BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ■卒業します、今までありがとうございました!
- 日時: 2015/12/26 23:44
- 名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: 7nl1k8P4)
■お知らせ >>801
いとしい君はもういない。眠りかけていた鯨の骨をひろい、どこまでも深い砂の底でそっと君をおもう。君のものじゃない骨に頬をすりよせ、その冷たさに酔いながらほろほろと雫をおとす。いつか君が死んだとき、君の骨が僕じゃない誰かに抱きしめられますように。そう願って今日もなく。/骨をうたい君になく
2014年も元気にチキンしていきますので宜しくお願いしまチキン! /2014年挨拶>>775
■ご挨拶
どうも、ささめ(元・箕遠)と申します。
当スレでは同性愛メインの短編を執筆しております。同性愛という言葉に嫌悪感、またはささめさんに中指を立てたい方はスレの閲覧はお控えして貰った方が宜しいかと。
大丈夫な人は、ゆっくりしていってね!!(アヘ顔)
基本的には雑食です。マイナーだったりメジャーだったり。あんまり嫌いなCPはないので、お気軽に話しかけていただけたら。百合百合しかったり、薔薇薔薇しかったり、普通の恋愛書いてたりと忙しいです。
*小説
■10月中盤〜の小説まとめ >>187
■2010年12月後半〜の更新分まとめ >>227
■2011年2月中盤〜の更新分まとめ >>270
■2011年3月中盤〜の更新分まとめ >>325
■2011年5月上旬〜の更新分まとめ >>360
■2011年7月中旬〜の更新分まとめ >>387
■2011年9月下旬〜の更新分まとめ >>425
■2012年3月中旬〜の更新分まとめ >>455
■2012年7月中旬〜の更新分まとめ >>506
■2012年8月下旬〜の更新分まとめ >>549
■2012年11月上旬〜の更新分まとめ >>579
■2013年1月上旬〜の更新分まとめ >>618
■2013年3月下旬〜の更新分まとめ >>672
■2013年5月下旬〜の更新分まとめ >>736
■2013年9月中旬〜の更新分まとめ >>769
■2013年12月下旬〜の更新分まとめ >>802 ←newでしてよお姉様
■夢用オリキャラ
竜咲 伊織 (りゅうざき いおり)>>141
伏見 潤 (ふしみ じゅん)>>159
■うわああああああリクエスト品貰っちゃったよ!
神文ばっかりだよ!
・リクエストしたら素敵な小説くださいました、感謝ですろくちゃん!
>>黒紅葉様より >>127-129
・お題です、頂きました。……神、降臨。
>>ひふみ。様より >>277>>307
・兄貴とオクラのこんな関係……身悶えするしかないじゃない(ビクンッビクン 参照2000突破祝いです!
>>華京様より>>318
・テスト明けに人魚姫って凄い癒し。
>>あゆ様より>>335
・誕生日プレゼンツです。もう愛してるとしか言えない
>>黒紅葉様より>>451-452
■贈り物(リク品)
>>親愛なる友人、唯無様へ!
