コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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ナメコとワカメのふらいあうぇいっ
日時: 2014/06/14 23:31
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

*ああ



 なんて美しくて



 





——————哀しいんだろう。





前作『浅葱の夢見し』>>188


〜目次〜

一章
>>008  >>017  >>021  >>031  >>040  >>043 


二章
>>051   >>052   >>053   >>054   >>059   >>072   >>079

>>084   >>091   >>094   >>095   >>100   >>104   >>105

>>106   >>109   >>110


三章
>>117   >>118   >>122  >>123  >>127  >>132  >>135  >>143


4章
>>163  >>164  >>172  >>182  >>189  >>193  >>200  >>201

>>205  >>209  >>210  >>215


5章
>>225  >>229  >>233  >>240  >>241  >>244  >>245

>>249  >>253  >>261






記憶の欠片

>>050   >>060   >>116


登場人物紹介
>>044  >>124



制服紹介

>>151



白夜さんインタビュー

>>221


〜イラスト〜

撫子の制服姿

>>157

そこに慧と和火

>>190

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Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.330 )
日時: 2014/05/30 22:20
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



〜タスクの記憶の欠片〜





*おまえの婚約者を決めた。

父はそう言った。

おれの口から、思わず、はあっ!?とすっとんきょうな声が漏れた。


「おまえ。

 恐れ多くも、セナ様に懸想しているだろう」


事実を言い当てられて、どういうことだ、と問い詰めたいのにできなくなった。

反論の言葉が見つからずいいあぐねていると、父はため息をついた。


「やはりな。

 ……おまえもか」


やはり?

おまえも??


「ま、まさか、父上も姫様を……!?」

「違う。

 ……どれだけ、セナ様のことが好きなんだ。

 セナ様でなく、彼女の母上様だ。

 彼女を……愛していた」


父の瞳の奥には小さく炎がくすぶっていた。

それだけで、いまだにセナの亡き母を愛しているのだとわかる。

愛していたじゃない。

愛している、のだ。


「彼女たちのように、清らかで美しく、他者のためならば己をかえりみない無防備な娘。

 強くて、もろい娘。

 ……そのような娘に出会えば、守りたいと、愛しいと思わずにはいられぬだろうよ」


おれはまっすぐに父の目を見た。

一体、何をおれに言いたいのだろう。


「おまえの母は、おれの父が決めた娘。

 セナ様の母上のことを早く忘れるようにとあてがわれた婚約者だ」

「母を……愛しては、くださらなかったのですか……?」


母の美しく、ひどくさびしげな微笑が脳裏をよぎる。

彼女の笑みはもう見られない。

セナの母と同じく、病に倒れ、帰らぬ人となった。


「愛した。

 精一杯、大切にした。

 ……だが、彼女とは、比べ物にならない。

 気づけば、目で追う。

 想うのは、彼女のことばかりだ」


身勝手な父の言葉。

だが、責められない。

おれも、同じだから。


「おまえに婚約者を与えたのは、早くセナ様のことを忘れさせるためだ。

 『妻』という、新しい守るべき存在を与えてな。

 おまえは、じきにセナ様の騎士の任を解かれるだろう。

 早く忘れた方がいい。

 おまえのためにも、セナ様のためにも。

 騎士は、本当に愛しい者とは決して結ばれぬ運命(さだめ)なのだから」


父のその諦観漂う表情に違和感を感じる。

嫌な胸騒ぎがする。

騎士は、本当に愛しい者とは結ばれぬ、運命……?





「早く忘れた方がいい。

 ……セナ様にも婚約者ができたのだから」

Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.331 )
日時: 2014/05/31 12:07
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

〜セナの記憶の欠片〜



私は、巫女としての正装に身を包み、広間に正座していた。

隣国からの客が来るらしい。

父が決めた婚約者。

だが、断るつもりでいる。

私は、タスクを想っているから。

緊張するけど、大丈夫。

隣にはタスクがいるから。

やがて、音もなくふすまが開いた。

中から現れたのは、背の高い、白髪の美しい雅やかな青年だった。

宮司としての狩衣がよく似合っている。


「お初にお目にかかる。

 私は、燈沙門の白夜と申す者」


滑らかな声。

燈沙門。

確か、私の一族の、遠い遠い親戚だとか。

彼は口元に笑みをのせると、優雅に一礼した。

完璧な美貌。

どこか作りものめいた、人形のような美しさを持つ人だな、と思った。


「そして——————」


白夜という青年は、すっ、と後ろに視線をやった。

私は息をのんだ。

彼の後ろには、見たことがないほど美しい、可憐な姫君がいたのだ。


「こちらは、私の妹、蝶にございます」


彼女から目を離さない。

なんて、美しくて、愛らしい。

彼女は私と目が合うと、しとやかに可憐な笑みを返した。

嫌な予感がする。

何故、私の婚約者だけでなくて、その美しい妹姫まで来ているのだろう。


「わたくしは、青那(セナ)と申します。

 そして、こちらは私の騎士、斬透(タスク)にございます。

 恐れながら申しあげます。

 なにゆえ白夜様のみならず、妹姫様までお越しなさったのでありましょうか……?」


おや、というように白夜は首をかしげた。

さらりと絹糸のような髪が彼の頬にかかった。

白夜の紅い瞳がこちらをみた。


「おや、ご存じだと思っていたのだが。

 私は、貴女と、蝶は貴女の騎士殿と婚約したのですよ」


こんやく?

私の騎士と?

……タスクと?

