぁ」

 呟いたその言葉を糧にするように、僕は立ち上がろうと使えないはずの右腕に力をこめた。











■Hello,Microcosmos!



 小さなフラスコの中で生きていた僕らにはお互いの姿しか見えない。ふたりぼっちの世界だと錯覚したまま、僕らは愛に沈んで行く。密閉されたこの世界が、この愛情が幸せというのだ——そんなひどく歪んだ勘違いを取り残したまま。
 /こんにちは、僕らだけの小さな宇宙。

病み高→緑 ( No.654 )
日時: 2013/04/29 03:20
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)

※にきびをどうこうする気持ち悪い話
※グロ苦手な人は飛ばしてください
※ささめも書いてて食欲失せた











 ぎゅり、と肉が潰れる音が聞こえた気がした。
 そもそも人間の歯は退化してしまっていて生肉を断つような鋭さは持ち合わせていないのだ。いくら俺がアホっつってもそのぐらいの常識は持ち合わせている。俺の歯では緑間の頬に傷一つつけることなんて出来ない————ただその事実だけが、目蓋の裏で点滅していた。

「い゛っ……!」

 緑間の悲鳴が愉快で仕方が無い。頬が緩むのを必死にポーカーフェイスで隠しながら、構わずにもう一度歯で薄い皮膚を噛んだ。それだけで赤く熟れたにきびは弾けた。にきびの中身を押し出すように、容赦なく噛み痕を舌でえぐる。
 中に溜まっていた膿はぷちりと弾け、血を生んだ。舌先に絡めとった膿は血の味の方が濃く、それ自体の味はよくわからない。興味本位で飲み下し、膿を失った傷跡を埋めようと溢れてきた血を吸い込んだ。俺の舌先がざらざらしていて不愉快なのか、緑間の表情が嫌悪で歪む。猫みてぇ、とか考えてんのかな。緑間は猫嫌いだから。眉間の皺が愛おしくて、もう一度ぺろりと頬を舐めた。

「……やめろ、本気で痛いのだよ」

 緑間の深いグリーンの瞳は薄っすらと濡れていて、その涙は俺によるものだって考えると何だかぞっとするものがあった。紅潮した頬にはわずかに血が滲んでいて、俺の唾液によっててらてらと光っている。
 俺が傷を引っ掻き回したことで、緑間の白くすべすべした頬に出来ていたにきびは血まみれになってしまった。もう一度あの血を味わいたくなって、頬に唇を寄せる。及び腰になっている緑間の肩を掴み、逃げられないようにした。
 ぐちり、と舌先を傷跡にねじり込む。むき出しの肉は熱く、そこから流れ出る血も同じ温度だ。対照的に緑間の頬は冷たく、くっ付いている俺の唇は心地よさを覚える。

「っい、っづ……!」
「ひんひゃん、ひはい?」
「だからそうだと言っているだろう、が、っづ」

 顔を背ける緑間の顎をとらえ舐めやすいよう固定する。それでも頬の痛みから逃れたいのか、エース様は普段の仏頂面を放棄し泣きそうな顔で俺を見つめた。

(何してるんだ、このキ××イが、なんて言いそうな面してんなぁ)

 にきびなんかで出てくる血の量には限りがあって、そろそろ傷跡は黒い血で固まり始めていた。いくら舐めてもあの赤い液体は俺の喉を滑り落ちてはくれないで、唾液だけがだらだらと緑間の頬を伝い落ちていく。汚ェなぁ、と指先で拭ってやる。
 緑間は荒く息をついていた。俺の舌先が離れたことにほっとしているのか、苛立ちに似た光が双眸に宿っている。

「そんな怒んなよ、血圧あがるってー」
「……下衆が」
「おいおい、そんなキレんなって真ちゃん! せっかくの美人が台無しだぜ?」
「高尾……お前、どの口がそれを言、」

 がぶり。
 その傷口が愛おしくて、最後の最後に噛み付いた。緑間の驚愕と困惑に染まった表情を悠々と見下ろしていると不思議な優越感が芽生える。この気高いお姫様が俺に気を許してくれてるわけでもないのに。嗚呼、何なんだろうなこの気持ちは。
 緑間がぐい、と俺の舐めていた箇所を乱暴に拭う。するとその弾みで傷口が開いたのか、先ほどよりも大粒の血がぷくりと溢れてきた。「あ、っはは!」俺を睨む緑間の頬から流れ出る血は、ようやく“らしい”感じになったので、嬉しくて思わず声をあげる。


「真ちゃん、超綺麗!」









■分相応



(なぁ、お前みたいな天才がそんな程度の傷で良い訳ねぇだろ?)