慶毛/ほのぼの >>409
****
スレ名変えました。
《さよならクレイジー》⇒《暗い、喰らい、Cry》5.2⇒《透明サイコロジー》12.11⇒《歪んだ傷跡にさよならを贈る》6.12⇒《憂鬱マゼンダ!》12.3.8⇒《そして卵は割れた》12.6.9⇒《世界でひとり、恋をしよう?》12.7.29 2012年挨拶>>580 ⇒《Hello,Microcosmos!》13.1.2⇒《トロイメライの墜落》4.29⇒《うつくしきまなこ》9.4⇒《骨をうたい君になく》2014.1.13
名前変えました。
《箕遠(みおん)》⇒《ささめ》8.13
- Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.606 )
- 日時: 2013/02/13 23:10
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
保留消し消し(’ω’)
シージョセちゃんの保留ちゃんをちゃんと手ほどかないといけない
- Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.607 )
- 日時: 2013/02/13 23:09
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
■さようならいとしきあかいろよ
/さようならあいしたひと(さよならなんて言う資格、俺にはないのに。お前の首を落としたのはこの汚い両手だ)
「この人殺しが!!」
と吠舞羅の一人——確か伏見君のお気に入りの……ヤタガラス、でしたか。彼は憤怒の形相で、先ほどの言葉を私に向かって叫んだ。周防亡き今、吠舞羅の最高権力者になった草薙出雲が、そんな八田美咲の頭を叩いた。あの細身でどれだけの力が出せるのやら、殴られた八田美咲は怒っていたことすら忘れて後頭部の痛みに涙する。その涙には周防が死んでしまったという悲しみによるものも含まれているのだろうが、私は知らない振りをし、つんと澄ました顔で車内へと戻る。
「おい、待て青服!! テメェ尊さんを殺しておいて——……」
彼の言葉が続くのも無視し、扉を閉じた。閉じる拍子に断末魔のようなものが聞こえてきたので、草薙出雲が物分りの悪い八田美咲に制裁を下したのだろうということは容易に想像出来た。
車内には私しかおらず、しんと静まり返っている。冷たい扉に背を預け、膝からずるずると崩れ落ちる。先ほどの八田の表情を思い出しながら、はっはっと小刻みに息をつく。八田美咲は、まだ幼い雰囲気を残した顔立ちの上に、私を視線だけで殺さんとばかりの怒りを載せていた。自分の大切な人を殺した敵への、憎悪。
「……それでいいんですよ、貴方達は」
自嘲気味にそう一人ごちる。誰に向けたのか分からない笑いは、虚空に消えてゆく。大将が弱いところ見せてはならない、と必死に押し込めてきた感情がようやく溢れ出てきた。赤の王を刺し殺した感触は未だ手の内にはっきりと存在しており、これから先二度と消えることはないだろう。落としたはずの血がまだ残っているようだった。
今まで人を一人も殺さないような綺麗な道を歩いてきたわけじゃない。自分の手を汚さずに、誰かを奈落の底へと突き落としたことなんて何度もある。そんなことをした自分の過去を後悔をしている訳でも、恥じている訳でもない。
だが、今だけは——愛する彼を手にかけた自分の手が、ひどく罪深いように思えた。したことのない後悔や、辛さや、切なさが自身の胸の内で暴れまわっていた。
隙あらば暴れようとする、胸中の熱。それらをけして逃がさないように、辛いなんて誰かに悟らせぬように。
私は再び決意をして、立ち上がる。
「……すまない、周防」
お前の首を抱いて、私はまだ、生きていく。
/さようならいとしきひと(なぁ、本当はさよならなんて言いたないんや。お前のことをまだ愛している俺を、どうかまた、女々しいなと笑ってくれ)
いなくなったなんて実感、俺には小指の爪ほども湧き上がってこなくて。せやから、悲しいとか、喪失感とか。人間としてないとおかしいものすら今の俺は空っぽやった。ただ頭と左手を失ったこのチームを何とか右手だけで立たせていないといけないと、それだけが俺のこの数日間の唯一の支えのようなもので。……だから、八田ちゃんに「吠舞羅はもう終わったんや」と告げたときも、別に泣きながらだったわけやないんや。足元が奇妙な浮遊感に包まれた、ほんまにそれだけやったんや。
軸を失ったコンパス、とでもゆうたらええんやろうか。ほんの数週間前までは俺は気丈な顔をしてくるくるとこの世界を楽しんどったはずなのに、気付けば軸すらなくて、どこに置いたらいいのかわからないまま、ずっと一人で不恰好に踊り続けとる。
それを間抜けだと、お前のことやから馬鹿にするみたいに、喉の奥で小さく笑うんやろうな。ほんま、お前がおらんくなっても、不思議とお前の想像は出来るわ。こんな風に惨めったらしくお前と十束の死を引き摺ってる俺に向かって、皮肉めいた笑みを浮かべて「女々しいな」なんて言うんやないかって。
そんなこと、絶対に起こらない。
起こらないってこと、わかってる。
わかってる。わかってる。わかってる。何度でも言える。俺は十束の死も、お前の最期も、きちんと受け入れられてるんや。受け入れて、今までの思い出を小奇麗な箱に仕舞いこんで、まるで宝石を手に取るように、懐かしそうに眺めることが出来る。
——でも、でも。
「……ごめんな、尊」
頭では理解しとるけど、体は言うことを聞いてくれんのや。死にたい、死にたいゆうてる。毎日お前と十束のおらん朝を迎える度に、今の自分の世界は全部嘘っぱちやないんかなんて疑ってしまう。お前が横になってない昼下がりのバーのソファーを見つけると、目の前が真っ暗になるんや。
なぁ、女々しいやろ? 普段の俺らしくない、って思うやろ?