こらきれずに、私ははじかれたようにタスクの顔を見た。

タスクは表情を一切変えていなかった。

いっそかたくななほどに。

タスクは知っていたんだ………!!




〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.332 )
日時: 2014/05/31 17:32
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

*撫子はその日を境に、和火を避け始めた。

もう、剣術の修行を見に行ったりしない。

和火の行きそうな場所には近づかないようにして、行かなさそうな場所に行くようにした。

たとえば、星祭の準備をする村の女たちの家とか。

すると、驚くほど和火と会うことがなくなった。

私たちのつながりって、所詮そんなものなんだな、と自嘲気味に思った。

和火は、村の女たちにかまわれるのがあまり好きではないらしい。

とはいえ、和火はとても整った顔立ちをしているから、女たちがかまいたがるのも無理はない。


(付き合っている人……彼女とか、いるのかな……?)


きっといるだろう。

あれだけ優しくてかっこいい人だから。

彼女に早く会いたいに違いない。


「早く、元の世界に帰してあげないと……」


そんな言葉がぽろりと唇からこぼれて、撫子は目を見開いた。


(あれ……?)


撫子は愕然とした。


(今、帰さないと、って言った……)


帰るではなく、帰すと。

これでは、撫子が帰りたくないと思っているようだ。


(…ち、違う)


この世界の人たちは優しい。

ありのままの撫子を受け入れてくれたから。

霊力を持っていようと、言霊を使えようと。

それがここでは普通だからだ。

だが、元の現実世界はどうだろう。

一度でも受け入れてくれたことが、あっただろうか?



『化物っ!!』



怖い。

帰ったら、また一人になる。

また拒絶される。

怯えて暮らす日々がまた始まる。

和火だって、今は優しいけど、元の世界に帰ったら、きっと撫子に見向きもしないだろう。

怖い。

独りになりたくない。


「帰りたくない…よ……」


本音が呻きとなってこぼれた。

撫子は頬の涙をぬぐうと、のろのろと布団からはい出た。

ああ。

どんなに帰りたくなくても。

それでも。

和火だけは帰さなければ。





Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.333 )
日時: 2014/05/31 22:52
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

ぱっぱかぱーんっ♪


ここで、参照2800突破記念として、キャラの関係を書きたいと思います〜




*カエデ……いろはうたの前作の主人公。
      撫子の生まれ変わる前の一人。
      つまり、撫子のご先祖様の一人。
      白銀の巫女と謳われた絶世の美少女。


*レイヤ……和火のご先祖様の一人。
      カエデを愛していたが、彼女の幸せのために身を引いて、
      カエデの騎士となった。
      その後、『騎士』というのは世襲制になって、代々続いていく。







*ナギ……撫子の先祖の一人。
     ハヤテのことが好きだったが、想いを伝えないまま病死する。


*ハヤテ……和火の先祖の一人。
      ナギの騎士。
      ナギを愛していたが、想いを伝えられないまま、ナギが他界する。






*セナ……撫子の前世の少女。
     タスクのことが好きだが、自分とタスクのそれぞれに婚約者ができ、
     タスクとの間に距離を置こうとする。
     

     このセナの意志と恋心が、もっとも撫子に強く影響している。


*タスク……和火の前世の青年。
      セナを溺愛している騎士。
      セナを愛しているが、自分と彼女のそれぞれに婚約者ができ、複雑な心境。

Re: ナメコとワカメのふらいあうぇいっ ( No.334 )
日時: 2014/06/01 17:10
名前: いろはうた (ID: Xr//JkA7)

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


〜セナの記憶の欠片〜



*私はわけも分からずに、屋敷を飛び出していた。

先程、タスクが蝶姫と一緒にいるところを見た。

何かを話しているようだった。

それがなんだか親密そうに見えて、見ていて苦しくなった。

それ以上二人が一緒にいる姿を見たくなくて、屋敷を出て、

こうして森の中をあてもなくさまよっている。

こうして、屋敷を飛び出すのは何回目だろうか。

いつもならタスクがついて来てくれるのに、もうそういうことは二度とない。

タスクは騎士の任を解かれた。

私だけを守ることはもうない。

その剣は、これからは蝶姫に捧げられる。

白夜様たちとの面会から数日。

タスクに会うことはめっきり減った。

今まで、影のように付き従っていてくれたのに。

蝶姫とタスクがが一緒にいるところを見るのはまだ慣れない。

いつか、タスクが隣にいなくなることも当たり前になってしまうのだろうか。

うつけだなあと思う。

二人は婚約者なのだ。

一緒にいて当然だ。

私ももっと白夜様と行動を共にしなければならないのに、彼からの誘いを断り続けている。

まだ、わりきれない。

まだ、タスクのことばかり考えている。

まだ諦められない。

これで、騎士という呪縛からタスクは解放されて、もうひどいけがもしなくて済むのに。

あの大きな手は、優しい笑顔は、涼しげなまなざしは、全部私だけに向けられていたのに。

それがずっと続けばいいと、強く願う自分がいたのに。

うつけだなあ、とまた思った。

その時ぐらっと体が傾いた。


「……っあ」


体を包む浮遊感。

足を踏み出した場所に地面はない。

崖だ。

足をふみはずした。

ぐらりと体勢が崩れて、空中に体が投げ出される。

だというのに、ひどく冷静な自分がいた。

これでけがをしたら、タスクは心配してくれるだろうか。

落ちて意識を失う瞬間まで、そんな馬鹿なことを考えていた。


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