****

凡人は凡人相応の小さな傷に泣けばいいし、天才は天才相応の大きすぎる傷で初めて泣けばいいだろ。俺らみたいな凡人と同じレベルの傷で泣いてんじゃねぇよ、な高尾さん。

Re: 【色々】 トロイメライの墜落 【短編】 ( No.655 )
日時: 2013/04/29 21:35
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)

「いいか——絶対に抱きしめるな」

 と苦虫を噛み潰したような顔でそう吐き捨てると、兵長は俺の胸へと寄りかかってきた。今日も今日とて丁寧に洗われてある兵長の身体や髪の毛からはふわんと清潔感のある石鹸の香りがする。風呂から出てきたのはついさっきのことだから体温が高い。
 しっとりと濡れた黒髪に指を這わせようとすれば、すぐさま「やめろ」と金の眼が訴えてきた。鋭く尖った視線には威圧感があり、俺は怖気づいて触れるのをやめてしまう。

(兵長が俺に寄り掛かるだなんてレアな状況で触れないとか……生殺しだろ畜生!)

 むず痒い気持ちを落ち着けようと、背中の肉をひねりあげる。きつい痛みは理性を何とか崩壊寸前で止め、額に冷や汗を滲ませた。俺の苦労を知っているのかいないのか、兵長は無言でうなだれている。力の込められていない両腕が、だらりとシーツの上に放られていた。
 ——何か、あったんですか。
 問いかけてみたい衝動に駆られる。しかし兵長のことだ、俺のような新米が心配をしたところで「エレン……俺はテメェに心配される程落ちぶれちゃいないつもりなんだが?」と青筋を浮かべて俺の鳩尾に一発くれてやることだろう。恋人として労わるべきか、部下として命令に従うべきか。俺の脳内では二つの意見がぐるぐると踊っていた。

「人の鼓動っつーのは、いいもんだな」
「え?」
「生きてるってことがすぐわかる」

 兵長はどこか上の空のように言うと、静かに目を閉じた。眠いのかと思ったがそうではなく、ただ俺の心臓の音を聞いているだけらしい。
 珍しく無防備な姿にまた手を伸ばしたくなったが、背中の肉をひねりあげて以下略。もやもやとした思いを晴らそうと視線をめぐらせたけど、目の前の兵長が気になって、どうにもならなかった。
 そうしてしばらく俺の鼓動に耳を澄ませていた兵長は、乾いた唇をわずかに歪めた。歪んだ口元はまるで嬉しそうに笑んでいるようにも見えたし、嘲笑を刻んでいるようにも見える。クッ、とその笑いに合わせて兵長の白い喉が上下した。

「……もしも今、お前が抱きしめたら——さぞかし心地いいんだろうな。鼓動しか聞こえなくて、ガキだからあったけえしよ。そのまま寝ちまいそうだ」
「あっ、えっと……抱きしめていいなら、俺、喜んで抱きしめますけど」
「抱きしめんな」

 静かに、だがはっきりと俺に伝わるように兵長は言った。あからさまな拒絶の言葉に俺は少しだけ傷つく。喉の奥が絞られたみたいに潰されてしまった。(どうしよう、謝らないと)心中では理解できているのに、言葉は出てきてくれない。
 兵長はそこで初めて俺の方を一瞥した。鈍い光を宿す金色が俺を移し、揺れる。わずかに見開かれたその様子に俺は死んでしまいそうなほどの喜びを覚えた。兵長の瞳に俺が映っている。ただ、それだけなんだけど。

「なんで、」

 ひどく掠れた声だな、と他人事のように思いながら、俺は兵長の鼻先へと顔を近づける。キスするには俺の口内は乾ききっていた。からからの舌でようやく紡いだ言葉すら未熟なもので、この人にちゃんと届いているのか不安になる。
 抱きしめないように、触れないように。爪先まで注意を払いながら、兵長に触れるか触れないかギリギリのところをゆるく腕で囲った。空気を抱きしめているのは妙な感触で、つい笑ってしまいそうだ。そのまま笑い死ねたらよかったのに、なんて考える。

「……これが、幸せだなんて思ったら」

 兵長が呟く。
 俺は応えない。その声は凛とした強さを孕んでいるから、俺が横槍を入れたところでこの人の気持ちは変えられないのだ。この人が決めているルールを侵さないよう、俺は唇を噛み締めて耐える。


「俺は——戻りたくなくなる」


 眉間にぎゅっと皺を寄せたまま。気だるげに溜め息をついて、気まぐれのように言の葉を俺に与える。
 短い黒髪は乾き始めていた。兵長の体温はすっかり冷め切っていて、いつものような冷たさが胸を覆っている。(ああ、もう終わりか)落胆めいた感情を吐露することのないまま、俺はゆるゆると腕を下ろした。だが俺の落胆振りはこの人には筒抜けらしく、呆れたような表情で見上げられる。

「なあ、エレンよ」
「…………はい」
「俺は幸せになんて、なりたくねェんだ」

 兵長はそう密やかに笑みを零すと、初めて俺へと指先を伸ばした。
 冷え切った爪先に触れた瞬間、何もかもが元に戻ってしまったような気がした。










■グリーンの指標(それは平行線に似ている)





「幸せにのうのうともたれかかって生きていくなんて考えただけでおぞましくて吐き気がする」




*****

エレ(→)←←リですわすわ
たくさんの犠牲の上に自分の幸せが成り立っちゃってるとか考えたらまじ激おこぷんぷん丸な兵長とお願いだから幸せを掴んで欲しいエレンさんのお話


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