だからお願いや。「女々しいな」って、今の俺に幻滅してくれてもええから。こうして涙を流す俺の隣で、あの日と同じような笑顔をください。
/さようならだいすきなひと(まだ残ってるの、あなたの赤色、ぜんぶ)
あなたはいつだって、自分が帰ってこられる場所があるかどうかにおびえてた。
帰ってくる場所が他の誰かによってこわされていないか。それはこんな自分を受け入れてくれるのか。何よりあなたにとって大切だったのは——そんなあたたかい居場所を、自分でこわしてしまわないか、ってこと。
だれよりも強いあなただけど、だれよりもその内側はもろくてはかなかった。私もタタラも、イズモもミサキも。サルヒコだって、リキオだって、みんなわかってた。みんなあなたより弱かったけど、みんなあなたの弱さを知ってた。
……大好きだったの。みんなみんな、あなたのことが大好きだったの。あなたの力をもとめてるんじゃなくて、ミコトっていう存在が、みんな大好きだったの。ねぇ、少しでもそれはあなたに伝わっていたのかな。
大好きなあなたと、ムードメーカーのタタラがいなくなったホムラは、少しだけさびしくて、しずかだね。イズモはつかれてるし、ミサキもおちこんでる。
あなたはいなくなってしまったけど、あなたの赤色は、たしかにわたしたちにえいきょうしてる。そう考えたら、これはいけないことなんだろうけど、私のむねはあたたかくなった。まだミコトたちの赤色はここにあるんだなって、うれしくなったよ。
——ミコト、あなたの赤はまだあたたかい。
ここにはあなたの帰ってくる場所が、ちゃんとあるよ。
あなたのいた証も、ちゃんとあるからね。
*****
礼尊→出尊→尊アンの順です
VD短編に一切触れてませんどうしよう
そして過去レス漁ってたら大変な間違いしてたことに気付いてて申し訳ありませんささめのこと殺していいですよ
- VD詰め/K ( No.608 )
- 日時: 2013/02/14 23:07
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
■バレンタインデー短編詰め込み(多々尊
・多々尊/どちらの意味でとればいいのか
「おい」
キングが俺に声をかけてきただけでも珍しいのに、まさか何かをくれるだなんて思ってもいなかった。俺が振り返った拍子に放られた、赤いリボンのついた箱。突然だったから俺はそれが何かということを観察する余裕がなかった。手のひらに少し余る程度の大きさの箱は、揺すると中からかさこそと音がする。
「……あんまり揺らすな、中身が寄る」
「あ、ごめんごめん——っていうかこれって、もしかして……チョコレート?」
その問いには答えず、キングはふいと顔を背けた。決まりの悪そうな顔で、残り少なくなったターキーが入ったグラスを呷る。あぁ、とその一連の動作から察した。この中身は、チョコレートなんだね。
「キングも一応、行事とか覚えてるんだね」
「そうでもねぇよ」
「え?」
「今日は、テメェの誕生日だろ。そんだけだ」
「…………あぁ、そういうことか」
確かに今日は俺の誕生日だ。ふむ。つまりこれはキングから俺に向けての(希少な)誕生日プレゼントなわけだ。そう考えるとこの箱の中身は一瞬でかけがえのないものへと変わる。
——あのキングが、俺のためにチョコレートを……ねぇ。
一人チョコレート売り場に立ち尽くすキングを想像すると、少しだけおかしかった。
「ねぇキング。このプレゼントの中身がチョコレートで、しかも今日が二月十四日ってことは、さ」
俺の言葉に、グラスの底を眺めていたキングが金の瞳をこちらへと向ける。蜂蜜が蕩けたような、とろりとした眼差し。その眼差しを向けられたくて、八田たちが東奔西走してることを知らないんだろうなぁ、キングは。
頬に笑みを載せて、俺はキングへと先ほどの箱を翳した。
「これはキングからの愛の告白でもある——なんて、俺はちょっとぐらい自惚れていいのかな?」
「…………好きにしろ」
口角をわずかにつりあげて、キングは伏し目がちにそう笑った。冗談もたいがいにしとけよ、と続けたキングの耳はほんのりと赤いことに気付かない振りをして。俺は「ありがとう」と言ってキングへと抱きついた。
・出尊/きっと愛に等しい
「……甘ェ」
「なら食うなや!」
この一時間、チョコしか口にしていない。息をつく暇もないほどのハイペースで消費しているはずなのに、目の前のチョコレートの山は消えてくれない。どれだけこいつはモテてんだ、と本人にじと目を向けてみたが、本人は自分に向けられた好意をただの友情としか思っていない馬鹿野郎だ。俺のじと目にも半分キレ気味に「だから何で自分のチョコ食われとる俺が睨まれなあかんのや!」と反論してきた。答えるのも面倒だ。十五個目のブラウニーを頬張り、自らの口を塞ぐ。
——あー、甘ったりぃ。
俺は甘いもんは平気な方だ。だが、この量は明らかにレベルが違う。甘党だとか、そういう理屈で片付けられない量だ。でも全て食べきらなくてはならないし、一欠片でも草薙に食わしてやりたくない。結果こうして茶色の塊とタイマンを張っているってわけだ。……チッ、どうしてこうなった。
「……草薙、水。喉が焼ける」
「そんなにたくさんチョコ食うとるからや阿呆……! お前は何を目指しとんのやほんまに……」
「いいから、水」
繰り返し催促をすると、草薙は「はいはい」と額に青筋を浮かべたままグラスに水を注ぎ手渡してくれた。ねっとりとした口内に冷たい水を含み、嚥下する。そんな俺を呆れたように見つめ、草薙は肩を竦めた。
「ほんま、そんなに食べとったら体がチョコになってまうで? 尊……お腹空いたんなら何でも作るわ。せやから、そんなに食べるのやめとき。体に悪いやろ」
「…………それ、いいな」
「は?」
「お前のチョコになってやってもいいぜ、って話だ」
「何やそれ。誘い文句か? ……誘い文句にしてはえらい男前やけど」
苦笑いを浮かべ、草薙はふっと肩の力を抜いた。そして「お前はほんまに」といつものようにぶつくさ言いながら、俺の頭にぽんぽんと手をやった。温かい手のひらを素直に受けていると「猫みたいな奴やなぁ」とふんわりと微笑まれる。
「俺のためにチョコになってくれんのは嬉しいけどな、やっぱり食べすぎはよくないわ。とりあえず、一旦食うのやめ。晩御飯にしようや」
——そんなもんより、もっとうまい飯作ったるから。
そう言うや否や、草薙は素早く俺が咥えていたチョコレートをひょいっと取り上げた。あまりに早くて俺は瞬きをすることしか出来ない。
きょとんとしている俺を見て、草薙は可笑しそうに口元を綻ばせた。
「ほら、口元ついてんで」
「……うるせェ」
・美猿←礼+世/ください
「バレンタインデーなんてな、お、おおおおお女の行事だろ! チョコレートなんてコンビニでも買えるし草薙さんの作ったトリュフの方がぜってーうめェしよ。そんな、お、女の手作りとか、絶対下手だろ!? ていうかチョコなんて甘ったりぃのはな、どっちみち俺には合わねーんだよ。俺が貰うのは尊さんからのあの熱い絆の炎だけで十分だ! 俺たち吠舞羅のメンバーはな、チョコなんていう物だけの絆でつながってる訳じゃねーんだよ…………俺たちは! 吠舞羅は! 物質も何もかもを越えた絆っていう炎でつながって——」「結局俺からのチョコはいらないんだな?」「——って誰もそんなこと言ってねェだろクソ猿!」
どっちなんだよ、と俺は指先まで真っ赤になっている美咲を鬱陶しそうに眺めた。チョコレートぐらい素直に受け取れないのかね、この童貞は。
「欲しいなら欲しいって言えよ。俺は優しいから、童貞な美咲ちゃんにも優しくチョコプレイでもしてやるよ」
「(ブチッ)……テメェ、クソ猿……何べん言やぁわかんだ……下の名前で呼ぶんじゃねぇ!! ぶちかますぞ!!」
「いいねェ……やっぱり俺たちはそうでなきゃなぁ、みィ、さァ、きィー? バレンタインデーだから何だっていうんだ……もっと楽しいことが目の前にあるってのに、なァ?」
「……上等だ、さっさと刀抜けや。地べたに這い蹲らせてやんよ!!」
「ふん、言われなくてもすぐそうしてや——————あっ」
「あ? どうした猿、さっさと刀準備しろよ」
「チョ…………チョコが」
「は?」
「チョコが邪魔で、サーベル抜けない……」
「…………それ、邪魔なら……おっ、俺が——俺が貰ってやっても、かかかか構わないけど?」
「えっ……? み、美咲っ……!」
「淡島君、総員抜刀で」
「室長……あの、目から血が流れて……」
「私に構わず、さあ。抜刀です」
「室長。それサーベルじゃなくて包丁ですよ」
「覚悟の上です」
「どんな覚悟ですか!? ちょっ、誰か宗像室長を止めなさい!! 日高、榎本!! 早く来なさい!」
****
ほのぼの書きたかった
次は黒バス詰めですかね時間こい時間
- VD詰め/黒バス ( No.609 )
- 日時: 2013/02/14 23:40
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
・高→←緑♀/サディスティックなチョコレイト、
チョコ、頂戴よ真ちゃんっ!————普段のように、そう冗談めいた笑いを浮かべてくれたらよかったのに。先ほどから、布団の中で何度も思い返している。
何故バレンタインデーという行事があるのだろうか。お菓子会社の策略のせいか。私はただ高尾にチョコレートを渡したかっただけなのに、一日中妙な雰囲気が漂っていて結局渡せなかったではないか。校内では朝昼放課後構わず男女が真っ赤な顔で向かい合っていて。そんな場面を繰り返し見せ付けられる私たちの心情を考えたことはあるのだろうか。
高尾は朝からどこかそわそわとしていて「バレンタインデー」「チョコ」「本命」という言葉が近くで聞こえる度にこちらに分かるほどびくりと体を震わせていた。
本人は普段のハイスペックぶりを発揮しようと「今日などこもラブラブだなー真ちゃん!」と微笑もうとしたに違いない。しかし実際は「今日はひょほもラビュラビュやなーぢんぢゃんッ!」と噛んでばかりだった。ぢんぢゃんとは誰のことなのだよ、おい。
(……馬鹿め、馬鹿尾め)
ナイトキャップを目深にかぶり、潤んできた目元を周りから見えないようにする。周りといっても今私が寝ているのは自宅の自室だし、もちろん一人で寝ている。目元を隠したのはあくまでそうしないと自分のプライドが崩れてしまいそうだったからだ。
——そんな時だ。
ブルブル……と唐突に枕元の携帯がバイブ音を経てた。就寝時には着信を全てバイブ音にしているので、これはつまり誰かが電話をかけてきたということである。「もしや」という気持ちを抱いて急いで携帯の画面を開くと、予想通り「高尾和成」の四文字がそこにあった。
まどろんでいた脳内をたたき起こすために、頬を一度叩く。そして生唾をゆっくりと飲み込み、電話に出た。
『…………あ、真ちゃん?』
「なんなのだよ。こんな、夜遅くに」
『ごめんね? あ、もしかして起こしちゃった? なら、電話切るけど』
「丁度明日の小テストの範囲を予習していたところだ。気にするな」
『あー……そっ、か。えっと……そうだよなー、明日は小テストかー、っははー……』
乾いた笑いが受話器越しに伝わってくる。昼間学校で会ったというのに、なぜかその声はひどく懐かしく、そして遠くに感じられた。胸の奥から湧き出てくる、寂しいという感情。
こうして高尾が電話を寄越してきたのは、紛れもなく、今日という日を未消化にしてしまったことを悔やんでいるためだろう。残り少ない十四日をせめて普段通りに、と思った故の行動か。
「……お前はどうなんだ。明日のテストは」
『あぁー、俺? 俺は、そだなー……まぁ、いつも通りにやるわ。平均とれたら儲けもん、ってな。真ちゃんはきっと満点だろうけど』
「人事を尽くしている私が、満点以外をとるわけがないのだよ」
『はは、確かに』
口数が少ないこいつというのは珍しく、だからこそ余計に、今高尾が緊張しているということを感じさせられた。携帯を握る手にじっとりと嫌な汗をかく。高尾の緊張が電波に乗せられてうつってしまったようだ。
高尾の同意を最後に、会話が途切れる。真夜中のため大きな物音は特にしない。人の声すらも、私たち二人の間からは消えていた。
こうして黙り込んでいたら、きっと十五日はすぐにやってくるだろう。そうして私たちはまた、普段と変わらない日常を過ごし始める。バレンタインデーなんていう安っぽい行事なんて忘れて、今日伝え切れなかった思いすらも置き去りに。
「……なぁ、高尾」
踏み込んでいたのは、私の方だった。
乾いた唇で、自分の声を噛み締めるように。しんと静まり返った夜の中、囁くように。私たちの“ただの二月十四日”を終わらせていく。
「実は今日、お前にチョコレートをやろうとしたんだが、あいにく家に忘れてしまっていてな。一日遅れで悪いが、明日の朝渡してもいいだろうか」
「チョッ…………チョコ、レート? 真ちゃんが、俺に?」
わずかに、高尾の声が震える。その震えを取り払うために、私は「あぁ」と大きく頷いた。
「そうだ。焼き菓子だから、一日程度じゃ腐らないとは思うが。気になるようだったら作り直すのだよ」
「ッッッッッいや!!!! それはっ、大丈夫ですっ! 真ちゃんの作ったもんなら俺、岩塩でも墨でも食えるし!!」
「……わかった。安心しろ、ただのガトーショコラだ。岩塩でも墨でもない」
「俺の人生の中で一番好きな食べ物はガトーショコラなんだよ真ちゃん!!」
「嘘をつくな馬鹿尾。————と、すまない。母にそろそろ寝ろと言われた。切るな」
「あっ、夜遅くごめんね真ちゃん! 明日、楽しみにしてるな!!」
「ああ。おやすみ」
「お、おやすみ!」
高尾の元気な声を終わりにして、耳から携帯を離した。握りすぎて体温が移ってしまったそれを、ぼんやりと眺める。携帯の画面には「2月15日0:00」と零が綺麗に並んでいた。
どうやら終わったようだということを知り、私はひとり静かに笑った。
****
たかみど♀の長いのをなぜ書いているささめ
黄青とか火桃黒とかあっただろささめ
- VD詰め/黒バス2 ( No.610 )
- 日時: 2013/02/15 00:11
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
・黄青
青峰っちはそりゃぁモテる。帝光の頃もそりゃあモテたけど、高校生になりがっしりした体つきになり余計に女の子がキャーキャーし始めた。中学生までの女の子はたいてい綺麗な顔立ちの俺みたいな奴を好きになるけど、高校生になると好みはだいぶ変わってくる。頼りがいのありそうな、ちょっと無愛想な青峰っちの方が気になる子も増えてくるものだ。まぁ青峰っちに頼りがいなんてないけどね、と俺は裏で舌を出している訳だが。
「……」
「いやー、お互いお疲れ様っスね」
「……まさか俺もお前みたいな状況になるとは思ってなかった……」
駅の前でぐったりとしている青峰っちを保護して連れ帰ってきたのはほんの一時間前。青峰っちは基本軽装なのに、今日はなぜか両脇に紙袋を四つほど抱えていた。遠目からでもその中身はラッピングされたチョコレートだってことはわかった。
たまたま俺もモデル仲間の子たちからチョコを貰った帰りだった(ちなみに俺は五つ袋を抱えていた)ので、ついでだからどうぞと疲れた様子の青峰っちを自宅に招いたのである。別にバレンタインデーだから、とか、やましい気持ちがあった訳がないわけでもない。
「うっわ、お前の方が中身凝ってね? ゴディバとか、何か外国のもあるしよ。俺なんて手作りばっかだぞ、しかも何かゴテゴテしたの」
「あー、これ社会人のお姉さんたちから貰ったやつっスからねぇ。……っていうか、それはデコレーションっていうんスよ青峰っち。最近の女の子たちは、チョコレートをカラフルにするのが流行なんだって」
「アメリカの菓子かよ、面倒くせェ」
とか何とか言いながら、青峰っちは自分宛のチョコレートをまた一口齧った。薄い唇に挟まれた棒状のチョコレートに、俺の中に欲望やら何やらがむくむくと首をもたげるような、そうでもないような。チョコレートみたいな甘いものを食べる青峰っちは可愛いとは思う。
俺は熱狂的なファンの髪の毛や愛液が入っていそうなものを自ら望んで口にする趣味はない。青峰っちがチョコを頬張る姿をほほえましく見つめながら、後で全部捨てようと決意した。
「……あー、甘っ。おい黄瀬、コーヒー。お前スタバの高いやつ、この前オチューゲンだかオセーボだかで貰ってただろ。早く淹れろ」
「アレはモデルの先輩からのプレゼントっス。……ちょっと待ってて、すぐ淹れるから」
「おー。頼むぞ忠犬黄瀬ェー」
「誰が犬っスか、誰が!」
キッチンにたち、手早くコーヒーの準備をしていく。その間も「甘い甘い」と呟きながら青峰っちは手元のお菓子を消費していく。何ていうか、ブルドーザーでも見てるみたいだ。俺だったら絶対胸焼けして、しばらく寝込むね。
コーヒーを良い香りに気付いた青峰っちは、一瞬手元から視線を外し、カップを持った俺へと顔を向けた。「はい、どうぞ」と俺は営業スマイルと一緒にカップを手渡す。その際にクランチを口に放り込み、青いカップを受け取る青峰っち。口の端にチョコついてるよ、と思ったけど可愛いので言わないでおいた。
「……うあー、甘いわ。こんなにチョコ食ったの久しぶりかもしんねェ」
「そんだけ食べてようやくそれっスか。俺だったらそんなに食えねェっスわ……」
「そうか? あー、塩辛いの食いてー」
「まだ食うんスか!?」
俺が引き気味に空になった包装紙を眺めていると、青峰っちは「そうだなー」とコーヒーを口にしてぼやいた。
「何か、甘いのはしばらくいらねェな。一週間ぐらい、ずっとマジバだけで生きてけるわ俺」
脱力したように言い、苦しいのかネクタイを緩める。チョコの甘さで飽和されたのか、と思うぐらい今の青峰っちには鋭さのようなものがなかった。お腹がある程度満たされ、眠くなったのかくあぁと大きく欠伸をする。あぁ、可愛いなぁ。それだけ可愛いといじめたくなる。
唇の端を舐め甘さの余韻を楽しんでいる青峰っちに、俺は心底残念だというように溜め息をついてみせた。
「あら。そりゃ残念」
「あァ? 何でだ?」
「……だって俺、これから青峰っちにとびきり甘い言葉吐いて、甘ったるい時間過ごそうかと思ってたっスから。青峰っちのことどろどろに甘やかしちゃおうかなー、なーんて」
俺の言葉に、青峰っちの顔に火がついた。青峰っちは案外勘の良い方だから、俺が何をしようとしてたかってことを想像出来たのだ。青峰っちは浅黒い肌をしてるけど、それでも赤くなったことは傍からわかる。にこにこと人の良い笑みを浮かべて、トマトみたいな青峰っちをしばし観察する。可愛いなぁ、食べちゃいたいぐらいだ。
しばらくして、青峰っちは落ち着いてきたのか(それでも頬の朱色は完全には消えていないけど)、俺から視線を微かに逸らした。「うー」とか「あー」とか口の中でもごもごと言っているようだったけど、小声で呟いた。
「……いる」
「えっ?」
「テメェのその、……甘いやつは。特別に、貰ってやらないこともねぇ」
そう言ってむくれた青峰っちの横顔が、どれだけ愛おしかったか。
*****
あまあまい黄青っていうか14日過ぎたよお母さん
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